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18/03/01(木)00:37:49 SS「Sil... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1519832269059.png 18/03/01(木)00:37:49 No.488062517

SS「Silent Evil」

1 18/03/01(木)00:38:46 No.488062675

  第一章 目覚め

2 18/03/01(木)00:39:20 No.488062760

「ん……」  彼女は、薄暗い闇の中、重たい瞼を開きつつ、無意識にうつ伏せで倒れていた体を起こし、立ち上がった。 「ここは……」  自分自身の体に視界を移す。  そこには、ほのかな明かりで照らされた、灰色の制服を着た、少女の体があった。  両の手のひらを自分に向け、まじまじと見る。  そして、彼女は静かに、ひとつずつ思い出してく。  まず、自分の名前。  ――私の名前は逸見エリカ。  その次に、身分。  ――黒森峰女学園機甲科所属、二年生。  そして、場所。  ――ここは、巨大な船の上に学校を中心とした街を乗せた艦船、学園艦の上……のはず。  はず、となったのは、自分がいる場所が本当にそこか怪しかったからだ。  周囲の風景は、見覚えのある学園艦の中だった。

3 18/03/01(木)00:39:36 No.488062816

 そこは、黒森峰学園艦にはいくつもある、戦車を格納する格納庫の内部で、船の内部に存在していた。  その場所には、何度もエリカは訪れたことのあるため、自分が学園艦の中にいるということの根拠付けになった。  だが、その見覚えのあるはずの空間に、エリカはなぜだか違和感を覚えた。言葉では説明しづらい、そんな違和感を。  そして、どうして自分がそんな場所に倒れているのかを説明できなかったのだ。  さらに、今まで自分が何をしていのかも分からなかった。何かをしていたことが説明できれば、なぜそんな場所にいるのかも分かるかもしれない。  だが、そのことすら分からなかったのだ。  エリカは周囲を見回す。  格納庫の中にある灯りはごく僅かで、全体を見ることができない。 「仕方ないわね……」  仕方ないので、周囲を探るために何気なく歩き出してみると、エリカの足にコツンという音と共に何かが当たる感触がした。  エリカが足元を見ると、そこにはポケットライトが落ちていた。  なぜこんなところに? そんな疑問が浮かぶも、エリカはそれを広い、電源を入れてみる。

4 18/03/01(木)00:40:28 No.488062956

 すると、眩い光がポケットライトから放たれた。  どうやらちゃんと点くらしい。  エリカはこれ幸いと、そのポケットライトを胸ポケットに引っ掛けた。  これで、自分の目線にあるものを把握することができる。  エリカは体を動かし、自分の目線の先に光を当てた。  そこには、当然の如く戦車が並んでいた。  だが、殆どの戦車がボロボロの状態で、動きそうなものは少なかった。  ――整備の行き届いているはずの黒森峰の戦車が、どうしてこんなことに?  エリカは不思議に思う。  だが、いくら考えても答えは出ない。  エリカはそれ以上考えても仕方ないと思い、まずは地上――甲板の上にある街に出てみることにした。  格納庫の脇にある扉を開き、細い通路を進む。そして、その途中にある階段を登り、ハッチを開けて地上に出た。  ハッチを開いても光が差し込まなかったことから、どうやら時間帯は夜だということが分かった。  そして、地上に出てエリカが目にしたのは――

5 18/03/01(木)00:40:49 No.488063018

「何よ、これ……」  完全に荒廃した、黒森峰の街並みだった。  コンクリートで出来た道路も建物も、ところどころ黒く煤け、ヒビが入っている。  中には一部崩れている建物もあり、明らかに何かがあったことが窺い知れた。  道路の道端には折れた標識やガラスが割れた車が放置されている。  中には元が何だったのかも分からない鉄くずも転がっていた。  そして何より目を引くのが、僅かにだが、道路や建物を赤く染める、恐らく血痕が付着していることだった。  そのあまりに様変わりした街の様子は、エリカが知っている学園艦ではなかった。 「一体何が、どうなっているのよ……」  エリカは呆然とする。  まさに突然異界に放り込まれたようだった。  記憶もはっきりしないまま、そんな異常な街の中に放り投げられたエリカは、その場に立ち尽くすしかなかった。  だが、いつまでもそうしているわけにはいかない。  エリカは、とにかく歩いてみることにした。

6 18/03/01(木)00:41:13 No.488063090

 もしかしたら、途中で誰かに会うかもしれない。  どこか大きな建物に、人が集まっているかもしれない。  エリカは何もわからない現状で、そんな希望を持つことで自分の足を動かした。  コツコツと、エリカの足音が響き渡る。  それは決して大きな音ではないが、誰もいない学園艦の上では、嫌にエリカの耳に響いた。 「…………」  エリカはとりあえず学校を目指してみることにした。  学校は学園艦の中心的存在であり、何かあったときの避難所としても活用される。  人がいるとしたらそこだろうと、目星をつけたのだ。  学校に向かってエリカは歩く。  歩いても歩いても、人の気配はしない。  夜風が身に染みる。  エリカの中で、孤独感が大きくなっていく。 「誰か! 誰かいないの!」  その孤独を紛らわせるように、エリカは人がいないかと呼びかける。

