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    22/10/30(日)12:15:30 No.987819857

    『彼』がトレセン学園へとする途中──ふと路地裏に目を向けると、見慣れない大きな影が鎮座していることに気が付いた。 「何だこれ? 着ぐるみ?」 足を止めて、それに歩み寄る。ウマ娘をデフォルメした2頭身の着ぐるみ。 王冠を被った茶髪のウマ娘。恐らくは誰か有名なウマ娘をデフォルメしたものなのだろうとあたりを付けるが、『彼』にはそれが誰かまでは思い出すことができなかった。 喉元までは出掛かっているのだが──具体的な名前を思い出そうとすると、頭に靄がかかったような気分になるのだ。 「うーん?……あ、背中にチャックがある」

    1 22/10/30(日)12:16:14 No.987820093

    まじまじと観察していると、背中のチャックが開いていることに気が付く。何気なく中へと手を突っ込んでみると、綿に触れたような、ふわふわとした感覚を指先に覚えた。 着ぐるみではなく大きなぬいぐるみだったのだろうか? そんなことを思いながら、ふわふわの手触りを堪能する。 「おお、ふわふわだ……ってこんなことしてる場合じゃないな」 『彼』には担当ウマ娘はいない。これからの出会いに胸を踊らせている、将来有望なトレーナーの一人。だから、こんなところで油を売っているわけにはいかない。 「……ん? 抜けない……?」 そして。『彼』がウマ娘と契約を結ぶ機会は、二度と訪れない。

    2 22/10/30(日)12:16:48 No.987820268

    「く、んっ! んんっ!! 何だ!? 何が引っかかってるんだ!?」 着ぐるみに突っ込んだ手を引っ張り出せない。手のひらに伝わるふわふわとした感触とは裏腹に、引き戻す腕はビクともしない。 嫌な予感に心臓が早鐘を打つ。冷や汗が頬を伝い、頭が熱くなる。 焦燥感に駆り出され、誰か助けを呼ぶと、そんな簡単なことも思い付けず── 「っ!? 腕が、沈……っ」 反動を付けようとしたのか、或いはパニックから正反対の行動をしてしまったのか、『彼』には判別できない。勢い良く押した腕は、ずぶずぶと着ぐるみの中に沈んでいく。 更に余った勢いは腕だけではなく、肩を通り越して上半身を丸ごと着ぐるみの中へと突っ込ませる。 「──っ! ~~っ!?」 もがけばもがくほど、身体は着ぐるみの中へと進んでいく。程なくして、残った下半身も着ぐるみの中へと収まっていく。 『彼』の視界が真っ暗に埋まる。ふわふわに全身が包まれながらも、ぎゅうぎゅうとした、狭っくるしい箱に押し込まれていくような、全身が圧縮されていくような息苦しさを最後に──『彼』は、意識を失った。

    3 22/10/30(日)12:17:25 No.987820450

    「う……」 『彼』が再び目を開けた時、ぼんやりする頭と霞む視界の中で、誰かがふわふわの中から自分を引っ張り出そうとしてくれていることは理解できた。両脇に引っ掛けられた腕が、自分を着ぐるみの中からズルズルと引き摺り出している。 「よいしょ。よいしょ」 「~~っ! ぷはっ、はぁ、はぁ……い、息苦しかった……」 やがて完全に身体が引っ張り出されて──暑苦しい着ぐるみの中から解放されて。肌に触れる空気が随分と冷たく感じた。 「あ、ありがとうございます……あ、アストンマーチャン……?」 「? はい、あなたのお姉ちゃん、マーちゃんですよ?」

    4 22/10/30(日)12:17:46 No.987820560

    自分を解放してくれた恩人。それは一目でわかった。GIウマ娘のアストンマーチャンだ。 色んな角度からカメラに映り込んでくる可愛らしい自己主張を始めとした様々な自己PRと、特徴的なピッチ走法が記憶に残るウマ娘。お姉ちゃん、というのは理解できなかったが新しいキャラ付けなのだろうと思えば合点がいく。 「しかしわたしの着ぐるみの中でお昼寝とは。そんなにお姉ちゃんのことが好きだなんて。でも遅刻はいけません。ぷんぷんです」 「は、はは……そうだな……いや、助かったよ」 「むむむ。××ちゃん、いけませんよそんな言葉遣いは。ラブリーとは程遠いです。おっ説教、しちゃいますよ」 「? ××? 何だ、それ? 俺の名前は……あ?」 『××』。聞き覚えのないような、それでいて酷く身近な存在のような。恐らくは自分を指して言われたであろう名前。 アストンマーチャンの間違いを訂正するべく、『彼』は名乗りをあげようとして──できなかった。

