ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
18/12/31(月)22:08:34 No.558585396
フランシュシュにとって貴重なオフの日。 昼過ぎの広間には、穏やかな時間が流れていた。 だがその日は、少し珍しい光景が広がっていた。 「さくらちゃんこれってどういう事ー?」 「んー、ここはどう教えたらよかかなー。えーっとね、数直線ってわかると?」 「数直線は分かるよー。線を引いて、こう!」 「よく勉強しとるとねーリリィちゃん。それを左にこうやって広げます」 「ふんふん」 源さくらが星川リリィに勉強を教えていた。 教科書とノートを広げ、鉛筆を握りしめたリリィに、何故か伊達メガネをかけたさくらが時折リリィから鉛筆を借りて書き示したりしながら丁寧に教えている。 2人とも学生服だからか、その光景は不思議と違和感のない物だった。 「…なんでお勉強なんかしよると?」 その様子を見た二階堂サキが、勉強をしている理由を尋ねる。 「ああサキちゃん。それはね…」
1 18/12/31(月)22:09:00 No.558585626
話は10分ほど前に遡る。 「さくらちゃん、勉強教えて」 教科書や問題集にノート、それに筆箱を手にしたリリィに勉強を教えるという依頼を受けた源さくらは、取り敢えず打診理由をリリィに聞いてみることにした。 「リリィちゃん、どうしてなのか聞いていい?」 「えーっとね、リリィが死んでから、もう何年か経ってるでしょ?」 「そう…やねえ」 さくらはリリィの没年月日を知っているわけではなかったが、リリィの父親の件に際して聞いた断片的な情報から、おそらくそうだろうと判断した。 「たつみに聞いたらね、リリィと同い年だった人は順調だったらもう大学生なんだって」 「そう聞いてね、リリィも皆に追いつく、じゃないけど、ずっとこのままって言うのも良くないかなって思ったんだ」
2 18/12/31(月)22:09:30 No.558585880
偉い。さくらは感激した。自分はリリィちゃんよりも年上なのにアイドルの事ばかり考えてて、今までそんな事思いもしなかった。 私の同級生はいまごろ27歳、そうなると皆働いてて、友達の中にももしかすると結婚して子供が生まれてる子も さくらは考えるのをやめた。 「だからたつみにお願いして、勉強道具を買ってもらったんだ。最初はたつみに勉強教えてって言ったんだけど、『中学までの勉強だったらさくらが一番出来るからさくらに教えてもらえ』って」 何で幸太郎さんそんな事言うんだろう、まるで中学までの私を知ってるみたい。さくらはそう不思議がったが、まあ変な人やけんと雑に片づけた。
3 18/12/31(月)22:09:47 No.558585994
「さくらちゃん、教えてくれる?」 「勿論!がばすごか高校に入学させてあげる!」 「やったー!でもリリィゾンビだから高校には入れないよさくらちゃん」 リリィはさくらが頼みを引き受けてくれてうれしそうな様子を見せた。 「あ、でもリリィちゃんこれ全部中学のやつだけど、大丈夫?小学6年生やったとよね?」 「大丈夫!リリィ芸能活動で忙しくても、学校の勉強はちゃんとやってたんだ!マミーも、勉強はちゃんとしないと駄目よって言ってたからね」 リリィは胸を張って答えた。
4 18/12/31(月)22:10:06 No.558586133
「…と、いうわけです」 さくらは先刻起こった事を一通りサキに伝えた。 「なるほどねえ…チンチクのくせに」 「チンチクじゃないもん、リリィだもん!」 リリィは頬を膨らませてサキの言葉を否定する。 「ま、あたしは勉強なんて全然わからんけん、傍観させてもらうわ」 「サキちゃんこれ中1の勉強…」 「勉強なんて出来なくても死なんばい」 「ええ…教育に悪…」 サキは義務教育の否定を堂々と行った後、何故か勉強風景を眺め始めた。 「わっちも、読み書きそろばんは一応出来るでありんすが、今の寺子屋は色々と違うみたいでありんすから、見物させてもらいんす」 先ほどの会話を横で聞いていたゆうぎりも、そういってキセル片手に流し目で見物を始める。
5 18/12/31(月)22:10:31 No.558586333
(ええ…何この状況) さくらは困惑したが、こうしている間にもリリィは真剣に問題を解いている。教える事に集中しなくては。 「リリィさん、さくらさん、勉強されているんですか?」 そう思った矢先に、紺野純子に話しかけられた。 「そうだよ!そういう純子ちゃんは、今日朝からいなかったけどどこ行ってたの?」 「巽さんに頼んでピアノを弾かせてもらっていました。趣味なんです、ピアノ」 「純子ちゃんピアノ弾けるとね~。今度聴かせて?」 さくらは、教える事に集中、と先ほど思った事を忘れ、純子に頼み事をした。 「いいですけど、それより勉強しなくて大丈夫ですか?」 「あ、そやった」 「もう、駄目じゃないですかさくらさん…懐かしいですね。アイドルになる前は、親戚の子供に勉強を教えたりしていました」 純子は穏やかな笑顔を浮かべながらそう述懐した。
6 18/12/31(月)22:10:53 No.558586491
