ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
19/01/09(水)23:39:02 No.560842022
アタシは今困っています。何故なら今日のライブの帰りに、落とし物を拾ったからです。ただの落とし物ではありません。懐かしく、思い出深いもの、たまごっちでした。それも、よく見ると見覚えのあるたまごっちです。生きてた頃、私が使っていたたまごっちでした。これを落とす人は一人しか考えられません。親友の天吹麗子さんです。麗子さんは喧嘩もがばい強くて、私より先に夢を叶えたがばい凄か人です。きっと、死んだ私にもライブを見せたくて、私の形見を会場に持ってきたのでしょう。そうに違いありません。直接届けたいけど、きっとグラサンに怒られてしまいます。ゾンビと生きている人がアイドル活動以外で接触するのはご法度だからです。でも、私は、自分で届けたいと思い……グラサンが帰ってきたので以上です。
1 19/01/09(水)23:39:39 No.560842205
「これ、落とし物。大事な物なんだろ？」 そう言って、サキはたまごっちを差し出す。麗子は、信じられないとばかりに驚いた。落とし物を拾ってから、次のライブ。サキは結局、本番の前に少しだけ、麗子に会うことにした。 「……見つからないと思ってた。ああ……ありがとう2号さん！」 涙声になりながら、麗子はお礼を言う。 「ヘヘッ、良いって別に。もう落としたりすんじゃねーぞー？」 嬉しそうな麗子を見て、サキも嬉しくなった。麗子が、こうして自分との思い出を大事にしてくれている。少し良い気になって、誇らしげにたまごっちを掲げるサキ。その姿が、麗子の中で、生前の親友と重なった。 「サキ……？」 ピタリ。空中に吊られたたまごっちが静かに、ゆらゆらと、揺れた。
2 19/01/09(水)23:40:04 No.560842313
「……誰だよソイツ。」 以前と同じ言い訳で乗り切ろうとするサキ。しかし、 「そっくりなんだ……。死んだ私の親友に。それに、何でそのたまごっちが私のだって分かったんだい？それも、大事な物って。」 しまった、迂闊過ぎた。グラサンの言う通り、アタシは分かっていなかった。こんな、簡単にボロを出しちまうなんて！ 「……たまたまだ。」 絞り出すように、苦し紛れの言い訳をする。 「嘘！これのことを知ってるのは当時の仲間だけ。でも、貴女は知っている。やっぱり……サキ……なのかい？」 「だから違えって！」 言って、サキは踵を返し、走り出した。咄嗟の行動だった。しかし、サキは分かっていない。逃亡は、より疑惑を大きくすることに。
3 19/01/09(水)23:40:24 No.560842413
駆け抜けて、控え室に飛び込む。勢い良く扉を閉め、鍵をかける。扉の向こうから麗子の声。 「サキ！やっぱりサキなのかい！」 必死に、ガンガンと扉を叩く彼女に、サキは何と言っていいか分からなかった。 「アンタが死んで！チーム辞めて！色々あって！……でも、アンタを忘れたことは一度も無かった！会いたかった！会って、一発ぶん殴ってやりたかった！こんなこと聞いて、開けるわけ、ないかもしれないけど……私は……そんだけ、許せなかったんだよ……｡嘘ついて、一人死んでいったアンタが……。」 手元に残ったたまごっちに視線を移す。返しそびれたそれは、よく見れば、薄汚れていて、ボロボロで、もう動きそうにない。 「アタシにとっては少し前のことでも……麗子にとっては十数年……長え、な。」 サキは独り言ちた。
4 19/01/09(水)23:40:50 No.560842584
思えば、この事態もアタシが引き起こしたことだ。分かっていた。アイドル活動以外で生きてるやつと触れ合うことの危険性は。でも、抗えなかった。もう一度、少しだけ。近くで親友を見たかった。アイドルとファンの関係を抜きに、話したかった。正体がバレそうになって逃げたのも、怖かったからだ。アイツに化け物って思われるのが。死なねえって約束破って死んで。アイドル活動外で麗子に会って。挙げ句バレそうになって逃げて。つくづく勝手なやつだ、アタシは。 「仕方……ねえか……。」 グラサンには怒られるだろう。フランシュシュにも迷惑がかかるだろう。それでも、扉の向こうで必死に訴える親友を、このままには出来なかった。サキは思いきり、扉を開けた。 瞬間、何者かに腕を捕まれ、グイッと引っ張られる。混乱する意識の中、サキは耳元で囁く声を聞いた。 「ようやく分かったよ、君の未練が。」
5 19/01/09(水)23:41:27 No.560842779