7 18/03/01(木)00:41:51 No.488063194

 だが、そのエリカの声に応える者はいない。  エリカの大声だけが、虚しく夜の闇に溶けていく。 「何なのよ、何なのよもう……」  今度は、小声で呟くように言うエリカ。  もちろん、その悪態じみた呟きを聞くものはいない。  エリカはただ寂しく、学校を目指し歩くのだった。      どれほど歩いただろうか。かなり歩いたような気もするし、殆ど歩いていないような気もする。  闇と荒廃した環境のなかで、エリカは時間の感覚が狂っていた。  そんなときだった。 「ん……?」  遠くを照らすポケットライトが、何かを照らした。  それは、道路の奥先で、もぞもぞと蠢いていた。  そう、動いていたのだ。

8 18/03/01(木)00:43:06 No.488063401

 今まで見てきた動きのない無機物とは違う。命のある何かだった。 「ちょっと、そこに誰かいるの!?」  エリカは希望を胸に声を掛ける。  しかし、返事は帰ってこない。  不思議に思い、その動く人らしき影にエリカは近づいていった。  そして、その人影を完全に光で照らしたとき―― 「っ!?」  エリカは息を飲んだ。  それは、黒い塊だった。  人間の皮を剥がし、露わになった筋肉を黒く塗ったような何かだった。  まだ人間らしい下半身と、大きく膨張した上半身。肩はなく、不自然な位置から地面をこするほど長く、細い腕が垂れている。  それはプルプルと小刻みに震えており、よく聞けばうめき声のような音を発している。  そいつの黒い筋肉は震えと共に波打ち、得も言われぬ不快感を与えてくる。 「……な、何なのよ……!?」  エリカはそれを見た瞬間に、巨大な恐怖に取り憑かれた。

9 18/03/01(木)00:43:25 No.488063463

 今にでも逃げ出したいのに、足が言うことを聞かない。  手足はブルブルと震え、動かすことができない。  エリカがそうして動けないでいると、それは、その異形は、ゆっくりとエリカに向かって、振り向いた。 「え……?」  エリカの口から間抜けな声が出る。  それは、エリカが見たからであった。  膨張している上部から少し下がる位置から生えている、その首を。  首から角度をつけて曲がっている、その顔を。  見覚えのある、その人相を。 「小梅……?」  その顔の主の名は、赤星小梅。  エリカと同じ機甲科にいる二年生であり、エリカの友人の一人である。 「ア……アア……」  小梅の顔をしたソレは、ゆっくりとエリカに向かって歩いてきた。 「アアア……アア……」

10 18/03/01(木)00:43:54 No.488063548

 どんどんと近づいてくるソレに、エリカの本能が告げる。  ――逃げろ、逃げろ、逃げろ!  早くそうしなければ、自分は確実に殺される。  そのことがエリカには直感で分かった。  だが、足は言うことを聞かない。  ガクガクと震える足は、ソレが近づいてくるのにも関わらず、動いてくれようとはしてくれない。 「……アア……ア」  ソレは、とうとうエリカの目の前にまでやってくると、緩慢な動作で両腕を組み、振りかぶった。  頭上高く振り上げられるその両腕。  このまま、エリカの頭目掛けて振り下ろすつもりなのだろう。  ついにその腕を上げる動きが止まり、エリカに対し組まれた両手が落ちてくる、その瞬間―― 「――っ!」  エリカの足はついに動き、横っ飛びでソレの鉄槌から逃れた。  ソレの手は虚しく空を裂く。  だが、外れたやいなや、ソレは横に飛んだエリカのほうを向き、再び近づいてくる。

11 18/03/01(木)00:44:17 No.488063628

「……く、来るなっ!」  エリカは横っ飛びで屈んだ体制から、這々の体でなんとか体制を戻し、ソレから逃げるために走る。 「ア……アア……エリカ……サン……」  ソレはノロノロとエリカを追いかけてきた。エリカの名を呼びながら。だが。エリカの脚力がその遅い動きを上回った。  エリカは走る。とにかく走る。振り返ることなく走る。  そして息を切らす程に走った後に、エリカは立ち止まり振り返る。  そこには、ただ夜闇が広がっているだけだった。 「はぁ……はぁ……」  エリカは荒い息をしながらそこに座り込んだ。 「一体、あれはなんなの……!? 小梅……よね……? あの姿は、一体……!」  エリカは混乱の極地にいた。  突然訳も分からない状況に放り込まれ、突然化物になった友人に襲われる。  混乱するなというほうが無理な話だった。 「何よ……! 何よ……! 何よ……!」  エリカは混乱のあまり怒りの混じった声で言う。

