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17/11/19(日)21:29:47 SS ... のスレッド詳細

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17/11/19(日)21:29:47 No.466726074

SS 聖グロと大洗のお話を書いたよ

1 17/11/19(日)21:30:07 No.466726176

連絡 聖グロリアーナ戦車道全隊員へ  ○月×日 戦車道隊長 ダージリン 今月△日、本艦は大洗港に停泊し午後一時より大洗女子学園戦車道チームと練習試合を行う。 試合会場、選抜メンバー、使用戦車は以下の資料を参照されたし。 詳細は◎日のミーティングにて。 戦略提案等あれば具体的な資料を作成しミーティングの三日前までに副隊長アッサムに提出すること。 なお、新しいティーカップの購入には補助金の適用が可能である。 希望する隊員は申請書を提出すること。 以上

2 17/11/19(日)21:30:22 No.466726220

◆ 「これだ、私はこれにするぞ」 「…申請通りますか?」 ベッドにごろんと寝転がりながら大きな三つ編みを垂らし、ルクリリはカタログの写真を指差した。 銀色に光るアウトドア向けのマグカップで、あまりに無骨なデザインにオレンジペコは顔をしかめる。 「はっはっは馬鹿め、こういうのは通るとか通らないとかで選ぶものじゃない。いいと思ったものを買うのが一番に決まっている」 「それはそうですけど」 「…でも、少し個性的過ぎるような」 ニルギリが写真を見ながら心配そうに口を挟む。しかしルクリリは自信満々に胸を張った。 「いいんだよ、どうせ普通のカップじゃすぐ割ってしまうに決まってる。丈夫で長く使えるやつがいい」 「それも失礼な話ですけど…あ、これ可愛い」 オレンジペコはピンク色のラインにファンシーな柄が記された小さなティーカップに赤丸をつける。

3 17/11/19(日)21:30:37 No.466726300

「ふうん、似合いそうだ。いいんじゃないか? ……ニルギリはどうする?」 「ちょっと待って下さい……ええと、これ、いいかなって思ってたんですが」 ニルギリが指さすのは、赤い格子柄のラインが入った大きめのカップ。 「アーガイル柄ですね」 「はい、スコットランド発祥のクラシカルなデザインです。歴史を調べてみると面白いんですよ」 「……うわ、なんだこの値段!? 私のよりゼロ一つ多いぞ!?」 「補助金も出ますし…それにこれぐらいなら、私のおこづかいでなんとか」 「おこづかい、って…」 「ニルギリさんは、ちゃんと毎日貯金してますからね」 オレンジペコはもの言いたげな目をルクリリに向ける。 「……悪かったな、買い食いが多くって!」 そうしてやいのやいのと賑々しく、少女たちの夜は更けていく。 大洗との練習試合を一週間後に控えた、とある夜の事だった。

4 17/11/19(日)21:30:52 No.466726377

◆ それから一週間、大洗女子学園との練習試合は聖グロリアーナの勝利でつつがなく幕を閉じた。 ルクリリの乗るマチルダは立体駐車場にて八九式との決闘を挑むが、今回は前でも後ろでもなく別のビルからの狙撃でウィークポイントを打ち抜き撃破され、 ニルギリの乗るマチルダはⅢ突による偽装工作を看破しこれを撃破。 そして今回初車長を任されたオレンジペコはM3リーと激しい砲撃戦を繰り広げるが、撤退に見せかけたアンブッシュに掛かり窮地に陥る。 しかし装甲を活かした突撃でこれを突破し、見事撃破してみせた。 試合後、ウサギさんチーム車長澤梓は本部から少し離れた人気のない場所でオレンジペコと向かい合っていた。 場所は戦車格納庫の裏。試合後、オレンジペコに呼び出されたためである。少し離れた所からはウサギさんチームの五人組が心配そうにその様子をうかがっていた。 「オレンジペコさん。今日は、ありがとうございました。とっても楽しかったです」 「いいえ、こちらこそ。……それで、今日はこれを渡したくって」

