虹裏img歴史資料館

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22/11/06(日)23:57:50 人を好... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1667746670192.jpg 22/11/06(日)23:57:50 No.990704396

人を好きになる。 自分には縁がないことだと思っていた。 常日頃誰かを裏切り、誰かを騙して生きていたのだ。 自分は嫌われて当然だし誰かを愛する資格などない。 そう思っていた。 だけど、胸の中に芽生えたこの気持ち。 これは一体なんなのか。 その答えは、分かり切っている。 それを否定はできない。 もし、この思いが許されるのなら。 あの人と一緒にいられるのなら。 それに勝る喜びはないのだろう。

1 <a href="mailto:sage">22/11/06(日)23:58:01</a> ID:/AaERgMk /AaERgMk [sage] No.990704462

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2 22/11/06(日)23:58:20 No.990704567

11歳の頃。 日が落ちた夜。 街から離れた道の途中。 「ふんふんふーん♪」 ブルーは上機嫌で帰路についていた。 今日はアイテムの売れ行きが良かった。 商品の評判もよく、気分がいい。 「今夜の晩御飯はちょっと奮発してもいいかもねー♪」 そう独り言を口にしてしまう。 と、視界に何かが入ってきた。 草木の緑でもない。 土の茶色でもない。 ましてや灯りの白でもない。 なにか、異質な色。 そちらに近づいてみる。

3 22/11/06(日)23:59:29 No.990704999

「…レッド!?」 そこにあるのは、赤。 彼の名前。 彼の衣服の赤。 そして、流れる血の赤。 額や腕から明らかに出血している。 「レッド!大丈夫!?しっかりして!」 彼に近寄り、抱き起こす。 返事はない。 意識がないのか、緩やかに呼吸はしているもののそれ以上は動いてすらいなかった。 このままだと彼の命は危ないかもしれない。 放置するわけにはいかない。

4 22/11/07(月)00:00:21 No.990705350

少しだけ迷ったが、自分の隠れ家に連れて行く。 ここからだとそこが一番近い。 それに、彼に何かあった以上は病院すらも危険かもしれない。 彼を傷つけた者がそこに紛れてる可能性だってある。 「ニドちゃん!お願い!」 ボールからニドちゃんを出し、レッドを抱えてもらう。 女の子の自分が同じくらいの背丈の男の子を抱えて移動するのは無理があるし時間もかかる。

5 22/11/07(月)00:01:01 No.990705627

こういう時、自分の仲間に速く移動できるポケモンがいれば。 そんな後悔が湧き上がるが今はどうしようもない。 とにかく、今は急いで彼の手当てをしなければ。 そう考えてブルーはニドちゃんと共に走り出した。

6 22/11/07(月)00:01:21 No.990705752

隠れ家に着くと、レッドをベッドに寝かせる。 救急用の道具を引っ張り出して、手当てを行う。 先程は暗かったからよくわからなかったが、傷は思っていたよりは浅いようであった。 血を拭うと消毒液で傷を洗う。 痛みがあったのか、レッドが顔を歪めるが気にしてる場合ではない。 ガーゼを当てて、包帯を巻く。 上着やシャツも脱がせ、腕の方も同じようにする。

7 22/11/07(月)00:01:41 No.990705871

手当ての方法は幼い頃に仮面の男に教え込まれた。 あの頃は嫌々身につけられたが、こんな形で役に立つとは。 「世の中何があるか、わからないものね」 手当てを終えると、気が抜けたのかそんなことを呟いてしまう。 まだレッドが目を覚ます様子はない。 苦しそうだった顔は今は落ち着いてはいるので、もう安心だろう。 「全く、世話かけちゃって」 軽く彼の頬を突く。 それでも目を覚さない。 起きるまで時間がかかるだろうと判断して、ブルーは夕食の準備をしようとその場を離れた。 「今日は儲かっててよかったわ」 いつもより多めに作らないといけない。 本当に何があるかわからない。 そう思いながら今度こそキッチンに向かった。

8 22/11/07(月)00:04:10 No.990706801

作り終わり、部屋に戻る。 まだ目を覚ましていないレッドを置いて自分だけで夕食を取る。 「…」 普段は一人きりの食事。 それが今は寝ているとはいえ別の誰かがいる。 そのことがブルーには違和感となっていた。 食事を終えて、片付けをしてもまだ起きる様子はない。 「どれだけ寝てるのよ、こいつ…」 色々としてあげたのに、呑気に寝ている姿を見ると少しは不満を感じる。 ふと、思いついたことがあった。 あれこれしてあげたのだ。 これくらいはしてもいいだろう。 そう判断してブルーはベッドに近づいた。

