ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
17/12/23(土)00:13:43 No.473522803
日頃は生徒たちの生活の場となるロンディニウム学園の学生寮も クリスマス休暇を間近に控えると人が消えていく。 多くの者は実家に帰り家族と共に聖なる夜を過ごすことになるだろう。 「じゃあね…。モーちゃん…」 「おう、また新年になフラン。あんまりあのオヤジ甘やかすなよ」 モードレッドの学友、ルームメイトのフランも荷物をまとめて家路につく。 彼女の実の両親は他界しているが、どこぞの大学の数学教授の養子になったと聞く。 会うと胡散臭いことこの上無い親父で、好きになれないオッサンだったが、 嫌がられても抱きしめに来る様からは娘を真剣に愛している気持は伝わってくるし、 自分の身の上と比べてみれば、親に溺愛されるフランの境遇は少し羨ましく思える。 「…チッ。つまんねえこと考えちまった」 フランが退寮した後、広くなった部屋で一人天井を仰ぎ見るモードレッド。 彼女は長期休暇だからと言って家に帰るつもりはなかった。 「アイツん所にでも行ってくるか…」 休み前の学生に珍しい不機嫌な表情をぶら下げてモードレッドは男子寮へと向かった。
1 17/12/23(土)00:14:10 No.473522917
「モヤシ、いるか?」 女学生が勝手に男子寮の個室に上がり込んでくることは大きな問題のはずだ。 しかし彼女と入学式の日に知り合ってこの方、ずっと彼女に振り回されてきた この上級生の男子にとって、この程度の奇行は既に珍しくもないものになっている。 モヤシと呼ばれた優男風の上級生、ジキルが呆れた顔をしたのは、 「だからせめてノックはくらいしてくれ」という無言の抗議。 そんなジキル先輩の反応も意に介さずにモードレッドはずかずかと彼の部屋に入る。 ジキルは成績優秀な優待生で寮に個室を与えられており、 モードレッドとしても遊びに来やすかった。不機嫌な時ほどよく訪れた。 「なぁモヤシ」 ジキルも退寮のための荷造りを始めていたので、床の散らばった荷物を踏まないよう モードレッドはそれらを避けて歩いて奥のベッドに勝手に転がった。 「お前は家、帰んの?」「一応ね…。掃除くらいはしないと」 ジキルも両親がいないが、下町のアパートメントの一室を生前に両親が 買ってくれていて、一応そこが実家ということになっている。
2 17/12/23(土)00:14:45 No.473523048
「なんだよ。つまんねーな」 フランといい、気心知れた人間が残らず消えていく様に、 モードレッドの不機嫌な顔はより酷く歪んでいく。 そんな彼女にジキルが「君は帰らないのかい」と尋ねるのは当然の話だろう。 モードレッドは下町に住む自分などとは違い、上流階級のお嬢様と聞いた。 本当の意味で帰るべき家が、共にクリスマスを過ごす家族があるじゃないかと ジキルは暗に尋ねたのだが…。 「…」「そっか」 むすっと無言になったモードレッドにジキルはそれ以上踏み込まなかった。 お金持ちの家にもそれなりの厄介事はあるらしいと、ジキルは察した。 「…」「…」 少年少女の無言のままに時間は過ぎていく。 ジキルは荷造りを続け、モードレッドはベッドの上で顔を俯けていた。 チックタックと時計の針の音が進み、窓から入る光の角度が変わっていく。 モードレッドにとってその時間は不思議と居心地が良かった。
3 17/12/23(土)00:15:21 No.473523187
モードレッドは気持ちの切り替えができる少女だとジキルは知っていた。 不機嫌であっても、時間を置いて話題を変えれば、ころっと良い様に表情が変わる。 そのタイミングを掴むのにはちょっとしたコツが必要だったが、 よく上がり込まれる身になったからにはそのくらい把握しないと相手は務まらない。 「ところでクリスマスだけど…。予定が無いなら食事でもどうかな」「!!」 ぴくんと彼女の耳が敏感に反応して、どんよりとした瞳に輝きが戻る。 しかしその一瞬が通り過ぎると、やや照れた顔に眉毛をUの字に曲げた。 「モヤシ…女にモテないからってオレを家に連れ込もうって腹か?!」 これが彼女の面倒臭いところなのだが…。 これは決して、嫌がっているのではないのである。 「嫌ならいいけど」とジキルがそれとなく突き放すようなことを言うと、 モードレッドは「嫌って訳じゃねえよ!」と強気で言い返してくる。 「どうしても!てめぇがクリスマス一人が嫌って言うなら…付き合ってやるって」 「はいはい。じゃあ君も帰り支度しないとね」 「分かってるよ!!ちょっと待ってろ!!このモヤシ!!」
