18/12/28(金)22:05:12 「わか... のスレッド詳細
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18/12/28(金)22:05:12 No.557778135
「わからんなぁ・・・」 メンバーが寝静まった深夜の洋館。廊下を徘徊しながら二階堂サキはつぶやく。元来考え事の苦手な性格をしているため、悩むよりも行動するタイプであるのだが、今回はどうにも考え込んでしまっている様子であった。 そんなサキの耳にかすかな音が聞こえる。音のした方を見るとキッチンに明かりがついていた。ひょい、と扉から中を除くとそこには優雅な手つきでコーヒーをドリップしている巽幸太郎の姿。妙に絵になっているその姿に、サキは少しイラッとする。 「ん、サキか。こんな夜中まで起きとるとはな。この不良ゾンビィめ」 いつもなら食って掛かるサキだが今回は違っていた。 「・・・グラサン。ちっとツラ貸せよ」 頭をかきながらそう言ってきたサキに対し、幸太郎は無言のまま二杯目のコーヒーを淹れはじめるのだった。
1 18/12/28(金)22:05:42 No.557778244
「で、何の用じゃい」 洋館のベランダに呼び出された幸太郎は問いかける。サキは湯気を立てるコーヒーに口をつけないまま、ぽつりと口にした。 「なぁ・・・普通って何とや?」 あの時の鏡山での出来事以来、頭の片隅に引っかかっていた疑問だった。 「昔ツルんでた仲間がよ。結婚して子供育てて、それが普通のことやって言っとった。ああユメ叶えたとやな、とは思ったけん。・・・それを嬉しかとは思っても、羨ましいとは思えんかった」 「それがどうした。まさか悲しいでもいうのか」 「ハッ、そがんかことなかさ。ただ、ダチの根っこが分からんとは・・・ちかっと寂しかな」 普段はこんなことを考えるようなサキではないのだが、置いてきた過去と、過ぎ去った時間とを見せつけられ、心がざわついていたのだろう。 幸太郎はゆっくりとコーヒーを口につける。一瞬だけ白い息が立ち上り、消えた。
2 18/12/28(金)22:06:13 No.557778358
「お前が理解できないのは、おかしなことじゃない。人はそれぞれ心に己の世界を持っている。狼に育てられた子供は服を着ないのが『普通』になり、鳥に育てられたならば子供は卵から生まれるのが『普通』と思うだろう。家庭をもつことを『普通』と考えることも、一人で生きていくことを『普通』と考えることも、どちらも矛盾しない。・・・まぁブレーキの壊れたオンボロジェットコースターのような『普通』はそうそう居ないだろうが」 「・・・おいまてやコラ。最後の例えはアタシのことか。ブッ殺すぞ?」 無視できない台詞にサキは隣の幸太郎を見るが、その怒りはすぐに引っ込む。発した言葉とは裏腹に、サングラス越しに見える幸太郎の表情は真剣であったからだ。 「お前の『普通』は佐賀を救うため、そしてフランシュシュのために絶対必要なものだ」
3 18/12/28(金)22:06:46 No.557778508
すっ、と幸太郎の右手がサキの額に伸びていく。思わず見上げたサキの額に衝撃が走ったのは、幸太郎のデコピンが不意打ちで炸裂したためだった。 「いでっ!?」 「なーに似合わんセンチメンタルかましとんじゃい、この特攻(ぶっこみ)ゾンビィー! お前は何も考えずに、ウジウジする奴の尻を蹴っ飛ばすのが似合っとるんじゃい!」 「てめぇグラサン―――あちっ!?」 反射的に反撃しかけたサキだったが、右手のカップからこぼれた熱いコーヒーが手にかかり機を逸してしまう。カップを置いて振り返ったとき、幸太郎はすでに館へ通じる扉に手をかけていた。「逃がすか」とサキが追おうとしたとき、背中を向けたままの幸太郎が言う。 「これからも頼むぞ特攻隊長。・・・いや、リーダー」 サキの足は止まり、幸太郎は扉を閉めて去っていった。
4 18/12/28(金)22:07:09 No.557778630
振り上げた拳の先を見失いサキは憮然とするのだが、無意識に幸太郎の言葉を思い返す。回りくどい幸太郎の言葉すべてを理解できたわけではなかったが、一つだけ分かったことがある。お前はそのままで良いのだ、と幸太郎はそう言っていたのだ。 「・・・まぁいいか、それで」 すっぱりとそう決めて、サキは考えることをやめた。そうと決めたら行動は早い。さっさと部屋に戻ろうとしたとき、彼女は貰ったコーヒーを一杯も飲んでいないことに気づく。まだ熱の残る中身に口をつけて、サキは顔をしかめた。 「うぇ・・・苦すぎやろグラサン」 そういえば幸太郎も何も聞かなかったし、自分で何も入れなかった。甘めの味が好きなサキは苦い顔をして、牛乳でも入れようかと思ったが、ふと思い至る。 この味が幸太郎の『普通』か。そう思ったサキの口元は、何故か無意識にほころんだ。 「うっし、寝るか!」 力強くそう言うと、サキはカップの中身を勢いよく飲み干すのだった。
