ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
19/01/06(日)00:04:34 No.559950332
この部屋の中で平穏に過ごしていたいだけだった。 片や未だ各方面で世間を賑わせる伝説の平成アイドル、片や『もっとらん』どうしようもない一般人。 元々、こんな関係長く続くわけがなかったのだ。 楽しそうに仕事や、日々の雑多なことを話してくれる愛。 自分の『もっとらん』部分を笑いとばしてくれる愛。 目の前にいた偶像ではない本物の憧れ。 そのまま溶け合ってしまいたかった。そのまま彼女の一部にでもなってしまいたかった。 気持ち悪いと思われたかもしれない。一生秘めておくつもりだった想い。 なんでこんなことになってしまったのだろう。 あの日、愛に誘われるがままあのバーの門をくぐってしまってから? いやそもそもこの部屋からでてしまったから、『もっとらん』自分が欲張ってしまったから? 乾が現れたから?あの夜、バーで見た彼の姿、彼の言葉、あれは愛が好みそうなものだ。 では不釣り合い極まりない自分など二人の恋路の前ではただの道化、当て馬だったのではないか。 出会いそのものが間違いだったのではないか。
1 19/01/06(日)00:04:44 No.559950397
それこそ高校生のあの日、道に迷っていた愛と出会わなければよかった。 いやそれ以前、高校二年生のあの日トラックに跳ねられた時そのまま死んでいればよかった。 そうすれば、こんな悩みなど持たずにいられた。 以前と比べ少しだけ煤けた部屋。愛のいないさくらの部屋。 いつも愛のために料理や酒を乗せていたローテーブルの上には読み止しのゴシップ誌。 『深夜の焼肉デート/元アイアンフリルセンター水野愛熱愛発覚!お相手は佐賀ローカルアイドルプロデューサー!?』 踊る文字列はさくらの心にもはやただの諦観しかもたらさない。 いつから付き合っていたんだろう。いつから隠されていたんだろう。いつから騙されていたんだろう。 結局自分の告白に意味なんてなかった。それでも愛の答えを待つ意味は何なのだろう。 インターホンの音。 「こんばんはさくら。遊びに来たわ」 「愛ちゃん……と乾くん…」 ドアホンを確認すれば見知った愛、そして幸太郎の姿。 そうだ、いくら考えてもいつだって神様は唐突にさくらから宝物を取り上げるのだ。
2 19/01/06(日)00:04:57 No.559950453
唐津駅某マンション前、バンから降りる二名の男女。 男の両手には酒類を満載したビニール袋。 「買い過ぎじゃ、愛」 「別にこれくらい普通よ普通」 そういって目の前でステップを踏む愛は街灯の下、輝いて見えた。 いつもより浮かれて見える、というよりも浮かれているのだろう。 そうこうしているうちにエントランス前。愛がそのままさくらの部屋のインターホンを呼び出そうとする。 「なあ愛、お前が思いついたって車ん中で話しとった作戦」 「何?いまさら言ったってさくらの隣は譲ってあげないから」 「……そうじゃない」 「じゃあ何、あんたさっきの告白はなしだって言うの?」 「それこそありえん」 言ってから急に恥ずかしくなって幸太郎は頬に熱を感じた。 「だったらさ、失敗するわけがないじゃない」 同じように顔を赤くする愛の笑顔に敵わない、と幸太郎は思った。
3 19/01/06(日)00:05:07 No.559950497
「二人ともこがん時間にどないしたと?」 二人を部屋に通したさくらは努めて平静を装いお茶の準備を始める。 背を向けたさくらの表情は二人からはうかがえない。 どうしようもない居心地の悪さを幸太郎は感じるが愛は平然と酒やらつまみやらをテーブルの上に並べている。 「さっきまでこいつとデートしてたんだけどね。あ、牛や魚がおいしそうだったから今度さくらも一緒に行こ」 「デート…それじゃ二人はやっぱり付き合ってたと?」 「ついさっきからだけどね。しかも私から告白させるし」 顔を赤くしながら恨みがましく幸太郎をみる愛。 「そうやったんだ…おめでとう二人とも」 「それでねさくら…」 「じゃあお祝いせんとあかんね!冷蔵庫の中には…ろくなもんないけん私なんか買って…」 「ねえさくら」 「顔見せてよ」
