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18/06/12(火)00:31:54 SS「水... のスレッド詳細

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18/06/12(火)00:31:54 No.511147066

SS「水底(ミナソコ)の呼び声3~甦~」 これは以前投下したSS「水底(ミナソコ)の呼び声」「水底(ミナソコ)の呼び声2~拡~」の続きとなります。 だいたいのあらすじ テレビ局に勤めていた王大河は島田愛里寿からとある依頼を受ける。 それは、失踪した西住みほを探して欲しいという依頼だった。 依頼を受けた大河。そのはじめとして、元あんこうチームの五十鈴華の元に話を聞きに行ったのであった。 いままでの 1 su2439068.txt 2 su2439069.txt 今回の su2439070.txt

1 18/06/12(火)00:33:09 No.511147275

 翌日、大河は愛里寿とテレビ局で合流し、共に五十鈴家へと向かった。天気はあいにくの曇りであり、太陽は厚い雲に覆い隠されている。  五十鈴家は大洗にある。  そのため、大河と愛里寿は二人で大洗へと車を走らせた。運転は大河である。愛里寿は正確な五十鈴家の場所を知らないためだ。  大河が車を走らせることしばらく。二人は大洗の五十鈴家へと到着した。 「ここです」 「ここが……うちと同じくらい大きなお屋敷……」  愛里寿は五十鈴家の邸宅を見上げながら言った。  五十鈴家はまさに古風な日本屋敷であり、その敷地はとても広かった。他の一般的な家庭の家屋なら数件まるまる入ってしまうぐらいだ。 「おっと、そうだ」  大河は思い出したかのようにカバンからとある物を取り出す。それはカメラだった。少し小さめではあるが、テレビ撮影用のカメラだ。 「一応取材ということで来ているので、これを回しておかないといけませんね」  大河はそう言いながらカメラの電源を入れ、撮影を始める。

2 18/06/12(火)00:33:27 No.511147330

 まずは五十鈴家を撮り、そして撮影しながら邸宅へと足を踏み入れる。  二人が邸宅に入ると、玄関に向かって奥から着物の女性が歩いてやって来る。  かつてのあんこうチームの砲手、五十鈴華だ。 「お二方とも、よくいらっしゃいました」  華は笑顔で大河と愛里寿を迎える。 「失礼します」 「お邪魔します」 「では、どうぞこちらに」  華に案内され二人は邸宅の中を進む。  五十鈴家の邸宅は外が曇りなせいもあってか薄暗く、どこか不気味な雰囲気を醸し出していた。  長い廊下を歩いていると、五十鈴家で働いている女中と何人かすれ違い、向こうが頭を下げて挨拶してきたので大河達もまた頭を下げた。  そうして歩いているうちに、三人は五十鈴家の客間へと案内される。 「こちらです」  客間にはすでに座布団が用意されており、華が二人に座るように促す。二人は用意された二つの座布団に座り、華が向かい合うように座る。 「さて、今日は何やらテレビの取材と聞いたのですが……」

3 18/06/12(火)00:33:43 No.511147373

「ええまあはい、そうなんですよ」  大河は歯切れ悪く言う。  その様子を、愛里寿は訝しんだ。 「一体どんな取材をするのでしょうか? 花についてですか? それとも愛里寿さんがいらっしゃりますから、戦車道についてでしょうか? 懐かしいですねぇ最近は少し離れてしまいましたけど、今でもたまに乗りますよ。あの振動はいつ体験しても私の花にいい刺激をもたらしてくれます……」  華がうっとりしながら言う様子を見て、愛里寿はこっそり大河に聞いた。 「……もしかして、みほさんのことだって言ってないの?」 「……ええまあ。その、直接言ったら断られるだろうと思いまして……」 「ん? どうかしたのですかお二方?」 「……はぁ」  愛里寿は軽くため息をつく。一方華はきょとんとした目で二人を見ている。大河はバツの悪そうな顔で頭をかいている。  愛里寿はそこできっと華を見据え、軽く深呼吸して言った。 「華さん。今日私達が来たのは、他でもない。みほさんのことについて聞かせて欲しい」 「お帰りください」

4 18/06/12(火)00:34:00 No.511147423

 華は即座に返答した。それは、明らかな拒絶だった。 「そこをどうにか……」 「私は何も知りません。みほさんがいなくなったことも、優花里さんがいなくなったことも、何も知りません。話すことなどないのです」  そう言って、華は立ち上がった。 「分かったならお帰りください。帰り道は分かりますね? 来た道をそのまま行けば玄関です」  そして華は二人に後ろ姿を見せ、客間から出ていこうとした。 「ま、待ってください!」  その華に、大河は慌てて声をかける。 「華さん、本当は何か知っているんじゃないですか!?」 「だから、何も知らないと――」 「じゃあ、なぜみほさんのことだけでなく優花里さんのことまで言及したんですか!?」 「っ!? そ、それは……」  華が足を止める。この期を逃すまいと、大河は続ける。 「それは、優花里さんの失踪がみほさんの失踪に何らかの関係があるとあなたが知っているからじゃないんですか!? あなたにとっての大切な親友なのにそこまで忌諱するのは、何か理由があるんじゃないですか!?」

