ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
19/01/09(水)22:45:25 No.560825269
吾輩はロメロ。この洋館を守護する番犬である。 だが我輩の精神は単なる犬ではない。御主人である巽幸太郎を守護るべく、屍としての生を得た一人の紳士たる存在である。 御主人と我輩だけの住まいであったこの館にも、随分と人間が増えた。 その人間たちは同じ屍ではありながら、我輩と比べて随分と騒々しい者たちばかりである。住み始めた頃の静けさはもはや存在しない。 だが、それを御主人は喜んでいる様子だ。 ならば受け入れるべきであろう。御主人の喜びは、吾輩にとっても喜びであるからだ。
1 19/01/09(水)22:45:46 No.560825389
「おっ、ロメ公。いいとこにきたな!」 ある日の昼下がり。我輩に声をかけてきたのは、長い黄髪を蓄えた人間の雌。名は『二階堂サキ』と呼ばれていた。 この洋館に住む七人の屍の内の一人であり、正直なところ我輩が苦手としている人間だ。 観察していて気づいたことであるが、この二階堂サキは人間たちの主導者のような存在である。 そのような性格ゆえなのか、我輩に対し妙に気安いところがあるのだ。 別段それが悪いわけではないのだが、人間と犬という違いは在れど同じ哺乳類であり、別個の意思を持った生物。 適切な距離感というものを大事にするべきではなかろうか、と思案する次第である。 「おまえ暇か? 暇だよな。 んじゃ一緒に来い」 そう言うと二階堂サキは、我輩の襟首を掴んで洋館の中に連行した。 我輩は抗議の鳴き声を上げるが、意に介されることはなかった。解せぬ。
2 19/01/09(水)22:46:08 No.560825503
我輩が連行されたのは洋館の風呂場であった。 脱衣所の扉は閉められ、逃げることは叶わぬ。やれやれ、と我輩は頭を振る。 二階堂サキは身につけている布を素早く脱ぎ去り、白いタオルだけを体に巻きつけた。 「今朝の夕方までグラサンいねーだろ。ひとっ風呂浴びようと思ってな。ついでにおまえも洗ってやるよ」 何たることか。この人間は御主人の目を盗み、禁止されている入浴を行おうというのか。 許しがたき行為である。我輩は激怒し、抗議の鳴き声を上げた。 「心配すんな。掃除しとけばバレやせんって」 何とも気楽にそう言い、二階堂サキは我輩を抱きかかえ風呂場へと連行する。 これでは共犯となってしまう。しかし抵抗する術もなし。非力な我が身を呪うばかりであった。
3 19/01/09(水)22:46:33 No.560825641
風呂場の浴槽には既に湯が張ってった。ぬかりなく準備していたということだろう。 「そら、ロメ公。くらえー!」 なんと二階堂サキは、シャワーを用い我輩に湯を浴びせてきた。水責めである。不意打ちとは卑怯なり。我輩は全身をくまなく水浸しにされてしまう。 続いて白い液体を全身に塗りたくされ、全身を泡立てさせられてしまった。これでは目を傷めてしまう。無念に思いつつも我輩は目を閉じる。 無抵抗になった我輩の体を、二階堂サキは両手を用い弄ぶ。泡が全身を覆っていく。泡責めとは。このままでは溺れてしまうではないか。 そんな我輩の杞憂を、二階堂サキは文字通り湯で洗い流す。片手を用い残った泡や液体を流すことも忘れない。入念な水責めであった。 「うし、綺麗になったな」 ようやく全ての責めが終わった。我輩は全身についた水を体を震わせて払う。飛沫は二階堂サキにもかかるが、これはささやかな反逆であった。
4 19/01/09(水)22:46:57 No.560825759
「んじゃアタシも体洗うから、ちょっとここで待ってろよ」 そう言うと、深めの洗面器のお湯を組み入れ、我輩をそこに入れた。これは小さき風呂のようだ。 我輩はその湯の中に体を入れる。体温より少し熱い感覚がなんとも心地よいではないか。 「ふふふんふーんふーん♪」 鼻歌が聞こえる。もちろんその音源は二階堂サキだ。 禁止行為を行っている最中になんとも暢気な、と以前の我輩なら思っていただろうが、今は違う。 同じ体を洗うという行為でも、冷たい水と温かい湯とでは、心が受ける感覚は別物だ。 御主人が以前話していたが、他の屍たちの何人かも、温泉という温かい湯を渇望して禁止行為を行ったらしい。 人間が好んで湯につかるという行為の意味が、我輩にも少しだけ理解できる気がした。
5 19/01/09(水)22:47:28 No.560825941
