17/09/03(日)05:39:15 こん... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1504384755023.jpg 17/09/03(日)05:39:15 No.450452367
こんばんは! 武部沙織だよ! ようやく暑さも収まって過ごしやすくなってきたよね。夏休みの最終日も冷房がいらないくらい涼しかったなあ。 そうそう、その晩ね、私、麻子の家に行ってたの。 別に宿題の追い込みで、麻子を頼ったワケじゃないからね? まあ、宿題の一部はちょっと手伝って貰ってたんだけど、ちゃんと余裕を持って済ませたんだから。 麻子も宿題はとっくに終わらせていたから、二人とも特にやることも無かったんだけど、次の日は始業式だし、麻子が遅刻しないようにって泊まることにしたの。
1 17/09/03(日)05:39:32 No.450452379
麻子ったら夏の間は自炊もサボり気味だったみたいだし、ちゃんと美味しいご飯食べさせて、朝起きる元気つけさせなくちゃだもんね。 ご近所さんから、栗とサンマをたくさん頂いてたから、メニューはシンプルに栗ご飯とサンマの塩焼き。 あまり使い込まれていないキッチンで、麻子と二人でお料理。普段、みんなと居る時は、手が足りるから勝手にサボる麻子だけど、二人だけの時だったら積極的に手伝ってくれるの。 それに、ねえ、知ってた? 美味しいものを口にした麻子ってすっごく素直になるんだよ。 みんなと一緒だとよく憎まれ口もたたくけど、二人きりなら「沙織の料理が一番好きだ」とか「いつでも飯を作りに来てくれ」とか言うのよ。 その日は麻子も上機嫌だったのかな。「沙織ならすぐにでも嫁に貰ってやる」なんて冗談まで言うの。へっへーん。普段からもっと褒めてもいいんだからね!
2 17/09/03(日)05:40:12 No.450452406
私が食器を片づけている間に、麻子は先にお風呂。「一緒に入るか?」なんて言ってたけど、小さい頃ならいざ知らず、流石に二人で入るのは窮屈だよね。 二人分の食器はたいした量じゃないから、洗い物はすぐ終わって、食卓を拭いていると、頭にタオルを引っ掛けたまま麻子が戻ってきたの。 「ちゃんと髪、洗ったの?」と聞いても「ん」と気の無い返事が返ってきただけ。ぜったい、いい加減な洗い方してるよ。麻子の髪は長いしちゃんとお手入れしないと、すぐ痛んじゃうんだから。今度、しっかりとレクチャーしてあげなくちゃ。 「もー、ちゃんと乾かしておきなよ」と言い付けて、私もお風呂へ向かうとき、麻子はまた「ん」とだけ返事をしたの。 私はたっぷり時間をかけて、髪もお肌のお手入れもバッチリ。さっぱりした気分で床の間へ戻ると、麻子はさっき見たのと同じようにタオルを頭にのせたまま、壁にもたれて本を読んでたの。 持参のドライヤーを探しながら「しっかり乾かさないと風邪ひくよ」と言うと、麻子は黙って視線は本に落としたまま背中をこっちへ向けてくるの。
3 17/09/03(日)05:40:46 No.450452428
「んもー」甘えてるのは分かってるんだけどね。私はため息一つついてから、いつも通りに、ぬるい設定にして麻子の髪に風をあてはじめたの。 しっとりと濡れた麻子の艶やかな黒髪をゆっくりゆっくり解きほぐしていくの。この手触りが好きだからついつい、麻子を甘やかしちゃうのよね。私ももっと厳しくしないと、なんだけどねー。 麻子の髪をさらさらにした後は、押し入れから麻子のお布団を引っ張り出して床に敷くの。そしてもう一式、学園艦に来た時に、いつでも来れるようにと麻子の部屋に持ち込んだ私のお布団を横に並べる。このお布団とも長い付き合いだよねと、しみじみしちゃったり。 麻子はというと、元居た壁際に戻ってまだ読書中。まだ寝るには早いし「麻子、ちょっと借りるね」と本棚から適当に一冊抜き取るいつもの流れ。 手にしたのは、夏目漱石全集。いろんな話を集めたやつだよね。だったら頭から読まなくてもいいやと、ばっと開いた物語から読み始めたの。 普段ならこんなお堅い本は読まないんだけど、麻子と一緒のときなら、なぜか集中して読めちゃうんだよね。
4 17/09/03(日)05:41:36 No.450452462
網戸にした窓から、涼しいそよ風を感じながら、麻子に肩を並べて文字に視線を走らせる。難しい文だとあんまり内容が頭に入ってこないんだけど、それでも麻子と同じ時間を過ごしているだけで、すっごく落ち着くの。 その本はアタリで、いつの間にか時間が過ぎるのも忘れて読み耽っちゃってたのよね。 どれくらいの間、読んでたかわからないんだけど、突然、麻子がぽつりと「この時間が終らなければいいのにな」なんて言うの。 私はついつい「朝起きて学校行くのが辛いからってそう言うこと言うんじゃないよー」って怒ったら、麻子は口をへの字に曲げて「そういう意味じゃない」だって。 「そういう意味じゃなかったらどういう意味よ?」って、私もムキになって問い質そうとしたら、麻子は読んでた本を閉じると、お布団へ潜り込んじゃったの。都合悪くなると逃げるクセ、昔からまったく直ってないよね。
5 17/09/03(日)05:42:06 No.450452479
ふと壁掛け時計を見ると、針は11時59分を指してたの。 「麻子、もう消すからね」と返事も待たずに蛍光灯の紐を引っ張ったら、カチりと明かりが消える音に重なってピピッと小さな電子音が鳴ったの。 「麻子、お誕生日おめでとう」 暗闇のなかで麻子を祝福すると、小さな声で「ありがとう」だって。
6 17/09/03(日)05:42:25 No.450452495
「明日、早起きして学校行こうね」 「うん」 「帰りにはみんなでケーキ食べに行こっか」 「うん」 「じゃあ、おやすみ」 「沙織」 「ん?」 「おやすみ」 「うん。おやすみ」 いつもこのくらい素直ならいいんだけどね。
7 17/09/03(日)05:45:53 No.450452642
おわり。 ずっと前の短編を添えて su2006515.txt
8 17/09/03(日)05:50:39 No.450452863
甘い…
9 17/09/03(日)06:03:42 No.450453409
寝起きにいいものを読めた
10 17/09/03(日)07:47:31 No.450460926
恋愛マスターだろ!気づいてやれよ
11 17/09/03(日)07:48:45 No.450461032
二人だけの甘くもなく切なくもなくただとろけるように優しい時間いいよね…
12 17/09/03(日)07:51:37 No.450461351
この二人にはずっと高校生のままでいて欲しい