22/11/19(土)01:24:38 泥の妖怪 のスレッド詳細
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22/11/19(土)01:24:38 No.994885775
泥の妖怪
1 22/11/19(土)01:26:45 No.994886219
最新の大きくて薄くて画質の綺麗なテレビに30年も昔に発売された名作RPGの画面が映っている。 当然ポリゴンなんてものはなく、ひたすら点描で全てが描かれる古き良きドットの世界だ。 いろははソファに座り、クッションを抱いて画面を見ている。手にはコントローラーは握られていない。 コントローラーを握って冒険をしているのはすぐ隣に座っている勇者だった。 「───そんなのサクっと声かけて仲良くなっちまえばいいじゃねーか」 十字キーをぐりぐりと動かす束がつっけんどんに応答する。 束のプレイは拙いもので既に何度も全滅していたが、諦めずに挑戦すれば自ずと前に進むもの。旅路は中盤まで差し掛かっている。 いろははクッションに顔を埋めるようにしてぼそぼそと呟いた。 「そんなのすぐにはできないよ…周りの子に話しかけるなんて…怖くて…」 「わっかんねーなー。ツカネにゃそこでためらう理由が。デカいくせに意気地がねぇよ」 「…」 厳しい言葉だったが、がっかりと落ち込んだものの不思議といろはは束に対して怯まなかった。 それはその言葉に馬鹿にしたような負の響きがないからだろう。感じたものをそのまま口にしたという趣きがあった。
2 22/11/19(土)01:26:55 No.994886248
実際束は遠慮をしない。いろはの家にやってくるのだって「ここ涼しいし菓子美味いしテレビでけーし誰も持ってない古いゲームいっぱいあるし」という理由を隠しもしない。 しかし椚家では束は早くも人気者だった。あのいろはがハル以外の同世代の女の子を連れてきたのだ。 はしゃいだのはいろはの母だった。お陰でテーブルの上にはちょっと値段の高いお菓子がずらりと並んでいる。 それを束は駄菓子でも齧るみたいに躊躇いなくぽいぽい口の中へ放り込むのだった。 「束はさ…友達多いんでしょ?」 横の束を見て言ういろは。ハルには未だに『明瀬さん』としか呼べないのに、束には強引に呼び捨てにしろと迫られてしまった。 他人を呼び捨てにするなんて初めてのことで最初は戸惑ったが、今は慣れつつある。 当人は画面を見つめたまま。勇者に買い物をさせながら、おう、と答えて笑う。 「多いぜ。そのぶんツカネが嫌いなヤツも多いけどな!」 「…よくそんなこと平気で言えるよね。いろはだったら竦んじゃうな…嫌われたり、気持ち悪がられたらって思うと…」 「お前、ごちゃごちゃ面倒くせーこと考えてるのなー。人と付き合うのにいちいちそんなこと考えてるのかよ」
3 <a href="mailto:〆">22/11/19(土)01:27:09</a> [〆] No.994886304
突き放した台詞だったがやはりそこに悪意の気配はない。気に病まずただ落ち込むだけでいい。 しゅんとしたいろはだったが、束が続けた言葉を聞いて思わずクッションに埋めた顔を上げた。 「───でも、ま。いいんじゃねぇの」 「え?」 その口調が普段の束と違って静謐さを帯びていたから、いろははどきりと驚いてしまった。 「誰とも仲良くはなれねぇよ。お前が誰と付き合うかもお前が好きにすることだ。 色んなやつと関わるのが難しいっていうならそれがお前にとっての付き合い方だろ。ダメだったことを上手くはできねぇさ」 画面の中の勇者を再び冒険の旅に送り出す束の表情に変化はない。 でも何故だろう。その横顔は少し寂しげなものにいろはには思えて─── 「…ってオイ!いきなり死にかけてるじゃねぇか!卑怯な手を使うヤツが3匹も揃いやがって!」 「ああ、それは…うん、詰んだね。一旦出直しだね…」 瞬く間に勇者たちが全滅していく。憤った束だったが、ふと表情を脱力させてぽつりと言った。 「けどそうだな。最初から上手くいくはずねぇもんな」 …ふと見せる束の儚げな微笑みの頼りなさに、いろはは再び胸中をざわつかせてしまうのだった。
4 22/11/19(土)01:27:41 No.994886412
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5 22/11/19(土)01:40:36 No.994889461
ツカいろ…
6 22/11/19(土)01:41:31 No.994889714
むぅ…そういうのもあるのか…
7 22/11/19(土)01:42:44 No.994890041
推定ドラクエ3
8 22/11/19(土)01:49:06 No.994891427
引っ込み思案な女の子に優しくて護ってくれる王子様とオラオラ系だけどたまに寂しさを見せるヤンキー 王道だ
9 22/11/19(土)02:11:06 No.994895843
この世に生を受けて17年と二ヶ月…六花は始めて挫折と嫉妬という感情を実感した 今日、六花は礼園女学院高等部の身体検査を受けた。そこまでは何も問題ありません!スリーサイズのトップBが80未満だったらコトを除けば! おかしいですよね?去年は16歳の時は79だったんですよ?11歳の時は75あったんですよ?5年で4センチしか大きくなってないんですよ? 周りの子はまた胸大きくなっちゃったーとかブラ買い換えなきゃーとか談笑してるのに…なんで私はまだ小学生の時のブラギリギリ使えるの? むにむにと揉んでみるが大きくなるはずもない。おかしい、姉はバスト90母は88、私が小さい筈はない 現実を認めろ 私の脳内に居着いたイマジナリー隻眼農夫が戯言を囁いてくる。そんな筈は……だって周りの子は…… 『持ってる側が持ってるというだけで持っていない側は妬ましいのよ。心が焦げ付くほどにね。』 あ、ああ、嗚呼、あーーー!!!! 6年の月日を経て漸く枢木さんの言っていた事を正しく理解した。ここが私の行き止まり、デッドエンドなのだと。 頭に思い浮かんだのは物凄く楽しそうに人を同類のように見てくる楡さんの顔。 認めない!私は絶対に諦めない!
10 22/11/19(土)03:03:55 No.994903132
「悪いんだけど私最初から知ってたから。あなた、ボディに関してはこっち側だって」 面倒くさそうに楡が返事をする。面倒くさそうに指先が宙空を踊る。 轟く銃声。響く悲鳴。無傷の楡。今のは魔銃の発射音か。冗談じゃない。 即席の探査魔術で周囲の状況を測りながら楡は送信口にぼやいた。 「あなたもう終わりよ。潔く認めなさい。貧する者は永遠に貧するようにこの世界はできているの。 反逆したければパッドでも詰めなさいな。手っ取り早く盛れるわよ」 急に静かになった。最悪だ。まわりの味方は全滅。自分だけが残ったらしい。 舌打ちしながらヤドリギの垂を地面へ打ち込む。ざわりと脈打ったものが周りへと伝わっていった。 全く。こんな姿をお父様が見たら怒るだろうか。それともどうでもいいと言うだろうか。もうどっちでもいい。 「…まだ抵抗するの?無駄なのに…。なら納得できるまでしたらいい。それがあなたの決めたことでしょ?」 ヤドリギの根が捕捉した感触を覚え、23歳の楡はこそりと動き出した。 「気のせいよ」 ところで受話器から聞こえる周りが騒がしい、という六花の言葉に応じながら魔術で敵をねじ伏せる。指先は次の魔術を紡いでいた。
11 22/11/19(土)03:05:28 No.994903281
くるるるるるが吹っ切れとる