虹裏img歴史資料館

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17/08/06(日)21:38:01  建設... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1502023081937.jpg 17/08/06(日)21:38:01 [24/47] No.444622447

 建設者群をあまり見かけない今帰ってきた自宅のある郊外にはまだほとんどないのだが、旧市街地には新宇都宮タワーに個人が接続するための端末遺伝子リーダーが道祖神の如くあちこちに立ち並んでいる。 自分のつとめる宇都宮ジーンテクニクスで作られた、アクセス権限が何階層かのレベルごとに分けられた遺伝子のメチル基に付与された量子グリッドアクセス遺伝子により様々な情報にアクセスが可能だ。  精神障害者である自分には、その日の天候を調べたり、ニュースを検索したりといった、一般的なインターネット情報と同程度の情報を検索し、新宇都宮タワーの一般見学が可能な展望台に上る程度の権限しか与えられていなかった。  これが自分が会社で作り出している遺伝子のフラグメントを付与するだけで、できることは限りなく増えてゆく。  全身を殺菌され新宇都宮タワーに入り、量子コンピューターの技師として働いたり、高いレベルのフラグメントを持つ人物であれば、街を横断する高速飛翔体を自分の最寄りのステーションで止めることも可能だし、最高レベルの権限を持つ政治家や企業人であればグリッド間の移動すら可能という話も聞く。

1 17/08/06(日)21:38:26 [25/47] No.444622560

 フラグメントの生成にも色々煩雑な手続きがあり、その階層のフラグメントを扱える職員の職級と、都市側からの要請による許可がないと自由に高レベルのフラグメントを作り続けることなどできない。  だがある程度低いレベルのフラグメントなら誤魔化す方法はいくらでもあった。  さらにいうのであれば、違法に高レベルフラグメントの闇取引なども行われているという噂は絶えないし、実際その通り行われていたのだろうと思う。  ログの書き換えなど必要になる違法行為であるため普段の自分なら絶対にやらないはずの行動ではあったが、何故かその時は会社からかすめ取ってきた遺伝子の鋳型を用いて端末にアクセスし、周囲の建設者群の都市建設予定を調べてみた。  カオス理論に裏打ちされたその建設者群の都市計画密度は、やはり県庁・市庁舎をはじめとする行政施設や、昭和の頃からいっこうに景色の更新がなされない、毎日成長し続ける旧市街地と、福田屋の施設近辺にほとんどの建設者が活動しており、郊外にまで出張ってきているものは少ないようだった。

2 17/08/06(日)21:38:44 [26/47] No.444622659

 計画予定表を少し早めてみると何故か建設者群が郊外に大移動をしてくることになっていた。新宇都宮タワーの演算バグであろうか?  旧市街地・中心街の開発されきった層と、外郭のグリッド同士を仕分ける高速飛翔体が編み目のように組み合わさった、都市外郭隔壁の中間ほどにある、郊外の地区に建設者群が集まることになっている。  唯一の憩いの場である我が家のある区画にも高速飛翔体の軌道が敷かれることになっているようである。  これはいったいどういうことだ?  ついに都市のまだ手の付いていない区画にも建設計画ができたということだろうか?ここで一つ気づく。福田屋百貨店本店のシャトルバスの経路が近辺にまで迫ってきているのだ。  なるほど、福田屋建設者群と宇都宮都市建設者群の抗争が行われるらしい。  全身が冷たくなり汗が止まらない。  これは誰に許可を求めたというのだ。高速飛翔体の軌道敷設計画範囲の土地は私のものだ。もちろん空中にも権利がある。  そして、ふと、気づく先ほどの「うまみ処」は福田屋百貨店の砦が近かったため、なんの通告もなく、その皮膚を上書きされてしまったという。

3 17/08/06(日)21:39:03 [27/47] No.444622752

 土地の所有権は空中に浮き、居住許可の下りない違法なエアポケットと化してしまった。主人たちは幸運にも都市衛生環境委員会からの警告も受けず、したたかに営業を続けていたが、憩いの我が家があんな有機素材と意味不明な都市構造群のパッチワークで暗闇の下に沈められたらと思うと、冷たい怒りが吹き出してきた。  端末遺伝子リーダーから手を離し、不正に入手したミドルクラスのフラグメントの遺伝子鋳型を丹念に薬液でぬぐい去り、やはり会社から不正に持ち出した廃棄予定の端末ログリーダーライターで、ログを消し去る。  俺が葬る。  宇都宮市、いや日本全体に広がるこの馬鹿げた都市建設者群の動きを止めてやる。  全部は無理だ、新宇都宮タワーだけでも、その機能を停止させてやる。  量子コンピューターの演算装置は、ダンテの描いた地獄の通りコキュートスに閉じ込められたサタンの如く、氷漬けにされているという。  馬鹿馬鹿しい、全部この真夏の発狂した太陽の元に晒して焼き尽くしてやる。こうして我が家を守るため、新宇都宮タワー破壊計画を立てることになった。

