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銭湯の... のスレッド詳細

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22/11/01(火)19:23:47 No.988689743

銭湯のお湯というものは大体40度から42度、場所にもよるが今自分が浸かっている湯槽のメーターを見ると、41度を指し示していた。これくらいの熱さが、ちょうどいいのだ。一週間の疲れが溶かされて流れ出ていくような感覚だった。子供の頃の父の教えを思い出し、肩までお湯に浸かって100秒数え、火照った体をぬるま湯で適温に戻してから浴場を出た。 いつもの風呂よりも熱めのお湯に浸かったからか、熱が出口を求めて体中を巡り、顔から湯気が出るような心地だ。サッと体を拭いて服を着ると、脱衣所を出てすぐ横にあるガラス張りの冷蔵庫から愛飲しているヨーグルト味の飲料が入ったガラス瓶を取り出し、受付まで持っていく。 「はい、160円ね」 番台に代金を支払うと商品を抱えてソファーに座る。フロントに置かれたテレビは夕方ということもあって地上波の報道番組を写していた。特段、興味はない。瓶を覆っているプラスチックのパッケージを外し、一口、口に入れる。清涼感と甘さがちょうどいい。そのまま、ちびちびと中身を減らしていく。

1 22/11/01(火)19:24:56 No.988690194

番台に代金を支払うと商品を抱えてソファーに座る。フロントに置かれたテレビは夕方ということもあって地上波の報道番組を写していた。特段、興味はない。瓶を覆っているプラスチックのパッケージを外し、一口、口に入れる。清涼感と甘さがちょうどいい。そのまま、ちびちびと中身を減らしていく。本来なら風呂上がりは一気に飲むのだろうが、勿体ない気がしていつも貧乏くさい飲み方をしてしまう。これは、子供の頃から変わらない。 「それにしたって160円かぁ………」 半分ほど中身が減った瓶を揺らして愚痴る。これもまた、随分とケチ臭い感想ではあるが、記憶が確かなら自分が家族と訪れていたときは大体半分ほどの値段だったはずだ。 ふと、テレビの横に設置された本棚が目に入った。そういえば、子供の頃は両親がマッサージチェアに座っている間、ここにある漫画を読んで時間を潰していたっけ。なんの変哲もない、シンプルなギャグ漫画。今読んでも面白いかは分からないが、思い出に浸るには十分かもしれない。雑誌と硬派なバトル漫画に追いやられて、隅で縮こまっているボロボロの背表紙の漫画を取り出し適当にページをパラパラと捲る。案外覚えてるものだ。

2 22/11/01(火)19:25:39 No.988690457

「あっ……トレーナー!………で、あってますよね?」 ふと、思い出の少年時代から一気に現代へとゆり戻される。聞き馴染みのある声、ピコピコと動くウマ耳。担当ウマ娘のマチカネタンホイザだった。 「あれ………マチタン?どうしてここに?」 「あ、やっぱりトレーナーでしたか。私はお休みで実家の方へ戻ってたのでそれで久しぶりにここに来ようかと思って……」 「もしかして、マチタンの実家もこの近所だったのか?」 「私の実家も……ってことはトレーナーさんも?」 「そうそう、この近所に住んでたんだよ」 なんという偶然だろうか。まさか教え子と育った場所がこんなにも近かったとは。よく見ると、彼女の尻尾や耳はしっとりと湿っていて、どうやら向こうも風呂上がりのようだった。 「すっごい偶然ですねぇ……色々とお話はしたいんですが、その前に…」 彼女は冷蔵庫からフルーツ牛乳を取り出し、番台へと向かう。 「おじさん!これくださいな」 「あいよ、150円」 「ありがとうございまーす」

3 22/11/01(火)19:26:06 No.988690629

彼女は手際よくパッケージを外すと瓶に口をつけて斜め45度に傾ける。ゴクゴクという音が聴こえてくるほど豪快に、一瞬で瓶の中身が消えていく。 「っぷはぁ……やっぱりお風呂あがりはこれですねぇ」 「いい飲みっぷりだったな」 「あっ……ごめんなさい、トレーナーも飲みたかったですか?」 「いやいや、気にしなくて大丈夫だよ。俺の分は買ってあるし。それに、それだと間接キ……」 言いかけて、止めた。下手しなくてもセクハラだな、これは。彼女の方も気まずそうに目線をずらして、顔をほんのりと赤くしている。きっと、風呂でのぼせただけではないはずで。 「……ごめん、変なこと言った」 「私は別に、いいというかなんというか………そ、そんなことより!トレーナー、ここら辺に住んでたんですよね!?」 「あ…うん。あそこの川の向こう側のマンションに住んでてさ……」 まさか、彼女と地元の話ができるとは。小学校近くの公園、近所の床屋や児童館の話………彼女との年の差の分、自分の知らないこの場所の話を聞けたりもして。

