虹裏img歴史資料館

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18/09/08(土)00:09:05 「ジ・... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1536332945305.jpg 18/09/08(土)00:09:05 No.531794777

「ジ・オリジン・オブ・ザ・コウライヤ」より:【エクセプショナル・ロア】 人里離れた険しい地にその鍛冶屋は存在した。 無骨に切られた白く短い髪、しなやかで引き締まった身体、日と火に焼かれ赤銅色が染みついた肌。 カナチと呼ばれる鍛冶師はただ一人金槌を振るい赤熱する鋼を鍛え上げる。 日も天頂へと登ろうかという頃、戸を叩く音が鍛冶場へと響いた。 鍛冶は1段落着いている。カナチはやおら立ち上がり、声をかける。「お入りください」 「…失礼する」戸を開けたのはカブキ装束の男であった。「ご用件は」「ナギナタを作って頂きたい。この鋼にて」男はそう言い、背に負っていた風呂敷を降ろした。 「これは」それは美しく、どこか恐ろしき鋼であった。鋭く光る白い鋼と鈍く輝く黒い鋼が巴めいて混ざり合う鋼。 見たことも聞いたことも無い鋼。「…これでナギナタを」「そうだ。柄は貴方が相応しいと思う木で作ってくれ」 カナチは一瞬沈黙した。はたしてこの未知の鋼から依頼人の期待に叶う物が作れるであろうか。だが、挑戦したい。 「分かりました、2…いや3週間後に来てください。代金はその時、貴方がナギナタに納得できたのならば頂きます」

1 18/09/08(土)00:09:31 No.531794890

戸を叩く音がカナチを起こす。3週間後、約束の日。「お入りください」 「ドーモ、カナチ=サン、私の刀は出来ておろうな?」それは約束の男ではなかった。 羽織姿の侍。武具収集を趣味とする贔屓客だ。「貴方でしたか。仕上がりは3日後のはずですが」 「貴殿が3日前には仕上げると知っている」「…はあ、分かりました。こちらです」「うむ…良い仕上がりだ」 「…ところで」侍の目が光る。「先から気になっていたのだが…あのナギナタは何だ」 「ああ、そちらは別の依頼で…」「ほう…」侍はナギナタを見つめる。 「気に入った。貰おう」「え?」「そのナギナタを貰うと言ったのだ」 「あの…」「案ずるな。金はそうだな、いつもの10倍出そう」「いえ…代金の問題では…」 「なんだ?依頼主が怖いか?私が殺してやろう」侍の目が残忍に光る。男はニンジャだ。 「鍛冶師として依頼を反故にするわけには…」「…どうしてもか?」「…はい」 「そうか…仕方ない」カナチは胸を撫で下ろす。諦めてくれた、そう思った。だが。 「貴殿の事を気に入っていたよ。サヨナラ」刀がカナチの腹に刺さる。「え…アバッ…」 「良い切れ味だ。良い鍛冶師であった。残念だ」

2 18/09/08(土)00:09:51 No.531794975

「どういう事だこれは…」カブキ装束の男は鍛冶屋の惨劇を目の当たりにし、驚愕した。 「…う…」かすかなうめき声。それはカナチの口から発せられていた。「息があったか。何が…いや、それよりも手当を」 「大丈夫…です」「大丈夫なはずがあるまい」「…ナギナタを…奪われ」 「…話さなくていい」「もう一振り…奥の棚…白きナギナタ…」「…」 「黒き鋼…黒檀で硬く鋭い…白き鋼…白樫で柔く鋭い…どうか…取り戻し…貴方の手で銘を…」「…分かった」 それ以降、カナチが口を動かすことは二度と無かった。 部屋の奥の棚に収められた桐の箱。白く輝くナギナタ。 カブキ装束の男はカナチを丁重に葬り、鍛冶屋を離れた。