4 17/08/06(日)21:39:20 [28/47] No.444622848

 一人でやらねばならない、一人で穴を掘り、一人で撃ち殺し、一人で埋めなければならない。都市公共衛生委員会の目もある、より高位の権限を持つフラグメントや遺伝子鋳型が必要になる。  なにより精神障害者である自分に一番足りない、強固な意志と覚悟、それを支える健康が圧倒的に足りない。  いいじゃないか、やってやろう。  こうなってくると楽しくなってさえする。逆境は魔法の調味料である。どうせ腐った日常だ。守るべきものは我が家しかない。行為の結果、我が家に戻れなくなったとしても、そこに青空が広がっていればいい。土地を守ることを昔から「一所懸命」といった。  今まで閉じられていた意識の蓋が開き、本当の自我が目覚めたように思えた。  イドが開く、男はイドの剣を手にするに至ったのだ。

5 17/08/06(日)21:39:42 [29/47] No.444622956

 男は本を紐解く。  鶴嘴を持った男が一人荒野を歩いていた。  無限の野辺の遙か遠く先に街が見える。  そこには人間の傲慢さが作り上げたバベルの塔のような、ノッポな構造物がそそり立っている。  構造物は遠くから見てもわかるように、水をまいたり、帆を開き日差しを和らげたり、地上の人々を守っているようであった。  男はその光景を目にし、塔に隷属する人類を思い浮かべた。  歪んだ秩序は「均せば」なるまい。鶴嘴を引きずり荒野を歩く。  今の自分には心臓もある。城砦によって得られた鍵もある。  ベトンだろうが特殊サーメット材だろうが、今の自分に壊せないものはないと信じていた。我が手はアバドンの手。全てを掴み砕きしだく。  男の精神状態は正常とはかけ離れていた。荒野の遙か先を囲む壁から高速で神の戦車が飛び交うのが見えた。  鍵はある、入り口も見えた、後は鶴嘴の振り下ろし先に向かうだけだ。  男は眠気に負けそこで本を閉じた。

6 17/08/06(日)21:40:01 [30/47] No.444623055

 宇都宮ジーンテクニクスは、都市上層部から下された仕様に従って、フラグメントを作成していた。遺伝子のリプログラミングなど大したことではない。  専門的な勉強を積んでいるのなら、高校生や専門学生でもできる程度の仕事である。  違うのは精神疾患の有無による給与などの待遇差だけである。正規の仕事をしていても精神疾患があるというだけで、待遇はなんとか食いつなぐのがやっとという程度のものである。 市の保健福祉課から、精神疾患者を雇っている「お情け」の支援金が出ているのを知っている。  そしてその「お情け」は本来救われるべき精神疾患者のためには使われない。お荷物を抱え込んでいるお駄賃程度のことにしか思われていない。  長年押し込めていた怒りはここに着火点を見いだした。この会社にならばいくら迷惑がかかっても良心はとがめまい。  自宅まで戻り、会社への接続が可能なゲノム・コンピュータから持っている中で一番レベルの高い階層に接続できるフラグメントを遺伝子鋳型から起こし、会社内部の情報を検索する。  会社内部は森閑とした雑木林の中に立っていたが、周りは建設者群のおいていった不思議な構造でいっぱいだった。

7 17/08/06(日)21:40:21 [31/47] No.444623162

 そしてそこがエアポケットとして分類されていることをしる。  会社もまた非合法の存在だったのだ。  そんな情報を覗きつつより深い階層へとダイブしていくと、人事ファイルにぶつかる。  忍者がいた。  それも複数確認できる。  そして監視対象者が一覧になって表示されると、知った顔がどんどん出てくる。  会社内部の監視カメラにハッテンしているところが映っていた。会社で給料もらいながらハッテンとはいいご身分ですなあ。  ハッテンハッテン僕の街ということで、都市構造群の鍵を握る人物は忍者にマークされているホモ野郎であり。新宇都宮タワーはホモが番人をしているということになる。何故検挙されないのか?  おそらく泳がされているのだろう。今は会社でハッテンしているが、これが徐々にハッテン場などに移動すると一網打尽というやり方に違いない。  宇都宮都市構造群はホモが管理している。全てがホモになる。