12 18/03/01(木)00:44:40 No.488063698

 エリカの頭は恐怖を通り越し、怒りにまで達していた。 「何よ何よ何よ何よ……!」  そうしてエリカはとにかく怒りを吐き続ける。  そうして怒りを吐き続けること数十秒。  恐怖を怒りにし、外に出すことでエリカはだんだんと冷静になってきた。 「そうよ……落ち着きなさい、逸見エリカ……」  頭を冷やしたエリカは、今後のことを考える。  ――一体どうするべきか。そんなのは決まっている。逃げるべきだ。この学園艦から、逃げるべきだ。ここにいては、またいつアレに襲われるか分からない。  エリカはそのためにどうすべきかを更に考える。  ――学園艦は恐らくどこかの洋上にある。逃げるにしても、手段は限られる。あるとすれば、緊急用の小型艇か、普段使われているヘリだ。しかし、それを使うにも艦船が今どこにいるかを知らなくてはならない。そのためには、ブリッジに行って船の場所を確認しなければ。 「……よし」  エリカは考えを纏めると、その場から立ち上がり場所を確認する。  学園艦はもう長いこと暮らしてきた、エリカにとって庭のような場所である。

13 18/03/01(木)00:45:13 No.488063798

 荒廃したところで、周囲を見回せばだいたいどこの位置にいるか分かるのだ。  そして、そこからエリカは、今の位置がブリッジに近いことを確認した。 「ラッキーね」  エリカはそう言うと、その場から歩き出す。  目標はブリッジ。  そこにたどり着くために、エリカは動き始めた。  もちろん、エリカは先程よりもずっと警戒して道を進んだ。  あの怪物が、他にもいないとは限らないからだ。  エリカは慎重に歩く。  と、その途中でエリカはとある場所に足を止めた。 「ここは……」  そこは、スポーツ用品店だった。  扉が壊れ、中に入れる。 「……もしかしたら、何か役に立つものがあるかもしれないわね」  そう言って、エリカはスポーツ用品店の中に入っていった。

14 18/03/01(木)00:45:40 No.488063882

 スポーツ用品店の中は荒らされており、物はあまり残されていなかった。  だが、エリカはその中でとある物に目をつけた。 「これ、いいわね」  そこにあったのは大きなバッグだった。  恐らく、登山用か何かだろう。  学園艦の上で登山用品を買う必要性がないからか、殆どが手がつけられていなかった。  だが、今のエリカにとっては役立つ用品だった。 「いろいろ詰め込むことができそうね」  エリカはその中から手頃なバッグを手に取ると、それを背負い、再びスポーツ用品店の中の探索を始めた。  そして、エリカはすぐさま次の目当てのものを見つける。 「これがいいかしら」  エリカが手に取ったのは金属バットだった。  重みがあり、殴られればタダではすまないだろう。  それが、今のエリカには心強い武器となる。

15 18/03/01(木)00:46:04 No.488063951

 エリカはバットを手にしたまま、再び探索を開始した。  しかし、他には特に役立ちそうなものはなかった。  強いて言えば、何かに使えそうかもしれないという理由から、野球ボールを幾つか拝借したぐらいだった。  バッグを背負い、金属バットを手にしたエリカは、そのままスポーツ用品店を出て、再びブリッジを目指す。  ブリッジまでの道は問題なく通ることができた。道のりはただ荒廃しているだけであり、異形が襲ってくる気配はなかった。  だが、ブリッジへと到達するために船の中に入ると、エリカは緊張で身を固まらせた。  ブリッジへと続く船内の道に、血痕があったのだ。その血痕は、エリカが目指すブリッジへと続いている。  この先に、何かがいる。  エリカはそう確信した。  エリカは慎重に血のついた階段を登っていく。  ブリッジは四階上にあり、階を一つ上がっていくたびにエリカは息を飲む。  そうして階を一つずつ上がっていき、ついにブリッジのある四階へとたどり着いた。  そして、エリカは見た。

16 18/03/01(木)00:46:27 No.488064013

 ブリッジと廊下を隔てる扉の正面に、あの黒い筋繊維に覆われた異形が立っていることに。  そして、その脇に恐らく黒森峰の生徒だったものが横たわっていることに。 「アアア……」  その異形は奇怪な声を上げている。  エリカはそれを廊下の曲がり角に背をつけ、息を殺して覗き見た。  その異形は死体を弄んでいた。  長い腕で、もはや息をしていないその生徒の体をぐちゃぐちゃと触れていた。 「……ふぅ」  エリカは聞こえない程の小さな声で息を吐く。  そして、バッグから先程拝借した野球ボールを取り出した。 「……やってやるわ。やってやるわよ」  エリカはボールを握りしめ、そして、それを異形の向こう側の廊下の壁に思い切り投げつけた。  ボールは異形の横を通り、壁に大きな音を立ててぶつかる。 「ア……」  その音の方向を異形が見た。