5 17/11/19(日)21:31:10 No.466726456

オレンジペコは梓の丁寧なお辞儀に礼を返すと、後ろに隠したティーカップの箱を手渡す。 梓はなんだろうと思いつつ箱を受け取り、その中身を見てきゃっと可愛らしい悲鳴を上げた。 「これ……紅茶のカップ? しかも六つって、これ……!」 「けっとうだ!」 「決闘じゃないでしょ、えっとアレだよアレ! …なんだっけ?」 「分かんないんじゃん! ほら、聖グロでカップを送られたといえば!」 「私達、聖グロのライバルってこと~?」 「……」 陰で見ていたうさぎさんチームの5人がどやどやと湧き出てカップの箱を取り囲む。梓は驚き、オレンジペコに対し気まずそうに目を伏せるがオレンジペコはむしろくすくすと楽しそうに微笑んだ。

6 17/11/19(日)21:31:25 No.466726533

「……うさぎさんチームの皆さん。私、貴方達を大学選抜戦の時から……ううん。全国大会の時から、ずっと見てきました。  私と同じ年で車長として頑張っている澤さんのこと、私、これから追いかけていきたいんです。  だから、このティーカップを受け取って……私の、好敵手になってくれませんか?」 にこり、と余裕のある笑みを浮かべるオレンジペコに、梓はしかし受け取っていいのかいま一つ決めかねる表情で困ったように見返した。 「で、でも、こういうのって隊長に渡すものなんじゃ……」 「え?」 隊長を差し置いて、と心配する梓にオレンジペコは首を振った。 「……ああ。別にこれって、隊長同士でしか送れないものじゃないんですよ?」

7 17/11/19(日)21:31:51 No.466726644

◆ ルクリリは夕焼けを背にして立っていた。練習試合本部から少し離れた広場の片隅で、それは愛の告白というよりも決闘を挑むガンマンのように見える。 その背を大洗あひるさんチームの四人が眺める。呼び出しを受けた彼女らは少し警戒するような面持ちでここに来ていた。 典子はナチュラルに立ち、他の三人はキャプテンにもしもの事があったらと臨戦態勢を取っている。 やがてルクリリは勢いよく振り向き、三つ編みを揺らして言い放った。 「来たか! 大洗八九式アヒルさんチーム共!」 「来ました! 呼ばれましたから!」 「何の用ですか『馬鹿め!』の人!」 「場外乱闘ならダージリンさんに言いつけますよ『馬鹿め!』の人!」 「るーくーりーりー!!私の名前はルクリリだーっ!」 想定外のアダ名にルクリリは肩を怒らせて名乗りを上げる。しかしすぐに落ち着きを取り戻し、こほんと咳払いをすると再び腕を組み直した。 「……いいか、一度しか言わないからよく聞け!初めての練習試合から数ヶ月、私は何度もお前らにしてやられてきた」 「はい! いつもご馳走様です!」

8 17/11/19(日)21:32:15 No.466726747

「るっさい最後まで聞け! ……で、だ。八九式なんて戦車を使いながらしっかり活躍を残していくお前らの根性を、私はそれなりに尊敬してやっている」 「褒められてるのかな?」 「多分」 「……だから、お前らを私の好敵手として認めてやる! ありがたくこれを受け取るがいい!」 ルクリリがどこか照れくさそうに差し出すのは、四つの無骨なカップが箱入りで入った紙袋。 しばらく状況を飲み込むのに時間がかかったアヒルさん四人だが、やがて典子が代表してそれを受け取った。 紙袋を手から離したルクリリは少しだけほっとしたように息を吐き、それから典子と眼を見合せて不敵に笑う。 「次は、絶対に勝つからな!」 そう言い放つルクリリの瞳に、典子は新しい刺激がぞくりと背筋を駆け巡るのを感じる。 「受けて立ちます!」 「はい!何度でもバックアタック決めてやります!」 「……そもそも立体駐車場に来なければもっと勝てるんじゃないの?」 「聖グロの騎士道ってやつじゃない?」 勢いよく頷く典子と妙子、疑問を呈する忍とぼんやり答えるあけび。ルクリリはその様子にウムと頷くのだった。