8 17/08/06(日)21:40:38 [32/47] No.444623242

 次の日、ガンガン揺れる頭を抱えながら出社すると、より高度の情報にアクセスできる遺伝子鋳型を手に入れるため、自分が違法に会社から持ち出した中で一番アクセス権限の強いフラグメントで上位階層から下位階層への認証を出す。  施設の監視カメラや、セキュリティードアの映像やログを捏造したデータで上書きさせ、上長の認証で施設をくぐり抜ける。  バレて責任問題になっても、あんなパワハラ野郎の経歴に傷が付くなら願ったり叶ったりだ。  ログや上位階層からの接続などの工作をしているが、半官半民の会社にありがちな適当さで、警備ははっきり言ってしまうとザルである。  普段誰も入らない遺伝子鋳型の保管庫から、この施設に保管されている中で最も権限の強い物を選び出し、鋳型を元にフラグメントを複製させ、自分の遺伝子端末にメチル化されたそれを付与する。  サーマルサイクラーを回している待ち時間の間はさすがに不安になったが、どうせ馬鹿しかいない会社だ、あっさりと事は進んだ。  これで地方自治体の首長級の遺伝子端末を手に入れると、計画を次の段階に移す。

9 17/08/06(日)21:40:55 [33/47] No.444623326

 何食わぬ顔で仕事をこなしつつ、退社すると、また旧市街地のぐねぐねとした訳のわからない通りを抜け、無限福田屋百貨店計画で使われている、高速弾頭体、つまりシャトルバスが遺構として残っている場所に出る。  ここから競輪場通り店、インターパーク店、そしてすでに意味のわからない配管などで樹海と化したとされる鹿沼店にも通じている。  鹿沼店では大きな研究所を併設していた城砦型店舗であったため、建設者群の執拗な攻撃に晒され、中は巨大なエアポケットと化し、噂では廃棄市民が違法に暮らしている巨大な密林となっているとも聞くし、一部の防人が特別赴手当を貰い都市建設者群に対して無謀なゲリラ戦を仕掛けてるともいい、また研究機構は生き残っており、狂気に取り憑かれたエリアマネージャーやスーパーバイザーなどの研究員が、都市建設者群を要する都市衛生監視委員会に牙を剥き孤独に戦いを挑んでいるという。  一言で言うなら退っ引きならないところまで事態が混迷した超危険地帯であるということだ。

10 17/08/06(日)21:41:16 [34/47] No.444623428

 福田屋のシャトルバスは、その機構を都市建設者群に機能を上書きされ、弾体発射される物は都市の高速飛翔体に置き換わり、新宇都宮タワーに向かう量子コンピューターの、都市の奉仕者たる高等市民を乗せて毎日行き交う事になっていた。  コピーしたフラグメントが有効であるかどうか調べるため、高速飛翔体を呼び出すことにする。  しばらく待つと、一番近いところを滑走していた飛翔体がこっちへ向かってくるのがわかった。誰一人乗っていない高速飛翔体に何食わぬ顔で乗り込み、旧市街地を出たところに移動し降車する。  高速飛翔体はチンチンと音を鳴らすと、シュウと音を鳴らしまた空の彼方へと発射されていった。  統合失調症の症状が出る。幻聴だ。誰だかわからないが女が耳元で一生懸命わからない言葉で何かを訴えてくる。  何か根拠のない悲しい気持ちになりかけたが、初めて高速飛翔体に乗ることによって得られた満足感と、計画が実現に一歩近づいたという実感がやりきれなさを押さえ込んだ。  男は本を紐解く。  血で耕せ。  男は本を閉じた。