17 18/03/01(木)00:46:43 No.488064059

 その瞬間、エリカは異形に向かってバットを持って駆けた。 「うわああああああああああっ!」  エリカは大声を出し異形の背後まで詰め寄ると、その異形の背中を思い切りバットで殴りつけた。 「アアア……!」  異形が苦しそうな声を出す。  エリカはその反応を伺う間もなく、何度もバットで殴りつける。 「このっ! このっ! このっ!」  エリカは半ば半狂乱になりながらも異形を殴り続ける。  すると、やがて異形の体は、ゆっくりと床に倒れた。  そして、でろでろとまるで重油のような黒い液体を床に広げる。それは異形の血だった。 「ふんっ! ふんっ! ふんっ!」  エリカはそれでも異形を殴り続ける。  もはや死んでいると分かっても、エリカは殴るのをやめなかった。  何度も何度もその異形を殴る。殴る。殴る。 「はぁ……はぁ……」

18 18/03/01(木)00:47:09 No.488064144

 そして、エリカが肩で息をするほどに披露を重ねたときに、ようやくエリカは異形を殴るのをやめた。 「…………」  エリカは黒く染まった、随所がへこんだバットで、異形の体を突く。  異形は何の反応も示さない。  そのままエリカは、倒れた異形の体をバットで仰向けにした。  そこには、誰とも知らない人の顔が張り付いていた。  蒼白で、とても血が通っているとは思えない顔。 「うっ……」  苦悶に満ちたその顔を見て、エリカは思わず口を押さえた。 「……ごめん……なさい……」  そして、次にエリカの口からこぼれたのは、謝罪の言葉だった。 「私は……化物になったとはいえ、人を殺してしまったのね……本当に、ごめんささい……」  エリカの心は罪悪感で満たされていた。  いくら自分の命が危なかったっとは言え、いくら異形の姿だったとはいえ、恐らく元は人間だったのである。  その生命を絶つことに、なんのためらいもないはずがなかった。

19 18/03/01(木)00:47:32 No.488064204

 エリカはしばらくそこに立ち尽くし、異形の死体を眺めていた。  異形は当然ながら、起きてくる気配はない。  異形の血はどんどんと広がっていき、やがて近くにあった別の生徒の血と混ざる。  その色は上手く混ざり合うことなく、奇妙な模様を描いていた。  エリカは息を落ち着けると、やっとその異形から目を離し、ブリッジへと入る。  当然ながら、ブリッジには人の気配はなかった。  あるのは、それを操る主がいないにも関わらず、稼働し続ける機械類のみ。  エリカはブリッジの中を探索した。  そして、その機械の中から、恐らく海図を映し出していると思われるモニターを見つけた。 「これね……」  エリカは船舶科ではないため、機械の操り方は分からない。  しかし、その海図に写っている海と岸の図はエリカにとって見覚えのある図であり、更に、海図の近くにその近接している港について書かれているメモ書きが置いてあったため、現在地をうかがい知ることができた。  その地図とメモに示された場所、そこは――

20 18/03/01(木)00:48:05 No.488064298

「ここは、大洗港……?」  そこは黒森峰にとって因縁深い土地、大洗だった。 「うっ……!」  エリカに突如頭痛が襲う。  そして、エリカの頭にとある記憶が蘇った。 「……そうだ。確か、今回は大洗港に寄港していて……」  エリカは直近の記憶を思い出す。  大洗に船が寄った記憶だ。 「……どうして、私はこんなことも忘れていたの?」  エリカは自分の記憶について不思議に思う。  ――やはり、現在の状況が何か関係しているのだろうか? 分からないことだらけだ。  そんな風に、エリカの頭には謎が増える。  しかし、今はその謎解きをしている場合ではないと、エリカは考えた。 「今は、この船から脱出しないと」  それが今のエリカにとっての最優先事項だった。

21 18/03/01(木)00:48:30 No.488064356

「さて……この距離だと、ヘリで十分岸に到着することができるわね」  エリカは海図からの距離を計算し――ヘリコプターを操縦できるエリカは、ある程度の知識は持っていた――逃げる算段を立てる。  エリカの頭に浮かんでいるのは、黒森峰の生徒が利用できるヘリコプター、Fa223だった。  第二次世界大戦時にドイツで作られた、世界で最初に量産されたヘリコプターである。  黒森峰にはそういった第二次世界大戦時のドイツの兵器、武器などが大量に存在していた。  エリカはそれを利用することを考えたのだ。 「よし、善は急げね。早くここから離れましょう」  エリカは海図におけるメモ書きなど必要そうなものをバッグに入れると、そのままブリッジから出た。  そして、今度は足早に階段を降りていく。  三階、二階と、素早く降りていき、ついに一階に差し掛かる。  そのときだった。 「アアアアアアア……!」  エリカは異形と、目があった。 「――っ! しまった!」  どうやら、外から異形が一階に入り込んできたらしかった。

