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17/09/22(金)00:01:37 ルパン... のスレッド詳細

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17/09/22(金)00:01:37 No.454502509

ルパンSS ・姉の異常な愛情 または如何にして西住まほは戦車道に対して意義を感じる様になったか これまで su2033554.txt su2033558.txt

1 17/09/22(金)00:02:36 No.454502731

第七話 【愛とは決して後悔しない事】 下 ちらりと操縦席から後方を伺うと俯いている冷泉を武部が必死に励ましていた。 「……すこし良いかな?」 「……はい、なんでしょうか?」 「そこの冷泉さんに妹さ……みほさんの事について聞きたい事があるんだ。  こういう状況でこういう事を聞くのは不躾かもしれないがどうか許してほしい」

2 17/09/22(金)00:03:04 No.454502821

「斑鳩さん……でしたっけ。  貴方もみぽりんのせいで負けたと思っているんですか?  みぽりんを裏切り者だと……」 「そんな訳があるか!!」 私は思わず怒鳴ってしまった。 だが……そう思われても仕方がないことだ。 いや、より言ってしまえば……内心はどうあれ行動自体を振り返ればそう違わないのかもしれない。 何せ何も行動を起こさなかったのだ。 暗に妹様を攻めたという事と何が違うというのだ……。

3 17/09/22(金)00:03:43 No.454502953

兎も角、無様にも年下に対して怒鳴りつけてしまった事を恥じて、取り繕うように私は続けた。 「怒鳴ってすまない……そんな風に思っている人は黒森峰には"誰一人"いないさ。  誰もが副隊長を慕っていたし好きだった。  だから皆後悔してたよ……。  一番辛い時に支えてやれ無かったって……」 「……誰一人と言いますけど、其方の副隊長さんはみぽりんの事をかなり憎んでいましたけど」

4 17/09/22(金)00:04:02 No.454503019

「副隊長……?逸見が?」 そんな馬鹿な。 「それはあり得ない!  黒森峰の中でみほさんに近い存在だったのが逸見だ。  同室だったし、一番みほさんを支えていたのもあいつだ。  ……誰よりも彼女から信頼されていたのも逸見だ」 「え、だってあの人みぽりんに酷い事を……」

5 17/09/22(金)00:04:18 No.454503074

逸見が妹様に悪意のある発言を? 正直、考えられないが……。 「……ひょっとしたら本当に裏切られたと思ったのかもしれないな。  何せみほさんが隊長になった時、自分が副隊長になって支えると約束しあっていた仲だ。  何も言わずに転校した事を許せなくなったのかもしれない……」 「あの人が……そんなにみぽりんの事を…」 複雑そうな表情を浮かべる武部を見て、私は安心した。 この子は良い子なのだろう。 心の底から、妹様を心配して、案じている。 ……こういう友人が転校した妹様の傍にいてくれて良かった

6 17/09/22(金)00:05:28 No.454503312

「それで…私に聞きたい事とは何だ」 麻子!敬語!と叫ぶ武部に私は構わないと手を振って続けた。 「……私もみほさんの操縦手だった。  だからこそ聞きたい。  貴方は戦車に乗っている時にどう感じている?」 「強いて言えば……"楽しい"だな」 「……楽しい?」

7 17/09/22(金)00:05:44 No.454503368

「私はこれまで生きてきた中で何かを成し遂げたという感覚を味わった事が無かった。  解りやすい所で学校の勉強がそうであるし、他にも何かの技術を要するものも手順さえ記されればそれを問題なくなぞる事ができた。  "努力して達成する"という事を求めて、難解とされている専門書を読み、複数の外国語の習得に手を出し、分野問わず最先端の論文も読み解いた。  それらも結局はそこに記されている事に必要とされる要項があるのだから、それに目を通すだけで問題は無かった。  恐らく創造性を要する事柄……たとえば芸術の分野などなら知識以上の物が必要になるのだから私も最善の結果を出す事は不可能であっただろうが、言ってしまえばそういう曖昧な事柄には興味が沸かなかった。  身体能力が必要なスポーツの分野も同じ様に結果を出す為に努力が必要だったのだろうが、それも結局は"何故できないのか"と"できる為に必要な能力"が全て理解できてしまったからこれも同じ様に興味が無かった」

