18/12/31(月)22:06:02 「お母... のスレッド詳細
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18/12/31(月)22:06:02 No.558584180
「お母さん、ちょっとよかね?」 夕食も終わりひと心地ついた頃、天吹万梨阿は緊張した面持ちで母親である天吹麗子に告げた。 チキンレースの日に投げかけられた2号さんの言葉を頭の中で繰り返す。 今が、気合いを見せる時なんだ。 「……………なんの話と?」 万梨阿がこれから何を言おうとしてるのか察してるようで、麗子も娘と同じく表情は固いままだ。
1 18/12/31(月)22:07:29 No.558584871
「お母さん…改めて言うけん、よく聞いとって。私は怒羅美の八代目総長として、このチームを守りたい」 「いかんばい」 「なんで!?」 「万梨阿、お母さんは万梨阿にそんな危ない事してほしゅうなか!」 「…………」 「もう怒羅美もメンバーはほとんどおらんとちゃろ?チームの事はもうええけん、万梨阿の人生を生きてほしかばい!」 「…………!」 いつもの母ではない、そこには怒羅美初代総長・霧島麗子の気迫があった。 しかし万梨阿は決して目を逸らさず、正面から向き合った。
2 18/12/31(月)22:09:19 No.558585792
「確かに怒羅美には私含めて3人しかおらん…けど、お母さんやサキさんが守ってきた大事なチームやけん、怒羅美を未来に受け継いでいきたい!これは私ん意志や!」 テーブルをバンと叩く音が鳴り響いた。 「万梨阿…あんたチームを守るために何をしたか分かっとらすの!?命より大事なものなんてなかよ!!」 麗子が声を張り上げる。 しかし、言葉が進むにつれて、段々とその勢いは小さくなっていった。 「例えチームを守れても…死んでしまったら意味ないんよ!!アタシはサキが死んだ時、後を追ってやろうかとも思った!けどサキはそんな事喜ばん…だから死なずにいられたんよ」 最後は縋りつくほどの小さな声しか出せなかった。 「もう、これ以上アタシの大切な人がいなくなるのは耐えられん…おねがい、まりあ…!」 「それは分かっとる!お母さんの大切な友達がチキンレースで死んじゃった事も、私が同じ道を辿りかけたのも分かっとるんよ!」
3 18/12/31(月)22:09:39 No.558585934
「なら……」 「だから私は両方守るけん…チームも、自分の命も!!あの時、2号さんがいなかったら私はそのままチキンレースを挑んで死んどった…!お母さんに産んでもらって、2号さんに助けてもらった大切な命やけん…粗末にはしたくなか!」 「『……アタシは絶対に死なん!!!』」
4 18/12/31(月)22:10:20 No.558586250
万梨阿が目に涙を浮かべて啖呵を切ると、麗子は力が抜けたかのようにへなへなと座りこんでしまった。 「ちょ、お母さん…大丈夫と!?」 「……降参よ」 「へ……?」 「…アタシは怒羅美の初代総長やったとに、まさか実の娘に気合いで負けるとは思わんやったわ」 「お母さん……」 「万梨阿の好きにしんしゃい。ただし、アンタがまた命を粗末にするようなら、アタシが全力で殴ってやるけんね」 その言葉を聞いた瞬間、万梨阿の中で今まで我慢してたものがこみ上げる。 「……うん!分かった…ありがとう、おか…さん…」 堪えきれなかった涙が、頬を濡らしていく。 「もう万梨阿は怒羅美の総長なんやろ?なら泣いとっちゃいけんよ」 「言っとるおかあさんやって泣いとるやろぉ…!」 「アタシはもう引退しとるけん、泣いてもええの!」 お互いに涙でぐちゃぐちゃの顔になった天吹親子は、その後夜を徹してレディースの思い出を語り合った。
5 18/12/31(月)22:10:59 No.558586532
落ち着いた麗子は、寝室からある物を持ってきて万梨阿に手渡した。 「…これは、万梨阿が持っときんしゃい」 「……?」 「交通安全のお守り。中におる子が万梨阿を守ってくれるけん、単車に乗る時は必ず身につける事。お母さんとの約束」 「分かった…大事にすっけん」 万梨阿は、母親であり怒羅美初代総長である麗子が20年間持ち続けていたお守りを受け取ると、原付のキーに付けて笑いかけた。 「これから一緒にたくさん走って行くっちゃ!」
6 18/12/31(月)22:11:29 No.558586716
万梨阿が去ったあと、麗子は拳を握りしめ、若き日に散った親友の事を思い出していた。 一緒に走っちゃってくれんね、サキ。
7 18/12/31(月)22:12:14 No.558587059
フランシュシュ2号・二階堂サキは星川リリィに絡んで遊んでいた。 「オラちんちく、くすぐったかか?…って万梨阿じゃねーか」 見知った声に気が付いたサキが、ピンクの原付から降りた万梨阿を見やる。 「2号さん、お久しぶりです!」 「おう、久しぶり。…なんかずいぶん嬉しそうだけど何かあったとか?」 「実はこの間、お母さんを説得して怒羅美の総長として認められました!」 「おぉ~、よかったやん万梨阿!これで正式な怒羅美の八代目総長やん!」 「ありがとうございます!」 ふと、サキは背中の刺繍が変わってる事に気付いた。 「その新しいトップクも似合っとーな、…母ちゃんとしっかり向き合った勲章ばい!」 「はい!…『霧島万梨阿』の名前はもう捨てたとです。これからはちゃんと『天吹万梨阿』を背負っていくって決めました!」 「そっか、気合…見せたんだな。ようやった、万梨阿!」 万梨阿は少しはにかんだように笑った。
8 18/12/31(月)22:12:31 No.558587209
「またみんなでライブ見に行きます!」 「おう、来ねえとブッ殺すぞー!!」 サキに向かって手を振る万梨阿を見ながらリリィは呟く。 「あの子、サキちゃんのいたチームのリーダーなんだっけ?」 「おう、新しい怒羅美の総長ばい」 「リリィあの子に睨まれた事あるけど、『!?』も浮かんでこなかったし本当に大丈夫なのかなぁ…?」 不安そうな表情のリリィとは対照的に、サキは穏やかな笑みを浮かべて言った。
9 18/12/31(月)22:12:48 No.558587310
「大丈夫…万梨阿なら立派な総長になってくれると」 その視線は、原付のキーに付けられた水色のたまごっちを見据えていた。
10 18/12/31(月)22:13:15 [sage] No.558587482
以上です 平成最後の怪文書でありんす
11 18/12/31(月)22:15:15 No.558588502
よか!
12 18/12/31(月)22:16:53 No.558589334
爽やかでよか
13 18/12/31(月)22:17:21 No.558589539
よき9話アフターだ
14 18/12/31(月)22:19:09 No.558590392
よか…よか…
15 18/12/31(月)22:19:31 No.558590533
>平成最後の怪文書でありんす まだ平成は残っているぞ!
16 18/12/31(月)22:21:36 No.558591453
よか......
17 18/12/31(月)22:23:00 No.558592108
万梨阿ちゃんにまめっちの育て型を教わるサキちゃんが見たいでありんす
18 18/12/31(月)22:27:05 No.558593869
万年おやじっちだったサキちゃんが「!?」ってなるのいいよね
19 18/12/31(月)22:32:36 No.558596247
サキちゃんのたまごっちが受け継がれていく流れよか…
20 18/12/31(月)22:52:50 No.558605696
よかよ…
21 18/12/31(月)22:54:12 No.558606372
こういうのを待ってたでありんす…