4 17/12/23(土)00:15:56 No.473523300
勢いよく男子寮を飛び出したモードレッド。 彼女とジキルは校門前で待ち合わせることになったが、 やたらおめかししたモードレッドがトランクを下げてやって来るのに3時間かかった。 「…行くぞモヤシ!!お前ん家!!」 勢いよくジキルの腕を掴んで歩き始めるモードレッド。 君は僕の家を知っているのかいと呆れながら、引っ張られるように歩くジキル。 こんな二人であるから、ジキル宅での二人っきりのクリスマス休暇と言っても、 艶っぽいエピソードに恵まれることはなかった。 どちらかと言えば、ボケとツッコミの応酬にゲンコツがやや混じるような、 愉快で騒がしい数週間が続いて二人は新学期を迎えることになるのだが、 新学期早々のモードレッドを見たフランが、 (モーちゃんは冬休みに良いことがあったに違いない) と思ったというから、モードレッドにとっては良い思い出になったのでしょう。 めでたしめでたし。
5 17/12/23(土)00:16:29 No.473523411
長えよ!
6 17/12/23(土)00:25:45 No.473525246
キテる…
7 17/12/23(土)00:26:55 No.473525453
ジキモーいい…
8 17/12/23(土)00:30:41 No.473526208
クリスマス怪文書か…
9 17/12/23(土)00:40:47 No.473528295
むっ!!!!!!唐突に閃いた!!!!!!!!!!!!!!!
10 17/12/23(土)00:42:35 No.473528695
そう言ったことのないプラトニックな友情とてもいい
11 17/12/23(土)00:43:50 No.473529036
いい…
12 17/12/23(土)00:43:57 No.473529053
いい…良すぎる…
13 17/12/23(土)00:44:37 No.473529257
ジキル君はモーさんとか式みたいな男勝りな女子に絡まれがちだな…
14 17/12/23(土)00:45:14 No.473529408
もう世界観も何もなくてダメだった
15 17/12/23(土)00:45:15 No.473529418
こういうのいい…とてもいい…
16 17/12/23(土)00:45:25 No.473529464
結構長いのにスラスラ読めたし脳内再生余裕だったからすごい
17 17/12/23(土)00:46:10 No.473529597
秋にこのスレ画お出しされたときのテンションすごかったよね…
18 17/12/23(土)00:51:42 No.473530807
モーちゃんって呼び方かわいいな…
19 17/12/23(土)00:58:21 No.473532143
実の姉に逆レされて作られたとはいえ 一応学費とかは出してるし別に嫌ってるわけでもないが 家の後継者としては認めてない父上(女)がいる実家とか帰りたくなさすぎる…
20 17/12/23(土)00:59:41 No.473532404
>もう世界観も何もなくてダメだった あるじゃん!学パロ!!
21 17/12/23(土)01:00:24 No.473532538
>あるじゃん!学パロ!! 学パロいいよね!!!僕も大好きだ!!!!
22 17/12/23(土)01:01:11 No.473532674
こういうのでいいんだよこういうので!
23 17/12/23(土)01:02:51 No.473532988
観音さまはいい菩薩なんだぜ 観音さまはいい菩薩なんだぜ
24 17/12/23(土)01:05:52 No.473533432
学パロで悲しいのはジキルのセイバー呼びができないことだけだ
25 17/12/23(土)01:07:24 No.473533714
友情?って感じのちょっと恋愛感情混じってそうな距離感いいよね!ボクも大好きだ!!