4 19/01/06(日)00:05:52 No.559950685
言われ、こちらを見たさくらの顔はひたすらに空虚だった。 思わず何か言おうとした幸太郎を愛は片手で制する。 私に任せろと。 「今日来たのはさ、さくらに告白の返事をするため」 そうしてキッチンのさくらんほうへ視線を向ける。 「もうええよ。気持ち悪かったよねごめん。結局こうなるんよ。諦めればよかったのにバカだから希望なんて持って。もっとらんくせに欲張るから…」 怯え、傷つき愛の方を見ながら愛を見ずにさくらは言う。 「乾君もよかったとね。そういえば高校の頃からずっともっとったもん。活躍だって愛ちゃんから聞いとるよ?すごか人たちとキラキラ輝いて」 ただ己に言い聞かせるように。 「結局いつか愛ちゃんも私の前からいなくなるなんてわかっとったんよ…こんな関係長く続くわけがないことも。でも、それじゃあ捨てられて、情けで遊ばれとる方がずっと辛かとよ…」 そうして右手に握られた包丁には確かな意志。 「だからもう頑張りたくないけん」
5 19/01/06(日)00:07:05 No.559951065
愛の方を見ながら愛を見ていない。だからさくらは気付かなかった。 そのままさくらのやわらかい首筋を撫でる予定だった刃先はそのまま抑え込まれ、自分が愛に片腕で抱きとめられていたことも。 「ねえさくら、私あんたに告白の返事、してないでしょ?」 そうして、ようやくさくらは愛を見る。その温かい笑顔も。 「嬉しかった。私もさくらが大好き」 どれだけ切望しただろうか、彼女にそう言われるのを。 「この柔らかい身体を抱きしめるのも好きだし私がわがまま言った時仕方なさそうに笑うのが大好き。なにかあるとすぐどやんすーって慌て出すのもかわいいししっかりしてるようで肝心なとこヌけてるのも好き。さくらが私のこと大切にしてくれてたのも、さくらが私と一緒にいるために頑張ってくれてたのも全部全部嬉しい」 望み続けていた。 「でもごめんね、私はさくらと恋人にはなりたくないの」
6 19/01/06(日)00:07:56 No.559951295
しゅらば・・・
7 19/01/06(日)00:09:38 No.559951772
「それは…乾君がおるから?」 「あー…まああいつが恋人でさくらも恋人だったら浮気になっちゃうか。でもそうじゃない。あいつがいてもいなくても私はあんたと恋人にはなりたくない」 またはっきりと告げられ、さくらは心を曇らせる。 なまじ諦めた心に少しの希望を持たされただけにその仕打ちは残酷であった。 「あ、いちゃんは…私をどやんしたいの…」 「どやんしたいも、私たちは親友でしょ?」 そうしてあっけらかんとした笑顔で告げる。 「友達だからなんだって話せるしなんだって見せられる。恋人とか言ってなんでもかんでも縛りたくない。さくらは親友が恋人に劣ってると思う?」 「そりゃ…親友やと結婚とかできんし…」 「女同士でも結婚できないでしょ」 馬鹿ねーと愛が笑う。 「一緒に暮らしたいなら一緒にいてくれてもいいしさくらが望むならだいたいのことはしてあげられると思う。あ、幸太郎を貸せってのはなしね。あれはもう私のだから」
8 19/01/06(日)00:10:25 No.559951972
無駄に男らしいな、と幸太郎は思う。というより言われて外野に徹しているとはいえ自分の意志はどこにあるのだろう。 そうして眺めていればあー、でも結婚…結婚かあ…と愛が呟いている。 「今日ずっと考えてたんだけどね、婚姻届よりもはっきりとさくらと私の関係をはっきりさせてあげる」 車中で語っていたろくでもない作戦。 これからやらなくてはいけない山積みの課題を思い幸太郎は若干の後悔を覚えた。
9 19/01/06(日)00:10:59 [s] No.559952139
今までの su2811189.txt 今回で終わらせるつもりが長くなりました 明日には終わらせられるはず
10 19/01/06(日)00:12:17 No.559952483
とりあえず乾くんの評価が底値を割ったか…
11 19/01/06(日)00:12:27 No.559952530
テラァ…
12 19/01/06(日)00:15:49 No.559953517
色々終わったあと乾くん刺されない?大丈夫?