5 18/06/12(火)00:34:17 No.511147471

「……っ」  華が苦虫を噛み潰したような顔をする。  そこに更に、愛里寿が言う。 「お願い華さん。私達に教えて欲しい。みほさんを、私はどうしても探し出さなくてはいけないの」 「……どうして……」 「それは……みほさんが、私にとって大事な人だから」  愛里寿の言葉にはとても深い情熱が秘められているように、大河と華は感じた。  ――どうして彼女はここまでみほさんのことを想っているのだろう? 彼女の言う、大事の意味とは一体……。  大河の脳裏に、ふとそんな考えがよぎった。 「……分かりました」  そのとき、華が折れ再び二人の方を向いたため、大河は雑念を振り払って華の顔を見た。その顔は、何かに怯えているような顔だった。 「お話しましょう、私の知っていることを。ですが、私の知っていることは微々たることです。それと、少し時間をください。この件に関して私の信頼しているとある方々を呼びたいのと、お二人にお見せしたいものがあってそれを用意しなければなりませんから」  華はそう言って一旦客間を出ていった。

6 18/06/12(火)00:34:34 No.511147530

 そしてそれから二十分ほどして、華は戻ってきた。華の手には、とあるものが持たれていた。  それは、プラスチックケースに入れられたDVDディスクのようだった。 「DVD、ですか?」  大河が聞く。 「ええ……これが私達に渡されたのは、ちょうど一年前、みほさんがいなくなった直後、優花里さんが失踪する直前でした」  華は再び座るとDVDを自分と大河達の間に置いた。 「私達というのは、私、沙織さん、麻子さんの三人です。直接受け取ったのは沙織さんでした。沙織さんは言いました。優花里さんから、これをみんなで見て欲しいと言われたと」 「優花里さんから……!?」  大河と愛里寿は驚愕する。やはり、みほの失踪には優花里が関わっていたのだと。  さらに華は口を震わせながら続ける。 「そして、私達は見ました。とても気軽な気持ちで、三人で。……ですが、それは見てはいけないものだったのです」 「見てはいけないもの?」

7 18/06/12(火)00:34:51 No.511147575

 愛里寿が聞く。すると、華は少しためらい、自らの体を腕で抱きながら答えた。 「ええ。その内容は意味不明な映像でした。ですが、重要なのは見た後……その映像を見た後、私達の周りで次々と不可解な事象が起き始めたんです」 「と、言うと?」 「……最初は、それぞれの家で奇怪な音が聞こえたり、勝手に物が落ちたりする程度でした。でも、それはだんだんとエスカレートしていって、一人で歩いているのについてくるような足音が聞こえたり、誰かに見られているように感じたり……そして、ついに身内に不幸が起こるようになったのです。最初は麻子さんのお祖母様でした。突如、病院で叫び狂いながら死んだらしいのです。その次は、沙織さんの旦那さんと息子さんでした。沙織さんの旦那さんと息子さんが二人でドライブに行った後、交通事故で亡くなりました。車のブレーキが不自然に切れていたそうです。そして、最後は私のお母様と奉公していた新三郎……二人は、自室で窒息死していました。首には、不自然な跡があり、縄か何かで締めたらしいと警察は判断しました。しかし何かは分からないまま、今に至ります……」 『…………』

8 18/06/12(火)00:35:08 No.511147631

 二人は言葉を失った。たった一枚のDVDを見ただけで、そんなことが起こるのだろうかと思った。とても信じられないような話であり、ただ偶然が重なっただけにも思えた。  だが、華の話しているだけなのにとても憔悴している様子から、少なくとも華は本気で信じていて、今なお彼女は苦しんでいることが分かった。 「……なるほど……つまり、そのDVDに何かおぞましい力がある。華さんはそう言いたいわけですね?」 「ええ……信じてもらえないでしょうが……ですが、本当なんです! ああ! 私は優花里さんを恨みます! どうしてこんなものを私達に見せたのかと! どうして、どうして……!」  華は両手で顔を覆い泣きながら言った。本当に精神的に参っている様子だった。 「……ねぇ、華さん。一つお願いがあるんだけれど」  その華を見て、愛里寿が言った。華は手を顔から離し、涙を拭って愛里寿を見る。 「……はい。なんでしょうか」 「そのDVD、私達にも見せてくれないかな?」 「えっ!?」