「リリィさん、さくらさん、私も一緒に教えていいですか?カリキュラムも昔と違うでしょうし、私は突然質問された時に対応するのが苦手なので、さくらさんに時々補足する形になると思いますが」 「私はよかよ、純子ちゃん」 「リリィもいーよ!ありがとう純子ちゃん」 リリィは満面の笑みで純子に感謝を伝えた。 「チンチク、両手に華やな」 「チンチクじゃないもん!」 「もう、からかわんといて、サキちゃん」 その後も、勉強会は続いた。 真面目に勉強するリリィに、教えるさくらと純子。退屈そうにしているが不思議とその場を 「私も教えられるわよ。勉強」
7 18/12/31(月)22:11:26 No.558586699
「…愛ちゃん、大丈夫と?」 さくらは愛に疑いの目を向ける。最近の愛は、変である。頻繁にセクハラをし、怒られると謝罪文を作成する。その謝罪文の内容は毎度酷いもので、良くてセクハラの上塗り、悪くてセクハラ+侮辱+煽りといった次第である。 「…何よ、私がリリィの為に善意で動いちゃおかしいって言うわけ?」 「いや、愛ちゃん前科が」 「まあまあ、さくらさん、取り敢えず様子を見ましょう?」 「多分ろくな事しないけど、決めつけは良くないってリリィも思うよ?」 2人になだめられたさくらは、しぶしぶと愛の参加を認める。 ――20分経過―― 素行から獲得を疑問視する声の多かった水野選手だったが、今のところは大過なく勉強を教えている。 「なんでマイナスをマイナスでかけるとプラスになるの?」 「さっき数直線で足し引きを考えたでしょう?あれの応用で…」 アイドルグループのセンターを務めてきた所が大きいのだろう。指導する際に相手が何故分からないかを相手の立場で考える癖がついている。
8 18/12/31(月)22:11:50 No.558586871
そうだった。水野愛とは本来こういう人だった。そういえば、愛が奇行に走るようになったのは、さくらの生前の記憶が戻り、その際失ったゾンビになってからの記憶も戻って少ししてからだった。 彼女の大ファンであったさくらは、記憶が戻って以降どこかファン目線で愛と接してしまっていたところがあった。 愛はそれが嫌だったのかもしれない。もしかしたら、少し自分に非があったのかもとさくらは 「…これは例題が良くないわね。じゃあ私が問題を作るわ。問題、私がさくらのケツを揉んだ場合の刑期と罰金を推定しなさい」 「愛ちゃん?」 「正解は、迷惑防止条例、とみせかけての強制わいせつ罪、とみせかけての死体損壊罪、とみせかけてさくらは私に惚れてるから0年0円!でした~」 「水野愛さん」 水野愛は、この時あまりの恐怖に身動き一つ取れなかった。一瞬で、身体全体がそのことを理解した。 「何でいつもいつもあなたはそうやって。分かっているんですか?いえ、分からないでしょうね」 私はまた、死ぬと 「さ、さくらさん、暴力は!暴力は駄目です!」 必死で止める純子の声が、洋館に虚しく響く。
9 18/12/31(月)22:12:11 No.558587046
「死刑やから、ある意味刑期0年罰金0円ばい」 いつだかに巽に見せられたゾンビ映画の中のゾンビの末路みたいになり果ててしまった愛を前に、サキはそう呟く。 「ウ…ウア…アア」 「ええ…これ生きとると?」 水野愛だったものから聞こえる呻きに、流石のサキも困惑した。 その後も、勉強会は続いた。 真面目に勉強するリリィに、教えるさくらと純子。 「純子ちゃん、青ざめてるけどだいじょうぶ?」 「リリィさん、ありがとうございます。大丈夫です…うっ」 退屈そうにしているが不思議とその場を離れないサキ。キセル片手に物珍し気に眺めるゆうぎり。はなから昼寝している山田たえ。 ゾンビの集まる洋館は今日も平和だった。
10 18/12/31(月)22:12:57 [sage] No.558587365
終わり 愛ちゃんは本当にいつも何というかすまない
11 18/12/31(月)22:20:45 No.558591086
全てどやんすボディが惑わせる
12 18/12/31(月)22:21:30 No.558591406
愛ちゃんはさぁ…
13 18/12/31(月)22:23:16 No.558592218
せっかくちょっと評価持ち直したのに愛ちゃんはさぁ…
14 18/12/31(月)22:24:14 [sage] No.558592644
su2799769.txt 愛ちゃん蛇足でフォローしようと思ったけど微妙になんかいいところをかけなかった
15 18/12/31(月)22:26:55 No.558593799
私が強制わいせつ罪ならさくらはどやんす罪よ! ほらっ!ケツで罰金を支払いなさい!
16 18/12/31(月)22:27:12 No.558593924
野郎…闇を使いこなしてやがる…
17 18/12/31(月)22:33:00 No.558596422
水野愛。
18 18/12/31(月)22:35:46 No.558597847
巽はさぁ…油断してる人?
19 18/12/31(月)22:37:46 No.558598657
怒ってくれるうちはまだセーフ
20 18/12/31(月)22:51:12 No.558604901
大学編かあ…大学…ヤリサー…