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17/06/20(火)03:11:08  高校... のスレッド詳細

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17/06/20(火)03:11:08 No.434626593

 高校生戦車道大会決勝戦を明日に控えた夜。  大洗戦車道隊長澤梓は、すべての準備を整えてパジャマに着替えてベッドに座っていた。  対戦相手は、聖グロリアーナ。  オレンジペコ。  決勝戦進出は、梓にとって二度目だ。初めてのときは西住隊長がいた。廃校のかかった試合で、梓たちも遅くまでビデオを見て研究したりしたものだった。  その西住隊長は、もういない。廃校もかかっていない。この戦力で決勝戦まで持ってきたこと自体奇跡と言ってもいい。  明日は受け継いだⅣ号を副隊長のこころちゃんに渡して、もともとの愛車であったM3で挑むことになる。  隊員には無理せず早めに寝て明日に備えるよう言ってあったが、梓は一人、お泊まりに来たチームメイトの寝息の中で、まんじりともせず過ごしていた。  勝ちたい。  あのはちみつ色の髪の少女に。  それは多分大それた目標だろう。彼女は有名校のベテラン選手で、自分はこころちゃんの言う通り初心者と言ってもいい程度のキャリアだ。

1 17/06/20(火)03:11:24 No.434626609

 でも。 「ペコちゃん……」  梓は何度目かのつぶやきとため息をともに、彼女と一緒に買いに行って新調したおそろいの機種のスマートフォンを手に取った。同じ機種ならわからないときに聞きっこできるから、と、彼女に勧められたのだ。彼女の髪とおなじくはちみつ色のボディ。  メッセージアプリを立ち上げる。  ペコちゃん、と名づけられた二人のルームは、5月で連絡が途絶えていた。  櫓が決まってから、どちらともなく連絡を絶った。  会うのは、決勝戦だ。  オレンジペコ。サクセサー・オヴ・ダージリン。  彼女と肩を並べるために。そして西住隊長を超えるために、ずっと頑張ってきた。  話したいな。そう思う。  わたしがんばったんだよ。ペコちゃんと一緒になりたくて、がんばったんだよ。  褒めてくれるだろう。喜んでくれるかな。でも話せないんだ。わたしはペコちゃんに並べるくらいにならないと。教わりたいんじゃない。褒めてほしいんでもない。くっつきたい…はちょっとしたいけど、でも違う。  わたしは、ペコちゃんと、競いたいんだ。あの華麗で優しい風と。  肩を並べたいんだ。

2 17/06/20(火)03:11:39 No.434626619

「んぅ…」  横で桂利奈が寝返りを打って、梓はぎょっとした。起こしちゃったかな?  ペコちゃんと競いたいのは、わたしのわがままだ。  そのわがままのために、みんな頑張ってくれた。ちょっとだけ申し訳なくなって、梓は頭のなかからオレンジペコを追い出した。この仲間に失礼だ。 「いいんだよ、梓」  足元で寝ていたはずのあゆみがいつの間にかベッドの隅に座っていて、窓から差し込む月明かりの中で微笑んだ。 「わたしも、ペコちゃんに勝ちたい。みんなそうだよ。梓だけじゃないよ」 「あゆみ……」  あゆみはもぞもぞと動いて梓の隣に来ると、彼女を抱きしめて倒れ込んだ。 「寝よ。明日、頑張ろうね」 「……ウン」  梓は頷いて、自分が弱気になっていたことに気付いた。ぽんとはちみつ色のスマートフォンを枕元に投げ出して目を閉じる。  待っててね、ペコちゃん。  今、行くよ。みんなと一緒に。

3 17/06/20(火)03:12:19 No.434626651

短い澤ペコだよ(ポロロン) 六月ならそろそろ戦車道は二回戦か三回戦くらいかな?

4 17/06/20(火)03:14:55 No.434626779

でかした!

5 17/06/20(火)03:17:32 No.434626883

やっぱ継続の「」はいい仕事するぜ!