9 18/06/12(火)00:35:25 No.511147673

 華は驚愕する。もちろん、声には出してないが大河もだ。 「そんな……危険すぎます! もしあなた達の身にも何か不幸があったら……!」 「でも、それが何かみほさんの手がかりになるかもしれない」  華は制止するも、愛里寿は断固として譲らないつもりらしかった。 「……そうですね。そのDVDに何かあるのは明白らしいですし、私も正直内容に興味があります。そしてそれが、もしかしたら華さん達の身の回りの不幸から逃れる術を見つけられるかもしれませんし」 「……あなた達は……」  大河もまた同意したことにより、華はさらに困惑した表情になる。  そしてしばらく華は逡巡してから、やっと口を開いた。 「……分かりました。でも、私はこのDVDを見たことによる責任は、一切負いません。あなた達の自己責任でお願いします」  そう言って、華はDVDを大河達の前にすすっと差し出した。 「……ありがとう」  愛里寿は礼を言う。  一方、大河はカバンからとあるものを取り出していた。ノートパソコンである。 「よし、じゃあさっそくこれでそのDVDを見てみることにしましょう」  大河がそう言うと、華はそっと立ち上がった。

10 18/06/12(火)00:35:40 No.511147730

「私はしばらく自室に行っていようかと思います。正直、再びそのDVDを見ようとはとても思えませんから。見終わったら、女中に声をかけて私を呼んでください」  そう言って華は部屋から出ていった。  部屋には、大河と愛里寿の二人が取り残された。 「……さて、それじゃあさっそく見てみましょうかね!」 「……良かったの? 今更だけど、私だけ見るっていう手もあるよ?」  乗り気になっていた大河は愛里寿にそんなことを言われ驚く。そして、すぐさま愛里寿に笑ってみせた。 「ははっ、大丈夫ですよぉ! そこに何か情報の詰まったものがあるのに手を出さないマスコミはいませんから! むしろ、進んで見させて欲しいぐらいです! ……それに、正直眉唾だと思っているのも確かです。だって、DVDを見ただけで何かあるなんて、オカルトすぎますよ。この科学の時代にー」 「そう……大河がそれでいいなら、それで」  そう言って愛里寿はDVDを大河に渡す。大河は渡されたDVDをノートパソコンのドライブに入れる。 『…………』  二人は緊張しながら画面を見据える。  そうして、動画が再生され始めた。

11 18/06/12(火)00:35:58 No.511147781

 冒頭は、インタビュー動画のようだった。大分映像と音声が荒れておりインタビューアーとインタビューを受けている人間の声ははっきりと聞こえず、またその姿もちゃんと確認することはできなかった。  それが数秒流れたかと思うと、今度は突然画面が切り替わり、崖道が映し出される。崖のすぐ下には川が流れており、天候は豪雨。そのせいで川は激流となっていた。  さらに画面が切り替わり、今度は戦車の内部が映し出された。誰も居ない戦車の内部だ。  また画面が切り替わり、次に映し出されたのはどこかの地下室だった。上方からうっすらと光が漏れているが、ほぼほぼ真っ暗でほとんど何があるか見ることができない。  そして最後に一瞬、チラリとそれは映った。  それは目だった。暗く輝く、画面いっぱいの碧眼だ。  そこで、動画は終わった。

12 18/06/12(火)00:36:14 No.511147827

「……何ですか? これ?」  大河は見終わった後ポツリとこぼした。 「正直訳がわからない動画でしたね。ただ、あの崖道はどこかで見たことあるような……。うーん、そうだ、愛里寿さん。戦車の車内っぽいのが映りましたが、何か分かりますか?」 「……あれは、Ⅲ号戦車J型の内部」 「なるほど。確かドイツの戦車でしたよね? どうして。それにしても、最後の目は気持ち悪かったですね。一体優花里さんはなぜこんなビデオを……」  大河が思案し始めた、そのときだった。 「きゃああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」

13 18/06/12(火)00:36:29 No.511147874

 突如、邸宅中に悲鳴が響き割ったのだ。 「な、何事ですか!?」 「っ!」  愛里寿はその悲鳴を聞いた瞬間駆け出した。 「あっ、待ってください!」  大河もそれに続いた。  二人は声のした方へと歩いていく。すると、廊下に女中や奉公人が人だかりを作っていた。 「すいません、ちょっと通してください!」  二人はその人だかりをかき分ける。そして、それを見た。 「えっ……!?」 「っ……!」  それは、死体だった。  目を見開き、仰向けで倒れている、五十鈴華の死体だった。  その死体は異様だった。顔が恐怖でひどく歪んでいるし、手足も変な方向にねじれている。  だが、最も異様なのは大きく開けた口だった。その口から、出ていたのだ。銀色に輝く銀髪と、溢れ出る泥水が。