9 17/11/19(日)21:33:27 No.466727071

◆ 試合後のティータイムにて、隅のテーブルで談笑する一集団があった。 奇妙な服装をした四人組、大洗カバさんチーム。 そして向かい合いカップを手に微笑んでいるのはマチルダ車長、ニルギリだ。 「……そうなんですか。当時のイギリス軍にそんな弱点が」 「うむ。そも大英帝国というものは人面獣心にして縦横無尽でな──」 「おっと、英国なら幕末を忘れてはならんぜよ。薩長にはイギリスからの支援があって──」 先から歴史うんちくで盛り上がる軍帽とくせ毛。うむと頷き傾聴するのは六文銭。赤マフラーは若干退屈げに頬杖をついており、ニルギリはそんな彼女たちを楽しそうに見ていた。 「……しっかし、今日はしてやられたな」 「まさかアンツィオ直伝の偽装作戦が見破られるとは」 「ふふ。でもあの時ったら、皆さん板塀に石壁の偽装を置くんですから……」 カバさんチームはむう、と悔しげに呻く。その様子に微笑しながら、ニルギルは昔を懐かしむように目を細めた。 「……実は私、みなさんに一度撃破されたことがあるんです。覚えてますか?」

10 17/11/19(日)21:35:05 No.466727550

思い出すのは懐かしい、大洗女子戦車道発足間もない頃の練習試合の記憶。 まだのぼりを立てていた頃のⅢ突にアンブッシュを受け白旗を立てたマチルダこそが、当時車長になって間もなかったニルギリの搭乗車だった。 ……とはいえ、あれから大洗は何戦も重ねてきた。試合後もそれほど会話を交わした訳でもなく、覚えているはずもないだろうと思っていたのだが。 「無論! 覚えているとも」 エルヴィンはニルギリにとって予想外の言葉を返した。 「うむ、思えばあれが我らの歴史の始まりだった」 「あの時ニルギリ殿を討ち取ったのも偽装作戦。まさに我らの夜明けと言えるぜよ…」 つらつらと淀みなく思い出を語る四人。ニルギリは自分で話を振っておきながら、予想外の反応に目を丸くし次第に頬を赤く染める。 話を持ちかけてはみたものの、聖グロリアーナの中でもルクリリやローズヒップほどパッとしたところがない──と自己評価している──自分である。てっきり、覚えてなんかないとばかり思っていたのに。 「……前回はやられましたけど、今回は私の勝ち、ですね?」

11 17/11/19(日)21:35:23 No.466727650

「うむ、認めざるを得ん」 「しかしこうなると三回目が欲しくなるな」 「この雪辱を晴らさん!」 弛む口元をどうにか引き締め直して挑発的に問うと、響くように言葉を返される。 その言葉に一層笑みを深くしたニルギリは、足もとの紙袋から用意した白い紙箱を取り出しカエサルに手渡した。 「では、これを」 「贈り物? 塩か?」 「ここで謙信だと!?」 「落ち着け、これは……ティーカップか」 「何い!? つまり我らは宿敵ということか!」 ニルギリはこくりと頷く。口で説明するには少々気恥ずかしいので、四人の話の飲み込みの早さがありがたかった。

