虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。

  • iOSアプリ 虹ぶら AppStoreで無料配布中
  • 夏の暑... のスレッド詳細

    削除依頼やバグ報告はメールフォームにお願いします。 個人情報,名誉毀損,侵害等について積極的に削除しますので、メールフォームより該当URLをご連絡いただけると助かります

    18/12/28(金)21:46:47 No.557773596

    夏の暑い日の事でした。私、紺野純子は巽さんの運転する車の助手席に座りある場所を目指していました。その場所とは………私の生まれ育った町。芸能界入りしてからはほとんど縁がなくなっているので来るのは大体40年ぶりでしょうか。 「………この住所で間違いはないな?純子」 「はい」 「見に行くならばそれなりの覚悟はした方がいい。お前が何を見てどう感じようと俺は責任は持たんぞ」 「わかってます、私が望んだ事ですから…」 事の発端は一週間前でしょうか。佐賀から離れた場所でコンサートがあり、そのゲストでフランシュシュが呼ばれたんです。そして場所を地図で調べていたら…確かにあったんです。とても見覚えのある地名が。私が暮らしていた頃は町だったのが隣の市の一部になってたり、最寄り駅の国電が何か違う名前の電車になってたり…時代の流れで変わったところは色々ありますが、そこは間違いなく私のふるさとでした。ダメ元で巽さんにお願いしたところ、短時間なら構わないと答えてくれました。前の巽さんなら有り得なかった返事です。

    1 18/12/28(金)21:47:13 No.557773681

    私は車を降りて、かつての帰り道の前に来てみました。目の前にあったのは…巨大な真新しいタワーマンションでした。私の記憶にあるものは綺麗さっぱり無くなっており、本当にここだったのか。巽さんに騙されたんじゃないのかと思う程でした。ですが40年近く前ですもの。無理もありません。 「………純子ちゃん?」 目の前の建物と手に持った地図を交互に見ながら呆気に取られていると後ろから私を呼ぶ声がしました。振り向いた先には自転車を押しているおばさんが一人、目を丸くして立っていました。 「生きてたのね純子ちゃん……私よ!わかる?ほら高校の時同じクラスだった…」 おばさんは私に迫って問うてきました。ですが正体をばらしてしまうわけにはいきません。 「すみません……人違いだと思います」 「……そうよね……もう35年も前だもの。生きてたら今頃おばさんよ…でも貴女そっくりね!初対面で言うのも難だけどあの頃の純子ちゃんにそっくり!髪型まで似てるわ!」 ここで私はおばさんに同情してしまったのか、つい白々しい嘘をついてしまいました。

    2 18/12/28(金)21:47:59 No.557773887

    「あの…実は私、紺野純子の遠い親戚なんです。私の祖母の双子の妹の娘さんだそうで…」 「あらそうなの?なら似てるのも無理ないわね!貴女どこから来たの?」 「佐賀って…わかります?」 「あらあら、そんな遠いところからまあ…そうだ、折角だから純子ちゃんに会いに行ったら?あの子もご両親もきっと喜ぶわ!」 「えっ…待ってくださいそれは…!」 「遠慮しないの!ほら歩いて5分くらいのとこだから案内したげるわ!」 「ええええええ!!?」 私はおばさんになす術もなく引っ張られていきました。腕が千切れなくて本当によかったです。 「ここ…ですか?」 おばさんに連れて来られたのはタワーマンションから歩いて5分くらいの墓地でした。バケツに柄杓と水を入れて私はおばさんについていきます。自分自身のお墓参りをするなんてなんだか変な気分です。でも問題はこの後、お父さんとお母さんになんて顔をすればいいんでしょう。それに巽さんにも迷惑をかけてしまいます。ごめんなさい。純子はやっぱり駄目な子です。 「ほら、ここよ」

    3 18/12/28(金)21:48:25 No.557774002

    おばさんに案内された場所には私の名前が刻まれたお墓が立っていました。死んでから35年経つのに墓石は綺麗に磨かれており、周りに雑草も生えてません。きっとおばさんか他の誰かが手入れをしてくれているのでしょう。そう思うと少し嬉しくなりました。あれを見るまでは…………

