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19/01/21(月)21:42:36 思いつ... のスレッド詳細

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19/01/21(月)21:42:36 No.563747126

思いつきで始めたストーカー日記作戦は大失敗だ。 愛は調子に乗り始めるし、純子は何か覚悟を決めてしまうし、さくらには乾バレしてしまうしと散々であった。 だが、好感度調整をこの際投げ捨てれば、3人にトップアイドルになる決意を固めさせたということもできる。 確かに信頼はしてしまっているようだが、これ以上距離感が詰まるようなこともないだろう。 唯一純子からはほのかに恋愛感情らしきものを感じたが、気のせいという可能性もあるし、彼女の性格を思えばトップアイドルになるまで行動することはないはずだ。 今回の事で学習したが、全員に向けて同時に好感度調整しようとするのはやめた方がいい。今回のように複数人に思わぬ効果が出てしまうのはもう避けたい。 今度からは大きな作戦を練るのではなくチャンスを見つけて個別に好感度調整を行うようにしよう。 「と、いうわけで反省会終了じゃい!台所に隠してあるプリンを食べてから寝るんじゃーい!!!」

1 19/01/21(月)21:43:27 No.563747370

ゾンビィ共に食べられていないか心配であったが、無事プリンは残っていた。 ホクホク顔で部屋まで戻ろうとすると、ベランダへの扉が開いていることに気が付いた。 誰かいるのかと顔を出してみれば、ゆうぎりが一人煙管を吹かしていた。 一人物思いに耽りたい夜もあることだろう。幸太郎は関わらずに部屋に戻ることに決めた。これは決して逃げなどではない。心遣いだ。 戻ろうとしたその背に、静かに声がかけられる。 「幸太郎はん、来なんし」 「………いや、もう寝るところじゃい」 「ぞんびぃの戯言に付き合うのも幸太郎はんの役目でありんす」 そう言われたら仕方がない。 ゆうぎりはフランシュシュの他のゾンビィたちと比べて、ケアを必要とする様子はほとんどない。 こうして二人で話すのもかなり珍しい。一体何を話すつもりなのだろうか。

2 19/01/21(月)21:44:06 No.563747585

…かと思えば、かれこれ数分ほどゆうぎりは何も喋らない。 さっきまでと同じように煙管を吹かしては、外の景色をぼんやりと見つめているだけである。 「……寒くないか」 「あれは本当に愛はんの事でありんすか?」 焦れた幸太郎が言葉を投げかけるのに合わせたかのように、静かにゆうぎりの言葉が流れる。 またストーカー日記についてか。幸太郎はあの時作戦を思いついた自分をフランスパンで殴りつけたくなったが、ぐっと堪える。 「そうに決まっとるじゃろがい。…なんじゃい、伝説の花魁様は自分の事とでも思ったんかい」 「まさか」 そこで初めてゆうぎりは視線を幸太郎に写した。 皮肉気に嗤う彼女は、とても十九の少女には見えない。その唇が、歪な三日月を描く。 「今のわっちが誰かの添え物だなんてこと、最初から知っていんした」

3 19/01/21(月)21:44:31 No.563747713

「…………それは愛以外の全員がそうだろう」 「わっちだけは違いんす」 「…何が違うと言うんじゃい」 確信を持った言葉を何故だか幸太郎は苛立たしく感じた。 しっかりと睨みつけても、ゆうぎりの笑みの形は崩れない。 「あの小料理屋の事をわっちが知りんせんとでも?」 「お前……」 違うとはそういう事か、と幸太郎はゆうぎりの言わんところを理解した。 他のメンバーは愛(ということにしておく)のおまけで蘇った身であるが、それでも幸太郎自身が選んだ。 しかし自分ばかりはそうではなく、特別な事情で蘇る一員に加わったのだ、と。

4 19/01/21(月)21:45:11 No.563747927

「実際文字となると中々に傷付くものでありんすなあ」 言っているほどに傷付いているのだろうか。ゆうぎりはまた視線を景色に戻し、煙をくゆらせている。 内心を伺わせないようなゆうぎりの話しぶりに、幸太郎はしばし悩んだ。 ゆうぎり自身がそういう意味で仲間ではなかったことを気にしているように聞こえるが、真正面から受け取っていいものか。 もし言葉通りだとするならば、絶好の好感度調整のチャンスである。 怯える気持ちを押し殺し、幸太郎はアクセルを踏み込んだ。 「……そうだ。お前だけは俺が選んだわけではなく、あの老人の勧めで蘇らせた」 「やっぱり、そうでありんしたか」 「そうでなければ、お前のような扱いにくいゾンビィなど蘇らせるわけがないだろう」

