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19/01/06(日)23:07:36 「った... のスレッド詳細

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19/01/06(日)23:07:36 No.560200069

「ったく!あいつどこいったんじゃ」 マンションでの一件から、愛は一か月後さくらに友情を示すと約束した。 そして一か月後、マンションへさくらを迎えに行った幸太郎だがいくら呼び出しても応答しないインターフォン。 携帯も不通。愛から聞いていたさくらの職場へ電話しても不在。管理人に事情を説明して部屋に入ればそこには『探さないでください』との書置き。 迂闊だった。さくらはここのところずっと情緒不安定だった。追いつめられ諦めがちだった。そんな彼女を放置すればどうなるか。 一瞬最悪の事態を想像し、そして自分の臆病を頭から振り払う。さくらはそこまで弱くはない。 愛も今戦いに赴こうとしている。幸太郎だってそのための準備をしてきた。 あとはさくらを連れていくだけ。唐津の街を黒いバンが駆ける。 ―――――――――――――― 何故ここにきてしまったのか。 あの日、初めて愛と出会い案内した場所。 さくらの全てを変えてくれた場所。そこに行けば全てがリセットできる。そう考えてしまったのだろうか。 「やはりここにいたか」 ああでも、もっとる人たちは容易く自分を逃避させてはくれないようだ。

1 19/01/06(日)23:08:00 No.560200202

唐津市ふるさと会館アルピノ。そのイベントホール。十年前にアイアンフリルが初めて佐賀でライブを行った場所。 勘が当たってよかった。安堵し、目の前には小さな袋を持った源さくら。 「勝手に入って、何かあったらどうするつもりだった」 サングラスを外してベストの腰ポケットにしまいつつさくらに声をかける。 会話するときはサングラスを外して。すっかり愛にしつけられてしまった気分で幸太郎はそんな自分に苦笑を漏らす。 「もうよかですよ…愛ちゃんだってもうこれで愛想尽かしたでしょうし」 「そんなことはない。愛は今だってお前のために」 「それだって、どっちにしろ私は愛ちゃんの一番にはなれんってわかっとるし」 「………」 「愛ちゃんと乾君が帰ってからよう考えた。愛ちゃんは私を縛りたくないって、望むことはしてくれるって……だったら私は愛ちゃんに縛られたかった!愛ちゃんだって縛りつけておきたかった!そうしないともっとらん私には…」 「底前不安にならなくても愛は源の前からいなくはならない。あいつがそんなやつじゃないことくらいお前にだってわかるだろ」

2 19/01/06(日)23:08:30 No.560200395

「今までならそうやけん、けど今は乾君がおる…」 そう言い、こちらをしっかりと見据えるさくら。その相貌に映る怨嗟の想い。 「私から愛ちゃんを奪っていくくせに偉そうなこといわんで!乾君に私と愛ちゃんの何がわかると!?」 最早正気ではないのだろう。ひたすらに感情のままにまくしたてているだけ。 「正直高校の時ずっと苦手だったとよ。もっとらん私の前でこれ見よがしにもっとるのを見せつけてきて…辛かった…この前もバーで言っとったね持っとらんなんて気にしなくてええっつーことを私に見せたかったって」 「ああ」 すでに距離は0に近い。胸元ギリギリに踏み込んでまるですがりつくような体勢。 「放っといて、何で私を巻き込むん?そんなん乾君が勝手にすればよか!理由に私を使わんで!!そんなんで私の日常を壊さないで!!」 一瞬その剣幕に押されかけ幸太郎は応じようと足を踏ん張り、そして軽い違和感に気付く。 さくらの手元にあった袋がない。いや正確には床に落ち、その手にあるのは、 「だからいなくなって…」 家から持ち出してきたであろう包丁。気付いた時にはもう遅い。