……キ。……サキ。……サキ！ ハッとして周りを見る。目の前には心配そうな親友の顔。 「大丈夫かい？これから殺女と決闘だってのに。」 そうだ、アタシは今から決闘するとこやった。崖目掛けてバイク飛ばして、そんで、止まれなくって死ぬ……。 「……？」 妙な違和感。不吉な想像。アタシが……死ぬ？ 「……サキ？」 相変わらず心配そうな親友に、アタシは笑顔を向ける。 「大丈夫だって！アタシは死なんばい。それと、コイツも預かっといてくれや。」 そう言って、大事なたまごっちを麗子に渡す。使い込まれて、年期が入った、ボロボロのたまごっちだ。……ボロボロ？
6 19/01/09(水)23:41:57 No.560842925
やはり、おかしい。このたまごっち、こんなに古かっただろうか？ 「一体、どうなっとると？」 違和感の正体が分からない。 「……サキ？やっぱり今日は調子が悪いんじゃないかい？」 いつまでも呆けてるサキに、麗子はやれやれといった感じだ。 「しょーがないねぇ……。降りな。私が代わりにやってやんよ。」 ……！それは駄目だ！何故だか分からないが、不吉な予感。麗子が、死んじまうような。だが、あれよあれよと言う間に、サキはバイクから降ろされ、代わりに麗子が跨がった。 ――――駄目だ麗子！行くな！死んじまう！ 叫びたいのに、声が出ない。バイクにエンジンがかかる。耳元で声。 「せっかく君を手に入れたのに、いなくなっちゃうんだもん。だから、考えたんだ。君の未練。安心して。今度は一緒に連れていくから。」 爆炎が、迸った。
7 19/01/09(水)23:42:23 No.560843073
「麗子ォォーーーー！！！」 爆炎に向かってサキは絶叫した。その姿は、かつて、眼前で親友を失った麗子にそっくりだった。視線を落とせば、たまごっちが目に入る。何故だか、それが無性に腹が立った。コイツのせいで、麗子は。こんなもんを大切にしていたせいで、麗子は。死んだバカのことなんて、忘れてくれれば良かったんだ。覚えのない記憶と、訳の分からない感情が駆け巡る。 「こんなもんッ！！！」 振りかぶり、たまごっちを地面に叩きつけようとした。 「駄目ですよ。思い出のゲームは大事にしなくちゃ。」 その手を、誰かが優しく止める。驚いて、振り返ると、そこには白衣の青年が立っていた。優しく微笑んで。
8 19/01/09(水)23:42:53 No.560843206
「アンタは……？」 白衣の青年にサキが問う。 「ただのファンですよ。貴方達フランシュシュの。」 青年の答えに、サキの記憶も蘇る。フランシュシュ。そうだ、アタシは、このチキンレースで死んで、ゾンビィになって、アイドルやって。ここで死んだのはアタシだったのに、麗子が……。 「友達も大丈夫ですよ。ホラ。」 そう言って、青年は宙を指差す。そこには赤と青の光に守られるように、フワフワと浮いている麗子がいた。 「麗子！！」 サキは駆け寄り、麗子を抱き止める。気は失っているが、死んでいない。ホッとして、涙が流れた。 「オイオイ永夢～。人使いが荒いぜ？こんな旧型のゲームエリアを探索させたと思ったらすぐにこれかよー。」 赤と青の光がモザイク状に組み上がり、人の形を形成していく。長身の青年が姿を現した。 「ありがとうパラド。もう一頑張り頼むよ。」 白衣の青年は燃え盛る炎を睨んだ。
9 19/01/09(水)23:43:25 No.560843398
グオオオオオ！！！ 燃え盛る炎が、吼えた。大口を開け、全てを飲み込まんとするソイツを、サキはよく覚えていた。いつの間にか、周りには、サキと麗子、それによく分からない二人組しかいなかった。 「メラメラしてて強そうだなぁ！アイツがボスか？」 二人組の、長身の方が楽しそうに言う。 「ああ、アイツを倒して二人を元の世界に返す。行くぞ！パラド！」 それを合図に、二人は構えた。手には、珍しい形のゲームカセット。 「大変身！」 「MAX大変身！」 『ガシャット！レベルアップ！マイティジャンプ！マイティキック！マイティマイティアクションX！』 『マザルアップ！赤い拳強さ！青いパズル連鎖！赤と青の交差！パーフェクトノックアウト！』 ！？ サキの前に、二人の戦士が立っていた。二人は独特なハイタッチをすると、炎目掛けて駆けていく。 「超キョウリョクプレーで、クリアしてやるぜ！」 「ああ！心が躍るなぁ！！」
10 19/01/09(水)23:44:04 No.560843613
圧倒的。そうとしか、言いようがない。 「永夢！コイツを使え！」 「サンキューパラド！」 『高速化！ジャンプ強化！』 襲い来る火柱を避け、うねる炎を切り裂く。二人の戦士は無敵のチームワークで炎の怪物を攻略していく。その姿が、かつての自分と麗子に重なった。どんな相手も、二人のコンビネーションでブッ倒してきた。膝の上で眠る麗子に目をやる。彼女は夢を叶えて、フツーを手に入れた。アタシより先に。アタシはまだ、全国制覇の夢の途中だっていうのに！途端に親友が物凄いヤツに思えてきて、誇らしくなった。アタシはこんながば凄いヤツと肩並べて戦ってたんだ！ 「せっかく親友と一緒になれるチャンスなのに。あんな奴等に邪魔されて、腹が立たないのかい？」 また、耳元で声がした。 「………ああ。腹立つな。」 「そうだろ？じゃああの二人をどけて……」 「アタシが腹立つのはアタシ自身にだ！コイツは夢を叶えたのに、アタシが入り込んで危険な目に遇わせちまった！情けねえ！会えなくても、アタシとコイツが親友だったって事実は変わらねえのによ！」