    5 22/10/30(日)12:18:29 No.987820779

    「あ、あれ? おれの、名前……? へ……?」 思い出せない。頭に靄がかかったように。 「あれ……?」 一つ違和感を覚えれば、ドミノ倒しに気付いていく。 アストンマーチャンのプロフィールは身長152cm。自分と目線の高さを合わせて会話をすることはできないはずだ。 それに、自分の声はこんなに高く、可愛らしかったか? 肩口を擽る髪の毛の感覚は? 髪から香る甘い匂いはなんだ? 運動の邪魔にならないように短く切り揃えているし、昨日も床屋に行った筈だ。 「……何、この服……?」 「何って、制服です。もしかして、まだお寝坊さんですか?」 そして。何で自分はトレセン学園の服を着て、スカートを履いているんだ?

    6 22/10/30(日)12:19:36 No.987821107

    「ドッキリ……とか?」 「?」 『××』は、ペタペタと、確かめるように、自分の身体を触り始めた。 髪に指を通せば、ふわふわした手触りと、フサフサの『耳』。頬はすべすべでもちもち。 恐る恐る首から下へと手を伸ばす。胸元のリボンを押し上げている膨らみは、指で触れるとぷるぷると震える感触を伝えてくる。指先だけではなく、膨らみそのものが、柔らかい肉が揺れる感覚を伝えてくる。 そして更にその下にまで手を伸ばし、あるべき物の手応えが存在しないことに気が付き、焦りは高まっていく。 「っ……な、無い……特殊メイク?……痛っ!?」 一縷の望みをかけて、腰の尻尾を思いっきり引っ張ってみると、鋭い痛みが迸り身悶えする。 もちろん尻尾が取れるはずはなく、痛みで鮮明になる思考が──自分の肉体の感覚を、しっかりと感じ取った。

    7 22/10/30(日)12:19:58 No.987821218

    「むむむ。参りましたね……妹ちゃんが何をしたいのかさっぱりです。急におれっ子になるなんて」 「お、おれは、妹なんかじゃないっ!」 「……本当に参りました。これは手強い」 アストンマーチャンは眉根を寄せて、顎先に人差し指を当てる。それからむう、とわざとらしく、それでいて可愛らしい声で小さく呟くと、学校指定の鞄から手鏡を取り出した。 「見てください。じっくりと。あなたのお顔」 「……嘘だ! こんなの、インチキだ! おれの顔じゃない!」 鏡から『××』を睨み返すのは、もちろん『××』の──鏡写のように、アストンマーチャンに瓜二つの顔。

    8 22/10/30(日)12:20:19 No.987821307

    「そんなこと言うとマーちゃんだって怒ります。もう耳も髪も尻尾もお手入れしてあげません」 「え……」 アストンマーチャンの指が『××』の髪を撫でる。ふわふわの手触り。アストンマーチャンが選びに選び抜いたお手入れ用品で、念入りにセットされた髪。 「もちもちすべすべのお肌だって。マーちゃんが教えてあげたのに」 「あ……」 アストンマーチャンの手のひらが『××』の頬に触れる。何もわからない『××』にゼロからレクチャーしたのは、他ならぬアストンマーチャンだ。 「おっぱいだって。マーちゃんより大きくなって、マーちゃんに泣きついてきたのは誰ですか。もみもみ」 「んっ、やぁ……っ!」 アストンマーチャンに胸を揉まれて、与えられる刺激に身体を震わせる。悶えながら『××』は思い出す。そうだ、自分には不要だと思っていたのに、急成長して色々と選ぶのを手伝ってもらったのに──

    9 22/10/30(日)12:20:45 No.987821448

    「やめ、やめて! 『マーチャン』……!」 「やめません。もみもみ。お姉ちゃん、怒ったから。うりうり」 「~~~っ!」 堪らず腰が抜けて、しかしアストンマーチャンは『××』が倒れて逃れることを許さない。『××』の背中に回り込み、身体を支えて胸を鷲掴みにし、捏ねくり回す。余りに強過ぎる刺激に、『××』の目の前がチカチカと瞬き── 「ご、ごめんなさい! 『お姉ちゃん』! 許してぇ……!」 「……まあ、良いでしょう。及第点はあげます」 「きゃっ!?」 いきなり手を離されて、倒れ込みそうになった身体を地面に両手を突いて支える。 四つん這いの姿勢になると、胸の重さがより苦しく感じた。

