17/10/25(水)23:30:31 序章 ... のスレッド詳細
削除依頼やバグ報告は メールフォーム にお願いします。個人情報、名誉毀損、侵害等については積極的に削除しますので、 メールフォーム より該当URLをご連絡いただけると助かります。
画像ファイル名:1508941831215.jpg 17/10/25(水)23:30:31 No.461652018
序章 終わりの始まりに オレンジペコがハッチを開けキューポラから顔を出すと、乾いた空気が鼻の奥まで入り込んだ。微かに海のにおいがする。 戦車道の練習用小島の中央。そこは開けていて、かつて開拓団として送り込まれた人たちの住居の名残がコンクリートの欠片として残されている。遮るものはなにもない。 この荒れ野の左右の丘は、さっきまで自分たちがいた場所だ。交互に戦車を繰り出し戦わせる第54~56回高校生大会の戦車道ルールにのっとって戦った。そして。 「ペコ。準備はいい?」 砲手座席からアッサムが声をかけた。気遣う声にオレンジペコは余裕の笑顔を向ける。 「いつでも大丈夫です」 「こっちもいつでも平気」 装填係が張りつめた声を出した。ペコは苦笑する。本当に、真面目なんだから。 「大丈夫ですよ。これで最後です」 ほっと息をついてオレンジペコは改めて前を向いた。 チャーチルMK.Ⅶ。 聖グロリアーナ女学院の歴史ある旗車であり、最も改造が進んだもの。中のカーボンは機動性を高めるため軽く、かつ丈夫で何度も試合中に助けられた。
1 17/10/25(水)23:31:14 No.461652162
けれどその砲は6インチ砲。分厚い装甲を正面から抜くには少し足りない。 「1.5マイルですか」 「え?」 装填手から素っ頓狂な声が出る。くすっと笑ってアッサムが応える。 「約2.4キロですよ」 これから行われるのは決闘だ。 二輌の戦車が離れた位置から前進し、互いに撃ち合う。車長はハッチから身を乗り出し、相手が倒れるまで決して頭を下げない。 両軍の生徒がこのジョストを見守っている。この聖グロリアーナの隊長に、誰が相応しいのかを決める為に。 『ではこれより決闘を開始します!』 ルクリリの声が通信から入ってきた。 遠くから戦車砲の音がする。 開始の合図だ。 「前進!」 オレンジペコは指示を飛ばす。12気筒エンジンが唸りを上げる。 まさかこんな戦いをすることになるとは、一か月前には思ってもみなかった。
2 17/10/25(水)23:31:37 No.461652241
そう。 聖グロリアーナのOGと覇をかけて挑むなどとは。 「ペコ!」 砲座から外を伺っていたアッサムが叫んだ。 もちろんオレンジペコにも判っている。 「そのまま!」 操縦席のルフナがアクセルペダルを踏みこむ。早々に撃ってきたのだ、相手が。ズシン、と車内に衝撃が響く。装填手が叫んだ。 「オレンジペコさん!」 「大丈夫です。直撃はしていません。ただ、弾けた地面でちょっと汚れました」 榴弾が側で炸裂したのだ。まかり間違えば命を落としかねない。青ざめる装填手にオレンジペコは微笑みかけた。 「大丈夫ですよ。戦車道では死者が出たら、殺した側が負けです。先輩はわたしを試しているんです」 「それは、ダージリンさんも?」 震える声に、ペコは深呼吸した。震え出しそうな足を踏ん張って言う。 「こんな言葉をご存知ですか? 人生とはキップを買って軌道の上を走る列車には判らないものである」
3 17/10/25(水)23:32:39 No.461652471
ちょっとした静寂が周囲を包んだ。 オレンジペコは厳かに言った。 「わたしたちが乗っているのは、戦車です」 応えるように。 パワフルな装填があった。続いてアッサムが構える。 向こうでも派手な土煙が上がる。 ねえ、ダージリン様。 「戦いは最後の五分間にあるんですよね」 オレンジペコが笑った。 * 丘の両サイドでは、雌雄を決さんと前進する二輌の戦車を待って生徒たちが待機していた。 ジンジャーエールは目を凝らす。 クローヴは後輩の汗をぬぐってやる。
4 17/10/25(水)23:32:57 No.461652544