3 19/01/06(日)23:09:00 No.560200562

「これで全部元通りやけん」 腹部に刺さった包丁を抑え幸太郎はそのままうずくまった。 ああそうだった、源は追いつめられると何をするかわからないやつだった。 だが、こんなときまで源は『もっとらん』女だった。そして、幸太郎はやはり『もっとる』男だ。 「お前こんな…こんな安物で乾幸太郎さんが刺せると思っとるんかーい!!!!!」 そうして、まるで脅かすかのようにさくらの眼前で跳ね起き顔を突き合わせる。 「どうせなら吉田刃物ん出刃でも持ってこんかい!こんな佐賀も魂も籠っとらんようなもんどこで買ったんじゃい」 「なんで…」 何故、と問われればさくらが非力だったか、無意識で抵抗していたか、そしてそれ以上に幸太郎には 「俺には幸運の女神がついとるからな」 そういって破れたベストのポケットからは外したサングラス。 「これくらい感触で気付いとけ。愛が待ってる。いい加減行くぞ」 包丁と袋を回収し、呆然としているさくらの手を引く。 「何で…もう私のことなんて」 「お前は…一回フラれたくらいで何をそんなくよくよしている」

4 19/01/06(日)23:09:26 No.560200714

引いて会場から出る。 「……10年……10年の片思いが終わったとよ?私の全部…もう元にも戻れんし…乾君にそん気持ちわかるわけ…」 「俺だって10年間の片思いが完全に終わった。しかも刃傷沙汰付きだ」 源を引く手が熱い。 「だいたい、愛と俺がその関係をながーーーーーーーく続けさせるためにどんだけ苦労しとったか見る前に逃げよって」 「関係をつづけたって乾君と愛ちゃんのことをずっと見てるなんて」 「そんなん我慢せい。俺だって好きだった女が好きな女と一緒にいるのをずっと見る羽目になるけん」 「……もし愛ちゃんに子供が出来たら私だって愛ちゃんの一番ではいられんし…」 「こどっ」 ああそうか、いずれそういうことにもなるかもしれない。 「そんなんお互い様じゃい。ただ」 なんにだってひたむきだった愛の姿を思い出しながら 「源も知っとる通り愛はそんなに器用になんでも区別できるやつじゃないけん、大切なものが増えたらそれも大切にすっだけじゃ」 たださくらの手を引いて先導するだけ。お互いに顔は見えない。 「源にとって愛はそげん信用できんやつか?」

5 19/01/06(日)23:09:48 No.560200839

そうして、さくらは愛のことを考える。 今までだってずっと自分のことを考えていてくれた。見ていてくれた。さくらのそばで笑っていてくれた。 「………ごめんね乾君私…私は…」 「もうええ、それに」 そうして、言い忘れていたことを 「俺もお前を絶対に見捨ててやらん」 ―――――――――――――― 佐賀駅から5分。大型のショッピングモールの向かいに位置するその場所は普段結婚式などを行うイベント会場である。 そうしてそのうちの一室。普段は開放的な空気が人気を博すその会場には現在20組のマスコミが集いそして対するは正面、それだけの数の報道陣の質問を笑顔で受け答えしている水野愛と紺野純子の姿。 会見内容は佐賀でのラブイベントの開催発表。 主催は紺野純子。そして主催者の紺野純子をはじめアイアンフリルに水野愛、売出し中のフランシュシュはじめ数多くのアーティストが参加予定。 調度都合よく大きなニュースもなく、そして最近熱愛報道の上がった『水野愛』そして『佐賀』の存在にマスコミが食いついた。

6 19/01/06(日)23:10:24 No.560201086

「乾様と源様ですね。お待ちしておりました。こちらへどうぞ」 受付で荷物を預けるとなにやら内戦で連絡した後関係者用のネックストラップを渡され会場へ案内される。 促されるまま案内員に続いて会場へと向かうが入り口に近づくにつれ、幸太郎は違和感を隠しきれなくなっていた。 手筈通りであれば、というより予定通りであればまだ記者会見は始まっていないはずなのだ。 紺野純子主宰、佐賀でのライブイベント。予定自体は以前からあった。純子だって結局フランシュシュへの助力を始めたのは自分のイベントに添える華が一つでも多く欲しかったから。幸太郎も現在イベントへの全面協力を求められ応じている。ただ、その発表を早めたのは幸太郎と愛のわがまま。 幸太郎と愛は伝手を辿って参加アーティストを増やしていき、ここ一か月は練る間も惜しんでスポンサーへの営業回りだ。そのかいもあって今回無事記者会見を開くことができ、そして『作戦』を実行できるはずだった。が、 「おかしい…会見がすでに始まっている…」 予定よりもだいぶ早い。会場案内板には幸太郎の知る時間より1時間は早い時間が記載されている。