22 18/03/01(木)00:49:16 No.488064471

 それに気づかず、エリカは異形と正面から顔を合わせる形となったのだ。 「アアアアアアアアアッ……!」  異形がエリカに向かって襲い掛かってくる。  腕を上げる動き自体は緩慢であるが、近づいてくる足取りは早かった。 「くっ!」  エリカは狭い廊下の間をくぐり抜けるように前転し、異形の攻撃を避ける。  異形の腕はエリカのいた場所に空振る。  異形がエリカに隙を見せる。  その隙を、エリカは逃さなかった。 「はああああっ!」  エリカはバットで異形を殴る。  四階のときのように、何度も殴り続ける。  そして、今度も息の根が止まるまで異形を殴り続けた。 「アアアアッ……」  異形は断末魔を上げながら倒れ、黒い血を床に広げる。

23 18/03/01(木)00:49:33 No.488064519

 今度のエリカは、その姿を冷静に眺めることができていた。 「……ははっ、何よ、案外簡単じゃない」  エリカの口から笑みが溢れる。  それは異形に立ち向かうことができると知ったからか、それとも、旨に込み上げてくる罪悪感から逃れるためなのか、エリカには分からなかった。  エリカは死体を後にし、船内から出る。  そして、今度はヘリコプターの存在するヘリポートを目指す。  ヘリポートは、ブリッジからさほど遠くない場所にあった。ブリッジからヘリの離着陸を観測できるようにするためだ。  エリカはヘリポートに向かい歩き出す。  その道中にて、 「……いるわね」  エリカは、異形の姿を確認した。  一つではない。複数の異形がエリカの進行方向を彷徨いていた。 「アアアア……」 「アアア……」  異形はそれぞれその場を不規則に歩いている。

24 18/03/01(木)00:49:58 No.488064579

 エリカは考える。  ――どうするべき? 正面突破する? いや、それには数が多すぎる。一体ならともかく、複数に囲まれると危ない。なら、見つからないように進むべきだ。  そこまで考えると、エリカは周囲の地形を見回した。  ボロボロに崩れてはいるが、そこは住宅街だった。  いくつもの建物が並び立っている。  エリカはそこに目をつけた。 「この中に、入れる家があれば……」  エリカは異形の気を引かないように、しゃがみ歩きをしながら、近くの家屋の扉に手をかける。  そのどれもが開かない。ガチャガチャと音を立てるのみである。 「……やっぱり、無理なのかしら……」  エリカがそんな風に考え始めたときだった。  一軒の家の戸が、ギギギという音を立てながらも開いたのだ。 「よし!」  エリカは小さな声で言う。  そのままエリカはその家の中に入っていった。

25 18/03/01(木)00:50:25 No.488064654

 家の中は荒れ放題で、とても人の気配はしない。  だがそれはエリカにとって都合がよかった。  エリカは土足で家に上がると、そのまままっすぐ家の裏口へと行く。  当然ながら、その扉は内から開けることができるので、エリカはそのまま扉を開けた。  扉は庭へと通じていた。  学園艦の上とはいえ、小さな庭程度なら一軒の家に十分持てるのである。  エリカは庭に出ると、そのまま庭を横切り、柵を跨いで隣の家の庭へと移った。  それがエリカの考えた移動方法だった。  家と家の庭の間を移動していき、なるべく道にいる異形との接触を避ける。  もちろん、庭や家の中に異形がいる可能性がないとも言い切れない。  だが、目に見えて数がいる道を横切るよりは、よっぽど安全だとエリカは考えたのだ。  少なくとも、連なる家の庭には異形の姿は見えなかった。  エリカは次々と柵を越えながら、庭を移動していく。  時折自分がどこにいるか分からなくなりそうだったが、そのときはエリカは地図を確認した。  ブリッジで手に入れた地図だ。