9 22/11/07(月)00:05:17 No.990707187

「う…」 目を覚ます。 レッドの視界に飛び込んできた光景は見慣れないものだった。 知らない天井。 覚えのない照明。 「あれ…?」 見渡すと、それだけではない。 部屋の様子も。 ベッドやシーツも。 「ん?」 隣に、何かある。 ベッドの上の布団に、盛り上がっているところがある。

10 22/11/07(月)00:07:05 No.990707830

なんだろう、と思っていたらそれがむくりと起き上がる。 布団が剥がれ落ち、中身が露わになる。 何度も見た顔。 自分と同い年とは思えない大人びた美貌。 ブルーだ。 彼女は眠そうに瞼を擦ると、こちらと目を合わせる。 「おはよう、レッド」 ふっと微笑むと、彼女がもたれかかってきた。 「え?」 「昨日、アタシにあんなことしてくるなんて…。 びっくりしたけど、アタシ嫌じゃなかったわ」 「ええ!?」

11 22/11/07(月)00:08:15 No.990708279

全く身に覚えがない。 急にそんな話をされて驚く。 頬を染めて恥じらうブルーにどうすればいいかわからない。 「お、オレ、何もした覚えないんだけど」 「そんな!アタシにもうお嫁に行けないようなこと何度もしてきたじゃない!」 ブルーが詰め寄ってくる。 目に涙まで浮かべ、真剣な様子でこちらに問いかけてきた。 「え、え?」 彼女の様子に戸惑う。 自分の置かれた状況が何一つ理解できず、ただただ狼狽えるしかなかった。 「ええと、ブルー、これってどういう…」 と、そこでブルーが笑い出した。 「あはははははは!」 腹の底から出るような、愉快そうな笑い。

12 22/11/07(月)00:08:49 No.990708486

今、自分がどうなっているかはわからないが、ひとつだけはわかった。 「オレ、からかわれてる?」 「ごめんごめん。あまりに気持ちよく寝てたものだから、ついね?」 「はは…」 苦笑しようとすると、痛みを感じた。 腕からの苦痛。 見ると、そこには包帯が巻かれていた。 「え、これブルーが?」 「そうよ。道端で倒れてたから連れて帰ってきたの。 放っておくわけにもいかないしね」

13 22/11/07(月)00:13:10 No.990710081

「そっか、ありがとな」 「いいえ。ご飯食べる? 夕ご飯の余りだけど」 「なら、せっかくだしいただくよ」 ここは彼女の好意に甘えておくことにする。 どの道、負傷している身体で外に出るのは危険だろう。 ならば保護してくれたブルーを頼った方がいい。 「じゃ、温め直すからもうちょっと待っててねー」 ベッドから飛び出して、ブルーは部屋から去っていった。

14 22/11/07(月)00:21:33 No.990712911

「美味しい?」 「うん。ブルーは料理も出来るんだな」 がっつくように食事をとり、レッドが言う。 自分よりも多めに食べたがる彼の様子に、 男の子だなという意識が湧く。 「そんなにお腹空いてたの?」 「それもあるけどさ、いっぱい食べたくなるくらい美味いって思って」 「そう…」 料理を褒められた。 そんな経験は滅多にない。 これは生きるために身につけたもの。 勉強はしたが、ほぼ独力で習得したもの。 かつては弟にも振る舞ったものの、それから上達したものは他人に振る舞ったのはこれが初めてだ。

15 22/11/07(月)00:27:24 No.990714835

褒められた。 そのことがなんだかむず痒い。 自分に自信はある方だ。 外見や知識などを褒められるのは日常茶飯事ではある。 だけど、料理といった人前で見せることのないことについて褒めてもらえた。 その経験は浅くて、ブルーにとって耐性がなかった。 「おかわり、いる?」 食事をやめずに頷くレッド。 それを微笑ましく思いつつ、ブルーはおかわりをよそいに行った。