3 18/09/08(土)00:10:23 No.531795087

明かりも消えた町を侍は歩く。公には夜廻りと伝えている。半分は事実。 「誰か手ごろな者はおらぬかな」残り半分…それは辻斬り。 観衆の中での殺しは流石に目立つ。面倒だ。ならば夜、適当に不審人物として斬り捨てた方が楽だ。 「…おや」侍の目が動く者を捉える。大通りへと現れた影。丁度良い。「イヤーッ!」刀を構え斬りかかる。 頸が跳び終わる…何時もならば。だが、その夜は違った。 「イヨーッ!」カブキシャウトが響き、刀が止まる。ニンジャの気配ではない。 「ドーモ、アーマリー=サン。マツモト・コウシロです」「ドーモ。…何故私の名を」「すぐ死ぬ者に教える意味は無い」 「すぐ死ぬ?誰が?貴殿がかね?」アーマリーは腕を振る。凄まじき速度のスリケンがコウシロへと飛来した。 「イヨーッ!」スリケンは切断され地面を転がる。「イヤーッ!」アーマリーは懐より取り出した刀で袈裟状に斬り上げる。 「イヨーッ!」白きナギナタが刀を斬る。アーマリーは意にも介さず破損刀を投げ捨て、懐からメイスを振り下ろす。 コウシロは半身で回避。アーマリーはメイスを離し跳躍。寸前まで彼がいた空間をナギナタが切り裂く。

4 18/09/08(土)00:10:53 No.531795199

武器を使う者はその武器自体が隙となる。損壊や喪失した時、そして間合いを読まれた時、致命的な隙を生む。 アーマリーにはそれが無い。武器を何処からか取り出し、躊躇なく捨て石とする。 遠ければ飛び道具、近寄れば刀やメイス、避ければナギナタ。変幻自在の間合い。隙が無い。 「イヨーッ!」「イヤーッ!」至近距離で斬り合う。斬り結ぶ度、コウシロの身体に裂傷が生まれる。斬り合いでは相手の有利。 だが引けぬ。引けばより不利になる。「イヨーッ!」「イヤーッ!」斬り合う。 「イヤーッ!」「イヨーッ!」斬り合う。斬り合う。斬り合う。 斬り合いの中、コウシロは確実に消耗してゆく。血が身体から抜けてゆく。微かに反応が遅れる。 アーマリーはその隙を見逃さぬ。「イヤーッ!」「ヌウ…!」アーマリーの刀がコウシロの刀を越え、肩へと刺さる。 それは奇怪な湾曲せし刀。守りを抜くための刀だ。「隙有りィ!」アーマリーは刀を横に薙ぐ。 「グワーッ!」腕が裂け、血を吹く。「死ねい!」 飛び退いたコウシロにナギナタが、黒きナギナタが迫る。刃が腹へ突き刺さる。 その刹那。コウシロの眼がギラリと光った。

5 18/09/08(土)00:12:14 No.531795591

貫かれながら、コウシロはアーマリーを凝視する。憤怒を、憎悪を燃やす。 燃える炎は彼だけのものではない。彼が見、聞き、知り、伝えられ、承った全ての者達の、虐げられし者達の炎。その憤怒と憎悪の炎が、形を持つ。 「何ッ!グワーッ!」避ける間も無く見得が、歌舞伎の炎がアーマリーを包む。「グワーッ!」肌を、目を、喉を、苛むように焼く。振り払えぬ。 「このナギナタは返して貰った。他の蒐集品は好きに抱えて逝け」「グワーッ!…モータル…風情が…!」 アーマリーは刀を構えようとした。指の炭が崩れ、刀が落ちた。踏み出した脚が崩れた。 全身を崩れさせ、アーマリーは爆発四散した。「…サヨナラ!」 月明かりの中、コウシロは見得の残火を燈しナギナタに銘を刻んだ。 世を格し、ニンジャを別つ黒きナギナタ、即ちベッカク。憎悪を承け、憤怒を伝うる白きナギナタ、即ちデンショウ。 残火は全身へ広がり、傷を焼く。痛みは消えず、抜けた血は戻らず。 ベッカクを杖代わりに立ち上がる。それは死に際のベンケ・ニンジャのようだった。 彼は望み叶わず死んだ。自分はどうであろうか。 灯めいた残火が消え、彼の姿は闇に溶けて消えた。

6 18/09/08(土)00:15:41 No.531796474

泥のような憤怒が燃えてこれは…初代KOUSHIROU=サン…

7 18/09/08(土)00:18:37 No.531797239

二本のナギナタかっこいいな…

8 18/09/08(土)00:18:44 No.531797265

なにこれ…

9 18/09/08(土)00:19:01 No.531797342

エクセプショナル…格別の ロア…伝承 なるほど…

10 18/09/08(土)00:19:25 No.531797464

ぴるすニンジャが出てこないカブキスレイヤーのエピ初めて見た

11 18/09/08(土)00:20:41 No.531797807

ぴるすはサンシタだからな

12 18/09/08(土)00:21:25 No.531797999

普通にカッコイイエピソードじゃねーか!