6 17/06/20(火)03:20:29 No.434627014

ちなみに、これの前夜だね sq91501.pdf 澤さんとおなじような夜を、ペコさんも過ごしていたんだろうね(ポロロン)

7 17/06/20(火)03:33:48 No.434627533

寝る前に良い澤ペコを見た

8 17/06/20(火)04:05:21 No.434628600

 高校生戦車道大会は、聖グロリアーナ女学院の優勝で幕を閉じた。  聖グロリアーナとしては悲願の優勝である。  かつてあのザ・ダージリンも果たせなかった偉業を成し遂げたのは、小柄なはちみつ色の髪を持つ穏やかな少女で、おそらく外見からはその実績は想像できまい。  もはや彼女を"ダージリンの後継"と呼ぶものはいない。  彼女こそ、聖グロリアーナ中興の祖となるオレンジペコなのだ。  しかしオレンジペコ本人にとっては、(もちろんそれだって嬉しいことであることは間違いないが)もっと嬉しいことがあったのだ。 「わぁー! すっごいパフェ!!」  オレンジペコの差し向かいで、ついこの間死闘を繰り広げた、ちょっと地味な感じの少女がおひさまみたいな顔で笑った。  たっぷりのメロンを使い、新鮮な牛乳で作った生クリームとアイスクリームをこれでもかとあしらったダイエットの敵を前に、ダイエットなんて全く気にしていない健康的な笑顔で目をきらきらさせる澤梓に、オレンジペコもつられて笑顔になる。  いや、つられるまでもない。  さっきからオレンジペコもきっと、同じように笑っているのだから。

9 17/06/20(火)04:05:36 No.434628606

「いいの? ごちそうになっちゃって」 「ダージリン様のプレゼントなんです」  オレンジペコは悪びれずに言った。先輩であるダージリン様がいまだに気にかけてくれているのは嬉しい。好意は素直に受け取っておこう。それに、このポップなお店のチョイスはダージリン様じゃなく同居人さんだろうし。しかしそのセンスは、梓を連れてくるにはぴったりで、オレンジペコは同居人嬢にすこしだけ(ほんの少しだけ)感謝した。 「いっただきまぁーす!」  んー! と満面の笑顔でクリームを口に運ぶ梓を見ながら、自分もオレンジやイチゴのチッピングされたパフェをいただく。さわやかなフルーツの酸味が冷たいクリームと合わさって、これは美味しい。普段お茶会で食べ慣れたお菓子と違ってとにかくゴージャスで、オレンジペコにとっても新鮮。 「ね、ね、そっちどんな味?」 「え?」  顔をぐいっと近づける梓に、オレンジペコは少し赤くなっておずぞうと、用意してあったセリフを使った。 「一口、たべます?」 「ウン!」

10 17/06/20(火)04:05:53 No.434628615

 梓は快諾し、オレンジペコは長いスプーンでいちばんおいしいであろう部分をすくって梓に差し出した。  目を閉じて雛鳥みたいに口を開ける梓のかわいい唇の中に押し込んであげると、彼女はぱくんと口を閉じて目を輝かせた。 「おいしい! じゃあ、こっちも食べてみて!」  梓は同じようにスプーンを差し出し、オレンジペコに差し出す。 「い、いい、いいんですか? しゃわしゃん……」 「もっちろん。こっちもすっごいおいしいよ!」  お友達同士でパフェのシェアだなんて、なんだか女子高生みたい。  オレンジペコはうきうきどきどきして、目を閉じて口を開けた。すてき! 「ね、ペコちゃん」  空になったグラスを脇にどかすと、梓がちょっとためらいながら切り出した。 「大会、どうだった?」 「どうって……」  オレンジペコは、今は梓の言いたいことが解った。だからオレンジペコは、思ったことをそのまま言う。飾ったり、気を使ったりしない。だって梓ちゃんはともだちだから。 「悔しかったです」

11 17/06/20(火)04:06:11 No.434628624

「勝ったのに?」 「えぇ。だって、梓ちゃん、すごかったですから。もちろんチームの皆さんぜんぶ」  オレンジペコは素直に言う。  初心者だったのだ。最初に彼女と出会ったのは二年前で、その時の梓と来たら戦車を置いて逃げ出すような選手だった。  それがたった二年で追いつかれてしまった。 「悔しかったです」  最初は才能だと思った。でも彼女をよく知るうちに、それが才能ではないことに気付いた。彼女は効率もノウハウもないが、でも目標に向かって頑張っていたのだ。自分の戦車道を探して、誰かの後ではなく自分で進む道を探す姿に、オレンジペコは彼女が大好きになった。 「ペコちゃんのおかげだよ」  梓はそう言って、テーブルの上で手を伸ばしてオレンジペコの手を握った。 「ペコちゃんに追いつきたくて、頑張ったんだ」  梓はにっと笑って、それからふーっとため息を付いた。 「やっと言えた!」  オレンジペコは理解した。そして興奮した。  私は一生のライバルを手に入れたんだ!