5 19/01/21(月)21:45:42 No.563748101

「はぁ、それほどでいんしたか?」 「そうだ。絡みにくいわ、突然ビンタをかましてくるわ…未成年だというのに煙管を吸うわ、一番の問題児じゃろがい。何度他の奴を蘇らせればよかったと後悔したことか、覚えていないぐらいだ」 その言葉に、ゆうぎりは顔をあからさまに幸太郎に背けた。よし。いい感じだ。 勝手に蘇らせておいて何様とは思うが、他の奴の方がよかったと言われて腹が立たない奴がいるわけがない。プライドの高い花魁ならばなおさらに。 「……そこまで…」 すすり泣くような声でゆうぎりが呟く。効果は抜群だ。幸太郎は今度こそ自分の勝利を確信した。 「あん人からも他の死体も勧められていたのでありんすか…。わっちはあん人の中でも唯一ではなかったと」 そんな事は言った記憶がないが、まあ事実の通りなので肯定しておこう。流れには乗るべきだ。幸太郎のテンションはますます高まった。 「その通りじゃーい!あのジジイはかれこれ20人くらいは候補に挙げとったんじゃーい!!!お前はジジイの中でも5号ならぬ20号とかそんな感じじゃい!!」

6 19/01/21(月)21:46:05 No.563748226

「なるほど、わっちもきちんと幸太郎はんに選ばれていたのでありんすな」 「えっ?………えっあっあっ」 しまった。 見てみればゆうぎりの青白い顔のどこにも涙の跡はない。完全にはめられた。 「わっちも幸太郎はんの好みの一人でありんしたか。それはそれは」 「……」 何とかせねばとは思うものの、どうすればいいか、幸太郎は進退窮まった。 確かにマスターからこの中の誰かを蘇らせるのが協力する条件と言われ、それでゆうぎりを選んだのは幸太郎だ。 しかしそれを馬鹿正直に言うわけにはいかない。これはまた好感度調整失敗の流れだ。流されるわけにはいけなかった。 「…お前を選んだ事に深い意味はない。それに、俺はお前は本当に扱いにくいと思って」 「ああ、そういうのはどうでもいいんでありんす」 変えようとした流れをすぐに断ち切るのはやめてくれないだろうか。

7 19/01/21(月)21:46:27 No.563748352

「わっちは確かに乞われていんした。それ以上は些事でありんしょう」 「いやちっとも細かくない…」 力なく反論する言葉に微笑みながら、ゆうぎりは煙管を吹かす。 故なく蘇った人生、流されるままに生きてみるのも一つだと思ったが。 貴女だからと乞われていたのであれば、その願いのままに生きてみるのも悪くない。 「幸太郎はん、主様の願いは『愛はん』をトップアイドルにすることでありんしたな?」 「……そうじゃい。というかなんじゃいその呼び方。初めて聞いたんだが」 「その願い、このゆうぎりが聞きんした。楽しみにしなんし」 「…これまでと何も変わらんじゃろがい」 「違いんす」 力なく憎まれ口を叩く幸太郎にそっと身を寄せ、ゆうぎりが囁く。 「わっちが、本気になりんした」

8 19/01/21(月)21:47:22 [sage] No.563748658

おわり 何度でも終わりを始まりに変えなんし!という言葉に元気をもらったので書きました

9 19/01/21(月)21:49:15 No.563749341

やべーぞ!

10 19/01/21(月)21:50:57 No.563749943

本気になった花魁には勝てねェ だったらどうするよ

11 19/01/21(月)21:52:01 [sage] No.563750316

別に読まなくてもなんとなくで読めるかと思いますがこれまでの流れです su2842787.txt

12 19/01/21(月)21:54:22 No.563751194

こいついつも失敗しよんな

13 19/01/21(月)21:54:46 No.563751353

なんだい今日は…いい幸ゆうが多いが…

14 19/01/21(月)21:58:39 No.563752751

つよつよっち!

15 19/01/21(月)22:00:12 No.563753317

よかよね

16 19/01/21(月)22:00:42 No.563753477

混戦しそう

17 19/01/21(月)22:06:45 No.563755464

花魁の矜持などという言い飽きたものではない ただ好いた男の一番ではないことを自分が許さない

18 19/01/21(月)22:35:38 No.563764933

それでも…といい続ける姐さんか

19 19/01/21(月)22:36:38 No.563765287

見逃すところだった… わっちは可愛い!

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