11 19/01/09(水)23:44:48 No.560843810
「それと、テメェにも腹が立っとる！麗子を巻き込みやがって！フツーに生きとったコイツを巻き込んだテメェを、アタシは許さねえ！」 言って、サキは燃え盛る炎目掛けて、走り出す。拳を思いきり振りかぶり、炎に叩きつけた！ 「勝手に人の未練決めつけんじゃねえ！！ブッ殺すぞ！！！」 拳がジリジリと焦げる音と、小さい悲鳴。耳元の声が消えた。 「うわー怖。弐号さん怖。でも、かっこいいなぁ。」 「なーにバカみたいなこと言ってんだよ永夢。そろそろ決めるぞ。」 「ああ！フィニッシュは必殺技で決まりだ！」 サキの一撃を見届けた二人は力を溜め、キメ技を繰り出した！ 『マイティ！クリティカルストライク！』 『パーフェクトノックアウト！クリティカルボンバー！』 炎の怪物はのたうち、断末魔を上げ、やがて消えた。
12 19/01/09(水)23:45:29 No.560843977
麗子が目を覚ますと、目の前には懐かしい顔。ボロボロの特服を纏い、あの日と同じように笑いかける。思わず、 渾身の力でぶん殴った。文句も言った。嘘つき。死なないって約束したじゃないか。簡単に死んじまって、馬鹿みたい。親友は困ったように笑い、言った。悪かった。心配もかけたし、悲しい思いもさせた。今日は少し、お前の気持ちが分かったよ。そう言って、申し訳なさそうにする親友を、麗子は抱き締めた。本当に、馬鹿なんだから。でも、アンタはそうやって馬鹿やって、夢に向かって突っ走ってる時が最高に輝いていた。アンタが最高に輝けたって言うなら、もう、文句は言わない。もう一度会いに来てくれて、ありがとう。親友は嬉しそうに笑って、最後に一言、言った。 「あばよ。」
13 19/01/09(水)23:46:00 No.560844122
「お母さん大丈夫？」 再び麗子が目を覚ますと、今度は娘の顔があった。 「万梨阿……？サキは……？」 「サキ……？さっきまで二号さんならいたと？これ、大切にしろよって。」 そう言って、娘は、ボロボロのたまごっちを手渡した。もう動かないそれを、麗子の両手が優しく包む。 「早く行かんと！ライブ始まっちゃうけん！」 そわそわする娘に引っ張られながら、麗子は考える。あれはサキだったのだろうか。もしかして、二号さんは本当に……。 そこまで考えて、麗子はやめた。馬鹿らしくなった。死人が生き返るはずもない。だから、きっと勘違い。今は、ライブを楽しもう。ステージには、かつての親友と同じくらい、いや、それ以上。夢に向かって輝いている彼女がいるのだから。 「皆さーん！！今日もよろしくお願いしあーーーっす！！！」
14 19/01/09(水)23:47:00 No.560844410
終わりです 長くなって申し訳ないです 最近凶悪警備員にボコられる永夢しか見てないのでかっこいいの書きたくなりました
15 19/01/09(水)23:47:47 No.560844624
！？！？
16 19/01/09(水)23:47:58 No.560844684
よかったい…
17 19/01/09(水)23:48:44 No.560844904
>その手を、誰かが優しく止める。驚いて、振り返ると、そこには白衣の青年が立っていた。優しく微笑んで。 ここで来てくれた…！ってなった
18 19/01/09(水)23:49:38 No.560845182
ゲーム繋がりか…
19 19/01/09(水)23:50:53 No.560845617
同じ時代に出会えた仲間達
20 19/01/09(水)23:51:03 No.560845668
エムゥ！？
21 19/01/09(水)23:52:33 No.560846123
今オマケ書いたんですが投下してもいいですか？
22 19/01/09(水)23:52:50 No.560846220
かっこいい小児科医（怪文書で）初めて見た
23 19/01/09(水)23:53:08 No.560846304
！？
24 19/01/09(水)23:53:33 No.560846422
宝生永夢ゥ！！！
25 19/01/09(水)23:54:50 No.560846779
やっぱりヒーローはかっこいいな…
26 19/01/09(水)23:56:12 No.560847177
