虹裏img歴史資料館

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18/12/31(月)00:22:28 テレビ... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1546183348473.png 18/12/31(月)00:22:28 No.558327339

テレビ、机、椅子、冷蔵庫、食器棚…相変わらず、生活に必要なもの以外が無い部屋だ。必ずしも生活に必要の無い物と言えば、食器棚の上にある写真立てくらいだろうか。 久しぶりにこの部屋を訪れた乾妙子(たえこ)は、部屋を見渡してそう思った。 「かわいい」を第一とするこの部屋の主は、長い時間を過ごす寝室や仕事部屋である書斎以外の部屋にはその部屋の用途以外の物をあまり置かない。 美少女と形容しても遜色のない外見とは似合わない、ある種無骨と言ってもいい合理性の持ち主なのだろうか。 妙子がキッチンの方に目を向けると、部屋の主である正雄がキッチンでカチャカチャと紅茶を入れていた。 ああもキッチンに比べ身長が低いと紅茶を立てるだけでも大変なのではないか、と妙子は思った。キッチンの高さと彼の胸の高さはおおよそ一致していた。

1 18/12/31(月)00:22:58 No.558327530

久方ぶりに訪れると、色々と気付く事がある。何しろ数年は訪れていなかったのだ。 確か来なくなり始めたのは中学生になったあたりからで、きっかけは…何だっただろうか。 まだ幼い頃は、頻繁にこの部屋に訪れていた。当時は母の事も、父の事も良く思っていなかった一方で、このおじさんの事は好きだった。 物知りで、色々な昔話をしてくれて、優しくて…。 「妙子ちゃん、紅茶出来たよ」 純子ちゃんから貰った紅茶があるんだよねーと言って紅茶を入れていた正雄は、入れ終わると妙子の前にことりと紅茶の入ったティーカップを置いた。 妙子は紅茶から香るいい匂いを認めると、彼女のチャームポイントである切れ長の目を少し緩める。 「いただきます」 枝毛の一本も見当たらない黒のロングヘアに、全てのボタンをきっちり留めている学生服。身なりから受ける印象そのままに、妙子は行儀よく紅茶を口に入れる。 美味しい。彼の繊細で、他人をよく気遣う所が紅茶にも良く表れている。器用で、努力家でもある彼ならば、それらの特性が活きる職業ならば大抵は大成したのではないか。 例えば、パティシエとか…。

2 18/12/31(月)00:23:41 No.558327730

「どう?妙子ちゃん、美味しい?」 一人の世界に入りかけた妙子は、いつの間にか正対する椅子に座っていた正雄の問いかけで現実に引き戻される。 「美味しいですよ」 「それは良かった。純子ちゃんに入れ方も教えてもらったんだけど、自分以外に入れるのは初めてだからね」 「ですけど、お砂糖がちょっと多いのではないですか?お体に良くないですよ」 「妙子ちゃんは真面目だねぇ」 正雄は少し苦笑いをしてから、再び妙子に問いかける。 「それで、今日は何の用件で来たのかな?」 「…正雄さん、私たちのコーチになるらしいですね」 耳が早いねえとまたも苦笑いする正雄に、妙子は畳みかける。 「お母さん達が悪巧みをしているのはいつもの事です。でもなんで、正雄さんなんですか?」

3 18/12/31(月)00:24:05 No.558327858

「んー、まあムーンライトの皆はフランシュシュの皆と比べると全体的に身長が高いから、かわいいよりカッコいいの方が良いかもしれないけど、おじさんの得意なかわいいもアイドルとして身に着けて損はないと思うよ」 「はぐらかしていますね」 「…あんまり妙子ちゃんの言いたい事が分ってないからね」 彼にしては珍しい、要点を催促する言葉。 「私が言いたいのは、正雄さんじゃないと駄目なのかって事です。仕事もありますし、忙しいでしょう」 「忙しいのはおじさんだけじゃないし、今まであんまり出来る事なかったからねえ。受験はやった事ないからよくわからないし、見た目がこうだし皆の血縁者じゃないから学校との交渉とかにも向かないし」 「だから、やっと役に立てて嬉しいよ」 違う、そうじゃない、私をここまで来させたのは。 「納得してもらえた?勿論嫌だったら誰かに代わってもらうけど」 「…嫌じゃ無いです。正雄さんに指導してもらえること自体はとてもうれしいです。でも」 「でも?」

4 18/12/31(月)00:24:22 No.558327934

「私は、正雄さんが、私達の為に自分の時間を犠牲にしているんじゃないかって、お母さんでもお父さんでも無いのにこんなに良くしてもらって」 正雄を除くフランシュシュメンバーが妊娠した事で活動が停止し、正雄がフランシュシュ以外の仕事でも生計を立てる為に翻訳家の勉強を始めた時、正雄は13歳だった。 それから数年で尋常ならざる努力と才覚で能力もコネもない所から自分の食い扶持を稼げるようになって以後今に至るまで、正雄は一貫して乾家に尽くしている。 経済的な支援、子供達の世話、それ以外でも人手が必要なら手伝った。今の妙子達と変わらない年齢の頃には、近所の優しい正雄おじさんとして振舞っていたのだ。 妙子はいつからか、自分達が生まれたせいで彼が犠牲にしたものは大きいのではないかと考えるようになった。 「そんなことないんだけどなあ」 そんな事は無いという言葉だけで妙子が納得してくれなさそうな事に、正雄は少しため息をつきそうになった。

