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18/03/21(水)22:42:53 ドラゴ... のスレッド詳細

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18/03/21(水)22:42:53 No.492560716

ドラゴンの子を産みたい。私が最初にそう思ったのは15の時だ。両親はアタルカの狩人。私もそうなりたいと思っていたが、どうやら私の才はそれらとは異なる所にあった。 囁く者。私が最初にそれを受け取ったのも15の時。私は狩人としてではなく、異なる力を持っていた。精霊や地脈との繋がり、そして、広がる囁き。アタルカ様の恐れた力を持っている。その事実は小さな誇りと、それを踏み潰すほどの大きな恐怖になった。さながら、龍王の餌となるように。 けれども私はこの力で仲間たちと共に龍王の力となるのが好きだった。そして、氏族の皆も、龍たちも。 私がその力に目覚めた時、同類に手解きをしてもらった。精霊の力で獲物を探す方法や広がる囁きの使い方、スクリムショーの書庫の位置……、 両親も、龍たちも知らない秘密、それは15の少女には少々刺激的だったのだ。 そして精霊の力が齎す予想外の作用も。 「おいで、ご飯よ」 彼女は「恋人」を呼んだ。圧倒的巨躯とヘラジカ、アタルカが嘗て食べ尽くしたという動物のような角はアタルカの子供の証。 その龍は彼女が精霊との繋がりを持った時、龍の大嵐から産まれた子。彼女とは不思議な繋がりがあった。

1 18/03/21(水)22:43:15 No.492560825

突然、巨影が落ちた。彼女の同類は一瞬でその龍の口の中に消え、彼女もすぐにそうなるはずだった。しかし、精霊と彼女の、そして彼女の知る由も無い大いなるタルキールのマナとの繋がりがその龍の思考をほんの少し変えた。 「貴方は、ご飯をくれるの?」 たどたどしい口調。オジュタイやドロモカの龍は人と意思の疎通が可能だと聞いたことはあるが、アタルカの子がそうであるのは初めて見た。 「そうよ。私は、貴方に……」 言葉の続きは羽ばたきに遮られた。 「ごめん、行かないと」 その龍は慌てて翼を広げ、飛び去った。龍王アタルカは産まれた子を必ず確認する、その為に。 だが、彼女はその時に確かに感じた。その龍が微笑んだこと、そして、二人だけの広がる囁きが存在することを。

2 18/03/21(水)22:44:03 No.492561065

囁く者のネットワークは古のタルキールの伝説や龍のいない世界など、彼女の好奇心を大いに満たしてくれた。 龍のいないタルキール。想像するだけで、ぞっとする。私はあの龍と出会えなかったらどうしていたのだろうか。あの龍は生まれることも、私と出会うこともなかったのだろうか。 胸が締め付けられ、苦しくなる。嫌だ。あの子が美味しそうに獣を食べる姿を見るのが好き。私に意味もなく話しかけてくれるのも、私のことを大事だと言ってくれたのも、全部覚えている。 彼女は、それが人生ではじめての恋だと知った。 思いが強く溢れ、広がる囁きに自らの好意を飛ばそうかなんて考えていたのはその龍と出会って8ヶ月が過ぎた頃だった。私はもうすぐ誕生日で、それを話すと、龍は「すごいね!お姉ちゃんなんだ!」と笑ってくれた。 母の言葉が、私に深く突き刺さった。

