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画像ファイル名:1509987945218.jpg 17/11/07(火)02:05:45 No.464121004
お題「雪景色」「炎」「お餅」ゆかエリ
1 17/11/07(火)02:06:07 No.464121058
「かまくらだなんて……なんでこんなプラウダのやつらみたいな」 「雪中行軍も楽しいものですよ逸見殿、そういえばプラウダ戦では偵察のときに」 「これは行軍でなく遭難というのよ」 「そうなんですか」 「そうなんですって言ったら殺そうと思ったけどほんとに言ったわね」 秋山優花里の頬をつねりあげる。なんだか情けない声が聞こえた。 私、逸見エリカは遭難している。 プラウダ、大洗、そして我が黒森峰の練習試合。近づく冬に備え、プラウダのホームグラウンドである北の地で雪上戦の訓練をしようということになった。そこで本隊に先行して下見をしに出たところがこのザマだ。プラウダの案内役の、ニーナといったか、ちびっこの下級生ともはぐれ、この大洗のもじゃもじゃとわざわざ雪中にかまくらをつくって荒れ狂う吹雪を凌いでいる。
2 17/11/07(火)02:06:27 No.464121106
「まあすぐに救助も来るでしょう。無線も通じますから」 「この天気で?」 かまくらの外は極寒の世界。ブリザードがすべてを白く埋め尽くしている。 プラウダのあの二人は凄かったのだなと唐突に思った。ブリザードと地吹雪だなんて仇名、認めるのは癪に障るが、それだけ恐れられていたのだろう。こういうときは本当にその言葉の恐ろしさがわかる。 「すぐに見つけてくれるといいですねえ……」 「待つしかないわね。とにかくそのバカみたいにでっかい鞄になんか入ってないの、寒くって」 その言葉に優花里は何故だか嬉しそうにバックパックを探り出した。 「ありますよ、この唐辛子を逸見殿の靴下にですね」 「えっ、それ知ってるけどなんかやだ」 なんだか靴下を駄目にしてしまいそうではないか。
3 17/11/07(火)02:06:45 No.464121148
「足元から来るんですよぉ、女子に冷えは大敵です」 「だったらそもそもこんなところで戦車乗りたくないわよ」 「うーん、だったら……これが」 また優花里がバックパックに手を突っ込んだ。 「なによそれ」 「バーナー」 「早くそれを出しなさいよ!」 騒いでいるうちに、燃料を入れた小型のバーナーに火が灯る。両手をかざして暖を取る。これならばしばらくは耐えられそうだ。
4 17/11/07(火)02:07:03 No.464121189
「なんだかかまくらの中で火を起こしてって、冬の遊び満喫って感じですねえ」 「楽しい遊びだこと」 私の皮肉に気づいたのか気づかないのか、そのまま優花里は言葉を続ける。 「私、小さい頃から学園艦だったから、あんまりこういうことやったことなくって」 「あっそう、せっかくなら餅でも焼いてみれば?」 「え? いいんですかぁ?」 「あるの!?」 完全に冗談のつもりだったのだが。優花里は網と白い小さな角餅のパックを取り出した。網をバーナーにかぶせて、パックを破りながら優花里は笑う。 「いやー、やってみたくって持ってたんですよぉ、逸見殿はあやしげなエスパーかなにかですか?」 「思ったよりあなたバカだったのね」 「あ、でも一個しかないですよ! 半分こしましょう!」 罵倒を気にせず笑いかけられて、なんだかその笑顔に毒気を抜かれてしまう。
5 17/11/07(火)02:07:22 No.464121222
「いや、本気で馬鹿だったのね」 顔を逸らして、そう呟いた。 しばらく火と、膨れる餅を眺める。 網の上で炙られる餅の表面の質感がざらついて、直方体がほんのすこしずつ膨れた枕のように大きくなって行く。 優花里が雪中に強い戦車は、だとか、雪中の戦闘で嬉々として話し始めるので、適当に相槌をうって聞き流す。 すこし、焦げた匂い。思わず鼻をひくつかせてしまう。 「もういいんじゃないの秋山」 「うん、ひっくり返しますか」 優花里がふうふう言いながら片手でつまんで裏返すと、こんがりとした網目状の焼き色がついていた。 「逸見殿」 「なによ」 「そんなお餅をじいっと眺めて、お腹空いてるんですかぁ?」
6 17/11/07(火)02:07:37 No.464121254
「そ、そんなわけないじゃない」 それでは私が食い意地張っているみたいではないか。 「あなたの戦車豆知識にうんざりしただけよ」 「こんなことわざをご存知ですか、ポットを見ているとお湯は沸かない」 「やめてよダージリンみたいな」 「暖かい紅茶が欲しいところですねえ」 そうこうしているうちに膨張した餅はぱくりと割れて、柔らかく膨らんでいく。 「そろそろですかねえ、あっ醤油がない」 「いいわよ、別に」 「仕方ない……さっ、半分こしましょ、あっつ」 「馬鹿ねえ」 優花里は焼けた餅に目を白黒させながらお手玉して、ふうふうと息を吹きかける。真ん中から割ろうとするがそこは餅。うにょんと白く伸びていった。
7 17/11/07(火)02:07:55 No.464121288
「ああっ餅が伸びる……」 「馬鹿みたいなこと言ってないでよ……」 「逸見殿! かたっぽ持って!」 苦笑しながらも手渡された餅の一方を持つ。まだ熱い。 優花里は狭いかまくらのなかで壁に身体を擦り付けてまで身を離すが、伸びるばかりで埒があかない。 「かじっちゃえば?」 「そうですね」 優花里が片方を口に咥える。優花里の口から細く白く伸びた餅が私の右手に繋がっている。 「あなた、馬鹿? ほら、こうして」 伸びた真ん中を左手につまんで、口に入れる。口と、口が白い糸で繋がる。 なんだか目があってしまう。 なにしてんだろう私。 くしゃり、と優花里が笑った。咄嗟に目を逸らす。ぷちんと糸が切れた。
8 17/11/07(火)02:08:15 No.464121331
「えへっ」 「もう、ついちゃったじゃない!」 「あ、ほんとだ。失礼します」 優花里が顔を近づける。私の唇を右の人差し指で拭って、それからぺろりと舐めとった。 「えへっ」 優花里がまた笑う。 かまくらの外は雪が舞っている。 しばらく救助は来そうにない。
9 17/11/07(火)02:09:48 No.464121508
以上さっきのメモ住でもらったお題でした >優花里が雪中に強い戦車は、だとか、雪中の戦闘で嬉々として すいませんここ >優花里が雪中に強い戦車は、だとか嬉々として です
10 17/11/07(火)02:13:51 No.464121952
かまくらックス!
11 17/11/07(火)02:19:48 No.464122527
ゆかエリいい…