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ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。

11歳の... のスレッド詳細

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22/10/30(日)23:58:59 No.988124346

11歳の頃。 「んー…」 アジトの一室。 作業を終えたブルーは伸びをした。 「疲れちゃったわね…」 販売品のアイテムの整備や点検をしていたら随分時間か経ってしまった。 以前ならともかくとして、今はいい加減なものを売るわけにはいけない。 もう悪いことはしないと約束したのだ。 これを破ってしまうわけにはいかない。 どうしてもしなきゃいけないならばどうするかはわからないが今はそれを考えても仕方ない。

1 22/10/31(月)00:00:02 No.988124747

「ちょっと、気分転換しようかな」 最近はアジトにこもってばかりだったからたまには外出したい。 食料も切れてしまいそうだしちょうどいいのかもしれない。 そう思ってブルーは外に出てみた。 久しぶりに吸う外界の空気が美味しいと感じた。

2 22/10/31(月)00:00:37 No.988124981

街が賑わっている。 普段なら着ないような服装の男女をよく見る。 羽を伸ばそうと出かけていたブルーはなぜだろうと思っていた。 すると近くにいた人に紙を差し出された。 「ハロウィンセールでーす」 紙を見るとその言葉通りのハロウィンに関してのセールに関して書いていた。 「ふうん…」 そういえば今日はハロウィンだった。 特にハロウィンに何かをする習慣もないので失念していた。 「せっかくだし、何かそういうグッズとか買っちゃおうかな」 たまにはこういうイベントに参加するのもいいかもしれない。

3 22/10/31(月)00:01:27 No.988125277

デパートに入り、適当にあれこれ店を見る。 仮装している店員が多いなと辺りを見回して思う。 どこに入ろうかなと考えながら歩く。 「撮影会いかがですかー!」 と、客引きの声が聞こえてきた。 そちらに行くと店員らしい女性と目が合う。 彼女は魔女の格好をしていて、 愛想のいい笑みとチラシを振る舞っていた。 「あ、撮影会どうですか? 撮影用の衣装もいっぱいありますよ?」 「じゃ、お願いしまーす」 あっさりと了承する。

4 22/10/31(月)00:01:43 No.988125376

たまにはいつもと違う格好をしてもいいかもしれない。 自分とて年頃の女の子だ。 おしゃれには十分以上に興味はある。 なので店員の案内に従って店内に入って行った。

5 22/10/31(月)00:02:07 No.988125518

「本当に似合いますね。 とってもかわいいです」 「ありがと♡」 スタッフによって撮影されつつ、店員に褒められたことに礼を言う。 後で写真をもらえるらしいので安心して撮影される。 悪魔、魔女、忍者、妖精。 露出の多いレースクイーンになったり、 逆に露出の少ないレザースーツを着込んでみたりもした。 衣装を変えるのは楽しい。 普段と違う自分になれるのは新鮮な気持ちになれる。 気分転換、という意味でならこれは非常に有意義なことだろう。

6 22/10/31(月)00:03:11 No.988125953

次は少し冒険してゴスロリにしてみた。 ひらひらとした箇所の多いものは初めて着たがこれはこれで、と自分でも思う。 「とってもかわいいですよー。 じゃあ次はこんなのどうでしょうか」 店員の女性がある衣装を勧めてきた。 煌びやかで清楚なデザイン。 お姫様が着るようなドレスだった。 「え、でもアタシにそんなの似合うかな…」 つい躊躇する。 自分の容姿には自信はある。 年齢不相応な大人びた美貌やプロポーションは自慢でもある。 だけど、清楚な雰囲気のものが合うのかは自信がない。 暗い人生を歩んできたことも、こういった上品な衣装を着ることをためらわせる一因にもなっていた。

7 22/10/31(月)00:04:59 No.988126578

「大丈夫ですよ。 お客様、とってもかわいいですから」 「そ、そうですか」 結局、店員に流されて着ることになった。 着てみたいという願望があったのもまた事実ではあった。

