ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
18/12/28(金)00:21:35 No.557605058
天にも昇る心地だった。 愛と二人での外食。 仕事終わりに愛と待ち合わせるというのも初めての経験だった。 変装のつもりだろうか大きな黒縁の眼鏡にキャスケット帽もよく似合っていたし普段見れない新鮮なものだ。周囲にこれだけ人がいても自分だけを見てくれているという感覚は仄暗い快感をさくらに覚えさせた。 そのまま彼女にエスコートされるがまま訪れたのは一件のイタリアンダイニング。 古民家を回想したという店内、創意を凝らした料理の数々、デザートのティラミスを口に含む頃には当初抱いていた不安にざわついていた心も平穏を取り戻していた。 「ん~~~このティラミス美味しい~」 「よかったさくらに気に入ってもらえて」 微笑んで愛は食後のコーヒーを一口。苦かったのか顔をしかめて砂糖を追加。 「愛ちゃんよくこげんか店知っとったね」 「この前どっかのプロデューサーがおすすめしててね。いい店でよかったわ」 そうしてまた笑顔をこぼす愛にさくらはまた胸が温かくなるのを感じる。 ふと時計を見た愛がさくらを見る。 「ねえさくら、このあともう一軒大丈夫?」
1 18/12/28(金)00:21:47 No.557605107
小洒落た装飾の店だった。 レトロな吊り看板には《Bar New Jofuku》の文字。 愛に続き一歩踏み出し、しかしてその木製の扉を前に何か直観的なものがさくらの全身を走った。 この店に入ってはいけない。ここにいてはいけない。今日一日の幸福はここで全て清算される。 「どうしたのさくら?真っ青な顔して」 「あ、愛ちゃんここ…」 入りたくない、そう言いかけて思いとどまる。愛との外食への不安も取り越し苦労だった。自分は少しネガティブになりすぎているのではないか。なによりせっかく愛がエスコートしてくれているのだ。 「大丈夫?体調悪いなら…」 「ううん大丈夫。こういう店初めてでちょっと緊張しただけやけん…」 まだ少し心配そうな顔をしている愛に笑顔で返すと自分から重い木製の扉を押し開く。 「ああいらっしゃい、と嬢ちゃんか。連れがいるたぁ珍しい」 カウンターの向こうから低く太い声。グラスを磨く老齢の男が少しく砕けた感じで声をかけてきた。 愛の方を見ればなにやら店内を見渡し「あれ?あいつまだ来てないの?」となにやらぶつぶつ言っている。 「ごめんねさくら、ちょっと外見てくる」
2 18/12/28(金)00:22:01 No.557605154
そういうと愛は店外へ出ていってしまった。 さくらが所在なさ気にしているとカウンターの向こうでも、 「ああ俺だ。は?クレーマー?そんなの手前等で……わかったよすぐ行くから待ってろ」 電話を取り、少し困ったようにこちらを見る。 「悪いな。少し野暮用が出来た。嬢ちゃんの様子だとあいつも来るみたいだしまあ楽にしててくれ」 そうしてそのまま店の外へ出ていってしまう。 入れ替わりに戻ってくる愛。 「さっきマスターとすれ違ったけどどうしたの?」 マスターと言われ、少し考え先ほどの男のことだろうとさくらは思い至る。 「なんか用事が出来たみたい…それより愛ちゃん、ここで誰かと待ち合わせでもしてたと?」 「ん?ああそれなんだけどね」 「なんじゃい愛、サプライズだのなんだの」 そうして登場した姿にさくらはなるほど、自分の予感の正体を理解した。 「乾…くん……」 「源………」
3 18/12/28(金)00:22:43 No.557605325
来たか…
4 18/12/28(金)00:24:27 No.557605734
ついに・・・
5 18/12/28(金)00:24:46 No.557605820
時間が止まったようだった。 さくらとは先日愛を送迎した時に再会したきり。 なにやらニタニタしている愛を見るに彼女が余計な気を利かせたのは間違いない。 「愛ちゃんが、乾君を呼んだと?」 意外にも沈黙を破ったのはさくらだった。 「ああ、うん。二人が同級生だったって聞いてそれで…」 なにかただならぬ空気を感じ取ったのか愛が少し言いよどむ。 わかった、わかったとよ、とうわごとのようにさくらが呟く。 そうして愛に向き直る。 「ねえ、愛ちゃんにとって私は何なんかな…」 「それは、親友に決まってるでしょ」 「じゃあ乾君は愛ちゃんの何なん?」 「ちょっと待ってさくら、あんたなんか勘違いしてない?こいつはただの仕事仲間よ」 「嘘つかんでもよかよ…愛ちゃんが乾君の話するの楽しそうだったけん色々疎い私にもこんくらいわかる」