16 22/11/07(月)00:40:44 No.990718929

「ふーん、ロケット団とやり合ってたんだ」 「ああ、全員倒しはしたんだけど。 こっちもやられちゃってさ」 食事を終えると、レッドは事情を話してきた。 「でもちゃんと勝ったのはさすがじゃない。 ケガしすぎだとは思うけど」 「たはは、そうだなぁ。 ちょっと油断した」 怪我の痛みこそあれど、それ以外に苦しむ気配もない。 彼の様子にホッと胸を撫で下ろす。 「それにしても、ブルーのおかげで助かったよ。 ありがとうな」 「いいのよ。 今度たっぷりお礼してもらうから♡」

17 22/11/07(月)00:43:56 No.990720000

「…嫌な借り作っちゃったな」 レッドが顔を歪める。 「冗談よ。半分くらいはね」 「半分は本気なんだ…」 本当はもう少し本気なのだが。 それは口には出さないでおく。 「それはそれとして、今日は遅いしこのまま泊まっていいわ。 その怪我のまま放り出すのも悪いし」 「なんか世話になっちゃって悪いな」 「いいえー。 あ、ベッドは使っていいからね。 怪我人優先よ」 「じゃ、そうするよ」 そう言ってレッドはベッドに寝転んだ。

18 22/11/07(月)00:45:29 No.990720482

「さて、アタシは別のところで寝なきゃ」 椅子に腰掛け、毛布を被る。 仕方ないが、明日は身体が痛くなってそうだ。 だけど後悔はない。 誰かを助けてあげられた。 そのことで少しだけいい気分になりつつ、ブルーは目を閉じた。

19 22/11/07(月)00:53:17 No.990722898

翌朝。 「色々ありがとう。助かったよ」 礼を言ってレッドが立ち去ろうとする。 「ちょっと待って。 アタシも外に出るから途中までは一緒にいきましょ」 「そうだな、そうするか」 自分も手早く身支度をし、レッドと共に外に出た。 「ケガ、病院で診てもらった方がよくない?」 「大丈夫だよ。ブルーのおかげでさ」 にこやかに笑ってくる。 朗らかな表情。 太陽のように明るい笑顔。 それに、ついブルーは見惚れてしまう。

20 22/11/07(月)00:56:30 No.990723862

「どうかしたか?」 「い、いえ。なんでもないの」 つい顔を逸らす。 なんだろう。 急に彼の顔が見れなくなった。 鼓動もいつもより早く、大きく感じる。 これはなんなのだろう。 今まで感じたことのないこと。 未知の体験。 それにブルーは戸惑っていた。 「あ、アタシこっちだから! じゃーねー」 そう言い残し、逃げるようにその場から離れた。

21 22/11/07(月)01:01:05 No.990725204

「なんなのかしら…」 仕事を終えて、帰宅する。 今日は疲れた。 何をしてもあの顔を思い出す。 レッドの明るい笑顔を。 あれが脳裏に焼き付く。 忘れようとしても忘れられない。 気がついたらあのことばかりを考えて、集中ができないでいた。 「あーもー!」 苛立ちつつ、ベッドに飛び込む。 あいつの、匂い。 レッドの匂いがまだ残っている。 明らかに自分のではない香り。 それを感じてしまい、ブルーはまたあの顔を思い浮かべてしまった。

22 22/11/07(月)01:05:03 No.990726337

それから大人になり。 ブルーは目を覚ます。 住み慣れた部屋にベッド。 そこに横たわるのは自分ともう1人。 「くかー…」 レッドが無防備な寝顔を晒していた。 「ほんと、間抜けな顔」 軽くつついてみる。 と、レッドが少しだけ瞼を開いた。 「あ、起こしちゃった。ごめんね」 「…いま何時?」 「まだ6時よ。 もうちょっと寝てても大丈夫」 「わかった…」 すぐにまた眠りについた。

23 22/11/07(月)01:07:40 No.990726973

今は、彼と愛し合っている。 隣には当たり前のように自分がいて。 寝顔も、笑顔も。 彼の表情を独り占めしている。 「ほんと、あなたが好きでよかったわ」 彼といると幸せな気分になれる。 暖かい気持ちになれる。 その感謝を込めて、ブルーは寝顔に口付けした。

24 22/11/07(月)01:08:20 No.990727154

以上です 閲覧ありがとうございました

25 22/11/07(月)01:13:00 No.990728406

先週に引き続き過去と現在両方を書いたレブルです 子供の頃のレブルの距離感の練習も兼ねてるんですがちょっと大人の頃のに引っ張られてしまうのでまだまだです

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