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17/12/21(木)00:43:07 ムララム のスレッド詳細

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画像ファイル名:1513784587962.jpg 17/12/21(木)00:43:07 No.473145324

ムララム

1 17/12/21(木)00:43:26 No.473145379

「おい、起きろって」 「んー?」  大洗学園艦の奥深く、大洗のヨハネスブルグって呼ばれてる無法地帯のさらに奥に、あたしらが根城にしてるバー『どん底』がある。ガラの悪い連中たちも、お銀姐さんが睨みを効かしてくれてるから、ここではみんな大人しく呑んで、大人しく歌って、大人しく騒いで潰れて行く。  今日も喧嘩が一つくらいで、あたしが二人を表に放り出したらすぐ収まったから、だいたいいつも通り平和だった。  午前三時。姐さんもフリントももう引き上げて、カトラスも掃除を終えて「あとよろしく」と呟いて帰って行った。  どん底のフロアにはあたしとラムの二人だけ。  ラムはもう既にべろんべろんで、あたしの定位置のソファーの右隣で、半分ずり落ちながら眠っている。いつも持っているノンアルコールラム酒の瓶は、危ないからあたしが取り上げてカウンターに置いておいた。

2 17/12/21(木)00:43:44 No.473145430

 ラムはソファの背に頭を乗せて、顔は真っ赤で口は半開き。全身の力を抜いてだらしなく寝ている。  あたしはふん、と鼻から長い息を吐く。  こうしてラムの寝顔を見ていたところでしょうがない。あたしもそろそろ寝たいから、またラムの肩を揺する。最近は戦車の練習とかで朝早いんだ。二時間くらいは寝かせてくれ。 「んー、あー、みんなあ?」 「帰ったよ」  呂律の怪しい口調でラムが呟く。あたしはようやく起きた馬鹿の頬をつねる。 「んあああ」  奇怪な声が口から出てくる。なんだか子どもの頃遊んでいたブサイクなぬいぐるみみたい。ラムがやめてと見当違いの方向にぶんぶん手を振っている。その動きが面白くて笑ったので離してやった。 「あー、じゃあ、二人きりかあ」 「ん、そだな」  その言葉に少し反応してしまった。  二人きり。ラムと。  好きな奴と。二人きり。  あたしもどうしてだけよくわからないんだけど。  よりによってこいつかよと思うけど。

3 17/12/21(木)00:44:17 No.473145532

 つるんで馬鹿やってるうちに、あたしはいつのまにかこいつのことが気になっている。 「んんー」 「だから寝るなって」  ラムは寝返りを打って、ソファの背に顔を埋めるみたいな格好になる。 「おい、あたしのソファによだれつけるなよ……?」  その言葉が聞こえていたわけではないだろうけど、ラムが首だけ私の方を向けて、ぱちりと目を開ける。私を見る。頭を動かさないまま、目だけであたりをぐるりと見回す。じろじろと見て、そのままじっと私を見つめる。好きな奴ではあるんだけど……なんだか気味が悪い。 「はっ!」  急にそう叫んで立ち上がった。なんだこいつ。ばねでも入ったおもちゃか。酔っ払いの行動はわからん。あたしも多少酔ってるけど。こいつの瓶を取り上げたときに、中に残ってた分をちょっと頂いた。  ようやく目を覚ましたらしいラムは、しかめっ面して周りを見渡す。 「あれ? カトラスは?」 「もう帰ったって」 「そっか……二人きりか」 「その話二回目だ」  ぼふん、と音がしてソファが揺れる。ラムがソファに勢いよく座った。いや、腰から落ちた。なんだほんと、この酔っ払い。 「あ。そ。おやすみ」

4 17/12/21(木)00:44:40 No.473145597

「部屋帰れって……」 「あたしぃー、今日帰りたくないのー」 急にあたしの右肩にしなだれかかってくるラム。あたしは焦って右手で押し返そうとするけれど、ラムはするりとすり抜けてあたしの胸に顔を埋めてくる。 「バッカ! くっついてくんなって!」 「うほっ、でけー、ムラカミでけー、ばかみてーにでけー、へへへへへへ」 「誰がバカだ!」 「んうー、眠い」 「おい! 寝んな!」  あたしの胸で寝るな! どうすりゃいいんだあたしは! 「揉む?」  こいつはバカなのか? なに聞いてたんだ。 「揉むな!」 「いいじゃん、別に」 「……困る」 「なんで?」