8 22/10/31(月)00:10:05 No.988128343

「やっぱりとてもお似合いですよ」 「あ、ありがとう」 店員の発言につい照れてしまう。 鏡に映る自分の姿を見た。 予想以上に悪くない。 それが素直な自分での感想だった。 もう少しこういったものを着てもいいかもしれない。 と、そこで音がした。 自動ドアの開く音と、それに付随して鳴る呼び鈴だ。 「いらっしゃいませー」 店員が応対に向かう。 少しすると店員が戻ってきた。 誰かが後ろからついてきている。 その人が来店してきたのだろう。

9 22/10/31(月)00:17:24 No.988130906

「…え」 「…あ」 その来店した人物。 それはレッドだった。 「あら、レッドも撮影会に?」 「あぁうん。 なんか今日ハロウィンらしいからせっかくだから仮装しようかなって思ったんだけど」 彼の視線が少し下に向けられる。 そういえば自分がいま、お姫様の仮装をしていたことを思い出す。 「結構似合うな。 ちょっと意外だったよ」 「ま、アタシは美少女だからなんでも似合うのよ。 オーッホッホッホ!」 先程のこともあり、褒められてつい高笑いする。

10 22/10/31(月)00:23:35 No.988133165

「なんかそういう笑い方してると、お姫様よりは悪役令嬢って感じするなぁ」 「ちょっと!それは失礼じゃない!?」 さすがに聞き流せなくて抗議する。 「いや、ごめん。つい思ってたこと言っちゃって」 レッドが素直に謝罪してくる。 彼に悪気がないというのはわかっている。 なのでそれで気分は落ち着いた。 だけどそのままでは癪だなとも思っている。 何かやり返そう、と考える。 ふと思いつくことがあった。 「じゃ、この撮影会の料金アタシの分もよろしくね♡」 「えー!?」

11 22/10/31(月)00:29:13 No.988135085

レッドが不満の声を上げる。 「ただ奢ってもらうだけだと悪いからアタシの撮影会の写真も渡すわ。 それならいいでしょう?」 「あ、え~と…」 彼が躊躇しだす。 レッドにとって自分の写真は金銭的負担と天秤にかける程度には魅力的らしい。 自分の容姿が彼の好みには入っている自信はあるが、少し嬉しい。 それと困惑するレッドを見ると満足できる。 自分のペースに巻き込んだ優越感に浸れる。

12 22/10/31(月)00:36:14 No.988137348

「…もうわかった!仕方ないからそうするよ」 「ホント?ありがと♡」 投げキッスで礼をする。 レッドが赤面しつつ表情を固くした。 「じゃ、レッドのほうも撮影会するんでしょ? どうせなら一緒に撮影会しない?」 「え?」 レッドが困惑する。 異性との撮影会が恥ずかしいのか。 その相手が自分なのが戸惑う要因なのか。 「共同での撮影会でも大丈夫ですよ」 店員からも追い打ちがきた。 「…仕方ないかな」 観念したのかレッドが項垂れた。

13 22/10/31(月)00:41:52 No.988139237

「…あっはっはっは!」 「笑うなよ!」 自分に合わせて王子様の衣装を着たレッドについ笑ってしまった。 完全に衣装とミスマッチだ。 彼の容姿が悪いわけではないが、高貴な雰囲気の衣装とは相性が悪すぎる。 「ほらほら、一緒に撮影してもらうんだからこっち来て。 スタッフの人たち待たせちゃってるんだから」 釈然としない顔を浮かべつつ、レッドが隣に立った。 せっかくなのでその腕に絡みつく。 「え!?ブルー!?」 「ペアで撮ってもらうんだから、せっかくだし映える絵にしたいでしょう?」

14 22/10/31(月)00:45:03 No.988140264

困惑し、緊張するレッドだったが結局流されて撮影される。 「ほら、表情固いわよ」 「そりゃ固くなるって!」 彼の頬を引っ張って緊張をほぐそうとしたが、手を振り払われた。 そんなムキになるところが少しかわいいなと思える。

