虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

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18/12/31(月)01:45:56 柔らか... のスレッド詳細

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18/12/31(月)01:45:56 No.558348884

柔らかなオレンジ色の街灯が自称敏腕プロデューサー・巽幸太郎の足元を照らし出す。 年の暮れ、日の入りは早く、まだ19時にもなっていないというのに佐賀の空には星が瞬いていた。 幸太郎は階段に足をかけようとして、仮の住まいとなって久しいボロアパートを見上げる。 帰るべきはずの自室、だが足取りは重い。 「おかえりなんし、幸太郎はん」 「ああ、ただいま」 ロメロに餌をやっていたのだろう、ゾンビ5号・ゆうぎりが幸太郎の背後から声をかけた。 「こんなところにおりんしたら冷えますゆえ、はよ中にお入りなんし」 「……ああ、そうだな。お前もそうしろ」 カンカンと踏みしめるように階段を昇り、自室のドアをくぐって、カバンを雑に玄関に放り出す。 「お行儀が悪うござんすよ」 「ゆうぎり」 「あい」 「なんでお前俺の部屋におるんじゃい」

1 18/12/31(月)01:46:19 No.558348950

築82年のゾンビアパートを仮の拠点としたまま、フランシュシュは大晦日を翌日に控えていた。 半焼していた洋館も、試しに進捗を確認すると外観はほぼほぼ元通り。後は内装を残すのみといった様子だ。 となると、彼の懸念事項は一つ。彼の部屋へと迫りくるゾンビィ達から身を護る事である。 原因はわからないが、この部屋のレトロな雰囲気がそうさせるのか、ここに来たゾンビィは異常行動を取る。 唯一例外だったのは、ゾンビ6号・星川リリィ。それでも、普段より幾分距離が近かったように幸太郎は回想した。 今の所、有効な対策はこれといってない。 洋館へと生還するその時まで、ゾンビィ達を部屋に上げない事を徹底するしか、彼に残された道はないのだ。 「いけずなお人どすなぁ。幸太郎はんがそうしろとおっしゃったんでありんしょう」 「俺は自分の部屋に帰れっちゅーたんじゃーい!!」 ゆうぎりは既にこたつに体を差し込み、ころころと口元を押さえて笑っている。 「女一人、寒空の下に放り出すのがお好みでありんすか?」 「……上がりを出してやる。飲んだら帰れィ!」 強く出られぬ幸太郎の背後から、また笑い声が聞こえた。

2 18/12/31(月)01:46:28 No.558348974

こんな時間に!

3 18/12/31(月)01:46:35 No.558348997

男女がこたつに差し向かい、湯気の立つ茶をすすっている。 女が帯びているほど色気のある関係ではない。彼らはアイドルとプロデューサーであった。 湯呑から形の良い厚めの唇を放した女がほう、と熱い息を吐き出した。 「年内最後の出し物も、無事終わりんしたな」 「ああ、ここのところ順調順調で怖いくらいじゃい」 男もまた湯呑をこたつに置く。なんだかんだと騒いでみても、こたつで茶を飲めば落ち着くものだ。 「幸太郎はんは最近持っとりんせんな……しかし、あるぴの、の時はほんに肝を冷やしんした」 「まったくじゃい……さくらのヤツちょーっと持っとらんくらいでびーびー喚きおってからに」 女――ゆうぎりは男の口ぶりに抑えられなかったのか、またも口に手を当ててくすくすと笑いを漏らした。 「さっきから笑い過ぎだろお前……」 男――幸太郎も思わず素の反応を漏らす。 「いえ、すみんせん……相変わらずさくらはんには甘いんでありんすなぁ」 「……あの時は特別じゃい」

