ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
22/11/01(火)01:18:33 No.988492459
泥深夜
1 22/11/01(火)01:19:06 No.988492582
適温の湯を頭に被った時の感動を例えることなどできない。 流されていく。一週間分の汚濁と労苦が。乾燥して鎧のように身に纏わりついたものがふやけて剥がれ落ちていくような錯覚を覚えた。 ───疲れた。今にも眠ってしまいそうだ。 けれども落ちそうな瞼を必死で我慢するくらいには身を清めたいという欲が勝った。 決して大きなシャワールームではない。哀歌が入ればそれでそこそこいっぱいになってしまうくらいの大きさだ。 けれどもそれで十分だった。裸になり、汚れを流すという行為を安心して行えるだけで十分すぎた。 「───」 何も考えられない。思い出されるのは一週間で味わったこと。 あらゆるものに追い回された。サーヴァントの影法師に追われ、操られた遥に追われ、そして─── じわ、と涙が滲み、シャワーの水滴に混じっていった。怖かった。あの手、手、手。 名前も知らない人たちが能面のような表情で哀歌に群がり、追いかけてくる。想像を絶する恐怖だった。 「いや、だ」 ごつんと部屋の壁に額を押し付ける。シャワーを浴びっぱなしでしばらくそうしていた。 のろのろとボディソープに手を伸ばしたのはそれからしばらく後のことだった。