15 22/10/31(月)00:49:11 No.988141619

次は医者と看護師。 その次は神父とシスター。 さらにその後は神主と巫女。 ペアになるような衣装で撮影されていく。 「ありがとうございましたー」 一通り撮影を終えて退店する。 「いっぱい撮ったわねー」 「まさかブルーと共同になるとは思わなかったよ…」 「そんなのアタシもよ。 でもこれはこれで楽しかったでしょう?」 肩を落とすレッドの背中を軽く叩くと、渋々といった感じではあるが頷く。

16 22/10/31(月)00:53:46 No.988143148

「あ、そういえば」 「どうした」 立ち止まって、レッドに向き直る。 「ハロウィンならあのセリフ言わないと」 「それってまさか…」 「トリックオアトリート?」 やっぱり、とレッドがため息をついた。 「オレ、お菓子なんて持ってないぞ? ブルーに会うなんて思ってもいなかったし」 「ふーん?じゃあ、イタズラしちゃおっと」 「待った!そこのコンビニでお菓子買うから! だからイタズラはやめろって!」 レッドが必死になって止めてきたので中止した。

17 22/10/31(月)00:56:25 No.988143960

自分とて本気でイタズラしたいわけでもお菓子がそこまでして欲しいわけではない。 単にレッドの反応が面白いからしていることではあった。 彼はそんな自分の気持ちに気づいてない。 それを楽しく思いながらコンビニに向かう彼の後を追いかけた。

18 22/10/31(月)01:00:09 No.988145028

それから10年後。 「久しぶりにこの格好になったけど、どうだ?」 「…昔よりはマシになったと思うわ」 「マシって酷いなぁ」 頭を掻きつつレッドが苦笑する。 今の自分たちはかつてのように王子様とお姫様の格好をしていた。 先程自分が言った通り、レッドはあの頃よりは衣装が似合うようになった。 背丈が伸びたからか。 人間的な成長からか。 だからといって完全に似合う、まではいかないが。

19 22/10/31(月)01:03:28 No.988146071

「アタシの方も、どう?」 「すごい似合ってるし綺麗だと思うぞ。 本当にお姫様みたいだよ」 「ありがとう」 ウインクで礼をする。 照れもせずにそれを受け止めるレッドに物足りなさを感じる。 それと同時に成長への実感も。 「そろそろ撮影いいでしょうか?」 「あ、お願いしまーす」 かつての店でまた撮影会。 あれからかなりの時間が経ったがまだこの店が残っていることに安心感を覚える。

20 22/10/31(月)01:08:50 No.988147639

「じゃ、次はどんな衣装にすっかな」 撮影を終え、一緒にリストを見る。 「…あ!これいいんじゃない?」 「どれどれ」 ブルーが指差した箇所。 そこにはタキシードとウエディングドレスに身を包む男女があった。 「…あ、え、えぇ!?」 「冗談よ。 先にイタズラさせてもらっちゃった」 「な、なんだ。冗談か…」 レッドがほっと胸を撫で下ろす。

21 22/10/31(月)01:09:49 No.988147881

その彼の耳元に唇を寄せて、囁く。 冗談の中に、少しだけ本音を混ぜて。 「本物、着せてくれてもいいのよ? 撮影会用の衣装じゃなくて」 何も言えず、レッドが固まった。 その姿も、きっちりと写真に収められた。

22 22/10/31(月)01:10:02 No.988147934

以上です 閲覧ありがとうございました

23 22/10/31(月)01:11:22 No.988148295

レブルといえば付き合いの長さだけどマジで10年立たせて話作るってアイデアに感心しました

24 22/10/31(月)01:12:57 No.988148699

日付が変わって今日がハロウィンなのでハロウィン回です 久しぶりに子供の頃のレブルも書きたくなって今回のように過去と現在に分けて書きました

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