4 18/12/31(月)01:46:51 No.558349050

アルピノライブ当日どころか本番中まで、ゾンビ1号・源さくらの記憶は欠けていた。 フランシュシュの仲間達の思いが、幸太郎の熱が、観客の声援が、最後は彼女を蘇らせたのだろう。 「愛はんは信じて待つと言い切ってなさりんしたが……あのお人もほんに強くなりんした」 「自らも仲間とともに乗り越えたからこそ、さくらを信じる事ができたんだろう」 雷雨のサガロックフェス。やっと機能し始めたフランシュシュの姿を、幸太郎は今でもはっきりと思い出せる。 不意に、幸太郎は視線を感じた。その主に目を向ける。 「愛はんが……わっち達が信じていたのはさくらはんだけではありんせんよ」 「ロメロか」 ゆうぎりのような美人に半眼で睨めつけられるだけでいたたまれない。元より幸太郎は美人の相手が得意ではない。 目を閉じたゆうぎりがふう、と仰々しくため息をついた。 「わっち達は、幸太郎はんの事だって信じておりんす」

5 18/12/31(月)01:47:20 No.558349128

「はいィ?」 平手が飛ばないのはこたつを挟んでいるからであろう。そんな空気だ。 「幸太郎はん、野暮は好きんせん」 「野暮も丸ぼうろもあるかい。お前らゾンビィが、俺の敏腕っぷりに感謝するのはとォーぜんの事じゃろがい」 「……不器用さもここまで行くと筋金の入ったものでありんすなぁ」 「何とでも言えィ」 ゆうぎりが再びため息を吐き出す。今度は処置なし、といった様子が幸太郎にも伝わった。 こたつに顎を乗せて、見た目にも頑なさを表現する幸太郎。 そうしていると、正面のゆうぎりがおもむろに立ち上がり、幸太郎の方へ近づいてきた。 やはりきたか。 長年の経験から彼女は必ず平手打ちをするはずだ。それさえ乗り切れば部屋に帰るだろう。 ゆうぎりの言う信頼が嘘ではない事など、幸太郎はとっくに知っていた。それを自分は受け入れられない事も。 が、あえて姿勢を伸ばした幸太郎の頬は、いつまで経っても張られなかった。

6 18/12/31(月)01:47:43 No.558349185

代わりに、幸太郎の首筋、肩、肩甲骨の上辺りが順繰りに優しく揉みほぐされていく。 「おっほぉぉ……じゃない、何しとんじゃい」 思わず首を巡らせた幸太郎の僧帽筋を、ぐっと指圧して押さえるゆうぎりが悪戯っ気たっぷりに微笑む。 「あんまり固くなっていんすから、柔らかくしてござんしょうと思いんして」 「いや、い……おお……おぉお…………」 デスクワークに営業周り……幸太郎の身体に蓄積されている疲労の分、抵抗する力が奪われていく。 伝説の花魁の、伝説の按摩である。効かぬはずもない。 「幸太郎はん、なかなかいい体つきでありんすなぁ」 「鍛えとるか……そこそこそこそこ……ぐおぉ……」 いつの間にやら、幸太郎はうつ伏せに寝かされている。 その広い背中にまたがったゆうぎりが、少しずつ幸太郎の全身から緊張を追い出していった。

7 18/12/31(月)01:48:00 No.558349228

「いつもこれくらい素直になりなんし」 「いや……もう完敗でいいです……ハイ」 極楽とはこういう心地を言うのだろうとさえ幸太郎は思った。眠ってしまいそうだ。 自分は何を警戒していたんだったか……彼の思考能力は今やゾンビィ以下である。 ところが、ゆうぎりが姿勢を伸ばした瞬間、彼は思い出した。冷や汗がどっと噴出する。 「……ありがとう、ゆうぎり。もういいぞ」 「遠慮しなんすな、たまには甘えなんし」 大の男の全身マッサージなど誰がやっても重労働であろう、ゾンビィとはいえ、ゆうぎりの弾んだ吐息が感じられる。 「いや、ホンっ……トに感謝してますんで……」 その上、背中から腰から柔らかな感触が這い回る。何がどうなっているかは確認できないし、するべきではない。 すぐに離れなくては……と幸太郎が焦り始めたのを見計らったか、繊細な手が彼の臀部をつーっと撫でた。 「……ほぐす必要がありんすなぁ」 蜘蛛の巣にかかった獲物とは、きっとこういうものなのだろう。幸太郎は戦慄した。