    4 18/12/28(金)21:50:17 No.557774494

    墓石の私の名前の隣に確かにそれは刻まれていました。 お父さんとお母さんの名前。 亡くなったのはほんの数年前。でも私はまだ巽さんによって蘇ってはいない頃です。多分。 「あの、おばさん…」 「どうしたの?」 「しばらく此処で一人にして貰っていいですか…?折角来たのにお参りもしないのは難ですから…」 「そう?じゃあ私は行くわね。熱中症には気を付けなさいよ~」 「ありがとうございます」 …ごめんなさいおばさん。貴女の事はとてもよく知っています。学生時代の親友だったんですから忘れるはずがありません。本当は話したい事がたくさんあります。でも、それは出来ません。どうしても出来ないんです。それをやったら貴女にも私にも悲しい結果にしかならないだろうから。

    5 18/12/28(金)21:50:44 No.557774593

    そして目の前で眠るお父さん、お母さん、ごめんなさい。私が飛行機事故で死んでから、ずっと辛かったでしょう。悲しかったでしょう。天国に行った時もやっと私に会えると思った事でしょう。でも純子はもう天国にはいません。純子はここにいます。死んでますが生きてるんです。おかしいでしょう。再び死ぬときは多分地獄へ行くと思います。もう会えないと思うと胸が張り裂けそうです。お父さんも、お母さんも、きっと同じでしょう。たとえ老いさばらえていたとしても、せめて生きて会いたかった。元気な姿を見たかった。もう一度声を聞きたかった…………! ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。 夏の日差しに照らされた何もかも変わってしまった私のふるさとで、私は両親の名前が刻まれた小さな石の前で泣き崩れていました。

    6 18/12/28(金)21:51:09 No.557774728

    「………気は済んだか?」 「巽さん……?」 「最初はあまり乗るつもりは無かったんだがな…あの時のお前の目は過去に向き合う覚悟があった。今のお前もそんな目をしている。だから連れてきたのさ」 巽さんは柄杓でお墓に優しく水をかけて手を合わせると、再び私に向かって言いました。 「俺を呪いたければいくらでも呪うがいい。ただしそうした所で過去に起きた事実は変わることはない。だが純子、お前はそれでも這い上がって前に進むと俺は信じている。かけがえのない今の仲間と一緒にな…」 「巽さん…」 私は頭の奥で燻っていたわだかまりが消えたような気がしました。お父さん、お母さん、私はもう飛行機事故で死んだ紺野純子ではありません。フランシュシュのゾンビィ4号。紺野純子です。もう会えないのは寂しいですが、空の向こうで見守っていてください。私も、みんなも、巽さんも。

    7 18/12/28(金)21:52:34 No.557775080

    よか…

    8 18/12/28(金)21:53:07 No.557775214

    よかったい…

    9 18/12/28(金)21:54:17 No.557775515

    年代的に一番ギャップの大きいのは純子なのかもな… ゆうぎりくらい離れていたらむしろサッパリ割り切れるだろうけど

    10 18/12/28(金)21:55:09 No.557775732

    ひさびさに真面目なやつ見れた…

    11 18/12/28(金)21:55:47 No.557775877

    よか…

    12 18/12/28(金)21:57:11 No.557776217

    しんみりよか…

    13 18/12/28(金)21:59:49 No.557776804

    純子は強い女だ

    14 18/12/28(金)22:00:13 [s] No.557776916

    純子ちゃんの生まれ故郷ってどこだろうね 過去作の純愛 su2792975.txt 過去作その他 su2792981.txt

    15 18/12/28(金)22:01:58 No.557777351

    よかったいよかったいよかったい

    16 18/12/28(金)22:02:29 No.557777461

    久しぶりに純子の綺麗な怪文書を見た気がする…

    17 18/12/28(金)22:18:50 No.557781766

    いやーすばらし…140純子ポイントです

    18 18/12/28(金)22:19:31 No.557781976

    田舎の限界集落出身ならそれはそれで 「生まれ故郷がダム底に沈んでいた」ネタが書けるがどうも純子ちゃんは都会育ちなっぽい感じする

    19 18/12/28(金)22:21:26 No.557782507

    なんか涙ぐんできちゃったじゃん…

    20 18/12/28(金)22:22:15 No.557782731

    そうそうこういうのでいいんだよこういうので

    21 18/12/28(金)22:40:29 No.557788237

    よか…

    22 18/12/28(金)22:42:09 No.557788785

    浦島純子