シナモンはカッサンドラと共にパーシングの上に立ち、チラと時計を見た。 「後、五分以内に決着がつく」 「とんでもなく面白いものが見られるわよ」 カッサンドラはシナモンの肩にしなだれかかって笑った。 「勝つとか負けるとかじゃないの。これは。 意地の張り合いなんだから」 「じゃあカッサンドラ、なにが起こるっていうの?」 難しい顔をする友人に、この浅黒い肌の占い師は「簡単なことよ」と笑った。 「オレンジペコはね、決してダージリンを越えられないの。これはどうやっても無理なことなの」 シナモンは向い側に目をやった。 そこに着座するのは、金髪の少女だった。 堂々とした態度で、このまま眼下で繰り広げられる一騎打ちを楽しみにしている。 「確かに、アレを超えるのは難しそうだな」 ため息交じりに呟いた。 「大した傑物だよ、あの子は」
5 17/10/25(水)23:34:36 No.461652877
* 二発の砲弾が交差し合った。まず榴弾、お返しに次の榴弾。 そこで撃ち合いは止んだ。前進する戦車二輌。 ダージリンは微笑する。次は至近距離でやり合う。間違いない。 右と左に、戦車が迫って来る。右はダージリンも使い慣れたチャーチルMK.7。そして左から迫るのは、黒の。 黒い、もう一つの、チャーチル。 迫るごとに。周囲の歓声が高まっていく。 足を踏み鳴らす。各々の戦車の上で。 手を打ち鳴らす。油と鉄に汚れた手。 「いけー!」 「負けんなー!」 「意地見せろー!」 「ぶっ殺せー!」 甲高い応援が混じって、そちらに目を向けると、ギャラリーの一人と目が合って、思わずダージリンも微笑んだ。
6 17/10/25(水)23:34:58 No.461652950
* 続く徹甲弾が真っ直ぐ放たれる。 ルクリリはマイクを握ったまま仁王立ちになる。 ローズヒップは紅茶を啜り、澄まし顔を作ろうとして失敗した。力強く睨みつける。 ニルギリが叫んだ。 「オレンジペコさん!」 ぶつかりそうなほどの距離を詰めて、二つのチャーチルが重なり。 そして。 ガオン! 鉄の歪む大きな音がして、白旗が……。
7 17/10/25(水)23:35:15 No.461653014
1 始まりの始まり 「ガイ・フォークス祭には魔物が出るのよ」 アッサムがそんなことを言うので、ローズヒップはティーカップを持ったまま固まってしまった。 「魔物、でございますか?」 「そう。魔物」 二学期が始まってそろそろ一か月が経とうとしている。そろそろ長い休みとお祭りの余韻も覚めたころだ。それが急にこんなことを言われたものだから、ローズヒップは身構えてしまった。だからついすっとんきょうなセリフが出てしまう。 「アッサム様、その魔物、倒せばよろしいのですか?」 「え? なにを言ってるのかしら」 「ガイ・フォークスの魔物でしょう? ご安心ください! わたくしがたーってやっつけて差し上げますでございます!!」 コの字型のソファに腰かけて、七人がお茶をたしなんでいる。両サイドはそれぞれアッサムとルクリリ、ローズヒップとニルギリが腰かけていた。 口を挟んだのは中央のダージリンの隣に腰掛けたグリーンだった。 「そうやって驚かすのはよくないわ、アッサム。まるでダージリンじゃない」
8 17/10/25(水)23:35:50 No.461653141
他のメンバーが赤いタンカースジャケットに身を包んでいるのに対して、グリーンは青い学生服を纏っている。彼女はGI6の所属で、戦車道を履修しているわけではないからだ。情報処理学部第6課。聖グロリアーナの為に情報を収集する諜報組織である。彼女はその長なのだ。 「グリーン様、どうぞ」 「ありがとう」 オレンジペコから背中越しに紅茶のお代わりを受け取ると、香りを味わってから一年生に説明した。 「この時期は戦車道の隊長も変わるでしょう? だいたい聖グロリアーナの隊長は変わり者ばかりだから、引退後、もしくは就任早々大きな騒ぎをやらかすのよ。 目が飛び出るような事件。それがガイ・フォークスの魔物」 「あら、変わり者とは失礼ね」 ダージリンは顔を横に向けて、ティーカップに口をつけたグリーンをたしなめる。 「わたくしはアールグレイ様からごく穏当に隊長の座を譲り受けましたわ」 「そもそも先々代のジンジャーエール様から指揮権を奪い取ったのは、夏休みの前ですものね。ダージリン」
9 17/10/25(水)23:35:59 No.461653183
来たのか!