5 17/12/21(木)00:45:00 No.473145667

 なんでって。好きな人に胸揉まれてみろ。どうしていいかわかんねえだろうが。 「反応に困る」  私はなんとか、それだけ答えた。 「あっそー」  ぐりぐりと胸に顔を埋めてくるラム。あたしはどうしていいかわからないでいると、そのままずるっとラムの顔は滑り落ちて行って、ちょうど膝枕みたいな格好になる。 「あたしねー、すきー」  ラムの唐突な言葉にどきりとする。 「みんな好きー、ふねおりなくて、おろされなくて、よかった、よかったよね」  ラムの顔が胸から離れていてよかった。どきどきしてるのを聞かれてしまう。あたしは平静を装って、すこし残念に思いながら、ラムのもじゃもじゃの髪をぽんぽんと叩く。 「だな。桃さんに感謝しないとな」 「うん……」  そうだ。こうしてこいつらとバカやっていられるのも、大好きなラムとくっついていられるのも、桃さんのお陰だ。受けた恩は返さないとならない。陸の船はまだ慣れないけど、桃さんのためなら。 「がんばろうな、ラム……ラム?」  返事の代わりに、すう、すうという息が聞こえてくる。 「寝たか」

6 17/12/21(木)00:45:49 No.473145805

 あたしの膝枕で。  かわいい。  何の気なしに鼻を摘むと、ラムは寝たまま顔を蹙めた。  さて、これからどうしたものだろうと思案する。  あたしのごつい太腿で寝苦しくないだろうかとか。  いやそんなことはどうでもよくて。部屋まで抱えてくか。とりあえずあたしの部屋に……。あたしの部屋? ベッド? まあ、よくあることだけど。その度にあたしが困っていることをこいつは知らない。  そんなことを考えていると、ドアベルがからんころんと鳴った。首だけでそちらを振り向く。 「あ、ムラカミ、いたんだ」 「おう」  あたしは入ってきたフリントに片手で応える。 「ラムはー? あー、ふふ、寝てるねー」 「助けてくれ。こいつどうにかしてくれよ」  半分本気で、もう半分は勿体無いと思いながら、あたしは眉を下げて表情をつくる。バカな友だちに迷惑かけられてます、って顔を。 「あはは、ラムさー、こないだはあたしにくっついてきてさー」 「……そうなの?」

7 17/12/21(木)00:46:25 No.473145913

「最近量が増えてんのかなー? それとも練習で疲れてんのかなー? すぐ潰れちゃうよねー」 「……ふーん」  そっか、あたしだけじゃないのか。  ラムが気を許してるのは。  あたしたちみんな、一緒。仲間だし。友だちだし。  別にあたしは、ラムの特別なんかじゃないってことか。 「ん? あたしだけじゃないのか? って感じ? 甘えてくれるのは?」 「ばーか、なにいってんだよ」  どきどきしながら、鼻で笑って否定する。なんだこいつ。なにを急に。 「ラムは可愛いからねー」  フリントはそう言うと、調子っ外れの鼻歌を歌いながら、フロアをくるくると回る。長くきれいな髪が舞う。あたしはぼんやりとその様子を眺める。 「ねえ、ムラカミー」  鼻歌の途中で、フリントがあたしに背を向けてぴたりと止まった。訝しんでいると、フリントがそのままこちらを見ずに私の名前を呼ぶ。 「抜け駆けしちゃ、ダメだからね」 「は? なに言って?」

8 17/12/21(木)00:47:00 No.473146020

 そういうとフリントは振り向く。笑っている。くねくね、へらへらと踊りながらあたしに近づいて来る。  あたしとラムの目の前に立つと、フリントの整った顔から、すっと笑いが消えた。 「抜け駆け、ダメだからね」  身を乗り出して来る。真顔で、顔と顔が近づく。 「あ?」  なんだ? 事態がよく認識できてないけど、これは喧嘩の間合いだ。反射的に睨みつける。舐められてたまるか。あたしがメンチ切ってるみたいにそう思っていると、急にフリントはまた笑った。 「じゃね、おやすみ」  そのまま顔をぱっと寄せてきて、あたしの頬に何かが触れる。  柔らかいなにかが。  キス。  頬にキス。 「なっ!」  呆気にとられてるあいだに、ラムの真っ赤に染まった頬にキス。 「おい!」  フリントはふふふ、と笑い声を漏らして後ずさる。そうしてくるりとまた長い髪を翻して、手をひらひらと振りながら扉へ向かう。

