虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

1 18/12/16(日)18:08:19 No.554975825

「すまんすまん。まあ、今度同じの買うてきてやんよ」 やれやれといった様子で軽く左右に頭を振るサキ。 このまるで反省の色がないどころか完全に開き直っているサキの態度がリリィの怒りに油を注ぎ、台所はあっという間に罵詈雑言がギャーギャーと飛び交う戦場と化した。 「ま、またはじまったと…」 台所から聴こえる喧噪に少し離れた場所で気付き、さくらは動揺していた。 人目を惹く鮮やかな赤い髪を揺らしつつ読んでいた歌詞カードを傍らに置くと、座っていた椅子から自らを奮い立たせるように勢い良く立ち上がる。その時、同年代女子の平均胸囲を大きく逸脱した豊満な胸部が服の下でその存在感を大きく主張し始めた。 閑話休題。普段であれば責任感の強い水野愛か、皆に姐と慕われている年長者のゆうぎりのどちらかが仲裁に入ることですぐに一時休戦状態になるのだが、今回はあいにくどちらも不運にも不在であった。 この場にはさくら以外おらず、必然的に今回の喧嘩の仲裁役はさくらがやるしかないのである。 「うーん、どやんしたらよかとかな…」 流石にすぐに割って入る勇気がないさくらは、恐る恐る台所へ近づいて遠巻きに観察を試みた。

2 18/12/16(日)18:08:45 No.554975966

「だから新しいの買うてきちゃるって言うとるやろうが！」 「リリィは今プリンが食べたいの！　出してよ！　今すぐに！」 「今すぐは無理やろ、子供か！」 「リリィは間違いなく子供でーす！　サキちゃんそんなことも見て分からないのぉ？」 「あん？　ぶっ殺すぞテメェ！」 実はこの手の衝突はそう珍しいことではなかった。これまでもリリィとサキははおやつを巡り、事あるごとに衝突を繰り返していたのだ。 持ち前の愛らしさを存分に発揮して、基本的に老若男女問わず幅広くウケが良いリリィ。ややがさつで配慮に欠け、他人にちょっかいを掛けて楽しむ小学生男子みたいな感性のサキ。 そんなサキは何故か特にリリィをからかいの標的にすることが多く、特におやつを奪うことが最も効果的な嫌がらせになると熟知しているようだとさくらは思った。 だが報復として今度はリリィもサキのおやつを奪う。奪い奪われ、そうして両者の争いは泥沼化の一途を辿り、現在進行形で戦争状態にあるのだ。 おやつに関してだけはリリィとサキは犬猿の仲。 さくらの中では二人の仲はそういうことになっている。

3 18/12/16(日)18:09:22 No.554976130

さくらがおろおろと見守る中、ふたりは更にヒートアップしていき口ではなく手が出るのももはや時間の問題かの様に思われた。 視線が慌ただしくリリィとサキとの間を行き来し、どやんすどやんすとさくらが焦る。もう飛び込むしか無いのか――。 そんな時、ようやく救世主がその場に現れた。 「お前ら何騒いどんのじゃーい！」 そこまでの大声では無いはずなのに何故かやかましく聞こえる声が、調停を告げる鐘の音の如くその場に響き渡る。 彼の声にリリィとサキが威嚇行動を中止して振り返り、さくらが救世主の到来に歓喜した。 お馴染みのサングラス姿で現れたのは、果たしてフランシュシュのプロデューサーである巽幸太郎であった。 「幸太郎さんナイスタイミングったい！　ほんとどやんしようかと思っとったとよ…！」 さくらは覗き込んでいた場所からタタタッと幸太郎の隣へと駆け寄る。 「それで、今回の騒ぎの原因は何なんじゃい！」 そんなさくらを軽く無視しながら、幸太郎はリリィとサキ、そして傍観者のさくらに理由を問いただし始めるのだった。