3 18/03/21(水)22:46:08 No.492561730

「アンタももうすぐ16なのよねぇ。そろそろいい人は見つかった?出会いが少ないんじゃないかと心配しちゃって」 嗚呼。そうだ、私は人間。そんなことはずっと昔から知っていた。龍と人との奇妙な友情は、それらが互いに異なるから奇妙であったに過ぎない。そして二人はその関係を受け入れていた。 龍と、人であることを。ただ、少しだけ互いが特別なことを除けば。 「う、うん。お母さん、考えとく」 皺のすっかり増えた母親の顔に、何だか申し訳なくなった。そう、私は人間。人の男と愛し合い、家族となり、そして一族を続けていく。これまでも、これからもそうやって殆どの生物は続く。 龍は違う。大嵐から産まれた彼らに子を為すという概念は存在しない。 アタルカが雌だと言うことは知っていたが、それに意味があるとは思えなかった。酷く悲しかった。 彼女は強く強く願った。翼を、爪を、牙を、角を、鱗を、炎を。囁く者達の伝説、「龍人サル・カン」の話を只管に調べた。 旅に出よう。サル・カンを見つけよう。朝靄の中、彼女は家族の元を離れる決意をした。そこには、一頭の龍の影があった。 「ご飯?」 「そうね。二人で、探しに行く?」

4 18/03/21(水)22:47:11 No.492562010

今日も来たのか…

5 18/03/21(水)22:48:36 No.492562448

ドラシコ

6 18/03/21(水)22:52:12 No.492563505

サルカン・ヴォル。多元宇宙を回り、龍の信奉者達の心のドラゴンを目覚めさせるプレインズウォーカーは故郷に戻っていた。 この世界は完璧だった。ドラゴンがいる!ナーセットがいる!そして、強い人々もいる!俺はこの世界に存在していないが、関係なかった。彼の強く望んだ世界がここにあるのだから。それに、自分がウギン、精霊龍の友だと言われるのも悪い気はしなかった。 サルカンはタルキールの山々を見渡した。カル・シスマ山脈の尾根にたち、龍となり、飛んだ。アタルカの可愛らしい龍が角をぶつけじゃれ合っている!サルカンは思わず歓喜の吠え声をあげた。 だが、それ以上にサルカンの目を惹くものがあった。アタルカの龍と人が並んで飛んでいる…? 空を飛ぶ魔法というのは珍しくない。オジュタイの人々などはそれを身につけている。だが、彼女はアタルカだ。そして龍も、人と協力するとは程遠いアタルカのもの。サルカンの予感は歓喜の鐘となり彼を打った。 まさか、我が故郷にもいるのだろうか、人と龍を繋ぐ者が!

7 18/03/21(水)22:55:10 No.492564399

何で新しいドラシコが出てくるんだよ!

8 18/03/21(水)22:58:55 No.492565477

ドラゴン悲恋ウーマンがどんどん出てくる

9 18/03/21(水)22:59:29 No.492565616

「やあ、初めまして!」 サルカンは龍の言葉で言った。アタルカの龍は身構えた牙を剥いたが、襲うことはなかった。そうか、君もまだ若い龍だな。俺のドラゴン変化はタルキールのどれとも違う、戸惑うのも仕方あるまい。 「誰?」 その声は囁く者の言葉だった。サルカンは嘗てのティムールで彼らと共に過ごした時に、それらの受け取り方だけは身につけた。しかし、こちらから伝える方法は持たなかった。 「俺は……サルカン・ヴォル」 サルカンが人の姿を取るのと同時に、人間は歓喜にも似た声をあげた。 「貴方が!?知っています、私、ずっと貴方を探していました。サル・カン!龍人様!人と龍を繋いだ者!」 興奮気味に彼女に手を取られ、そのまま振り回されてしまった。 目を回しながら、サルカンは彼女の興奮が冷めるのを待つことにした。とは言え、嘗てのここら一帯とは異なり寒さが手助けにならないだろうが。 「どうしたんだ、一体。俺は……」 「お願いです、龍人様!私を龍にして下さい!」