6 18/12/28(金)00:24:57 No.557605853
気付けば頬が濡れていた。 ああダメだ。こんなことしても逃がしてしまうだけなのに。壊してしまうだけなのに。 「それでも、愛ちゃんが大事やけん乾くんのことだって愛ちゃんが幸せなら我慢しようと思っとった…私が少しでも愛ちゃんの中にいればそれでいいと思っとった。だけどだけど今日くらい、今日くらい私のために全部くれたって、少しくらい夢見せてくれたって、こんなひどか……」 「だからそれ勘違い…」 「乾君と付き合っとるならはっきり言ったらよか!乾君もはっきり言えばええんよ!愛ちゃんが自分のモノだって!持っとるくせに!持っとるくせに私から全部持って行って!」 幸太郎に向かった矛先はそのままに胸倉へ掴みかかる。 「私には愛ちゃんしかおらんけん、他に何ももっとらんのに…」 掴んだ力は勢いに反して弱弱しくその声も消え入りそうだ。 かつて救えず、そして今もまた壊れそうになっている想い人。 かつて彼女はこんなに小さかっただろうか。かつての彼女はここまで弱かっただろうか。
7 18/12/28(金)00:26:09 No.557606096
おなかいたい
8 18/12/28(金)00:27:50 No.557606478
これではだめだ。 こんな結果誰も望んではいない。 「源さくら!」 だから動かなくてはいけない。愛のためにも、さくらのためにも、他ならぬ自分のためにも その細い肩をつかむ。かつては反らすしかなかった目を見る。 こんなところで愛の特訓の成果が出るとは、少し笑みが漏れそうになっている自分に安堵し気合を込めて言い放つ 「俺は…お前を……」 「バーテン、参上」 そうした空気全てをぶち壊すようにカウンターの向こうにバーテンダーが現れた。 今までのsu2791622.txt
9 18/12/28(金)00:29:07 No.557606773
姐さん!?
10 18/12/28(金)00:29:13 No.557606796
徐福はさぁ…
11 18/12/28(金)00:30:22 No.557607026
クリフハンガー…
12 18/12/28(金)00:31:52 No.557607349
拗れて…拗れていく…
13 18/12/28(金)00:32:11 No.557607420
これどこに着地するんだ…
14 18/12/28(金)00:33:07 No.557607614
このあとが気になるとよ…
15 18/12/28(金)00:33:32 No.557607711
この時代に何事もなく現れる姐さんで駄目だった
16 18/12/28(金)00:34:01 No.557607797
さくらちゃんかわいいよね
17 18/12/28(金)00:34:11 No.557607837
幸太郎!(ボグシャァ お前も男なら雰囲気に気おされずに自分の本心を嬢ちゃんに伝えてやれよ!!
18 18/12/28(金)00:35:14 No.557608039
全員ビンタしていきそうなバーテンきたな…
19 18/12/28(金)00:35:14 No.557608041
これ現れたのバーテンだから姐さんだよね?
20 18/12/28(金)00:35:47 No.557608176
デウスエクスオイラン
21 18/12/28(金)00:36:14 No.557608267
あそっか 出て来るなら奥からじゃなくて外からか
22 18/12/28(金)00:37:16 No.557608468
魔法のビンタで拗れた糸を解きほぐしてくれるんだな
23 18/12/28(金)00:37:30 No.557608523
上げて落とす愛ちゃんは残酷だわ
24 18/12/28(金)00:37:59 No.557608621
でもここで俺はお前を見捨ててやらんしたら逆効果では?
