虹裏img歴史資料館

ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。新しいログはこちらにあります

18/11/29(木)14:13:23  座っ... のスレッド詳細

削除依頼やバグ報告は メールフォーム にお願いします。個人情報、名誉毀損、侵害等については積極的に削除しますので、 メールフォーム より該当URLをご連絡いただけると助かります。

画像ファイル名:1543468403461.jpg 18/11/29(木)14:13:23 No.550991281

 座ったまま夢に落ちていたようだ。両手が探す縊殺の感触が組まれた腕の隣に残っていたことが眠りの中の幻覚と示している。  随分と良い風景を目にしていたような気がするのだが、想起は緑色の残像と共にリアリティに溶けて既に思い出せなくなっていた。  ふと、ぷすぷすと寝息が聞こえて隣を見れば、雛鳥の黄身色の耳羽が寝息に合わせて上下していた。父が寝入っていた時の姿を真似たのか、窮屈そうに組まれた腕は袖口から同じく黄身色の翼が顔を覗かせている。 「んゅ……?」  衣擦れに気がついたのか雛鳥はとろとろと船を漕ぎながら重い瞼をふうわり開き、銀の瞳が垣間見えた。 「……んぇへへ……おはよ……お父さ……ん…………」  こっくり、こっくり、振り子のように首をかくつかせて健気に微笑む雛鳥はまた夢の穴へと自由落下を始め、落下に引き摺られたか、ずるずると背もたれからずり下がっていく身体は今にも踏み外しそうだ。

1 18/11/29(木)14:13:42 No.550991321

 椅子から落ちれば痛い思いをするだろうと、当座、雛鳥を抱えて監獄の空いているベッドに運ぶうちに、彼女の力の抜けた手から、ころころとキャンディーが二つ落ちた。目が覚めた父親と一緒に食べるつもりだったのかもしれない。片方を失敬すると、キャンディーを元通りに握らせて、朝食用の代用ウミガメスープとチーズを枕元のテーブルに置いた。  鍵を閉めずに雛鳥を寝かせた牢を出て、二つ隣の、唯一監禁されている者がいる牢の扉の鍵を開いて中に入り、ぴゅーぴゅーと口笛のような寝言をベッドで息つく師……ドドの身体を四半回転させ、空いたスペースに身体を滑り込ませた。  暗闇の中、耳元で寸々と定期的に刻まれる吐息が心地よく、毛布いらずな体温の高い身体に温められて再び眠気に誘われる。  もふもふと、夢に、落ちていく。

2 18/11/29(木)14:14:07 No.550991364

 目の前に懐かしい家があった。  背の高く、心なし細い、煉瓦造りも堅牢の三角の塔のような、鬱蒼と生い茂る森深くに潜んだ蔦覆われる隠者の家。  張り出したバルコニーはドアの正面で手すりが途切れ、木目まばらな階段が来客を迎えるように設けられていた。  その横には赤いポスト。こんな辺鄙な場所では届く手紙もないのだろう。古びたポストの口からは枯れ葉が数枚見えていた。もしかすれば家主が物臭なだけかもしれない。バルコニーは長く掃除されていないようで、あちこちで腐った葉っぱが土に姿を変え、所々には茸まで群生している。  が、その一方でバルコニーの手すりや玄関前には沢山のプランターが並べられていて、よく手入れされた見目の良い草花やハーブ類が瑞々しい姿を見せる。

3 18/11/29(木)14:14:43 No.550991441

 薬の材料にするため仕方なく世話をしてるのかもしれないと考えることはできる。しかし、そう解釈するには狭い抜け道から開けた視界の隅に不器用に置かれた石柱の上で、一段と華やかに飾り立てられた花々があまりにも鮮明すぎた。鮮やかに咲き誇る束のような花、それが帰って来た者の心を慰めるために用意されたものということは白明で、ぶっきらぼうで、それでいて細やかな家主の性格をよく表していた。  庭の井戸は使われて間もないのか、石造りのフチの一部をぽつぽつと真新しく濡らしており、乱雑に落とされた釣瓶がキィキィ縄を引く音が今にも聞こえてきそうなほどだった。  風そよぐ芝を踏み折り、がさがさと不規則な音を立てながら、生者の息遣いが残る廃屋のような家へと、ゆっくりと足取りを進めていく。  ああ、鍋が煮立てられている。煙突からもくもくと煙が吐かれて、忙しく弾ける薪の声に交じって包丁がまな板叩く音が扉越しに聞こえた。