5 18/12/31(月)00:24:58 No.558328105

「…おじさんはね、大人になりたくなかったんだ。この姿は、まあその呪いみたいなものかもね」 今でもかわいいの好きだからあんま呪いになってないけどね、と正雄は補足を入れる。 「でもね、妙子ちゃんたちが生まれて、おじさんも大人にならなきゃ、と思ったんだ」 「皆に見られて恥ずかしくない、おじさんのお父さんお母さんにも胸を張れる大人にね」 「大人って何なのか、最初は全然わからなくて、ただ頑張ってみたりもしたけれど、最近は何となくわかってきた…かもしれない。やっぱりわかんないかも」 正雄は笑って誤魔化してみた。空気が改善しないので再び真剣な顔に戻す。 「だから、上手く言えないけど、おじさんのやってる事は全部おじさんがやりたくてやってる事なんだよね。だから妙子ちゃんがそんな事気にする必要ないよ」 「それで、正雄さんは幸せだって言うんですか」 「幸せだよ」 正雄は妙子の問いに間髪入れずに答える。 「…正雄さんの言いたい事は何となくわかりました。でも、納得はしていません。やっぱり何かがおかしいと思います」 「うーん、ごめんねなんか」 「こちらこそ、長居してしまい申し訳ありません。今日のところは帰ります」

6 18/12/31(月)00:26:11 No.558328471

帰るという妙子の言に、正雄はほっと胸をなでおろす。 「今、やっと帰ってくれるって思いましたよね?」 「いやそんな事ないよ?妙子ちゃんまた遊びに来てね」 「……言いましたね。また来ます」 またこの問答をするのだろうか。正雄は顔がひきつってないか心配する。 そんな会話をしているところに、電話が鳴った。正雄が電話に出ると、相手は山田たえだった。 妙子の帰りが遅いので、心配してあちこちに電話をかけているらしい。妙子がいる事を告げると、幸太郎が車で迎えに来ることになった。 「妙子ちゃん、携帯の着信とか来てない?」 「…あっ、そういえば電源切ってました」 「お母さんに連絡は入れないと駄目だよー。これからたつみ迎えにくるって」 反省しているらしく、素直にはいと答える。年頃の少女らしいところもあるんだなあと正雄は思った。

7 18/12/31(月)00:26:53 No.558328685

「そういえば正雄さん、さっき私が来るまで仕事してたって言っていましたけど、あれ嘘ですよね?」 「どうしてかな」 「何となく分かるんですよ。私が来るまで運動していたでしょう」 「ばれちゃった?コーチやる為に少しは勘を取り戻さないとって思ってね」 「怪しい。何企んでいるのか知らないですけど、無理しないでくださいね」 手強い。少し油断したかな、と正雄は反省する。 妙子が帰ってから、正雄は「運動」を再開する。フランシュシュ活動再開の為の練習である。 「妙子ちゃん手強かったなー。まあ何とか帰ってくれたけど」 正雄が「大人」になるにあたって、無意識に封印した欲求が一つある 「小さい頃は割と何でも素直に聞いてくれたのに、大人になったのかなあ」 それが彼にとっての子供の象徴だったのか、激変する周囲の環境に対する防衛機制だったのか、今となっては分からない 「…なんだか今日は静かに感じる。テレビつけよ」 愛されたいがゆえに無理をして、死んでしまったこともあるのに

8 18/12/31(月)00:27:09 [sage] No.558328749

以上です

9 18/12/31(月)00:27:10 No.558328753

…まさおじ!

10 18/12/31(月)00:28:27 No.558329123

ムーンライト世界線でのリリィ…よかよね…

11 18/12/31(月)00:28:47 No.558329216

真相だけは知られてはならん…

12 18/12/31(月)00:33:30 [sage] No.558330443

この世界線の正雄って主人公じゃないので 全く理由は分からないけど正雄以外主軸で文章書けない俺が供給し続けても話いびつになるし反感買うかも という事で前回で終わりにする予定だったのですが 「一人称がおじさんの正雄はスケベなのでは」 というささやきがありそこだけ軽く書くつもりでした ゆるして

13 18/12/31(月)00:34:31 No.558330726

よかよか

14 18/12/31(月)00:34:32 No.558330727

そう…自分の親達がアイドルの格好をしてステージに上がるという地獄の様な光景を生み出す真相には… まあ見た目そのまんまなんだけど

15 18/12/31(月)00:35:48 No.558331119

兄妹全員が17年前の真相知れるのはいつになるかな…

16 18/12/31(月)00:40:34 No.558332306

>そう…自分の親達がアイドルの格好をしてステージに上がるという地獄の様な光景を生み出す真相には… >まあ見た目そのまんまなんだけど 自分たちの出番の前に来たら心が折れるわ

17 18/12/31(月)00:40:42 [sage] No.558332345

su2797584.txt 一応今までの置いとくね

18 18/12/31(月)00:41:19 No.558332518

あの伝説のグループが!

19 18/12/31(月)00:45:34 No.558333752

純子ちゃんで性癖は歪まないのね…

20 18/12/31(月)00:46:51 [sage] No.558334174

ごめん、歪む

21 18/12/31(月)00:47:45 No.558334508

たえちゃんもう普通に話せるんだな…いや身内だけに通じるのか

22 18/12/31(月)00:48:45 No.558334862

大丈夫?母ちゃん達の最高のステージ見て幸多の性癖やばいことにならない?

23 18/12/31(月)00:49:05 No.558334947

>たえちゃんもう普通に話せるんだな…いや身内だけに通じるのか たぶんちょっとオーバーリアクション気味の聾唖の人だと思う

24 18/12/31(月)00:56:07 No.558337228

スクールアイドルで西高救うんだったっけか

25 18/12/31(月)01:05:57 No.558339893

先代フランシュシュで形成された性癖…

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