8 17/09/22(金)00:06:00 No.454503415

麻子は学年主席で天才なんです。とまるで自分の事を誇る様に武部が補足した。 確かにファイルのデータにはギフテッドの可能性あり添えられていたが、この発言が本当なら正しくそうとしか思えないだろう。

9 17/09/22(金)00:06:14 No.454503476

カタ変態仮面

10 17/09/22(金)00:06:17 No.454503493

「だけど西住さんの指示は違う。  最初は具体的かつ詳細な指示で言われた事をそのまま実行すれば良かった。  しかし、徐々に指示は簡潔に省略され、具体性は無くなっていき抽象的になっていった。  その内容も此方に裁量と解釈を委ねつつ、複雑で高難易度になっていった。  しかも、それは私の技量と経験において達成できるかという境界線を奇跡的なまでにギリギリまで迫ったものだった」 ……それは良く解る。 私も実感していたからだ。

11 17/09/22(金)00:06:35 No.454503544

「西住さんはそういった人の能力を把握して見極めるという点において天才なのだと思う。  実戦ではギリギリ達成できる事を、練習ではギリギリ達成できない事を指示した。  そしてそれの基準が引き上げられる度に私は今までの人生で決して味わえなかった達成感と共に成長というものを感じた。  今までの私の人生は灰色と表現するのが的確だったのだろう。  惰性で生きていたに過ぎず、普通の人が感じて当たり前の事すら私には無かったのだから。  しかし、西住さんはそんな私の人生に目的と意義をもたらせてくれた。  なにより、私という人間の能力を余すことなく最大限まで活用してくれた。  そして更に私の能力を限界以上まで引き出してくれようとしている。  ……私が今までで一番楽しかった時、充実感を得た時、……それは西住さんの指示が『麻子さん』と私の名前を呼んだだけの時であり、そして私がそれに含まれた意図を全て把握して実行に移せた時だ……」

12 17/09/22(金)00:06:55 No.454503614

「……」 「あぁ……戦車というものに初めて乗ったが……こんなに楽しいものとは思わなかったなぁ」 それを聞いた時、私は全てを察した。 理解してしまった。 私とこの冷泉麻子の違いが。 絶望的なまでの、決して覆せない差を。

13 17/09/22(金)00:07:12 No.454503668

私を含め、黒森峰の隊員が妹様の車輌に乗ると引きずり込まれていった理由は初めて戦車に載った時の事をリフレインしてしまったからだ。 何も複雑な事も世俗的なことも考えず、純粋な気持ちで戦車に載り、操り、日が落ちるまで夢中で楽しんだ時の事を。 練習し、勝つ事を目的とし、嫌な事も我慢して、他人を蹴落とす事すらも考え、負けないように、機械的に練習を繰り返し、疲れ、時には苦痛を感じ、そして慣れていくにつれて捨て去っていったあの時の感情を。

14 17/09/22(金)00:08:08 No.454503875

……だが、彼女は、彼女達は違う。 "初めて乗った戦車が妹様の戦車なのだ。" それはどういう体験なのだろう。 初体験が妹様だというのは。 それは決して私達の様に長年戦車道に身を費やしてきた経験者では決して味わえないのだろう。 そして彼女達は二度・三度と妹様の戦車に乗る度に私達のように始めて戦車に乗った時の事を思い出すのだ。 そう、妹様の戦車に乗る度に妹様の戦車に乗ったときの事をリフレインする……。 それは妹様による影響を共鳴・反響させ、相乗効果を起こし、回数を重ねる毎に更に色濃く強くなっていくのだろう。

15 17/09/22(金)00:08:33 No.454503959

妹様の戦車道に強く影響され、最適化され、専用化される。 ……恐らく、もう彼女達は妹様の戦車以外には乗れないだろう。 彼女以外の指示や指揮ではまず違和感を感じ、閉塞感を覚え、そしてついには衣服を着けたまま水中にいるような重い束縛感と共に不快感を得る。 何故なら……もう妹様にだけ適した"部品"と化しているから。 他では規格が合わないから…。

16 17/09/22(金)00:08:48 No.454504021

「……答えてくれてありがとう。  参考になった」 私は振り向けなかった。 こんな表情を見せたくなかったからだ。

17 17/09/22(金)00:09:04 No.454504076

……ふざけるな!! こんな理不尽な話が合ってたまるか!! では何か!?私は今まで積み重ねていた戦車道の修練と時間と努力があるからこそ妹様に最も適した人員にはなれないのだと!? そんな不条理な事が!