12 17/11/19(日)21:35:40 No.466727722

「あの、私なんかじゃ物足りないかもしれませんが……それでも私、皆さんともっと戦いたいんです。だから、その……」 「みなまで言うな、ニルギリ嬢」 カエサルが片手でニルギリの言葉を制した。 「うむ、受け取ろう! 聖グロリアーナがニルギリ、相手にとって不足はない!」 「我々の偽装を何度も味わっているからな。同じ手は二度と通じんという訳か! 成程、燃えてくる!」 雄々しく拳を握り固める四人の姿に、ニルギリはほっと胸をなでおろす。そうして同時に、暖かい者が胸の中に広がっていくのを感じていた。 ライバル。宿敵。今まで闘争心に欠けそうした存在と縁遠かったニルギリにとっては、それはとても意外な事実だった。 打倒したい相手がいるということが──こんなにも心を温かく、強くしてくれる。なんて。

13 17/11/19(日)21:35:57 No.466727803

◆ ──そんなライバル関係があちらこちらで出来始めている頃、ダージリンはみほを招待し試合後のお茶会を開いていた。 緊張した面持ちで紅茶を頂く彼女を楽しそうに眺めながら、やがて新品のカップが5つ入った小箱を手渡す。 「改めて、これを受け取って頂けるかしら」 「そんな、二度も貰うなんて……」 控えめに遠慮するみほに、それでも、とダージリンは押しつける。 「以前は生徒会さん経由だったでしょう? これは私から直接、みほさんに送ってさしあげたいの」 そう言われてはみほとしても断り切れず、結局ダージリンからの贈り物を受け取る。 アッサムはその様子に、どこか冷やかな視線を向けてた。 「……後輩がみんな好敵手にカップを渡しに行ったものですから、自分だけ手渡ししてないのが嫌だったんですって」 「アッサム!?」 穏やかな笑みで茶会が満ちていく。かくしてカップは幾重にも交わされ、大洗女子と聖グロリアーナの関係は一層深みを増していくのであった。

14 17/11/19(日)21:38:55 No.466728625

終わり!カップを贈る伝統がみほダジ以外の所で行われてたら面白いなって思った ローズヒップがいないのはしっくりくるライバル役を見つけられなかったせいです あとテキスト! su2112056.txt

15 17/11/19(日)21:46:54 No.466730811

ローズヒップは桃ちゃんに渡すとか…

16 17/11/19(日)22:01:47 No.466734970

桃ちゃんはもう卒業だしな…たぶん

17 17/11/19(日)22:06:36 No.466736287

多分ルクリリさんの私室でティーカップのカタログを見てる三人というのは中々可愛いな 寝巻きなんだろうなぁ…ピンナップ出ねえかなぁ…

18 17/11/19(日)22:13:33 No.466738189

ニルギリさん今回は勝てたんだね

19 17/11/19(日)22:14:42 No.466738497

西住流に逃げるという道がない様に ルクリリにもまた立体駐車場に入らないという道は無いのだ

20 17/11/19(日)22:15:30 No.466738713

>何の用ですか『馬鹿め!』の人! バレー部はこういうこと言う

21 17/11/19(日)22:16:36 No.466738997

桃ちゃんが卒業できたとは限らない

22 17/11/19(日)22:17:44 No.466739324

>>何の用ですか『馬鹿め!』の人! >バレー部はこういうこと言う 間違いなくあけびちゃん

23 17/11/19(日)22:20:15 No.466740081

やっぱりダージリン様とみぽりんは永遠のライバル…

24 17/11/19(日)22:20:56 No.466740302

桃ちゃんが卒業…と思ったけどダーさん達がいる時点で3年勢卒業前でござった

25 17/11/19(日)22:22:38 No.466740824

いい澤ペコじゃねえか! こういうの好きだぜなァ継続の!(バンバン! おかわりくれ

26 17/11/19(日)22:23:18 No.466741018

あんまり成績悪いと生徒会役員とか降ろされそうだし 悪い悪い言ってても本気で卒業が不安になるほどではないんじゃないかなぁと思ってる

27 17/11/19(日)22:26:04 No.466741829

英国面を発揮して篭絡するダー様も良いけど 何かと理由付けてみぽりんにアピールする乙女なダー様も良い

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