4 22/11/01(火)19:26:31 No.988690791

「あちゃー。あそこの花屋、潰れちゃったかぁ」 「今はカフェになっちゃいましたね。行ったことはありませんけど」 なんとなしに窓から外を眺めると、さっきまで夕焼けに照らされていた世界にいつの間にか暗闇が広がっていた。思いがけない再会で、あっという間に時間が過ぎていたようだ。 「そういえばトレーナー、晩ごはんの予定はもう決まってますか?」 「いや、特には。どこか外で食べようかなと思ってたんだけど……」 「ふっふっふ…それじゃあ私の両親のお店はどうでしょう?すぐ近くですよ!」 「そうか。ご両親は定食屋だったね。もちろん、そっちが良ければ行かせてもらうよ」 「やったー!」 そうと決まれば、あまり遅い時間になっても向こうに迷惑だろう。鞄から上着とマフラーを取り出して外へ出る準備をする。 「あっ………トレーナー、残ってますよ、それ」 しまった、彼女と話すのに夢中で飲むのをすっかり忘れていた。ガラス瓶の中の液体は、もう既にぬるくなっていた。

5 22/11/01(火)19:26:55 No.988690975

「………じーっ…」 わざとらしい、彼女の視線を感じる。さっきフルーツ牛乳を飲んだばかりじゃないか、と言う気にはならなかった。これも、彼女の愛嬌ゆえだろうか。 「…飲む?」 「いいんですか?えへへ……半分こ、ですねぇ」 瓶を彼女に手渡すと、彼女はまるで温かいスープでも飲むように恐る恐る飲み口に唇を押し当てる。ついさっき自分が指摘しかけた間接キスという言葉が頭をよぎるが、それをわざわざ指摘することは野暮であるように思えたし、何より彼女の顔を見ればお互いに不都合がないことは明らかだった。 彼女はぬるくなったヨーグルト飲料を喉を鳴らしながら口に含んでいく。少しずつ、花の蜜を吸う蜂のように。 「…甘くて、美味しいです」 「それはよかった」 飲みきって空になったガラス瓶を回収用のカゴに入れると、いたずらっぽく彼女は笑った。こんな顔もするんだな。今日は思い出に浸るだけでなく、新しい彼女を知ることができた。陳腐な表現かもしれないが、充実した休日というやつに違いなかった。 銭湯を出て、下駄箱にプラスチック製で縦長の鍵を差し込んで靴を取り出す。この行為も、懐かしい。

6 22/11/01(火)19:27:17 No.988691085

「トレーナー……いつもと違う格好ですね」 「あぁ、ちょうど実家からちょうどいいおさがりが出てきたからね。いとこのやつだよ」 「似合ってますよ、とっても。トレーナーなら色んな服が似合いそうですし…えーっと…」 彼女は困った表情を浮かべながら次の言葉を探すように空を見上げた。駅前のビルの明かりと星の光が混ざりあった空は、見る人によっては不完全かもしれないけれど。ここで生まれ育った俺達にとっては思い出に焼き付いた、一つの完成した夜空だった。 「すっごい幸運ですよね。私がトレーナーと出会えたのも。二人の住んでた場所がこんなに近かったのも。……今日、こうしてたまたま出会って、私の知らないトレーナーを知れて……」 「きっと、すごい確率だな」 「だから、この幸運を無駄にしたくはないな……なんて。つまり、そのぉ……手、繋いでもいいですか?」 目を逸らすように地面へと顔を向けながら彼女が差し出した手は、自分より一回り小さくて、震えていた。寒さのせいか、それとも…

7 22/11/01(火)19:27:37 No.988691220

「もちろん、お店まで案内してもらう途中ではぐれたら困るしね」 少し、大人ぶり過ぎただろうか。きっと、余計な言い訳だった。 「わわっ……温かいですねぇ……トレーナーの手…」 「君の方こそ。まぁ、さっきまでお風呂入ってたもんな」 「それじゃ、出発しましょー!」 もう片方の手で上着のポケットに入った手袋をなぞりながら夜の街を歩いていく。どうやら、今夜はこれのお世話になることは無さそうだった。

8 22/11/01(火)19:28:49 No.988691675

二度寝したら銭湯でマチタンとばったり会う夢を見たので書きました。

9 22/11/01(火)19:32:34 No.988693113

良い夢を見ているじゃないか…

10 22/11/01(火)19:33:13 No.988693397

この距離感はクリスマスは過ぎた後か…

11 22/11/01(火)19:33:29 No.988693506

ナチュラルに両親の元に案内しよる

12 22/11/01(火)19:33:51 No.988693677

いいなあ 俺そんな夢見たことないよ

13 22/11/01(火)19:37:32 No.988695131

行ったら絶対帰らせないと言う酒の量と布団が準備してるに300カノープス賭けるもん

14 22/11/01(火)19:46:46 No.988698595

もっとマチタンとの夢見ろ

15 22/11/01(火)20:03:02 No.988705167

将来的にお出かけする時とかはナチュラルに手を繋いでて欲しい

16 22/11/01(火)20:03:31 No.988705379

マチタンはほのぼのイチャラブの栄養素が高い

17 22/11/01(火)20:20:13 No.988712180

青春しやがって…もっとしてくれ…

18 22/11/01(火)20:20:31 No.988712318

そのおすそ分け精神がマチタンを呼び寄せたに違いない またおすそ分けしてくれ

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