18 17/09/22(金)00:09:19 No.454504128

……しかし、感情的な部分ではなく、理性的な思考においては私は何処か納得してしまっていた。 あの人の戦車道は独特すぎる。自由すぎる。個性的過ぎる。 戦車道の経験者であればあるほどその"常識"が足を引っ張るのだろう。 一方で完全な純白で何にも染まっていない初心者ならば、そういった弊害もなく、抵抗も無く妹様の色に染まっていくのだろう。 だからこそ妹様にとって最適な隊員になるのだ……。

19 17/09/22(金)00:09:40 No.454504196

だからといって認められなかった。 認めたくは無かった。 理屈や道理を無視してでも覆したくは無かった。 ……それをする為には勝つしかない。 隊長の操縦手として妹様の操縦手である冷泉麻子と戦い、勝つ。 一度だけでいい、勝利すれば私はそれに縋れる。 これが決して理論的でない事は解る。 それでも私はその考えに縋るしかないのだ。 ……尤もこのままでは大洗はプラウダには勝てないだろうからその願いも叶いそうに無いが……。

20 17/09/22(金)00:10:00 No.454504265

-3- トーナメントの二回戦が終わり、大洗はアンツィオに勝利して準決勝へと駒を進めた。 私は今回は見に行かなかった。 ……私ではない誰かが操る妹様の戦車など見たくはなかったからだ。 今なら見たくないと言った逸見の気持ちが本当の意味でよく解る。 ……それにアンツィオ相手ならば見るまでも無いだろう。 あそこの隊長は底辺だったアンツィオをある程度まで立て直した事も会って中々の実力者である事は間違いない。 しかし、大洗にすら劣りえる戦車の編成であの妹様に勝てる訳が無い。 案の定、大洗は一輌も損ねることなく完勝した。

21 17/09/22(金)00:10:23 No.454504332

問題は準決勝でのプラウダだ。 しかし、サンダースやアンツィオの試合経過を見る限り、妹様の戦車道は以前とさほど変わっていない。 これでは大洗がプラウダに勝つ事は難しいだろう。 そんな中で私は隊長室に呼び出された。 入室し、隊長の許可を貰ってソファーに座ると隊長が開口一番に切り出した。

22 17/09/22(金)00:10:49 No.454504421

「……大洗が負けた場合、大洗学園艦は廃校となる。  そしてみほが黒森峰に戻ってくる……というよりは連れ戻される」 ……は?      -了-

23 17/09/22(金)00:11:06 No.454504481

『Love means never having to say you're sorry.』  (「愛とは決して後悔しない事」)     映画「Love Story(邦題:ある愛の詩)」(1970)より  

24 17/09/22(金)00:13:34 No.454504975

妹様は大変なものを盗んで行きました

25 17/09/22(金)00:14:42 No.454505192

なるほどね…究極の目標であり努力の成果の果実がいきなり隣にいたらそうなるか

26 17/09/22(金)00:21:30 No.454506639

みぽりん専用部品…なんたる甘美な響き 混じりっ気無しの一心同体……布越しどころではない完全な合一…

27 17/09/22(金)00:22:40 No.454506890

初めて乗ったのがみぽりんならそうなるよね…

28 17/09/22(金)00:23:56 No.454507137

>みぽりん専用部品… いい…良すぎる…究極の概念だ

29 17/09/22(金)00:27:32 No.454507907

ルパンSSになってる…

30 17/09/22(金)00:28:33 No.454508117

ちょうどルパンベストセレクション観てたからだめだった

31 17/09/22(金)00:30:36 No.454508502

連れ戻されるってしぽりんにか?

32 17/09/22(金)00:37:21 No.454509774

カタ変態仮面

33 17/09/22(金)00:46:15 No.454511434

赤星が4人分の藁人形を

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