14 18/06/12(火)00:36:46 No.511147942

「な……何これ……」  大河はわなわなと震える。  ――ありえないありえないありえない。こんなことありえるはずがない。だって、だってさっきまで元気にしていたはずなのに、どうして――  パニック寸前になる大河。一方、愛里寿は冷静にその死体を眺めていた。 「…………」  だが、かすかに体を震わせてもいた。  二人は、周りに大勢いる女中や奉公人のように、動けなくなっていた。 「皆さんすいません! 通ります!」  と、二人が固まっているときだった。二人の背後から、突如新たな声がした。それは最初奉公人か女中かと思ったが、すぐに違うと分かった。  二つの人影が、大河と愛里寿の前に出たからだ。その二人は、大河と愛里寿がよく知る人物だった。

15 18/06/12(火)00:37:04 No.511148002

「あ、あなた達は……!」 「……どう思う?」 「…………」 「そう……やっぱり……」  その二人は大河の声を無視して喋っている。片方の声はあまりに小さく聞こえない。  そして、その二人はしばらく死体を見たり触ったりしして、その後大河と愛里寿の方を向く。  その二人に向かって、大河は言った。 「どうしてあなた達が……!? 澤梓さん! 丸山紗季さん!」  その二人は、かつて大洗でうさぎさんチームと呼ばれた少女達のうちの二人、リーダーの澤梓と、丸山紗季だった。 「どうもお久しぶりです。王先輩。愛里寿ちゃん」  梓がペコリと礼をする。一方、紗季は大河と愛里寿をじっと見ていた。 「…………」

16 18/06/12(火)00:37:19 No.511148046

 そして、すっと二人を指さした。 「な、なんです……?」 「……ついてる」 「へっ?」  紗季はとても小さな声で言った。それに、梓が反応する。 「ついてるって、この二人にも!?」 「……うん」 「ちょ、ちょっと待ってください!? ついてるって、一体何が……?」  その大河の声に、紗季は答えた。

17 18/06/12(火)00:37:36 No.511148120

「……エリカ」

18 18/06/12(火)00:37:52 No.511148170

 “エリカ”。  呪われし名が告げられる。その場にいる本来なら誰も知りえないはずの名前。  紗季がその名前を告げたとき、運命は新たな局面を迎えようとしていた……。   つづく

19 18/06/12(火)00:44:21 No.511149513

やだもー!!

20 18/06/12(火)00:45:18 No.511149668

オオオ イイイ

21 18/06/12(火)00:47:22 No.511150043

観測する者きたな...

22 18/06/12(火)00:47:34 No.511150078

急展開すぎる

23 18/06/12(火)00:48:04 No.511150148

さおりん…

24 18/06/12(火)00:50:40 No.511150598

こんな事を言っては気を悪くするかも知れないが、華さんを殺られたシーンを想像したらちょっとだけ興奮しましてね…

25 18/06/12(火)00:51:43 No.511150792

さおりんはあくまでサオリの未婚だから仕方ないね

26 18/06/12(火)00:52:57 No.511150997

むう…サオリノ未亡人…

27 18/06/12(火)00:55:28 No.511151454

五十鈴邸はギルマンハウスかと思ったらネイハム・ガードナー農場だったでござる

28 18/06/12(火)00:58:30 No.511151947

美須角弐句大学研究員の澤ちゃんと丸山

29 18/06/12(火)01:08:28 No.511153643

澤ちゃんと丸山が千里眼事件の福来博士と御船千鶴子みたいな感じに思えてゾクゾクしたわよダーク「」リちゃん

30 18/06/12(火)01:17:58 No.511155232

前作と比べて物語の舞台も拡大してるし2話時点での登場人物も多いし 舞台装置や話のスケールは拡大してるはずなんだけど上手く言えないが全体的に逃げ場の無い閉塞感があるように思える 澱んだ閉塞感と言うか…

31 18/06/12(火)01:23:45 No.511156145

主要キャラをバッサリ切り捨てることで愛里寿たちが突き放された感じが増幅させる

32 18/06/12(火)01:25:21 No.511156386

さおりん… 結婚した途端にたった2行で独身に戻った

33 18/06/12(火)01:29:25 [会長] No.511157039

私たちはこの災厄から逃れるための方法を見つけたのです それは死者…つまり逸見エリカを殺すしか無い… 死者を……死者を殺せぇぇぇぇぇぇ!!!!!!

34 18/06/12(火)01:30:43 No.511157236

そういや会長出てきてないな真っ先にやられそうなのに

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