25 18/12/28(金)00:38:01 No.557608631
>天にも昇る心地だった。 愛はん…
26 18/12/28(金)00:38:36 No.557608754
>でもここで俺はお前を見捨ててやらんしたら逆効果では? ふつうに告白するだけなんじゃない?
27 18/12/28(金)00:39:50 No.557609016
リリィより先に姐さんが出てきた?
28 18/12/28(金)00:40:35 No.557609162
姐さんがなぜ平成に!?
29 18/12/28(金)00:46:06 No.557610386
ビンタしたら平成の世にタイムスリップ
30 18/12/28(金)00:46:28 No.557610458
クレーマーって姐さんなんじゃ…
31 18/12/28(金)01:05:37 No.557614266
どうしてこんなことに。最近そんなことばかり考えている気がする 「こうしてお座敷で幸太郎はんのお相手するのも久しぶりな気がしんす」 包容力を感じさせる落ち着いた声。 いつもの《Bar New Jofuku》店内。いつもならやたら悪人顔でロックグラスを傾けている老齢の店主の姿は今はなく、代わりにカウンターに立つのはバーテン服を着込み髪をアップのお団子にまとめた佇まい。年の頃は19、20の女性。だが、身に纏うその雰囲気はやたら大人び老成している。 幸太郎はこの女が少し苦手だ。 「幸太郎はんはいつもの鍋島の冷でよろしおすか?それと、お連れのお二方は…」 隣に並ぶ愛とさくらを見れば二人ともその雰囲気に呑まれたのか固まっている。 「愛には適当にビールベースのものを、源は…酒ダメそうだな何かノンアルコールで果物を使ったのものでも見繕って…」 幸太郎が言い切る前に、愛の前にはシャンディガフが、さくらの前には苺を使ったシャーリー・テンプルが供されていた。 「幸太郎はん」 徳利とお猪口を並べながらあきれ返ったかのようにため息を一つ。 「連れの御仁の好みくらい把握しておくべきでありんす…」
32 18/12/28(金)01:06:03 No.557614327
「え、俺言ったよね?愛、俺言ったよね?」 「私もこの人の言うとおりだと思う」 なんたる不条理。平成の伝説ともあろう者が完全に流されている。 「ゆうぎりと申しんす。以後お頼みしておくんなんし」 「水野愛よ。こっちのかわいいのがさくら」 「あの、えと、源さくらです!よろしくお願いします!」 なにやら自己紹介し出した三人を横目にふてくされて幸太郎はぼやく。 「なんでお前がここにおるんじゃい。マスターは?」 「ああ、あん人なら庵の方で事故があったとかで急に飛び出して行かれんした」 言いながらいつの間にか幸太郎の手元に納められていた猪口に酒を注ぐ。
33 18/12/28(金)01:06:15 No.557614368
「三人が落ち着いてくれて安心しんした。感情的になっては収まることも収まらないものでありんす」 言いつつグラスを磨く姿はマスターより様になっている。 「ゆうぎりさんは、乾君とどういったご関係なんですか?随分と親しげに見えましたけど」 と、いきなりさくらが斬り込み幸太郎は酒を吹いた。 ゆうぎりは少しだけ目を見開くと、しかしすぐに微笑みに変え 「こちらで厄介になり始めてからまあ人前に出られるような姿ではありんせんしたから。幸太郎はんにはこうやって人前に出れるようになるまで世話になりんした。ねえ」 そういって長し目で幸太郎の方を見が無視。 何故話さなかったのかと愛の視線が痛い。
34 18/12/28(金)01:06:48 [s] No.557614465
明日あげれそうにないので書いてある分だけ
35 18/12/28(金)01:08:51 No.557614809
めっちゃ先が気になるところまでだ!
36 18/12/28(金)01:09:08 No.557614850
急に来た!
37 18/12/28(金)01:09:30 No.557614912
続きを。。。大御所を。。。
38 18/12/28(金)01:09:33 No.557614923
何したんだ…
39 18/12/28(金)01:13:10 No.557615528
>続きを。。。大御所を。。。 54歳は自重しようよ
40 18/12/28(金)01:13:27 No.557615578
明日見られないなんて…
41 18/12/28(金)01:17:26 No.557616213
ゆぎりんはどこでも強キャラ