「ふぁ~、極楽ゴクラク・・・」 体や頭の泡を全て取り払った二階堂サキは浴槽に浸かり、実に嬉しそうに声を上げた。 「おっと忘れとった」 そう言うと、二階堂サキは我輩の体を洗面器から持ち上げ、自らが浸かる浴槽の中へと我輩を招き入れた。 「こっちの方があったかいけんな」 浴槽は深いため、我輩を胸元に抱きかかえる形になる。水中に浮く形になり少々戸惑うが、それはすぐ杞憂に変わった。 二階堂サキの言うとおり、こちらの浴槽の方が湯が温かい。加えて抱きかかえられた人間の皮膚の感触が、何とも言えぬ別種の温もりを伝えてくる。、 ふと頭の上に何かの感触を感じる。何かを思い顔を上げると、二階堂サキが鼻をひくつかせていた。何かの匂いを嗅いでいたのだろうか。 そんな我輩の様子に気づいたのか、二階堂サキの手がぽんぽんと我が頭を優しく叩く。 「おまえもチームの一員だけんな。腐乱臭まみれじゃいかんばい」
6 19/01/09(水)22:47:50 No.560826077
我輩はその時思った。 この人間がチームと称する集団は、他の人間の雌六人だけではなく、御主人。そして我輩も含まれているのか。それではまるで家族のようだと。 だが、家族。その言葉を定義したとき、我輩は妙に合点がいった。 二階堂サキの行動定義するなら家族における父親のようなもの。性別は雌であるのだが。 皆を引っ張っていく先導者であり、誰にも平等に接する理解者。そう考えると他の人間や我輩への距離感も頷けるというものだ。 ふむ、これは我輩も認識を改める必要があるのかもしれぬ。 そう思った瞬間、我輩の体を浮遊感が襲う。気づいたときには湯の中に沈んでいた。必死にもがいて湯を掻くが浮き上がらぬ。 混乱する我輩の体が、がっしりと掴まれる。そして湯の中から体を引き上げられる。無論、引き上げたのは二階堂サキだ。 「悪ぃワリィ。あんまり気持ちよかったもんで、つい力が抜いちまった」 考えを改めようと思った瞬間にこの有様。我輩は唸り声を上げる。 「怒んなってば」 二階堂サキは前を向いた我輩を胸元に抱き寄せ、頭を撫でてくる。やはりこの人間は苦手だ。
7 19/01/09(水)22:48:24 No.560826253
風呂から上がり、二階堂サキは我輩を食堂に連れて来る。 二階堂サキは冷蔵庫から取り出したものから、白い液体をコップに注ぐ。その白い液体を我輩用の食事皿にも注いだ。 「やっぱ風呂上りにはコレだろ」 そう言いながら、ぐいとそれを飲み干す。確か牛乳という飲料であったはずだ。我輩もその液体を舐めてみる。 実に美味である。汗を流した体に、染み入るような味であった。 「美味いだろ?」 これには納得せざるを得ない。我輩は鳴き声でその言葉に答える。 我輩のその声に二階堂サキは、こちらも思わず笑顔になりそうな顔で、嬉しそうに笑うのだった。 何とも、何とも二階堂サキは評価に困る人間である。 そのようなことを認識する、昼下がりの我輩であった。
8 19/01/09(水)22:48:49 No.560826375
サキちゃんやーらしか…
9 19/01/09(水)22:49:34 No.560826603
よか…
10 19/01/09(水)22:49:43 No.560826648
サキちゃんもロメロもやーらしかですよ…
11 19/01/09(水)22:49:46 No.560826676
サキちゃんは可愛いなあ!
12 19/01/09(水)22:49:58 No.560826739
ロメロはんは賢しいお犬さまでありんすなぁ…
13 19/01/09(水)22:50:22 No.560826841
ロメサキよかね…
14 19/01/09(水)22:50:55 No.560826992
ロメロがご主人思いの忠犬で可愛いと思います
15 19/01/09(水)22:51:20 No.560827116
夏目ロ…
16 19/01/09(水)22:55:54 No.560828646
こういう日常みたいな怪文書が読みたかったんだ…
17 19/01/09(水)23:02:39 No.560830864
全員分ほしくなるな!
18 19/01/09(水)23:06:48 No.560832187
そういえばロメロってリアルモードとSDモードの体型どっちが本物の大きさなんだろ…
19 19/01/09(水)23:14:36 No.560834760
えっよか… よかで殴られた…よか…
20 19/01/09(水)23:30:43 No.560839767
よかったい…