5 18/12/28(金)22:07:59 No.557778807
あっよかです…
6 18/12/28(金)22:08:08 No.557778840
あら素敵…
7 18/12/28(金)22:08:36 No.557778958
グラサンはそういうところズルいと思います
8 18/12/28(金)22:09:05 No.557779088
オトナの味を少しだけ理解したサキ…
9 18/12/28(金)22:09:07 No.557779095
あっ1000点です
10 18/12/28(金)22:09:39 No.557779231
こういう短くてだだ甘でもないのに心に残るのすごいと思う好き
11 18/12/28(金)22:11:35 No.557779696
あーよか…
12 18/12/28(金)22:11:59 No.557779811
ここまで素敵だと本編でこんなシーンあったような気がしてくる
13 18/12/28(金)22:12:36 No.557779976
馴れ初めって感じでよかっちゃない?
14 18/12/28(金)22:12:43 No.557780016
本編かな
15 18/12/28(金)22:12:51 No.557780049
粋なことしやがって…
16 18/12/28(金)22:13:55 No.557780327
今日は綺麗な怪文書が多いな… よかったいよかったい
17 18/12/28(金)22:14:01 No.557780354
もっとたくさん幸太郎の「普通」を覚えていくと良い…
18 18/12/28(金)22:15:20 No.557780728
よか…
19 18/12/28(金)22:16:25 No.557781045
本編の書き出しはずるいなあ
20 18/12/28(金)22:18:08 No.557781564
幸太郎の味を理解したあとの笑みがやーらしか…
21 18/12/28(金)22:20:12 No.557782146
あの後どんな人生歩んできたのグラサン…
22 18/12/28(金)22:21:29 No.557782516
キャラから空気から何まで原作エミュ精度高すぎないです?
23 18/12/28(金)22:22:07 No.557782699
綺麗だ・・・
24 18/12/28(金)22:24:46 No.557783447
グラサン!寝れん!って部屋に特攻しちゃうんでしょ!
25 18/12/28(金)22:25:07 No.557783555
(わっちもサキはんへの理解者が増えて鼻が高いどすえ…)
26 18/12/28(金)22:27:22 No.557784282
公式ノベライズはこういうヤツの総集編でいいと思います
27 18/12/28(金)22:28:43 No.557784661
だが幸太郎も普通を投げ捨てた男であることを忘れてはならない サキへと投げかける言葉は全て体験に基づいている
28 18/12/28(金)22:32:23 No.557785805
フランシュシュはみんな普通じゃないのが普通なんだ ここが居場所だ…
29 18/12/28(金)22:33:06 No.557786004
甘めの味が好きなのいい…
30 18/12/28(金)22:37:54 No.557787471
よか…しか言えん
31 18/12/28(金)22:39:48 No.557788027
あっ眠れなくなります
32 18/12/28(金)22:41:27 No.557788583
珈琲のせいで眠れないのかグラサンのことを考えていて眠れないのか もちろん珈琲のせいに決まっとる! って言い張るのがサキちゃんだ
33 18/12/28(金)22:42:08 No.557788783
サキちゃんは可愛いスレ画と甘々怪文書のセットをまき散らさないと気が済まないゾンビィなの?
34 18/12/28(金)22:46:01 No.557789982
お前くらいの年頃の女子が異性を気にするのは『普通』のことだ まあお前はゾンビィだがな!
35 18/12/28(金)22:51:03 No.557791369
>サキちゃんは可愛いスレ画と甘々怪文書のセットをまき散らさないと気が済まないゾンビィなの? 問題でも?
36 18/12/28(金)22:53:53 No.557792243
がばやーらしか…
37 18/12/28(金)22:55:50 No.557792820
>グラサン!寝れん!って部屋に特攻しちゃうんでしょ! ゾンビィは吸収がはえーのにコーヒー飲むから!