10 17/10/25(水)23:36:31 No.461653279
からかうアッサムに、ダージリンは不快そうに眉をひそめた。ニルギリは眼鏡の奥で素早い瞬きをする。 「指揮権奪取、ですか」 「わたくしたちは何もしていないわ。あのときは隊長が単騎で敵陣の奥深くに突撃して行ってしまったのですもの」 「エグいですね」 ルクリリが顔を歪めた。 「確かジンジャーエール様っていったら、先行突撃で戦端を切り開くタイプですよね。後方からの支援を宛にした……」 聖グロリアーナは装甲が固いイギリス戦車を主戦力として戦っている。レギュレーションぎりぎりの改造を施し、機動性は格段に上がっている。かのジンジャーエール隊長は、自分が先行して道をこじ開け、敵兵力が混乱したところを後方支援で叩くという作戦をとっていた。ただし、いかに彼女の乗る戦車が高レベルで動いたとしても、一輌だけで戦局を覆せるわけもない。 後方の援軍は、来なかったのだ。 ダージリンは軽く肩をすくめてみせた。 「あら。ジンジャーエール様は単身の強さを示すためにわたくしたちを置いて行かれたのよ。わたくしとアールグレイ様は着いていけなかっただけだわ」 それからOGを取りなすように付け加えた。
11 17/10/25(水)23:37:04 No.461653382
「みんなも知っているでしょう? あの方は大学選抜にも選ばれたのですもの。立派な業績だわ。ペコ、わたくしにもお代わりを頂けるかしら」 「はい、かしこまりました。ダージリン様」 空のカップを受け取りながら、オレンジペコは苦笑する。この冷ややかさは、大洗女子と戦う前のダージリン様だ。自分について来なければ置いていかれるような気持にさせられる厳しいダージリン様。 非情な方ではないので後輩たちに必ず助けの手は差し出していたけれど、それがどこまで本心かはオレンジペコにもよくわからない。隊長たるものそうした姿勢を示して当然、という考えからかもしれない。中等部のときはもっと他人に関心のない人だったような気がする。 「でも今年は大丈夫ですわね」 ローズヒップは明るく言った。 「今年の隊長はオレンジペコさんで決まりですもの。もちろん、このローズヒップも反論ございません」 「お任せ下さいダージリン様。私、ルクリリが必ずやオレンジペコの日向となり影となり、来年の聖グロリアーナを支えてみせます」 ぐっと拳を握るルクリリだった。
12 17/10/25(水)23:37:42 No.461653532
「来年が楽しみね」 グリーンはアッサムに笑いかけた。 「あなたもダージリンもいない代わりに、新しい司令部はしっかりやってくれそうじゃない」 「そうね。表面的には」 アッサムは少し考え込んだ。ダージリンも頷く。 「アッサムの言う通りだわ。少し順調すぎるわね」 「順調すぎる?」 ニルギリは皿の上のクッキーを見つめた。女子高生の旺盛な食欲で、お皿の上にはもう少ししか残っていない。十一月のガイ・フォークス祭のことや、オレンジペコ隊長のお披露目式の話は滞りなく進んで、この午後のお茶も“滞りなく”終わろうとしている。そこに飛び込んできた「順調すぎる」という言葉が妙に引っかかったのだ。難しい顔を保ったままニルギリは、とりあえずお皿のクッキーをとって、食べた。イチゴのジャムが乗っているやつだ。 「やはりガイ・フォークス祭に魔物が住む、ということでしょうか?」
13 17/10/25(水)23:38:12 No.461653631
「あら、ニルギリ。あなたにも関係があることかもしれないわよ」 穏やかなダージリンの言葉に、思わず指先のクッキーを折ってしまう。 「なななななんのことでしょう、ダダダージリン様」 「判っているでしょう? クロムウェルのことよ。そういえば“清教徒”が大改革を起こしたのもガイ・フォークスでしょう?」 「スカートはくるぶしまで、髪は全ておかっぱ。恋愛禁止、門限は十九時まで」 アッサムがニヤニヤして付け加える。 「いまだにあの一年半を懐かしむ教師もいらっしゃるみたいよ? 品行方正たる聖グロリアーナそのものとか言って」 「えー! わたくし、そんなのぜったいに嫌ですわ!」 ローズヒップもつられてクッキーに手を伸ばしながら言った。 「だいたいクロムウェル巡航戦車の権限をあの御方がお握りになられているのがおかしいんですわ」 「あれは当時行われていた海外試合でヌワラエリア元帥が鹵獲したものですもの。権利はあの御方にあります」 アッサムの指摘は確かだ。
