22/11/12(土)23:50:20 学園の... のスレッド詳細
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22/11/12(土)23:50:20 No.992731564
学園の中を歩き回っていれば、普段見ない教室に明かりがついているということはそう珍しいことではない。一部の個性的な生徒たちが少々愉快なパーティーを繰り広げていることさえあるのだから、空き教室に人がいるくらいのことで驚くことはないはずだった。 しかし、独りで教室に佇むその人影が見知った顔で、それがエプロン姿という見慣れない格好をしているのであれば、話は変わってくる。 「何してるんだ?」 授業時間は終わっているし、授業中の雰囲気でもなかったから、遠慮なく声をかけた。 「あ、トレーナー」 振り返った彼女の表情は、悪戯の決定的な瞬間を見られてしまった子供のように、少しだけ恥ずかしげだった。
1 22/11/12(土)23:50:46 No.992731727
彼女と二人きりになると、1クラス分の人数が入る家庭科室が余計に広く感じられる。幾つも並べられた広い台も、調理器具が乗っているのは目の前の1つしかない。 閑散とした教室の中で、彼女は些か困ったような表情を浮かべた。 「来てくれて嬉しいけど、まだ来てほしくなかったかな」 後ろに置かれたボウルの中身を見やると、やはり彼女はばつが悪そうに顔を逸らした。 ボウルの中には黄色い液体が入っていた。しかし均一な黄色ではなく、所々に白い塊のようなものが混じっている。 「見てもいいか?」 「笑わないでよ」 「そんなことしないって」 「でも、なんかちょっと楽しそうじゃん」 確かにそうかもしれない。失敗を笑うつもりはないけれど、いつも飄々としている彼女が少ししおらしくしている様は、何か少し新鮮だ。