13 18/09/08(土)00:21:52 No.531798126

ナギナタの名前かっこいい!

14 18/09/08(土)00:21:53 No.531798129

これ本当にモータルなのコウシロ=サン

15 18/09/08(土)00:24:34 No.531798914

カッコ良い…

16 18/09/08(土)00:26:45 No.531799504

サムライカブキスレイヤー来たな…

17 18/09/08(土)00:28:17 No.531799866

ひょっとして初代松本幸四郎なのか

18 18/09/08(土)00:28:25 No.531799901

実際グラウンドゼロの描写見るにカブキ使いはバケモノだし…

19 18/09/08(土)00:32:41 No.531801043

ぴるすの発生って近代に入ってからなのか

20 18/09/08(土)00:32:47 No.531801057

スラスラと読めてしまうこの文章力よ

21 18/09/08(土)00:35:18 No.531801840

ニンジャアトモスフィアが不足しがちな更新お休みの夜にスーッと効いて…

22 18/09/08(土)00:37:07 [s] No.531802393

メモ: ぴるすが本格登場するのはバイオテックの発達した時代だ。彼らは文明が進化したモータル達の世界での愚かで哀れな存在として基本的に描いているからね。 しかしコウライヤの成り立ちを描くこの物語はニンジャスレイヤー世界のいわゆる平安時代、ニンジャが支配していた時代のお話だ。だからぴるす達は出てこない。 初代のマツモト・コウシロはモータルの身でありながらニンジャを殺すいわば殺戮の復讐者だ。彼に何があったのか、そういった部分のお話は今後書くかもしれないし、書かないかもしれない。 ただ言えることは彼の生きた時代はニンジャを憎悪する理由にはなんら困らない時代だったってことだけだ。

23 18/09/08(土)00:39:10 No.531803034

もしやボンモーのコメントのエミュ…?

24 18/09/08(土)00:39:42 No.531803175

ヌゥーッ…ワザマエ!

25 18/09/08(土)00:42:52 No.531804128

赤顔の死神!

26 18/09/08(土)00:48:20 No.531805703

>世を格し、ニンジャを別つ黒きナギナタ、即ちベッカク。憎悪を承け、憤怒を伝うる白きナギナタ、即ちデンショウ。 ベッカクとデンショウの由来カッコイイな…

27 18/09/08(土)00:50:04 No.531806141

サムライカブキスレイヤーだと…?

28 18/09/08(土)00:50:37 No.531806303

カブキスレイヤースクの作者は何者なの…

29 18/09/08(土)00:52:14 No.531806778

これはもはやニンジャスレイヤーなのでは?

30 18/09/08(土)00:52:57 No.531806987

前見たやつは忍偵ヌンチャックスクで本当に駄目だった

31 18/09/08(土)00:55:07 No.531807633

ポエット…

32 18/09/08(土)00:56:26 No.531808015

このワザマエ…初代=サンか!? セカンドジェネレーション=サンの活動が二人のパッションを高めあい…共鳴…リスペクト…そしてラブ…歌舞伎という終わらぬ旅路…アーイイ…

33 18/09/08(土)00:58:57 No.531808621

初代KOUSHIROU=サン主役のエピソードオーとは…カタユデ=アトモスフィアに溢れていることだなあ

34 18/09/08(土)00:59:06 No.531808653

めっちゃ面白いけどぴるすが出てこないとニンジャの二次と区別付かねえ!

35 18/09/08(土)01:01:59 No.531809261

まあヌンチャックが来たからサムライもいつかは来るとは思っていた

36 18/09/08(土)01:02:51 No.531809420

前回読んだスクはカブキニストという単語でもうダメだった

37 18/09/08(土)01:03:17 No.531809509

ネットがなければぴるすが妄言吐き散らす場がないもんな…

38 18/09/08(土)01:06:48 No.531810269

デンショオオオオオオ!って叫んだりしたのだろうか したのだろうな

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