14 17/10/25(水)23:38:39 No.461653711
聖グロリアーナ戦車道には三会派がある。即ち、チャーチル会、クルセイダー会、マチルダ会。彼らはそれらの戦車の維持に寄付をつのり、同時に戦車道の運営に口を出す。ところがそこに属さない戦車が存在する。テトラーク、ハリーホプキンスなどの軽戦車、グラント中戦車、そして巡航戦車クロムウェル。これらは本来会派を持つことが無い。ただ、ものによってはあるOGの意向が強烈に反映されるものもあるのだ。聖グロリアーナが本土に持つ大倉庫は、隊長以外は見ることの叶わない。その鉄臭い箱の奥にコメットまであると噂されている。 ともかくそのクロムウェルは、聖グロリアーナ戦車道隊長であった“清教徒”ヌワラエリアの許可が必要だ。 「アールグレイ様は、すんなり借りれたのよね?」 あっさり口にしたグリーンに、ダージリンは苦笑した。 「あの方は“香辛料の世代”から指揮権を取り戻したのがいたくお気に入りだったから。 ほら、あの方たちの戦いは品がないとかおっしゃって……ああ、わたくしの差し出した見返りの話?」
15 17/10/25(水)23:39:05 No.461653796
ダージリンは察しが早い。 「わたくしはクロムウェルで黒森峰に一泡吹かせることが出来たら、わたくしがクロムウェル派を立ち上げるというのを餌にしたのよ」 「え!」 ニルギリとローズヒップが仲良く叫んだ。 「だ、ダージリン様はチャーチル会では?」 「“鉄”のダージリンの仇名は、チャーチル会の方々が……」 言いかけて慌ててニルギリは口を閉じる。まだ本決まり、というわけではない。隊長職についた者は、“紅茶の名前”に唯一無二の呼び名を与えられる。ダージリンの堅い意志と柔軟な策謀能力を元に、彼女は“鉄”のダージリンを拝命するはずだった。そういえばこれも異例のことである。この手の名誉が加えられるのは卒業してからだ。在学中に仇名があった“獅子心王”のような人物はともかくとして。 アッサムはティーカップをテーブルに置いた。 「大丈夫よニルギリ。 “清教徒”元帥も今は生徒を育てる教師ですもの。自分の美学を人に押し付けるような真似はなさらないでしょう。 それに、その契約を結んだのはダージリンなんですから」
16 17/10/25(水)23:40:32 No.461654066
「あああの、でも、わたし、黒森峰戦、頑張りましたし! その!」 あわあわとするニルギリの気持ちはよくわかる。 西住まほ率いる黒森峰に対して、聖グロリアーナは果敢に戦った。ニルギリも充分「一泡吹かせてやった」気になっていたのだ。例え負けたとしても。しかしそれを認めてしまうのは、ダージリン様とOGの契約を成り立たせてしまうおそれがある。恐れつつ褒めて貰いたい、微妙な車長心である。共に戦った仲間と、先輩に褒めて貰った喜びを分かち合いたい。 「大丈夫よ、ニルギリ」 ダージリンは微笑する。 「わたくしたちよりももっと、黒森峰の度肝を抜いた人達がいるじゃない」 え? と瞬きをするニルギリとローズヒップに、ついオレンジペコが口を挟んだ。 「大洗女子、ですね」 「はあ、なるほど。 弱小大洗が黒森峰を破り、その大洗を破ったのは聖グロリアーナ、と。 “清教徒”のご機嫌がよいのはその為か」 ルクリリはちょっと考え込んだ。
17 17/10/25(水)23:41:05 No.461654181
柔らかな赤い絨毯に、聖グロリアーナの校章が巧みにあしらわれた壁紙。午後の日差しは流れていく雲に遮られて部屋に柔らかい陰を落とした。この部屋を、叔母も使ったのだろうか、と考えてみる。ルクリリにはここに通い、戦車道を履修した叔母がいる。彼女たちの機嫌は母校の動向に左右する。それこそ滑稽なくらいに。彼女たちにとって、目に見える勝敗以上に大事なパワーバランスというものがあるのだろう。戦車に乗って戦うことで手いっぱいな自分には到底わからない話だ。 「勝利する、というのは難しいことですね」 そう呟いたルクリリの言葉を、この後誰もが噛みしめることになる。ただこのときは一般論としてあっさり冷めた紅茶の底に沈んでしまったわけだけれど。 お茶会は散会し、部屋にはオレンジペコが残っていた。後始末の為だ。手伝おうかとニルギリが申し出たのを断って、茶器を藤籠に収める。テーブルを拭き、隠し扉から取り出した掃除機をかけ、ようやく一息ついた。 「お疲れ様」 ダージリンがドアから顔を覗かせる。オレンジペコはぷうっとかわいい頬を膨らませた。