11 17/08/06(日)21:41:36 [35/47] No.444623538

 都市の中心には新宇都宮タワーが立っており、静止軌道トランスファーに頂点がある。この各地に立っている「バベルの塔」と呼ばれる、超集積型第四世代量子コンピュータのお化けから一見放射状に都市区画が整備されており、中心部では無限福田屋計画と都市建設者群の攻防か繰り広げられ、昭和から変わらないが超芸術トマソンと化した、麗しの故郷の風景が歪に広がっていた。  そして一定の区画ごとに、昔は意味を持っていた自治体ごとにグリッドが設定され「バベルの塔」が立つ。  二次元ケプラーの予想の理想解のように、円が互い違いに置かれるように稠密に塔が立っている。とはいえ各都市ごとの成長具合の違いも加味されて、なるべく平均に近い感覚で天を穿っていた。  何故都市の建設者群が昭和の姿を思い出させるような都市区画を形成しつつ、都市の外観に関する情報がアップデートされないのかは不明であったが、特に考えても仕方のないこととも思った。  それに比べると福田屋百貨店の建設者群は気がつくと都市外観に関する情報は更新されているようで、いつもモダンな街作り、いや客を呼べる店作りを行っていた。

12 17/08/06(日)21:41:55 [36/47] No.444623644

 都市区画を作り出す素材にしても、バイオサイエンスと有機化学のハイブリットである都市環境浸透型有機素材が使われていたり、特殊サーメット材や、新種のベトンを使っていたりするようだ。  そして都市建設者群は、その素材を噛み砕き、あるいは浸透し、ハッキングし、福田屋の店舗から昭和の香りのする都市区画へと改造していった。  そんな都市に反旗を翻すのだ、入手するのに一見煩雑な手続きが必要と思われた遺伝子のフラグメントは半官半民の悪いところがもろに出ていたため、当初想定していたよりも簡単に入手できた。  あとはログを残さずに、カオス理論を用いて作られた都市計画を変更させるにはどうしたらいいかを考えなければならない。  都市計画を変更させるだけなら簡単だ。グリッドの中心に立つ新宇都宮タワーをハックするか、もしくは物理的に破壊すればいいだけである。  ハックは難しい、第七世代量子暗号を用いて通信しているため、理論的にはサイファー・コード・ブレイクは数学的にも物理学的にも不可能である。  仮に可能であったとしても、自分ごときの手に負える物ではない。

13 17/08/06(日)21:42:13 [37/47] No.444623738

 もう一つが物理的に倒壊させる方法である。これは方法自体はそれほど難しくない。新宇都宮タワーをターミナルとしている高速飛翔体を、首長級の権限を用いて、マッハで連鎖的にぶち当てるだけでいい。  もし可能であるなら、マテリアル・ホッパーと呼ばれる新宇都宮タワーの上層階に重質量物を打ち上げるマスドライバーをどうにかぶち当ててもいいかもしれない。  ただしこの方法はログが残る。前者の量子コンピュータハッキングも、外部からの通信では数理物理的に消せないログが残る。  新宇都宮タワーの内部に入り、直接量子コンピュータを操るしかない。  新宇都宮タワーの中枢部への進入にはいくつかの障害がある。  セキュリティーコード。これは首長クラスのフラグメントを持っているため特に問題はない。逆に高レベルのセキュリティーパスを持っている人間ということで目をつけられないかそちらの心配をするべきだが、それについては体当たりするしかない。

14 17/08/06(日)21:42:28 [38/47] No.444623807

 次に高速飛翔体から出て新宇都宮タワーに入った後の体の徹底的な洗浄である。これは顔を隠せないため、タワー内を巡回している都市公共衛生委員会の目をかいくぐらなければいけない。  これは一度新宇都宮タワーに行き、展望スペースから状況を確認するしかない。  そういえばテレビで昔、新展望台からタワー内部の関係者以外立ち入り禁止スペースに入ることができるというのを特集していたことがあったはずだ。  いっそ与圧服を着て外壁を伝って内部に侵入するのもありなのかもしれないが、やはり現実的ではない。そんな実行力と体力があれば精神疾患等には罹っていない。  新宇都宮タワーの設計図自体は、おそらく管理部の課長以上の権限があればアクセスが可能なはずだ。  これなら足跡を消せば量子コンピュータ網の莫大な演算能力の底に沈められることができそうである。  「失われた足跡」計画とでも呼ぶか。  あれこれ考えた末に到達したのは、まずは一度偵察に向かおうということであった。  今晩の睡眠薬と向精神薬を飲むと珍しく一瞬で意識が途絶えた。