26 18/03/01(木)00:50:49 No.488064718

 いくら学園艦がエリカにとって庭であるとはいえ、他人の家の庭まで頭に入っているわけではない。  エリカは庭を幾つか越えるたびに地図を確認し、自分の場所をそこに書き込んでいく。  そうして、エリカは慎重に、しかし迅速に移動していった。  すると、エリカはとある地点で足を止めた。  そこには、隣の庭へと続く柵と柵の間に、鉄クズが大きな山を作っていたからだ。 「これを超えるのは……無理ね」  鉄クズの山は高くそびえ立ち、そして横にも延々と伸びていた。登るのも、迂回するのも無理そうだった。  エリカは地図を見る。どうやらまだ目的地へはたどり着けていない。  エリカは仕方なく、その地点の家から一旦中央の道に戻ることにした。  異形と出くわす危険性があるが、背に腹は代えられなかった。  裏口の戸に手をかけると、扉はするりと開き、中に入ることができた。  エリカはほっと旨を撫で下ろす。ここで開かなかったら、また開く家を探すことになっていたからだ。  エリカは家の中に入ると、そのまま玄関を目指す。  だが、玄関にたどり着いたとき、エリカは想定外の自体に出くわした。 「これは……」

27 18/03/01(木)00:51:31 No.488064845

 そこの扉には、通常の鍵とは別に、ナンバー式の錠がかけられていたのだ。  扉の鍵を開けても、そのナンバーロックを解かなければ開くことができないようになっている。 「はぁ……」  エリカはため息をついた。 「結局、別の家を探すしかないってことね……面倒だけど、戻りましょう」  エリカがそう言った、そのときだった。    ガラガラガラガラ!   「っ!?」  裏口から、突如大きな音がした。  エリカが裏口を見に行くと、なんと先程の鉄クズの山が倒れてきて、裏口を塞いでしまっていたのだ。 「そんな……これじゃあ、出られないじゃない!」  エリカは、他にも出口がないか探し回る。  だが、窓はどこも板が打ち付けられており、道具がなければそれをこじ開けることはできないだろうとエリカは判断した。

28 18/03/01(木)00:52:02 No.488064935

 エリカは、完全に閉じ込められてしまった。 「どうすれば……」  エリカは途方に暮れる。  まさかこんなところで閉じ込められるとは思ってみなかった。  仕方なく、エリカは玄関に戻る。  そして、錠を目の前に考え始める。 「最悪、総当りで調べてみるというのも……でも、四桁の数字から一つの当たりを見つけるのには、かなりの時間が必要よね……何か、この家に手がかりはないかしら」  エリカは家の中を探索してみることにした。  もしかしたら、何かヒントがあるかもしれない。そんな僅かな期待を持って。  まずは一階の探索を始めた。だが、一階には特にめぼしいものは見当たらなかった。  ただ、台所に複数本の包丁を見つけたため、エリカはそれを持っていくことにした。  今度は二階に上がっていくエリカ。  二階に上がると、部屋が三つほど並んでおり、とありあえずエリカは正面の部屋に入ることにした。  そこはどうやら寝室のようだった。何か手がかりはないかとあたりを物色する。  そこでエリカの目についたのは、一冊の日記帳だった。

29 18/03/01(木)00:52:23 No.488064991

 もしかしたら番号に関する、あるいは現在の状況に関する手がかりがあるかもしれない。  そう思い、エリカは日記帳を開いた。 『九月一日。あの子の夜遊び癖にも困ったものだ。学校の新学期が始まると言うのに、夜な夜なこっそりと抜け出しては町に繰り出しているらしい。学生が主体の学園艦なら、もっと夜はおとなしくあってもいいと思うのに。これからは家の玄関に別個に鍵を掛けようと思う。番号は、あの子の好きな黒森峰の戦車道選手の誕生日にした。灯台下暗しというやつだ。まさかあの子も自分の好きな選手の誕生日が暗証番号になっているとは思うまい』 『九月二十八日。あの子の夜遊び癖も、鍵を掛けてからはぱったりとなくなったようだ。あの子は不満そうにしていたが、これもあの子のためだ。仕方ない。そういえば、あの子の好きな選手がここのところ元気がないらしい。話によると、前の大会からずっとなのだとか。一体何があったというのか。あの子のためにも、元気になって欲しい。それにしても、今日は嫌に天気が悪い。天気予報では快晴だったはずなのにどうして――』  日記はそこで切れていた。

30 18/03/01(木)00:52:48 No.488065053

 学園艦が現状の状態になった理由は分からなかったが、暗証番号の手がかりは手に入れることができた。  そして、恐らく今が九月末であることも理解した。  エリカは部屋を出る。  そして、横に並ぶ他の部屋の扉に手を掛ける。  恐らく、先程のは親の日記であり、近くが子の部屋なのだろうとエリカは推察した。  エリカはドアノブを回す。  最初にドアノブを回した部屋の扉は、開かなかった。 「ちっ」  エリカは舌打ちをする。  もしこの部屋が当たりだった場合は、もう八方塞がりである。  エリカは次の部屋が当たりであることを願いながら、もうひとつの部屋の扉のドアノブを回した。  すると、今度はするりと回り、部屋の中に入ることができた。  その部屋の中を見て、エリカは――