4 18/12/16(日)18:10:01 No.554976306

>星野リリィ 誰…？

5 18/12/16(日)18:10:27 No.554976437

「なんじゃい、たかがプリンで喧嘩しとったんかい」 「そうやぞチンチク」 問いただした内容の陳腐さに流石に呆れた声を出す幸太郎。サキもここぞとばかりに追従する。もちろんそれにリリィが反応しない訳もなく―――。 「たかが…？　食べ物の恨みは恐ろしいんだよ巽。特に甘い物なら…ってサキちゃんはちゃんと反省して！」 「ああん…？」 「むぐぐ…！」 「ああもうだから喧嘩はだめやって…！」 また睨み合い始めたふたりにさくらが慌てて割り混むのだが、ふたりの諍いは止まりそうになかった。救世主とは何だったのか。だがここで救世主は大逆転の一手を放つ。 「はぁ…ああもうわかったわかった。今回は特別じゃい。ワシが新しいプリン買うてきちゃるけん、それで手打ちにせい！」 果たしてその逆転の一手の効果は劇的であった。何だかんだ幸太郎はこのやーらしいかゾンビィたちに甘いのである。 「えっ、本当！？」 「勿論、アタシの分もやろうなグラサン」 「えー！？　じゃあリリィは２個ね巽！」 「おうおう、買うちゃる買うちゃる。こうなったら全員分買うて来ちゃるわい！」 「えっ、私もよかと？　ならお言葉に甘えて…」

6 18/12/16(日)18:10:51 No.554976562

そんな台所の会話を、少し離れた場所から何時の間にやら現れた水野愛と紺野純子が聞いていた。 「まーたやってるわ」 「あ、あはは…。私としては巽さんにご迷惑を掛けるのは少し心苦しいんですけど…」 台所ではどんなプリンを巽に買ってきて貰うかでにわかに盛り上がっている。 「いいのよ、乙女にとって甘味は必需品だもの。大体あんただって甘味好きでしょ？」 「ま、まぁ…、嫌いと言えば嘘になりますけど…。いえ大好きですけど…」 「最近はアイドル活動だって順調なんだからご褒美よご褒美。そう考えなさい」 「そ、そうですね…、そういうことにしておきます…」 そんなどこかしらおかしな会話がちょうど終わったところにさくらがやってきた。どうやら台所での騒動は終息したようだ。

7 18/12/16(日)18:10:58 No.554976603

お父さんじゃん…

8 18/12/16(日)18:11:21 No.554976726

「あれ？　ふたりとも何時の間に？」 「ここに来たのはついさっきよさくら」 「先ほどの騒動、大変でしたねさくらさん」 「そうなんよ愛ちゃん純子ちゃん。誰も居らんかったし、さくらひとりでもうほんと大変やったと。途中で幸太郎さんが来てくれんかったらどやんなっとったか…。ほんと何であのふたりはおやつに関してだけあんな――」 労わってくれる純子とそれに「よく頑張ったわね」と追従する愛。そんなふたりに対し余程心労が溜まっていたのかマシンガンの様に愚痴を吐き始めるさくらであった。 （あー、流石にこれは罪悪感あるわね…）(うぅ…すみませんさくらさん…）

9 18/12/16(日)18:11:58 No.554976905

長い

10 18/12/16(日)18:12:29 No.554977078

「いやー。今回も上手くいったな！」 「にしし、だいせいこー♪」 一方変わって台所。先ほどまでの険悪さは何処へやら、そこにはとても仲良さげなふたりの姿があった。ちなみに既にプリンを買いに出かけたのか巽の姿は無い。 「なあチンチク、実はアタシ明日のおやつを残すかもしれん」 そうおもむろにサキは口を開く。 「うん」 それにリリィも相槌を打つ。 「勿論それは冷蔵庫なり戸棚なりに入れておくやろ。…絶対に食うんじゃねぇぞ？」 何故かニヤリと目配せをするふたり。 「えー？　リリィ、もしかしたらうっかり食べちゃうかもしれないなぁ～？」 「ああん？　そげんこつしたら今度こそ本当にぶっ殺すぞ」 セリフの不穏さとは裏腹に、ふたりは実に悪い笑みを浮かべながらハイタッチを交わす。 ―――そう、今までのあれこれは全て、巽に新たな甘味を買わせる為の演技だったのである。先の愛と純子の会話もそういうことだったのだ。 リリィとサキはおやつに関してだけは犬猿の仲。 さくら以外にはそういうことになっている。