15 17/08/06(日)21:42:45 [39/47] No.444623895

 男は本を紐解く。  「あそこにいる連中はなんだい?」  「へえ旦那、あれは敵です。敵であり市民の守り手を自称する者です」  「敵なのか味方なのか判然としない連中だねえ、そんな敵がいてここは平気なのかい?」  「敵は夜な夜な体を大きくしていきます。もっと広がらなくてはと思い込んでいるんです。市民の魂を吸収して街を回転させているんでさあ」  馬鹿でかい建物が街の中心部に立ち並び、風の通りを邪魔している。  一つは虚空に吸い込まれ、天の遙か先にまで到達しているように思えた。人間の傲慢さから神はバベルの塔を雷をもって破壊し、人間の言葉を惑わし、分裂させたという。  これらは人間からしてみれば神の傲慢にしか過ぎない。  いつかあの塔も打ち砕かれるのだろうか。  誰の手によって?  男はすでに眠っていた。

16 17/08/06(日)21:43:04 [40/47] No.444624012

 休みの日、相変わらず日々形態を変える旧市街地まで一般的な普通のバスを用いて新宇都宮タワーの麓まで来た。  日々経路は変わるが、運転手にとっては特に苦もなく運転できることのようである。都市建設者群の移動についての情報が供与されているのかもしれない。  カオス理論による建築計画とやらも一見無秩序なようで、都市の内側から見ればなんてことはない再開発なのだろうか。  観光客は平日にもかかわらず十数人ほどいた。  展望台へは地上から登っていく。  学生などの団体客用の大型高速エレベーターは使わず、一般客向けのエレベーターで一気に通常展望台まで移動する。  観光客がおのおの適当に施設を見て回っている。  窓の外を見ると地上約千メートル程度のところにいるので、宇都宮市街の様子が丸わかりである。ついでながら遠くを見るとグリッド間を隔絶する壁がこの高さまで聳えており。そこを昔のアドベンチャーゲームの鉱山のステージのように、軌道が目茶苦茶にのびていて高速飛翔体や、福田屋のシャトルバスが恐ろしいスピードで駆け回っていた。  ここで急に統合失調症の症状が出る。

17 17/08/06(日)21:43:19 [41/47] No.444624109

 目の端に毛虫の塊のような物が見える。これはよく見る幻覚なので、内心嫌な思いをしながらも、平生を装う。  幻覚を見始めてやっかいなのが、誰もいない部屋や暗がりなどに、一瞬人影が見える事である。全員が全員壁に向かって立っているのだ。  これは本当に見分けが付かない。  目の端に映る人の姿は、幻覚なのか現実なのか、その時の感覚で判断するしかない。  だいたいにおいて外すことはないのだが、本当に人がいるようにしか見えなくてドキッとする。  目の端に映る毛虫の塊を手でよけるように空中を掻く。そうすると黒い光がはじけて一瞬視界がクリアになる。  あまり繰り返していると、不審者にしか見えないのでなるべく我慢をする。抗不安剤を二錠ほど取り出して飲み込む。  外の景色は黄色い色をベースに、緑や黒などそこで何らかの都市構造群が建築されている事を示す色彩が広がっていた。  川はほとんど暗渠になり、水の流れは見えない。  そもそもこの高さまで登ってくると、都市の大まかな構成は把握できるが地上に何があるのかはよくわからない。  どちらかというと空の方が近い。

18 17/08/06(日)21:43:38 [42/47] No.444624213

 いつの間にか太陽は西へ移動し、巨大な塔の影が街に雪崩れ込む。  雪崩れ込んだ影の中では、都市に暮らす人々と、異常進化を遂げた不気味な生き物たちがお互いの生活圏を重ねながら生活している。  事前にダウンロードしていた図面からこの区画には単に観光収入を得るためだけの施設しかない事はわかっていたので、一般人が入れる一番高い第三特別展望台にいく。  特別展望料の料金を支払い、高軌道エレベーターに乗り込み一気に上空三万メートルまで上昇する。ここまで来るともう宇宙一歩手前である。  宇都宮どころか地球の縁が見える。地上を見下ろすと各グリッドごとの仕切りがみえ、陣取りゲームやカタンの開拓者などのボードゲームを思わせた。  それと悟られないように防犯カメラの位置を頭にたたき込んだ図面と、一致させ、都市公共衛生委員会の連中の導線などを確認する。  ここもやはり、一般向けの観光階層であるため、それほど防犯システムが緊密になっているということはないようである。  もちろんこの高さであるから、気象コントロールのための機材や、雷の観測装置などあり、テロの危険性から最低限の監視はあるようであった。