31 18/03/01(木)00:53:05 No.488065105

「ビンゴ」  と、思わずニヤつきながら言った。  その部屋には勉強机とベッド、あたりに散らばるクッションなどがあり、どう見ても女の子の部屋であった。  エリカはその部屋を調べ始める。エリカが目をつけたのは勉強机だった。  学生が何かをしまうのなら、まずここだからだ。  エリカは並べられている本を手に取る。  当然ながら、その殆どが教科書だった。  今度は、机の中身を調べる。  引き出しは開かない場所もあったが、一番下の大きな収納引き出しには鍵は付いておらず、すんなりと開けた。  そこには、雑多にプリントやクリアファイルなどが収納されていた。  その中にある一際大きなクリアファイルに、エリカは目をつけた。  エリカはそれを手にとって開く。  そこにファイリングされてある写真に、エリカは目を丸くした。 「これ……私……?」  そこには、エリカの写真が何枚も収められていた。殆どは黒森峰側が宣伝として作ったブロマイドだが、中には試合中のエリカを自らのカメラで納めたものもあった。

32 18/03/01(木)00:53:31 No.488065170

「つまり、暗証番号は私の誕生日ってわけ……?」  エリカはふっと吹き出す。  まさか自分の誕生日が道を突破する鍵になっているとは、まったくもって思っていなかったのだ。 「時間をかけさせてくれたわね」  エリカはそういいながらクリアファイルを引き出しに戻す。  そこでエリカは、一つの疑問に当たった。  日記には、ここ最近エリカの元気がないと記されていた。  しかし、エリカにそんな記憶はない。  つまり、自分の長期にわたる記憶すら欠落しているということだ。  一体この記憶の欠落は何を意味しているのか。  謎は増えるばかりであった。  そんなことを考えながら、エリカが部屋を出た、そのときだった。    バンッ!

33 18/03/01(木)00:53:46 No.488065209

 突如大きな音が開かずの扉からしたかと思うと、なんとその扉が開き、中から一際大きい異形が飛び出して来ていたのだ。 「アアアアアアアアアアアッ……!」  その異形が他の異形と違うところは、大きさだけではなく、蒼白とした顔が三つあるというところだった。  その顔はどれも苦悶に満ちた表情をしており、その黒目のない白い目が飛び出さんとするほどに開いている。 「アアアアアアアアアッ……!」  異形がその太い腕でエリカに襲い掛かってくる。 「ちぃっ!」  エリカはそれを間一髪で避ける。  異形はそのまま二階の壁へとぶつかった。  壁が大きくへこむ。生身で受ければ、とてもではないが無事ではすまないだろう。  エリカは異形がのろのろとした動きで壁から頭を抜いている間に、下の階に降りた。  狭い二階では戦いにならないと判断したのだ。  異形はエリカを追って一階に降りてくる。 「はああああああああああああっ!」

34 18/03/01(木)00:54:41 No.488065356

 エリカはそこを待ち伏せし、バットで殴打する。  だが、その巨体は他の異形と比べて怯むことなく、エリカのほうを向く。 「つっ!」  エリカは素早く横転する。  大きな異形の体が先程までエリカのいた場所を掠める。  エリカはその隙をついて、再び異形を殴る。  避けて、殴る。  その繰り返しだった。  本当にエリカの攻撃が効いているか、エリカは訝しみそうになったが、きっと無駄ではないと信じ、エリカは殴り続ける。 「アアアアアア……」  すると、十数回ほど殴ったあたりで、元々のろまだった異形の動きが鈍り始めた。  エリカはそこに機会を見た。 「っ!」  エリカは先程手に入れた包丁を取り出すと、それを怯んでいる異形の顔めがけて突き立てた。 「アアアアアアッ……!?」

35 18/03/01(木)00:54:56 No.488065396

 異形が明らかに今までと違う反応をする。  エリカはそこで手を休めず、何度も異形の顔を刃で抉った。  そして、包丁とエリカの制服が異形の黒いタールのような血で染まった頃に、ついに異形は足から崩れ落ち、活動を停止した。 「はぁ……はぁ……」  エリカは息をつきながらも、異形の死体を見下ろす。  戦っている最中には気づかなかったが、エリカが刃を立てた三つの顔はそれぞれ、大人の男性、女性、そして子供の女の子の顔をしていた。  それが意味するところをエリカは理解し、エリカは眉をひそめる。 「こんなひどいことが……」  得も言われぬ嫌悪感。  それはエリカの背中に重くのしかかってくる岩の如き感情だった。  その岩は重く、エリカに足を進めさせることを躊躇わせる。 「……駄目よ……ここで止まってはいられない」  だがエリカは、なんとかその死骸から目を逸し、玄関へと進む。  そして、玄関のナンバーロック式の鍵の数字を合わせていく。 「〇三〇六……これで開かなかったら、お笑いものね」

36 18/03/01(木)00:55:14 No.488065446

 エリカは自嘲気味に笑う。  もちろん、鍵はその番号でしっかりと開き、玄関の扉を開くことに成功した。  エリカは玄関から外に出る。  ヘリポートまで、あと僅かだった。 続く

37 18/03/01(木)00:57:15 No.488065772

続いた!