4 18/11/29(木)14:15:02 No.550991483

 きっと扉の向こうには暖かな空気と、ニヒルに振る舞う彼女の不敵で、喜びを小さく目尻に漏らした笑顔が、散らかった部屋の奥から自分を迎えてくれるのだろう。  夢遊病者のごとき足取りは引き寄せられるようにバルコニーの上に硬い足音を残し、鉄の手甲で窮屈な右手がキャラキャラと、耳障りに金属の関節を引っかきながらドアノブを握り込んでいく。僅かに開いた隙間から光と、薬草臭い赤毛とミルクのような肌の香りが匂い立つほどに芳しく五感を遮った。  愛しい彼女がいる。愛する彼女が待っている。  木扉が開く。

5 18/11/29(木)14:15:24 No.550991531

「ふふんっ! 遅かったではないか君! とにかくこちらに来て我が輩の隣に掛けたまえよっ!」  眩んだ目が光に慣れた頃、古びた今も毛玉一つとないソファに師匠が掛けていた。 「いつにも増して顔に生気がないから我が輩が癒やしてやろうともっ! わはははーっ!」  宮廷務めだった頃に王に下賜されたと度々師匠が自慢していたアンティークは、雑に扱われているようで毎週決まった日に決まった時間磨かれ、ほつれを見つけては懸かりきりになって修復を始めるような師匠の宝物だった。  そんなソファに何故か鳥の羽が落ちている。来客がいるならともかく、常なら見つけ次第払い除けそうなものだが。……妙な違和感を覚えた。  彼女は、本当に師匠なのか?  ジ、と足の裏で砂利が潰され、無意識に身体が後退していたことを知る。  そちらには行けない、いつの間にか口が動いていた。

6 18/11/29(木)14:15:41 No.550991556

「……え? こっちに行けない? ……行けないとは……んん…? え、えーとっ…………」  無垢に小首を傾げる。 「んむぅ……。 え、……あ、あっ、ああ、わかっているぞ! 勿論聡明な我が輩には君の言わんとする事なんてお見通しだともっ!」  無邪気に虚飾を張る。 「そうだなっ! 行けないなら生姜ないなっ! 来れるようになったらまた来ると良い、ふふーんっ!」  無知に結論を取り違う。  ……愛おしい。その姿は、愚か故に何より愛おしい。  だが、違う。違うのだ。彼女は、彼女は、そう、彼女は。 「ドドだ」  口にした途端、この身体は雨降り注ぐ廃墟に佇んでいた。  前提を失った魔女の家は緩まった大地をぐらぐらと風に揺らしている。  瓦礫を叩き、砕ける鋭風は鳥の鳴き声のような音を立てて、捨てられの森を一瞬ばかり想起させた。

7 18/11/29(木)14:16:00 No.550991599

 雷鳴。  師匠はいない。この手で、殺した。引き裂いた。わかっていたことではないか。  嵐は横殴りの風を強め、狂気に浮かされる頭が体温と一緒に冷やされていく。いつまで現実逃避に揺蕩うつもりか、波紋激しい水鏡の裏から正気になった瞳が狂気に耽溺する己を軽蔑するように睨んでいた。にじり寄る視線に思わず後ずさるが、もものつがいを打ち砕かれたように足は動いてはくれない。じっとこちらを見る瞳の後ろに赤が見える。金髪と青い瞳。アリスではない彼女が憐れむように目を伏せていた。  礎を失った己に追随するように地が裂け、千万の石くれとなって竜巻に飲まれ、我が身もろとも舞い上げると、天辺に至って投げ捨てる。家の残骸と共に墜落する瞳は断崖を越え谷底へと吸い込まれる。叩く風土の衝撃か、正気の痛みか、動かなくなった身体は頭を下にし流星のように身を任せた。  諦観に瞼を閉じる寸前、誰かと目が合ったような気がしたが、その瞳が光に透かした宝石の色はターコイズにもワインレッドにも見えて、潰れる思考の中で真理を求める手を拒むように、結論は狂気の溝の奥深くへと眠るように滑り去った。

8 18/11/29(木)14:16:20 No.550991645

 悪い夢を見ていたのだろうか。  飛び起きて初めに耳にしたのは胸を刺されるような痛みと掠れ荒い息遣いだった。  胡散臭い夢占いが適うほどの記憶すら、既に脳髄に綴じられた追憶の書庫を抜け落ちていたが、背を伝っていく冷や汗の玉が実に最悪な内容だったことを物語っている。  震える手で処方薬を十錠ばかり取り出して、からからの喉になんとか押し込んだ。蜂蜜酒をがぶ飲みして喉を潤し、一息つく。  息が落ち着いて、先程の自分はまるでウミガメモドキのようだと、そんなことを思って苦笑した。少し、気が楽になったようだ。  ふと見れば、何故かハンスの機関銃が眠る紫のローブとの間に境界を作るようにベッドに潜り込んで隔てていた。  金属の光沢は冷たく、硬く、幅を取っていて、抱きしめていては夢も冷たくなるに決まっている。悪夢の原因はこいつのようだ。  ……またか。  うんざりしながら機関銃を牢の外へと投げ捨てた。