7 19/01/06(日)23:10:58 No.560201249

「乾君、どうしたと?」 不安げに傍らに立つさくらが聞いてくる。大丈夫俺に任せておけ、と言い会場の扉を開け 『あー今来ましたね。私の親友と恋人でーす』 そうして幸太郎とさくらを迎えたのは歓声とフラッシュの洗礼であった。

8 19/01/06(日)23:11:14 No.560201354

愛が幸太郎に話した作戦。 乾幸太郎と水野愛の関係は熱愛報道から本人たちがそう思う思わないに関わらず公然のものとなった。 では、同様にさくらとの関係も公然のものとしてしまえば良いのではないか。 世間の目という縛りで関係を固定する。それが愛の立てた作戦。 ただ、一タレントの熱愛会見などではパンチが薄い。それならば多大な影響力をもつ紺野純子も巻き込んでしまえと。 記者の中に純子の息のかかった『仕込み』も用意していた。 首尾よくイベントの宣伝を終えたら純子の美容本の話題から自然な流れで愛の熱愛報道の話題へ。そしてその場で幸太郎との関係、そしてさくらとの関係を発表し世間に知らしめようと。さくらにはその瞬間を報道陣に交じって見ていてもらう。そういう算段であった。 「それがどうしてこうなっとるんじゃい」 「良いでしょこっちの方が派手でわかりやすいし。ね、さくら」 「あわわわわわわ…どやんすどやんす~」 「あら、かわいらしい。水野さんも隅に置けませんね」

9 19/01/06(日)23:11:27 No.560201421

受付に到着した時点からこちらの行動はすべて会場に筒抜けで、到着までも図られていたらしい。 飛び交う質問にそのまま用意していたかのように返す愛に幸太郎は場数の違いを感じる。 なにかニコニコしている紺野純子のあとが怖いがこの際気にはしていられない。 さくらはすっかり萎縮してなぜか幸太郎の服の裾をつかんで離さない。 そうして、なにか流されるままに記者会見は終わった。 ―――――――――――――― 『紺野純子vs水野愛、男を巡る骨肉の争い』 『水野愛同性愛者疑惑、噂のお相手は一般女性!イケメンプロデューサーは隠れ蓑!?』 『水野愛、その十年を支えた友情』 『水野愛熱愛前言』etc,etc... 後日各紙面にはイベントのニュースと併せてそんな記事が並んでいた。 そうして、ローテーブルの上に雑誌や新聞を広げながら文面を眺める。

10 19/01/06(日)23:11:37 No.560201478

「いやーほんとセンスないわねこの記者!さくらの写真も雑だし!!」 「愛お前いい加減飲み過ぎじゃい」 「愛ちゃんも乾君も飲み過ぎやけん…ほら、お水飲んで」 そうしてさくらの家。3人でテーブルを囲み酒を飲んでいる。 「ここ一か月どやんすが足りなかったからさくらでほじゅーしないと…」 そういってさくらに抱きつく愛。二人とも幸せそうだ。 そうして、一瞬顔を陰らせるとさくらが言う。 「ごめんね二人とも…私のせいで迷惑かけっぱなしで無理もさせて…乾君にも…」 「それはもういいでしょさくら。はっきりしない幸太郎が悪いみたいなところもあるし」 冗談めかして言う愛に鼻で笑って酒を煽る。 「ねえ二人とも、こんな…持ってない私だけどこれからも一緒にいてくれるかな?」 「もちろんよさくら。それにこれからどんどん忙しくなるからもっと支えてもらわないと。そうでしょ幸太郎」 「言われんでも俺はまだなーんも救えとらん。今度のライブイベントで俺のやーらしかアイドル達はようやくスタート地点に立つ。まだまだ疲れたなんて言っとられんぞ」

11 19/01/06(日)23:11:51 No.560201576

「言われなくても。その前に家、探さないとね」 「なんだ愛。お前こっちにマンションでも買うのか?」 「そ。私とさくらとあんたの家」 「「は?」」 唐突な言葉に部屋の中が固まる。 「この前ロケの最中にいい感じの洋館見つけてさー。あそこ改装すればレッスンとかもできるし広いし、いいことづくめだと思うの」 「ちょちょちょちょっと待って愛ちゃん家って…私と愛ちゃんと…乾君のって…」 「だってさっきさくら言ったじゃないずっと一緒にって。悪いけど言われたからには離さないから。あ、幸太郎は渡さないけど」 平然と言い放って今度は幸太郎にくっついてくる愛。 「今後とも末永く宜しくね」 そう言った愛を見るさくらの仕方なさそうな顔、微笑みがなんだか以前、あの日見た笑顔に重なったような気がして。 「やらんばなー」 そうしてまた終わりない道を進む覚悟を決めた。

12 19/01/06(日)23:12:27 No.560201830

今までのと今回の su2813247.txt やっと終わった…

13 19/01/06(日)23:12:58 No.560202014

congratulation! Nicebird!