8 18/12/31(月)01:48:33 No.558349318

「ちょっあの、あっ」 「大丈夫、大人しくしなんし。きっちりほぐしんしょう」 暴れようにも始まる前から幸太郎は馬乗りどころか制圧体勢である。身体検査を受けるには最適な姿勢だろう。 いくら彼が鍛えているとはいえ、ここからゾンビィを一人跳ね飛ばして脱出するのは非現実的と言えた。 年貢の納め時か、年末だもんな。 幸太郎の思考が諦めに支配されかける。脳裏に浮かぶのはいつか見た笑顔。 一瞬血液が沸騰したような感覚があり、さっきまでの諦観が払拭される。幸太郎は何か叫ぼうとした。 その瞬間、彼の目の前の畳がパカっと上がり、そこからゾンビ4号・紺野純子がにょきっと顔を出した。 「あっ……」 目が合ったそのまま、困り眉の純子は畳の下へと消えていった。 幸太郎は純子に感謝しながら声の限り、 「何しとんじゃいこの出歯亀ゾンビィー!!!」と叫ぶ事ができたわけである。 そしてなんとなく、次は本当にヤバいんじゃないかという悪寒にさいなまれるのだった。

9 18/12/31(月)01:48:35 No.558349322

何でここ数日ゆう幸ブースト掛かってるの!?

10 18/12/31(月)01:49:42 No.558349539

きのこ!

11 18/12/31(月)01:50:57 No.558349789

su2797738.txt su2797739.txt su2797740.txt su2797741.txt 前回までのボロアパート 後1回半くらい

12 18/12/31(月)01:51:11 No.558349827

抱きなんし!

13 18/12/31(月)01:51:24 No.558349864

わっちはいいと思う

14 18/12/31(月)01:52:23 No.558350032

よか…

15 18/12/31(月)01:53:25 No.558350183

よか…

16 18/12/31(月)01:54:36 No.558350368

巽―!ゆうぎりを抱けーっ!

17 18/12/31(月)01:59:03 No.558351032

抱け―!

18 18/12/31(月)01:59:27 No.558351082

こんな時間に来やがって!ありがとう!!

19 18/12/31(月)02:01:09 No.558351354

最近の徐福さんただの気ぶり爺過ぎる

20 18/12/31(月)02:02:31 No.558351535

立ったのか 立ったんだな

21 18/12/31(月)02:05:01 No.558351918

このシリーズ好き!!

22 18/12/31(月)02:07:10 No.558352255

そしてトリはさくらはんか…

23 18/12/31(月)02:13:49 No.558353258

巽!男を見せろ!許可するから!!

24 18/12/31(月)02:16:00 No.558353627

床下開通してる…

25 18/12/31(月)02:16:44 No.558353740

きのこなにしてんの…

26 18/12/31(月)02:21:19 No.558354327

賃貸を改造したらあかんでしょーがこの昭和マタンゴ

27 18/12/31(月)02:22:26 No.558354470

サキさんが言ってました。。。「バレなきゃセーフや」と

28 18/12/31(月)02:32:08 No.558355832

>その瞬間、彼の目の前の畳がパカっと上がり、そこからゾンビ4号・紺野純子がにょきっと顔を出した。 キノコが生えててダメだった

29 18/12/31(月)02:56:40 No.558358277

純子さぁ...DIYの領分超えとるやないかい...

30 18/12/31(月)02:58:45 No.558358448

トムが埋め立てられてしまいました。 ディック、ハリーの掘削を続けます。

31 18/12/31(月)03:07:47 No.558359254

上の部屋で巽さんが何をしているのか 私気になります!

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