19 17/08/06(日)21:43:56 [43/47] No.444624315

 ここからの道は簡単ではない。防犯カメラの映像をリアルタイムで編集してダミーデータを流し、都市公共衛生委員会のめをかいくぐり、何があるのかわからない配管を通り抜け、中心部の量子コンピュータまで到達しなければならない。  量子コンピュー自体もどれだけ物理的に頑強に作られているかもわからないため、破壊方法も考えなくてはならない。  バールか何かで殴って壊せるような物でもないだろう。プラスチック爆弾でもどうなるのか不明である。そもそもそんな物の入手の仕方がわからない。やはり高速飛翔体を連鎖衝突させるしかないのであろうか?  とにかく一度見てみないことにはどうしようもない。  物理的な破壊が不可能なら冷却を止めさせたり、ウイルスを流し込むなど工夫が必要になってくるだろう。  今はどのようになっているのか実地で研究するよりほかはない。  やがて新宇都宮タワーの営業も終了時間を迎え、またバスで郊外の我が家へと戻る。  この場所に建設者群が来るまであと数日しかない。それまでになんとかしないと。幻覚と昔の職場で受けた暴力がフラッシュバックする。

20 17/08/06(日)21:44:13 [44/47] No.444624407

 ガンガン鳴り出し目玉が飛び出してくるような頭痛を抑え、向精神薬や睡眠薬など手近にあった薬をウイスキーで胃の腑へ流し込み、ベッドにバタリと倒れ込む。  男は本を紐解く。  巨大な怪物の体内に飲み込まれたような感覚を覚える。  辺り一面臓物のような配管がグネグネとうねり、熱気が籠もっている。  狭いその通路をかき分けるように進んでいくと、幾人かのペスト面をつけた「敵」の姿があった。  見つからずにそこを通るには、自らも「敵」と同じ姿をして紛れるしかない。  「敵」は情け容赦のない乾いた視線を辺りに振りまいている。  捕まり「敵」として判断されれば、公共衛生の敵として、烈火の日々が続く都市の外に放逐され乾涸らび、死体も原形をとどめぬまで風化し果てるその時まで放置されるのであろう。  それよりは僅かに可能性が高いと思われるのは、癲狂院の暗がりへと追いやられ、やはり乾涸らびるまで獄に繋がれることだろう。  「敵」のいる先にはコキュートスがある。

21 17/08/06(日)21:44:15 No.444624418

これ何なの?

22 17/08/06(日)21:44:30 [45/47] No.444624521

 ダンテが書き記したように、地獄の心臓があの先の箱の中で、極寒の中に蠢いているのであろう。  極寒の中で都市を操り、安寧を破壊しようとするもの。  破壊せねばなるまい。  男は睡魔に負け本を閉じた。  翌日、アルコールと薬の相乗効果で内臓が灼ける感覚を味わいつつも目覚める。  いや、目覚めたというのは正しくない。夢と覚醒の間を移ろいつつ、強烈な悪夢を見るが内容についてはさっぱり覚えていなかった。  酷く嫌な夢だった。飲んでいる薬の副作用で悪夢を見るらしい。ここ最近は慣れてきて、夢の中でこれは夢だと自覚できるようになっていた。いわゆる明晰夢である。  それでも目覚めてしばらくすると手に掬った泡沫の如く消えてしまうのである。何も覚えていなかったが服は汗で酷く濡れていた。  体は寝ているのに、脳だけが起きているので、目が覚めても金縛りに遭い、一切体が動かない。これはこれでなかなか苦しい。  新宇都宮タワーや都市に反旗を翻し、これを打倒する夢だったと思う。瞼の裏には地獄が映る。

23 17/08/06(日)21:44:46 [46/47] No.444624609

 その日、会社からの帰りに都市の建設計画にアクセスし、数日以内に都市建設者群が我が家を高速飛翔体が通り過ぎる計画であるのを確認した。  もう時間は残されていない。  動かねば。  量子コンピュータに直接破壊工作を仕掛ける場合であるが、都市公共衛生委員会の目をかいくぐるため、超高高度の成長を続けている塔の中の内圧を調整している、塔内部の圧力分散空洞の中を通り、そのまま空調施設の中をくぐっていくことにする。  量子コンピュータを破壊せずとも、新宇都宮タワーの一番加重がかかる地点に高速飛翔体を連鎖衝突させるというのを第一プランとすることにした。  量子コンピュータの位置は特別展望台のすぐ上の上空三万メートル程度のところにある事がわかった。  メンテナンスと設置スペースの都合上これ以上上空に設置していても仕方がないという。都市公共衛生委員会はここにもいるようである。地獄に滴らせた水音も漏らさず聞き逃さないであろうその連中には一切干渉しないことにする。  逃げるように回避していく戦法は無理だと考えることにした。  そもそも顔を合わせなければいいのだ。