14 19/01/06(日)23:13:21 No.560202152

よかったいよかったい

15 19/01/06(日)23:14:31 No.560202620

ハッピーエンドでよかった

16 19/01/06(日)23:15:24 No.560202967

よか話をありがとう そしてお疲れさま

17 19/01/06(日)23:17:48 No.560203818

最後まで修羅場ってたな

18 19/01/06(日)23:19:12 No.560204284

両手に花エンドすぎる…片方花じゃないけど

19 19/01/06(日)23:19:44 No.560204477

リリィは結局出なかったか…

20 19/01/06(日)23:19:53 No.560204514

>「俺もお前を絶対に見捨ててやらん」 「も」って所がいい すごいいい

21 19/01/06(日)23:20:28 No.560204705

よかったい… なんとか丸く?収まってホッとしたよ 面白かった!

22 19/01/06(日)23:21:42 No.560205109

不思議な関係だけど愛ちゃんは一人勝ちだな!

23 19/01/06(日)23:24:58 No.560206180

乾くんもさくらちゃんもなんだかんだモヤモヤは残りつつもなんとかやっていけそう

24 19/01/06(日)23:26:08 No.560206521

>「……10年……10年の片思いが終わったとよ?私の全部…もう元にも戻れんし…乾君にそん気持ちわかるわけ…」 >「俺だって10年間の片思いが完全に終わった。しかも刃傷沙汰付きだ」 >源を引く手が熱い。 >「だいたい、愛と俺がその関係をながーーーーーーーく続けさせるためにどんだけ苦労しとったか見る前に逃げよって」 >「関係をつづけたって乾君と愛ちゃんのことをずっと見てるなんて」 >「そんなん我慢せい。俺だって好きだった女が好きな女と一緒にいるのをずっと見る羽目になるけん」 上手く言えないけど好きなところ

25 19/01/06(日)23:26:39 No.560206698

愛ちゃんは全てを手に入れた 乾くんは大御所に借りを作ってしまった

26 19/01/06(日)23:28:53 No.560207362

あ、100点です

27 19/01/06(日)23:30:42 [s] No.560207920

一応 ・リリィは5と6の間で出そうと思ったらいつまでたっても幸太郎とさくらが会えなかったので後回しにしてたらタイミング失った ・調子に乗って序盤でさくらを病ませたら展開思いつかなくなった ・佐賀行ったこともないので釣りのところとデートのところ苦労した 以上です

28 19/01/06(日)23:33:00 No.560208601

>乾くんは大御所に借りを作ってしまった 今後は平成と昭和の熾烈な戦いが繰り広げられるのか…

29 19/01/06(日)23:33:59 No.560208887

好きだった人にフラれて刺された乾くん…まあ幸せそうでよかったい

30 19/01/06(日)23:35:12 No.560209260

>記者の中に純子の息のかかった『仕込み』も用意していた。 うn >『紺野純子vs水野愛、男を巡る骨肉の争い』 大御所…

31 19/01/06(日)23:38:51 No.560210338

>好きだった人にフラれて刺された乾くん…まあ幸せそうでよかったい もとはといえば乾君がはっきりしないのがわるいし…

32 19/01/06(日)23:44:19 No.560211987

一ヶ所だけツッコませて 式場の場面の内戦の文字→内線

33 19/01/06(日)23:45:25 No.560212285

お疲れ様でやんす

34 19/01/06(日)23:46:21 No.560212529

あ、100万点です

35 19/01/06(日)23:51:40 No.560213967

お疲れさまでありんした …式場周りの場面描写結構苦労したでありんす?

36 19/01/06(日)23:55:18 No.560214927

まあでもこっから死ぬほど辛そうだよね

37 19/01/07(月)00:02:35 No.560216892

まぁでも3人なら大丈夫でしょう

38 19/01/07(月)00:06:04 No.560217746

よかった…本当によかった…

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