38 18/03/01(木)00:58:02 No.488065904

赤星がショゴスになってる…

39 18/03/01(木)01:01:37 [す] No.488066480

続きは明日というかもう今日だけど夜の11時~11時半ぐらいに投げたいと思います あとついでに昨日建てたスレでレスできなかったレスがあったので答えておこうと思います >あの…前の本の再版の予定とかはあったりなんかしないので? 学園祭にサークルとして出るのでそのとき余った本もってこうかなーと思ってます 何を出すかと言うと最初はソ・ラ・ノ・ヲ・ト本考えてたけど今はこれまで書いたダークサイドからよりぬき集みたいの作ろうかなってなってます

40 18/03/01(木)01:03:58 No.488066847

>何を出すかと言うと最初はソ・ラ・ノ・ヲ・ト本考えてたけど けいおんちゃんは辞めたのか…

41 18/03/01(木)01:05:13 No.488067068

これは破滅SFなのかいそれともクトゥルフなのかい?

42 18/03/01(木)01:06:42 [す] No.488067308

>けいおんちゃんは辞めたのか… とりあえずホットなうちにガルパン本で出ておきたいなーっていう気持ちがあったので…… ソ・ラ・ノ・ヲ・ト本も諦めてないけどね 今回の結果によるけど今後も学園祭出るってなったらいつか出したい あと空深彼方ちゃん!空深彼方ちゃんです!

43 18/03/01(木)01:06:47 No.488067330

なんとなく吸血鬼ゴケミドロを思い出した

44 18/03/01(木)01:07:44 [す] No.488067488

>これは破滅SFなのかいそれともクトゥルフなのかい? そこら辺もどうなるかぜひ楽しんで欲しい

45 18/03/01(木)01:09:58 No.488067881

今日のスレ画エリカの目にハイライトが有るッ!

46 18/03/01(木)01:20:50 No.488069648

ダークサイド「」にお詫びがございます 以前ダークサイド「」のクトゥルー物の時にコラ作ってみるとレスしました…努力はしたんですいくつか自分で描いたんですがどうもしっくり来ませんで結局安易なコラになってしまいました su2271558.jpg…HPR版 su2271564.jpg…ダークサイド「」版 もうちょっと頑張ってみるね

47 18/03/01(木)01:22:16 No.488069837

この話は好きな好みなタイプのSSですよ...ええ

48 18/03/01(木)01:23:37 [す] No.488069989

>ダークサイド「」にお詫びがございます >以前ダークサイド「」のクトゥルー物の時にコラ作ってみるとレスしました…努力はしたんですいくつか自分で描いたんですがどうもしっくり来ませんで結局安易なコラになってしまいました >su2271558.jpg…HPR版 >su2271564.jpg…ダークサイド「」版 >もうちょっと頑張ってみるね ありがたい……今度ガールズ&クトゥルー書くときはメインキャラにこの画像くっつけてみようかな 無理しなくていいのよ!これだけでもめっちゃ嬉しいから!

49 18/03/01(木)01:23:41 No.488070002

こうやって還元投下してくれるのは実にありがたい

50 18/03/01(木)01:25:16 No.488070202

>今日のスレ画エリカの目にハイライトが有るッ! ほんとだ!

51 18/03/01(木)01:25:47 No.488070270

>無理しなくていいのよ!これだけでもめっちゃ嬉しいから! ダークサイド「」にそう言ってもらえると本当に嬉しい だからもうちょっと精進するね

52 18/03/01(木)01:27:44 No.488070518

続きが楽しみですよ私は

53 18/03/01(木)01:28:29 [す] No.488070619

>>今日のスレ画エリカの目にハイライトが有るッ! >ほんとだ! 今回の話のエリカはそれなりにタフに頑張るのでこのスレ画にしました たまには頑張るエリカもいいよね!

54 18/03/01(木)01:31:11 No.488071006

>たまには頑張るエリカもいいよね! いい…合言葉はHope

55 18/03/01(木)01:33:08 No.488071246

あの…今までのエリカも頑張ったけど結果は…

56 18/03/01(木)01:35:45 No.488071570

あああああ………え…ぃぁ…しゃん…お願い…して…ころして…

57 18/03/01(木)01:40:56 [す] No.488072154

>あの…今までのエリカも頑張ったけど結果は… 今回のエリカは頑張る いいね?

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