24 17/08/06(日)21:45:03 [47/47] No.444624710

 都市公共衛生員はハッテン取締官と同様、同性愛行為をこの世の何よりも憎む。  都市の多様性を無限に認める都市側ではあるが、都市は性の多様性については認めない。  何故か、市民は心身共に健康であり、性的倒錯などは病気であり、これは極めて重罪に当たるという考えなのだ。  生まれながらの性の不一致などについては公共の福祉の観点から表向きは保護される。しかし、快楽を求めてハッテンするホモ野郎、ドホモ野郎の粘膜ぐちゅぐちゅケツ穴ぐっしょりサんトラム。  チンポこすりつけて腸気持ちいい!そんなのは認められない。ハッテン取締官、通称忍者はそこらじゅうに潜んでいてハッテン行為を取り締まっている。  都市のエアポケットとなった部分には監視の目がなかなか行き届かない、トウダイヒカリゴケが薄ボンヤリと光る中野郎共が絡み合っていた。  チンポ気持ちいい、チンポ気持ちいいッス!ガチムチ野郎が絡んで纏まるメンズボールを見つけ次第忍者は公共の福祉に乗っ取り取り締まる。  ホモ共は憎しみを込めてこういう。新宇都宮タワーケツの中に入れてチンポしごかれてぇ!と。

25 17/08/06(日)21:45:38 No.444624899

以前読んだ時より増えてる…

26 17/08/06(日)21:46:49 No.444625227

なぜかBLAMEを思い出した

27 17/08/06(日)21:46:49 No.444625228

ちょっと待ってまだ続いてたのこれ

28 17/08/06(日)21:46:50 No.444625232

昨日投下した分に冒頭5レスほど抜けがあったので再放送しました よろしかったらおひねりは「そうだね」でお願いいたします 昨日とかぶっている部分の方が多くて申し訳ありませんがよろしくお願いいたします

29 17/08/06(日)21:49:57 No.444626126

相変わらず最後の方で畳み掛けるようなホモの嵐 結構好き

30 17/08/06(日)21:58:17 No.444628371

相変わらず読ませる文章だ

31 17/08/06(日)22:00:44 No.444629047

新宇都宮続いてたの!?

32 17/08/06(日)22:02:35 No.444629497

ホモとBLAMEを混ぜ合わせた何か

33 17/08/06(日)22:04:18 No.444629975

もう我慢ならねぇ!テメェのチンポネビュラ賞させやがれ! みたいな感想が脳内のシナプスのまたたきに浮かびあがった

34 17/08/06(日)22:08:24 No.444631103

>なぜかBLAMEを思い出した ブラムとか伊藤潤二の「街」見たいなどこまでも都市構造が続いていく世界観が好きなのでそんなイメージで書いてます 皆勤の徒にも似ていると言われましたがこちらは読んでい無いのでちょっとわからないです 横浜駅SFも読んでいないのですがこちらともなんとなく違うとか言われたのでジャンルがよくわかりません

35 17/08/06(日)22:18:39 No.444634028

過去100レススク書いた「」がいたはずなのでまだ大丈夫

36 17/08/06(日)22:21:51 No.444634958

なそ にん

37 17/08/06(日)22:22:55 No.444635282

>新宇都宮続いてたの!? 10万字ぐらいは続けてみようかと思ってます もう最初の頃の設定誰も覚えてないでしょうね

38 17/08/06(日)22:23:09 No.444635348

遺伝子って精液?

39 17/08/06(日)22:24:09 No.444635612

今までのまとめが欲しいんですけお…

40 17/08/06(日)22:24:51 No.444635813

>今までのまとめが欲しいんですけお… っちーにあるよ

41 17/08/06(日)22:33:53 No.444638440

週一ぐらいで一気に投下するのと もう少し短めのスパンでちょいちょい投下するのどっちがいいかしら?

42 17/08/06(日)22:35:06 No.444638776

ちょいちょい投下のほうがいいかもー

43 17/08/06(日)22:35:16 No.444638833

素晴らしい…時間奪われたよ…

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