9 18/11/29(木)14:16:39 No.550991672

「んむっ……ふふふ…………」  機関銃が壁に残した反響の中に幸せそうな寝息が聞こえ、そちらに目をやる。  夢の中でも誰かに威張っているのだろう。得意気な寝言に吹かれて口元に寄せられた翼がひっそりと動いた。  赤子のような寝顔を撫でれば、うにゅうにゅと鳴いて、緩まった笑顔を夢中にほの明るく浮かべる。  ……師匠だ。ああ、師匠がいる。  薬や酒精以上に幼い表情が心を落ち着かせて、温まった脳味噌がまた眠くなり始めた。  師匠の額にキスをして、妙に広い彼女の胸の中に横たわって瞼を閉じる。  今度は良い夢が見れそうな気がした。 おわり

10 18/11/29(木)14:17:42 No.550991798

処方薬増やしておきますね

11 18/11/29(木)14:18:10 No.550991858

精神病棟のスレンダーマンがまた増えた

12 18/11/29(木)14:20:00 No.550992085

狂ってるわあいつ

13 18/11/29(木)14:20:19 No.550992124

この「」リムはもうダメだ繁殖しないと

14 18/11/29(木)14:20:44 No.550992164

ブラックウェルさんなんとかしてください

15 18/11/29(木)14:21:20 No.550992233

ハンスの機関銃がまた雑な扱いを…

16 18/11/29(木)14:22:56 No.550992440

無理だ

17 18/11/29(木)14:24:15 No.550992612

何度投げても戻ってくるハンスはむしろ助けようとしているのかもしれない…

18 18/11/29(木)14:24:36 No.550992663

なんと、ハンスのきかんじゅうは、のろわれていた!

19 18/11/29(木)14:25:47 No.550992805

なんで前の師匠(ドド)エミュを怪文書に取り込んだんだ… いや良い話だけど…

20 18/11/29(木)14:27:09 No.550992991

機関銃は羽虫ワールドからの付き合いだからある意味相棒的な奴なんだろ 何なら師匠を蜂の巣にしたまであるぞ

21 18/11/29(木)14:29:04 No.550993257

ニア 殺害する

22 18/11/29(木)14:35:28 No.550994092

>何なら師匠を蜂の巣にしたまであるぞ そりゃ悪夢も見るわ

23 18/11/29(木)14:37:36 No.550994369

思い出したら前進するのか破綻するのか…

24 18/11/29(木)14:41:25 No.550994868

大丈夫? 次回作でドドはどこだ、にならない?

25 18/11/29(木)14:41:51 No.550994924

何だかんだ心の奥では師匠(ドド)をドドと認識出来てるし師匠(師匠)を自分がどうしたかも理解できてるんだな それでも認めたくなくて定期的に処方薬飲んでる辺り心が弱ってる周回の「」リムなんだろう

26 18/11/29(木)14:42:33 No.550995039

ハンスの機関銃はグリムのsenをマイナスにする効果でもあるのか…?

27 18/11/29(木)14:46:19 No.550995545

Cエンド経験考えると本当辛い

28 18/11/29(木)14:47:27 No.550995697

というかよくCエンド選べたなこのグリム

29 18/11/29(木)14:48:44 No.550995879

ちょっと文章力高すぎて普通にスゲェってなるのずるいと思う

30 18/11/29(木)14:59:53 No.550997425

今日はいっぱい出なかったか

31 18/11/29(木)15:04:14 No.550998083

前回の公爵夫人エミュもヤバかった

32 18/11/29(木)15:04:51 No.550998190

>蜂蜜酒をがぶ飲みして あの…このグリム…

33 18/11/29(木)15:06:03 No.550998373

>じっとこちらを見る瞳の後ろに赤が見える。金髪と青い瞳。 アリスだ!

34 18/11/29(木)15:08:57 No.550998807

1のCルートで紅ずきんに憐れまれたのにまた憐れまれてる… 紅ずきんのこと見ないふりしてそう

35 18/11/29(木)15:23:09 No.551000930

いい話だと思ったけどナチュラルに監禁してない? 前の話読めばいいの?

36 18/11/29(木)15:29:51 No.551001886

ログ探すと結構あると思う

37 18/11/29(木)15:34:30 No.551002536

監禁(グリム同伴でなら外出可、要望も少しは聞く、ノーデさんのお世話つき)だから…

↑Top