10 18/03/21(水)23:03:06 No.492566558

サルカンはさぁ…

11 18/03/21(水)23:03:31 No.492566671

なにこの…何

12 18/03/21(水)23:05:54 No.492567319

いもげでは空前のドラシコブームが起こってるからな

13 18/03/21(水)23:10:54 No.492568663

サルカンは彼女の話を聞いた。龍に恋をしたこと、自身が人間であることの葛藤、そして、人間としての生き方……。 サルカンにはそれらが痛い程わかった。似た悩みを持っていた者として、手を差し伸べる事は出来るはずだ。その手は龍のものか、人のものかは定かではないが。 「……何から話せばいいのだろうな。何にせよ、俺の話は誰にも言わないでくれ」 他の次元の者と違い、彼女はタルキールの人間だ。それ故に、言葉を慎重に選ばなければならない。 ナーセットはこういうのが得意だろうな。 「アレルを知っているか?彼女の話、龍のいないタルキールの話を」 「ええ。私も囁く者ですから」 「なら、話は早い。俺は……そうだな、その世界から来た者だ」 サルカンは過去をかいつまんで話した。そして、劇的にも。彼には子供などはいなかったが、龍語りをする友には困らなかった。その為、ある意味では話し慣れていた。 彼が本当はシャーマンであること、自らの龍の存在に気付くこと、そして、タルキールを愛していること。 彼女は、それら全てに目を輝かせていた。 嗚呼、ドラゴンを愛する者はやはり、素晴らしい。彼女の中の龍が産声を上げるのを待っている。

14 18/03/21(水)23:12:20 No.492569101

いい話風に書いてるけど最初の一文がいつも酷過ぎる…

15 18/03/21(水)23:12:33 No.492569168

分かるよ。

16 18/03/21(水)23:21:20 No.492571704

「……そういう訳で、再び龍が戻った。人々は龍と争うのではなく、共に生きている。これこそ、俺の見たかったタルキールだ。そして君はその中でも特別だ。人と龍が愛し合う!我が故郷でそれを見ることが出来るなど、こんな嬉しい事はないだろう」 そうだ、ドラゴンは素晴らしい。人に生まれた我々はドラゴンの姿に憧れるが、心の中のドラゴンには中々気付けない。だから他のドラゴンに導いて貰うのを待つのだ。それは、仕方のないことだった。 「君の中にもドラゴンはいる。今はまだ卵の中で、産まれる時を待っているが……」 「卵?ドラゴンは大嵐より産まれるのではないですか?」 「……比喩だ。とにかく、君の心にもドラゴンはいる。何も縛られず、心のままに生きるドラゴンが。君は一人で旅をする事を選んだ。それは何故か?君の意思だ。君のドラゴンの意思だ」 「私は心がドラゴンになるだけでは満たされないのです。サル・カン。私達は愛し合っています。夫婦になり、共に生きたい」 「それは人の価値観だ。君も翼を広げれば分かるようになる」 彼女は不安定だ。人と龍の間で揺れている。サルカンは、それを導いてやりたかった。

17 18/03/21(水)23:27:27 No.492573305

「翼を広げる?龍変化の呪文を教えてくれるのですか?」 彼女は再び目を輝かせて飛び込んだ。少々参ったな。サルカンは少しため息をついて、同族にその手解きをした。 「母親の言葉が君を動かしたと思うのなら、それは違う。君の中の人と、君の中の龍がせめぎ合っている。だが、人と龍で同時にあることはできない。君は何だ?君は君だ。人でも、龍でもある。君の気持ちだ。……悲しいが、タルキールの龍は子を為すことはない。だが、君が龍となった時、それは些細な問題に思えるかもしれない」 サルカンはまず、翼を生やした。部分的に龍になるところからサルカンも始まった。彼は空想の中で、骨を見て真似た龍から龍を作り出した。彼女はどうだろう?少なくとも才能はあるが、どんな龍を描くのだろう。

18 18/03/21(水)23:29:00 No.492573710

気持ち悪いよサルカン…

19 18/03/21(水)23:35:05 No.492575185

アタルカちゃんのドラゴンはみんな腹ペコでお馬鹿で可愛いよね 氏族の人たちがご飯用意してあげるのも可愛い

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