13 19/01/06(日)00:16:16 No.559953644
真面目に頑張ってきたのにどうしてこんな…
14 19/01/06(日)00:18:05 No.559954129
えええ…どうするの… 養子にするの?
15 19/01/06(日)00:18:35 No.559954247
真面目に頑張ったから大御所や愛ちゃんが釣れた さくらについては…うn
16 19/01/06(日)00:19:25 No.559954458
さらっと包丁持ちだしてるけどなんなの!?
17 19/01/06(日)00:20:28 No.559954741
どんな作戦なんだ…
18 19/01/06(日)00:20:38 No.559954780
目の前で死んでやろうとするとかスクイズ…
19 19/01/06(日)00:21:40 No.559955061
これちゃんとオチるのかな
20 19/01/06(日)00:23:19 No.559955512
気になる終わり方しやがって…
21 19/01/06(日)00:24:20 No.559955793
事故で死んだら死んだでゾンビィになるだけなのでは?
22 19/01/06(日)00:26:21 No.559956295
どやんすどやんす…
23 19/01/06(日)00:26:51 No.559956442
辛かったら逃げてもいいんですよ。。。
24 19/01/06(日)00:26:53 No.559956452
さくら→乾くんに対する好感度がアホほど低すぎてこれは…修羅場…
25 19/01/06(日)00:27:30 No.559956623
大御所…
26 19/01/06(日)00:28:43 No.559956920
思われ人の部屋にできたて彼氏連れ込んでさっぱり振って ここからの逆転の一手は全く思いつかねえ…どうなるんだ…
27 19/01/06(日)00:28:55 No.559956973
>えええ…どうするの… >養子にするの? どういうことだよ!?
28 19/01/06(日)00:29:17 No.559957065
愛ちゃんこれ大丈夫!?
29 19/01/06(日)00:29:23 No.559957084
乾君… どうなるのか楽しみ
30 19/01/06(日)00:30:22 No.559957319
物語を終わらせる時は書き上げてすぐお出しせずに一旦落ち着いてから読みなおしてみると書き残しの部分に気付いたりするでありんす 結末はハッピーでもバッドでも楽しみでありんすなぁ
31 19/01/06(日)00:30:55 No.559957471
>「ついさっきからだけどね。しかも私から告白させるし」 >顔を赤くしながら恨みがましく幸太郎をみる愛。 これをさくらの目の前で見せる!
32 19/01/06(日)00:33:47 No.559958232
なんたわ?乾くんは竿役にでもなるのか?
33 19/01/06(日)00:34:47 No.559958523
さらっと包丁が出てきてやべーぞ過ぎる
34 19/01/06(日)00:35:37 No.559958745
一体どうなるんだ…
35 19/01/06(日)00:36:24 No.559958956
もっとる愛ちゃんが全部力技でなんとかするしかなさそうだけどしかし拗れたなあ
36 19/01/06(日)00:38:01 No.559959353
包丁う!!!
37 19/01/06(日)00:39:51 No.559959875
こいつらずっとイチャイチャしよんな さくらの前で
38 19/01/06(日)00:43:06 No.559960690
愛ちゃんは強いなぁ
39 19/01/06(日)00:46:22 No.559961536
これさくらはん殺すか死んじゃうかするやつなんじゃ そうでもないとこの位置エネルギー落ち着かなくない?
40 19/01/06(日)00:48:47 No.559962126
さくらは縛る気ないけど乾は縛る気満々の愛ちゃん
41 19/01/06(日)00:57:59 No.559964299
愛ちゃんが告白した純子ちゃんにその恋は一過性のものと優しく諭されて静かに泣き出す漫画思い出した