11 18/12/16(日)18:13:58 No.554977531

かわいい悪巧みしやがって

12 18/12/16(日)18:14:14 [s] No.554977596

>誰…？ 修正したつもりだったのに修正前のコピペでレスったみたい ほんとうにすまない…

13 18/12/16(日)18:14:33 No.554977683

これ気付いてるやつだな…

14 18/12/16(日)18:15:03 No.554977836

気づいていても買ってやる 巽はそういう奴だ

15 18/12/16(日)18:15:23 No.554977920

皆かわいくてよか…

16 18/12/16(日)18:17:55 No.554978728

仲良き事は美しきかな

17 18/12/16(日)18:18:17 No.554978850

「よっかよっか、よっかよっか」 約束したプリンを買いに出かける為に愛車のハイエースに乗り込んだ幸太郎は、そこで助手席に誰かが座っていることに気づいた。 既にシートベルトを着用して準備万端な花魁、ゆうぎりその人である。 「ささ、出発進行でありんす」 「いやお前何しとんじゃい」 「ふふ。わっち幸太郎はんのお供をしんしょうかと。独りで買い物に行くのもおもしろうありんせんでしょう？」 「いや別ｎ」 「わっちは素直な幸太郎はんが一番好きでありんす。わっちとどらいぶでぇとしたいでありんしょう？」 「いやお前何言っｔｱｯﾊｲお供お願いします…」 抵抗も束の間。助手席に座るゆうぎりの花のかんばせに見つめられ、何故か幸太郎は一瞬で同行を許可してしまうのだった。 決してあのままだとビンタが飛んでくるだろう事実を幻視してしまったわけではない。と思う。多分。恐らく。きっと。

18 18/12/16(日)18:18:54 No.554979032

よえー幸太郎よえー

19 18/12/16(日)18:19:08 [おしまい] No.554979120

そのまま無言で車を走らせ始めると、またおもむろにゆうぎりが口を開く。 「ところで幸太郎はん、あの子たちの小芝居には気づいてありんしょう？」 「…あんなもん流石に何度もやられれば気づくに決まっとるやろがい。とはいえ最近のお前たちが頑張ってるのは事実だからな。そのご褒美と思ってこちらも素直に乗ってやってるだけじゃい」 「それは素直に労うべきでありんしょう。そういう不器用さ相変わらずでありんすなぁ…」 「ふん…」 ゆうぎりに見透かされまた口籠りそうになったが、しかし、幸太郎に電流走る―――。これは勝てる、と。 「だがゆうぎりはそこが好きなんだろう？」 「…っ！？　これは一本取られんした…」 果たしてこれが幸太郎の初勝利であった。 ちなみにこの後、ゆうぎりの姿が見えないことに気付いたフランシュシュの一部の面々が騒ぎ出したり、追いかけようとしたり、帰宅したふたりに突撃したりするのだが―――。 それはまた別のお話。

20 18/12/16(日)18:21:09 No.554979838

やーらしか！

21 18/12/16(日)18:21:55 No.554980035

ちょいと寄り道が必要でありんすな！！

22 18/12/16(日)18:22:04 No.554980092

ゆう幸とは…

23 18/12/16(日)18:22:16 No.554980169

あっ100点です

24 18/12/16(日)18:22:42 No.554980303

よか…

25 18/12/16(日)18:23:26 No.554980510

沢山のキャラ動かせるのしゅごい…

26 18/12/16(日)18:25:08 [s] No.554981036

ぶちゃけ姐さんオチにするつもりなかったんだけど 姐さん出すの演技オチ書ききるまで忘れてたので無理矢理ゆう幸くっつけました ゆう幸いいよね… ちなみにたえちゃんはロメロと庭を駆け回ってるので居ない ごめんこっちも素で忘れてました名前の件も併せてゆるして…

27 18/12/16(日)18:26:14 No.554981339

姐さんは急に現れても違和感ないからな…

28 18/12/16(日)18:27:02 No.554981655

姐さんにカウンターとはやるじゃん巽！

29 18/12/16(日)18:29:36 No.554982638

よか…よか怪文書たい

30 18/12/16(日)18:30:42 No.554983026

サキリリの姉弟みたいな関係すき！

31 18/12/16(日)18:35:30 No.554984792

予想外の幸ゆうでござった

32 18/12/16(日)18:38:29 No.554985848

唐突なさくらのどやんすボディ描写にこだわりを感じる

33 18/12/16(日)18:41:28 No.554986731

ゆう幸もよかけど幸ゆうもよかよね…

34 18/12/16(日)18:45:52 No.554988260

壺のSS書いてた人たちがこっちにきてるんかってくらい怪文書増えててこれは…

35 18/12/16(日)18:47:42 No.554988936

怪文書ブームは時折起きるし… 今回がデビューの「」も結構いるし…

36 18/12/16(日)18:48:15 No.554989116

昭和ダッシュで追いかけて5分でへばる純子ちゃんが見える

37 18/12/16(日)18:51:08 No.554990066

まぁ元々趣味で物書きしてる｢｣も多いし なろうとかにも結構居る

38 18/12/16(日)18:54:56 No.554991223

プリンの指定はしてるからお店に直行すればあるいは… 走るには遠い

39 18/12/16(日)19:06:09 No.554995055

姐さんが負けてるの初めて見たかもしれん