9 17/12/21(木)00:47:26 No.473146090

「ばいばーい」  そのまま振り返らずに出ていった。 「なんなの、あいつ……」  あいつ、なんて言った?  抜け駆け。  抜け駆け?  そういう、こと?  意外だった。まさかあいつ、ラムなんかが好きだなんて……あたしが言うのも変な話だけど。  あたしが言うのも、おこがましいけれど。  ライバル? ってこと?  あたしはぶるっと震える。  フリントは美人だ。馬鹿だけど。まさかこいつを好きになる奴なんかいないと思ってたけど……強力なライバルが出てきた。強敵だ。あたしなんかと違って、細くて、スタイル良くて、綺麗だし。歌はアレだけど。そんで、すっげえバカだけど。  ライバル? ラムを巡って? こいつを?  あたしの膝の上で眠るラムの顔を見つめた。  渦中の女は、口を大きく開けた間抜け面で呑気に寝ている。

10 17/12/21(木)00:47:58 No.473146166

 あたしはなんだか無性にむしゃくしゃしてきて、右手を思いっきり高く高く上げて、ラムを見つめる。  はあ。溜息が出る。 「バーカ」  そうして、ラムのおでこをひっぱたいた。

11 17/12/21(木)00:48:26 No.473146264

以上です ラムかわいいよね

12 17/12/21(木)00:48:41 No.473146314

いいんじゃあねぇかなァ…

13 17/12/21(木)00:48:59 No.473146361

いい…

14 17/12/21(木)00:49:55 No.473146542

ムララム初めて見た いい…

15 17/12/21(木)00:51:59 [sage] No.473146903

ちんちくりんを巡ってわちゃわちゃするといいと思いました! 本人は一切自覚がない

16 17/12/21(木)00:52:31 No.473146988

私はこういうのが大好きです

17 17/12/21(木)00:54:06 [sage] No.473147283

勢いで書いたから私とあたしが混じってるのは許して こいつら一人称すらはっきりわからねえ!

18 17/12/21(木)00:56:50 No.473147736

あたい呼びしてるのってお銀さんだけかな

19 17/12/21(木)00:58:40 No.473148045

あれ?ラムって結構可愛いのでは?

20 17/12/21(木)00:59:11 No.473148133

何気に一人称不明なヤツ多い…

21 17/12/21(木)01:00:28 [sage] No.473148352

>あれ?ラムって結構可愛いのでは? お色気担当だからね!かわいい!ラムかわいい! あとなんとなくだけどアリサが好きな人はラムもハマるのではないかという仮説

22 17/12/21(木)01:02:01 No.473148625

素晴らしい

23 17/12/21(木)01:02:15 No.473148665

ノンアルコールラムの寮が増えても潰れる事はない つまり…何らかの起きてい続けることが難しい持病があって 戦車に乗る時はよりはっきりしていないと危ないと判断してお医者さんに処方量増やして貰ったけど効き目が切れると反動で即潰れちゃうとかそういうあれだな…

24 17/12/21(木)01:03:36 No.473148893

これはよいものだ…

25 17/12/21(木)01:11:38 No.473150074

ムララムってラムタラみたいでムラムラする

26 17/12/21(木)01:13:41 No.473150385

サムネからこんな良文章を拝めるとは思わなかった この読後感を抱いて寝る

27 17/12/21(木)01:13:49 No.473150397

>陸の船はまだ慣れないけど、桃さんのためなら こういうとこ嬉しい

28 17/12/21(木)01:14:29 No.473150478

佳いね…

29 17/12/21(木)01:17:58 No.473150949

その気持ちわかるよアタシには…チンチクリンの無自覚のくせに可愛くて アタシは…アタシは…

30 17/12/21(木)01:18:20 No.473150993

うわあいい…ラムは素面の時は面倒見良さそうだけど酔ったらめちゃくちゃ甘えてきそうだよね ノンアルコールだけど!

31 17/12/21(木)01:23:42 [sage] No.473151756

黒森峰のノンアルコールビールと大洗のノンアルコール月の井は百合えっちを促進していると思う >アタシは…アタシは… 17ポンド砲さんきたな…

32 17/12/21(木)01:26:09 No.473152082

素直になれない女の子っていいよね…

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