18 17/10/25(水)23:41:37 No.461654282
「もう! ダージリン様! いらっしゃるんでしたら手伝って下さってもよかったのに!」 「まあ。もうすぐでここは全部あなたのものになるのよ? わたくしが手助けすることなんてなにもないわ」 ダージリンはオレンジペコに近寄ると、そっと手のひらを頭に乗せる。ニ三度撫でると、そのままペコの熱い頬に手を添わせた。 「……」 藤籠を片手に持ったまま、次期隊長は先輩の腰にもう片方の手を回した。編み棒に毛糸を巻き取ったようなハグの後、すんなりと身体はほどけて、しばらく見つめ合う。 なにか言おうとして、ためらって、オレンジペコは別の話題を振ることにした。 「ガイ・フォークスの一大事件って言ったら、わたしはあっちを思い出します。ほら、ミス・ブラックの」 「ええ、わたくしもそれを思い浮かべたわ」 二人でクスクス笑う。 喫茶ポピンズで働く笑顔の素敵なお姉さん。元帥の称号を持つ、立派な元戦車道隊長。 けれど彼女はガイ・フォークスの日に、学院長の人形をチャーチルで引きずって、戦車砲でぶち抜き爆破したという事件を引き起こしている。
19 17/10/25(水)23:42:00 No.461654375
「あの攻撃重視のスタイルで戦ったミス・ブラックも、今は珈琲党の優しいお姉さんですものね。 人は変わっていくのね」 「……いまはもう戦車道なさっていませんしね。 そういえば選手として第一線で活躍してらっしゃるのって、元帥達では“香辛料の世代”の方々しかわたし知りません」 今更のように驚いた声を出す後輩を、ダージリンは優しく見つめる。なにか隠している。ピンときた。オレンジペコは太い眉をことさら無垢に見えるように開いて見せて。 「それでもこうして母校に関わってるって、それだけ愛校心が強いってことでしょうか?」 「そうね。わたくしもそう思うわ。 卒業してもなお離れがたいのでしょうね」 夕焼けが満ちる部屋のカーテンをダージリンは閉め始めた。こうしたちょっとした気の使い方にオレンジペコは嬉しくなる。右から左から引かれた窓掛けが閉じ、細い隙間から洩れる一本の光の線がダージリンの身体を走った。
20 17/10/25(水)23:42:20 No.461654453
「ダージリン様?」 声をかけると、人形のように動かなくなったダージリンがぱちぱちっと瞬きをした。 「ねえオレンジペコ」 ダージリンが意味深長な声を出す。 「元帥の方々、本当に戦車道止めたつもりなのかしら」 (続
21 17/10/25(水)23:46:21 No.461655328
マイルやヤードやポンドがよく解っていなさそうで真面目なペコ車の装填手 一体何者なんだ…
22 17/10/25(水)23:49:15 No.461655906
>けれど彼女はガイ・フォークスの日に、学院長の人形をチャーチルで引きずって、戦車砲でぶち抜き爆破したという事件を引き起こしている 酷い!
23 17/10/25(水)23:53:50 No.461656918
これは連載だね? 楽しみ
24 17/10/25(水)23:56:03 No.461657335
どこかで聞いたことある声援が楽しみすぎる
25 17/10/25(水)23:57:41 No.461657625
話が冒頭に戻ってくるのが楽しみだ 何があったのかとか
26 17/10/26(木)00:01:28 No.461658340
あの声援 >「いけー!」 >「負けんなー!」 >「意地見せろー!」 >「ぶっ殺せー!」 多分ほかの1人は「……」なのかなぁと思ったりする そうすると1人足りないような気がするけど気のせいかもしれない
27 17/10/26(木)00:03:46 No.461658764
わくわくして来たぞ
28 17/10/26(木)00:05:16 No.461659103
なんか凄いスレを開いてしまった
29 17/10/26(木)00:06:40 No.461659424
ルクリリ先輩はやっぱり格好いいですね…
30 17/10/26(木)00:18:14 No.461661821
じっくり読み込みたいよね