虹裏img歴史資料館

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18/09/30(日)03:51:01 ガルパ... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1538247061444.jpg 18/09/30(日)03:51:01 No.537097355

ガルパンSS ミカチョビ

1 18/09/30(日)03:51:30 No.537097393

「やあミカ、元気だったか?」 「元気じゃなきゃわざわざこんな所までやってこないよ」 「相変わらず言うなぁ!」 静岡県清水の母港に寄港し、いまは清水の町に降りているアンチョビのもとに、珍客が訪れていた。 ミカ。継続高校の隊長。 彼女が、何故かアンツィオ高校の隊長のドゥーチェ・アンチョビの前にいる。 「うちの戦車を持って行っちゃダメだからな」 「持って行かないよ、お互い苦労してるんだから」 「それくらいの分別はお前にもあるということか」 「風が吹かない日だってあると言うことさ」

2 18/09/30(日)03:52:03 No.537097421

「再会を祝って我が校の宴会を……と思ったんだが、今日はみんな休みなんだよな。寿司でも食べるか、奢るぞ」 「回る寿司でいいからね」 港町の回転寿司屋は回転寿司でもおいしい。 ミカも石川の出だからそれはよく知っている。 ふらりと立ち寄った回転寿司屋で、寿司をつまみながら昔話に花を咲かせる。 「……あの時のミカの活躍はすごかったな。護衛のパーシングの次々に撃破してカールの撃破に貢献した!」 「きみがジェットコースターの上にいなかったらあの後の戦いはずっと不利になっていたさ、勝つか負けるかは別としてね……」 不意に、ミカがアンチョビの紅い瞳を見据える。 「で、何のために呼び出したんだい?」 「それは……その……」

3 18/09/30(日)03:52:40 No.537097462

アンチョビが視線を逸らして、レーンを回るマグロの皿を手に取った。ピザを掴むような手つきで手づかみでマグロ握りを頬張ると、冷めかけのお茶をぐいっ、と一気に飲み干した。 「ぷはっ。……だっ、大学で、一緒にくらしてくれないか?」 「君は面白いことを言うね、風のいたずらかい?」 ミカは視線を落として膝の上のカンテレを奏でようとする。 が、アンチョビの顔は頬が紅潮し、瞳は潤み、真剣そのものだった。 「なぜ」 ミカが吹き付ける風を本気で受け止めた。カンテレは脇に置いてアンチョビと真っ直ぐに向き合う。 「大学選抜戦の時も気になってたんだ。飄々としてそれでいて凛としている。常に風のようにふあふあと舞うけれど、腰を据えれば隊長として立派に振る舞う。そして何より……」 「……」 「うまくいえないけど……、その捕らえ所のない立ち振る舞いを、身近で感じてみたくて……その……」

4 18/09/30(日)03:53:41 No.537097519

きっと睨みつけるほどに真剣に見つめるアンチョビの瞳からは、いまにも涙が溢れそうになっていた。 「即答はできない。合格は貰ったけど大学に行くかどうかはわからない」 「な、……お前、私と同じ大学に……?」 「大学に行くことだけが人生の選択肢じゃないからさ」 「そうか……」 俯くアンチョビの肩に、ミカの手がそっと触れる。 驚いて顔をあけた彼女の目に……柔らかい笑顔のミカが微笑みかけていた。 「考えておくよ」 「そうか! ありがとう!」 アンチョビが右手を差し出す。

5 18/09/30(日)03:54:15 No.537097543

ミカは少し躊躇う。 でも……やがてミカの右手はアンチョビの右手を握りしめた。 「下宿先が決まったら連絡する」 「分かった」 「ところで……寿司の代金なんだけど……その……奢るぞと言ったが……」 「なんだい?」 「財布に思ったより持ち合わせがなくて……割り勘にできないか」 ミカの眉が、みるみるうちに困った表情になった。

6 18/09/30(日)03:55:02 No.537097585

◇◆◇

7 18/09/30(日)03:55:23 No.537097600

3月、アンチョビの下宿先。 段ボールから荷物を取り出すアンチョビの表情は暗い。 あれから、ミカにメールを送っても、電話をしても、手紙を送っても返事は来なかった。 「もしかしたら、あんなこと言わなきゃ良かったのか……でも……」 アンチョビのミカに対する思いは、会えなければ会えないほど強くなっていた。 会って話がしたい、という感情はやがてミカのことをもっと知りたい、ミカと一緒にいたい……と段階を踏んで強くなり、あの日近くを航行中の継続学園艦からミカを呼び出して、あんな提案をしてしまった。 「ああ、叶わぬ夢だったか……」 引っ越し業者が据え付けた本棚の上段に、アンツィオ高校で戦った記録を綴じたファイルをしまおうとする。 届かない。思い切り背伸びをして、ジャンプして……バランスを崩した。 「わああっ!?」 転ぶ!!

8 18/09/30(日)03:55:54 No.537097637

そう思った瞬間、だれかが背中を抱えてくれていた。 「誰だ!」 「名無しだよ」 ミカ。 僅かな荷物だけを背負ったミカが、両の手でアンチョビの背中を抱きかかえる。 「無理はするもんじゃない」 「ミカ……!ミカ!」 「おっと、先にファイルを棚にしまおう」 「……うん!」 ミカに手伝ってもらって、ファイルをてきぱきと棚にしまっていく。

9 18/09/30(日)03:56:34 No.537097683

「ところで……ひとつ聞いてなかった」 「なんだ」 ミカに抱きつこうとうずうずしているアンチョビに、ゆっくりとした口調で尋ねる。 「君のことを、私はなんと呼べばいい?」 「アンチョ……」 言いかけて、少し考えて、またじっと目を見つめる。 「安斎と、読んでくれ」 「安斎、で、いいのかい?」 「ああ」 メガネをかけ、緑髪を後ろで束ねたアンチョビ……いや、安斎が、大きく頷いた。

10 18/09/30(日)03:57:08 No.537097712

「分かった、安斎さん。これからよろしく」 「『さん』はいらない」 「いずれ、外すよ」 「じゃあ、改めて……会いたかった!」 安斎がミカにぎゅっとしがみつく。 ミカは、片手を背中に、もう片手を髪に回し、安斎を優しく撫でる。 元アンツィオの母と元継続の風来坊の、奇妙で素敵な共同生活の始まりだった。

11 18/09/30(日)03:57:25 No.537097731

おしまい

12 18/09/30(日)04:02:19 No.537098052

私は良いと思う

13 18/09/30(日)04:09:42 No.537098556

>ミカの眉が、みるみるうちに困った表情になった。 ミカがチョビより多く食べたのは分かる

14 18/09/30(日)04:48:32 No.537100876

いい…

15 18/09/30(日)05:06:44 No.537101941

いいね

16 18/09/30(日)06:11:06 No.537104670

>「君のことを、私はなんと呼べばいい?」 >「島田……」

17 18/09/30(日)06:25:11 No.537105254

この2人なかなか相性が良いのではなかろうか

18 18/09/30(日)06:29:16 No.537105426

回転寿司とはいえ魚河岸寿司はそれなりのお値段するからな…

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