12 17/06/20(火)04:06:26 No.434628627

「ね、大学でも戦車道、やるでしょ?」 「えぇ、そのつもりですよ」  オレンジペコは不敵に笑ってみせる。  梓ちゃんと一緒の大学を受験するのは決まっている。そのためにオープンキャンパスにも行ったのだから。  梓もまた、ちょっと芝居がかって不敵に笑った。 「「次は負けないからね」」  そして二人は同時に笑って、手を上げておかわりを注文した。

13 17/06/20(火)04:06:45 No.434628637

なんかもう1個できたから置いておくね…(ポロロン)

14 17/06/20(火)04:09:16 No.434628700

良いぞ…

15 17/06/20(火)04:10:34 No.434628744

澤ペコいいよね… 青春の爽やかさをギュッとつめた味がするよね…

16 17/06/20(火)04:14:15 No.434628841

仕事早いな「」カ…

17 17/06/20(火)04:20:01 No.434628994

聖グロが決勝に勝ち上がるとか割とミラクル

18 17/06/20(火)04:22:52 No.434629086

「どうしたの?」  わたくしがカードの請求明細を見ていると、後ろからケイが聞く。 「すっごい難しい顔してる。見ても?」 「いいけれど……」  プライバシーに関わる部分では、彼女は案外律儀だ。勝手に人のものを見たりはしない。わたくしとは違う。  ケイはうしろからわたくしの首に腕を回して、肩越しに胸を押し当てて請求書を覗き込んだ。 「ン? フルーツパーラー……ワオ!」  ケイがぷーっと噴き出してからけらけらと笑った。 「ひとりよっつも食べたの?!」  オレンジペコが大事な友達とデートするというので、優勝祝にとケイおすすめのパーラーをご馳走したのだ。請求はすべてこちらに回してもらうことにしてあったのだが……。 「オレンジペコがこんなに健啖家だったとは思わなかったわ」  わたくしは予想以上の出費に天を仰いで、それから笑い転げるケイに言った。 「今夜の外食は中止。わたくしが作りますわ」  ケイがぴたっと真顔になった。  どういう意味かしら?!

19 17/06/20(火)04:28:06 No.434629225

ついでだよ(ポロロン)

20 17/06/20(火)05:05:15 No.434630068

起きててよかった。これはいい澤ペコ分が補充できた

21 17/06/20(火)05:06:59 No.434630111

足元で寝ていたって文で超でかいベッドで寝ているウサギさん達が見えたけど そうじゃなくて床にもお布団広げてるのね 大学生に特大甘味×4×2の請求はでかいね… でも自炊は…その……金銭的な節約によって心の栄養を失ってしまうのでは?

22 17/06/20(火)05:08:59 No.434630161

なぁに フィッシュ&チップスとピザを交互に食べればお互い満足って寸法よ

23 17/06/20(火)05:11:19 No.434630220

できる?大丈夫?揚げ物なんて高度な料理ちゃんと作れる?

24 17/06/20(火)05:13:55 No.434630270

ダージリン様特製のポテトチップのサンドイッチや、パンにトーストを挟んだサンドイッチだとかが出てくる

25 17/06/20(火)05:15:11 No.434630301

(台所から聞こえる悲鳴と油のはねる音)

26 17/06/20(火)05:16:08 No.434630327

>ダージリン様特製のポテトチップのサンドイッチや、パンにトーストを挟んだサンドイッチだとかが出てくる 英国名物やめろや!

27 17/06/20(火)05:17:12 No.434630353

うどんに目玉焼きとベーコンをのせたもの

28 17/06/20(火)05:18:15 No.434630378

(どうしようもなくなってから呼ばれる安斎)

29 17/06/20(火)05:19:16 No.434630393

これあれだな 甘味でお腹いっぱいになってご満悦に 美味しかったねー また今度来ようねー ってお店から出てくるけど 小一時間くらいしたらお互いに胃もたれで青くなってるやつだな 若さも万能ではないのだ…

30 17/06/20(火)05:25:03 No.434630539

>(台所から聞こえる悲鳴と油のはねる音) 「ヘイ、ちょっと大丈夫なの?」 「大丈夫ですわ!」(大丈夫じゃない)

31 17/06/20(火)05:31:47 No.434630724

フィッシュアンドチップスもお魚を捌くというこうどなちょうりぎじゅつが必要だからなぁ…

32 17/06/20(火)05:45:55 No.434631109

恐れや不安だけじゃなくて昂りもある 明日を楽しみにしている確かな気持ち 競う悦びを知ってしまった二人の間の絆 首を狩られた首狩りウサギのマークいいよね…

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