「……なぁ永夢。これ終わったら俺とゲームしようぜ。ポッピーも誘ってドレミファビートがいいな。」 会場の隅。ライブを見守る二つの影。 「分かったよ、パラド。でも、今はライブに集中させてくれ。」 「ちぇっ……。つまんねーのー。」 最近出来た、ゲーム以外の趣味。よく分からないが、レーザーやブレイブが言うには、良い兆候らしい。遊んでくれる時間が減って、俺は少し心が滾るが。それに、 「……ゲームの思い出を、守りたかった……か。」 俺がお前で、お前が俺で。彼の心が、そう言っていた。優しい彼は、困ってる人は分け隔てなく助ける。が、今回は少しだけ、思うところがあったらしい。 ――――俺も、お前との思い出は大事にしてるんだぜ？ 伍号さーん！！！と叫ぶ彼を、やれやれと見守って、親友は少しため息をついた。
27 19/01/09(水)23:57:00 No.560847391
蛇足ですけど今書いたオマケです 投下してもいいよね？答えは聞いてない！
28 19/01/09(水)23:58:39 No.560847843
宝生永夢ゥ！！！ぅ私もォ！ゾンビィでゃあああああああ！！！！
29 19/01/09(水)23:58:43 No.560847860
今日は怖い警備員さんも許してくれるか
30 19/01/09(水)23:59:49 No.560848152
4レス目でいつものパターンなのはわかったけど小児科医は伍号推しの印象強すぎて想定外だった…よか…
31 19/01/10(木)00:00:31 No.560848414
ゆうぎり姐さん助けるのはマコト兄ちゃんだろうし…
32 19/01/10(木)00:02:21 No.560849127
サブライダー来たのは初めて？
33 19/01/10(木)00:04:41 No.560849926
>宝生永夢ゥ！！！ぅ私もォ！ゾンビィでゃあああああああ！！！！ (いつもの顔)
34 19/01/10(木)00:06:40 No.560850507
>今日は怖い警備員さんも許してくれるか 今日はミラクルワールドの性格してる…と思う…
35 19/01/10(木)00:10:38 No.560851902
パラドォ！
36 19/01/10(木)00:13:48 No.560853006
ゲームの思い出繋がりでエグゼイドとは…お見事
37 19/01/10(木)00:15:31 No.560853577
今日は凶悪犯も徐福のマスターにも連れていかれそうにない宝生先生
38 19/01/10(木)00:18:38 No.560854637
>宝生永夢ゥ！！！ぅ私もォ！ゾンビィでゃあああああああ！！！！ ゾンビと言えば増殖能力がつきものだろぉ？と言いながらフランシュシュと同じ7人になり歌って踊り出すゲンム
39 19/01/10(木)00:19:17 No.560854937
>ゾンビと言えば増殖能力がつきものだろぉ？と言いながらフランシュシュと同じ7人になり歌って踊り出すゲンム マジでやめてください…！
40 19/01/10(木)00:20:05 No.560855177
>4レス目でいつものパターンなのはわかったけど 早くね？
41 19/01/10(木)00:20:31 No.560855282
サキちゃん心身共に強すぎない…？
42 19/01/10(木)00:21:01 No.560855408
サキちゃん万丈とも相性良さそう
43 19/01/10(木)00:21:57 No.560855715
>>ゾンビと言えば増殖能力がつきものだろぉ？と言いながらフランシュシュと同じ7人になり歌って踊り出すゲンム >マジでやめてください…！ 歌と聞いてやってくる檀正宗
44 19/01/10(木)00:23:17 No.560856210
せっかく好きなアイドルグループのライブ観に行ったら増える神といい声で歌うその父親の相手するはめになるのか
45 19/01/10(木)00:23:25 No.560856274
>4レス目でいつものパターンなのはわかったけど 俺も今回は分かった！ 雰囲気と言うか…文体で分かる！分かった気になれた！
46 19/01/10(木)00:28:52 No.560858039
>サキちゃん万丈とも相性良さそう バカとバカ スカジャンとスカジャン あと喧嘩っ早いところ？
47 19/01/10(木)00:29:50 No.560858265
>>サキちゃん万丈とも相性良さそう >バカとバカ >スカジャンとスカジャン >あと喧嘩っ早いところ？ 相棒が途中で記憶喪失 辛辣な対応される
48 19/01/10(木)00:30:48 No.560858532
唐突に現れる永夢でビックリした でもよかった
49 19/01/10(木)00:32:42 No.560858991
>相棒が途中で記憶喪失 >辛辣な対応される 巽にエボルトとりついてそう