    10 22/10/30(日)12:22:01 No.987821881

    「はぁ、はぁ……『おれ』は……ぁ?」 息を整える『××』の目の前に、頬を熱らせぼうっとした『××』の顔が現れる。アストンマーチャンが、倒れ込んだ彼女へと、手鏡を向けた。 「りぴーとあふたーみー。『わたしは××です』。あなたの瞳というレンズで、しっかり鏡を見て。さあ」 「ぁ……わ、『わたしは……××……です』」 『××』の瞳が、鏡の中の──自分の顔を、確かに捉える。 それは、生まれて、物心ついてから、毎日見つめ合ってきた顔で間違いなく。 「『××』……おれは、『××』……」 「よくできました。ぱちぱち」

    11 22/10/30(日)12:23:04 No.987822238

    それから。 「今日も、マーちゃんのこと、覚えてくれましたか?」 「うん。ばっちりだよ、お姉ちゃん」 今日も今日とて二人の活動は続いていく。 誰かが写真を撮っていれば映り込む。何か人々の思い出に残りそうなイベントがあれば、見逃さずにしっかり参加する。 ウルトラスーパーマスコットへの道のりは長く険しく、双子の挑戦は終わらない。 いつかきっと、いつまでも、思い出してもらえて、愛されるような存在になると信じて。 「お姉ちゃんは、『アストンマーチャン』で……おれは、『××』で……でも……」 その裏側に、とあるトレーナーがいたことなんて、誰も覚えてはいない。理事長も、秘書のたづなも。唯一、『××』のかつて自分は『彼』という存在だったという記憶だけが残っていて、しかしその記憶を裏付けるものはどこにもない。

    12 22/10/30(日)12:24:15 No.987822595

    「××ちゃんも一緒に写ろ?」 「なるなる。それはグッドアイディアです」 「え? あ……」 カレンチャンの自撮りに映り込もうとしたアストンマーチャンが捕まり、『××』もそれに巻き込まれていく。 三人で撮った可愛らしい写真。それはすぐさまカレンとアストンマーチャンのウマスタによって拡散される。 「ふふ、とってもカワイイ♪ ××ちゃんももっと前に出て来たらいいのに」 「ふむふむ。名案です。双子はなかなかに『強い』ですから」 アストンマーチャンとカレンチャンに挟まれ、控えめにはにかむその姿を見て── 「……これが……『おれ』……」 とあるトレーナーの姿形を思い出せるものは、どこにもいなかった。

    13 22/10/30(日)12:24:36 No.987822699

    マーちゃん好き

    14 22/10/30(日)12:28:35 No.987823944

    世界がマーちゃんを忘れさせるなら世界にTSメス堕ちさせられるトレーナーだっているさ

    15 22/10/30(日)12:32:40 No.987825176

    マーちゃんの妹にされたいよね

    16 22/10/30(日)12:35:45 No.987826130

    マーチャンの匂いで心の中の『彼』がムンムンしてほしい

    17 22/10/30(日)12:40:24 No.987827599

    >マーチャンの匂いで心の中の『彼』がムンムンしてほしい 「だめ……こんなの、おかしいのに……『お姉ちゃん』の匂いでこんな気持ちになるなんて、『おれ』おかしいのに──!」みたいな感じでズブズブになってほしい

    18 22/10/30(日)12:47:06 No.987829692

    仕草や話し方がかわいらしく堕ちても 「おれ」だけミスマッチに残ってるのがすき

    19 22/10/30(日)12:47:18 No.987829752

    マーちゃんのそっくりさんが複数人いそう こわい

    20 22/10/30(日)12:51:14 No.987830945

    アストンマーチャンの妹ジャジャマーチャン 割といい子を産んでます

    21 22/10/30(日)12:55:13 No.987832262

    いい…

    22 22/10/30(日)13:01:54 No.987834418

    >アストンマーチャンの妹ジャジャマーチャン >割といい子を産んでます 『××』ちゃん将来ヤンキーみたいな強暴なウマ娘にぴょいされてトゥラヴェスーラ産むのか……

    23 22/10/30(日)13:03:19 No.987834857

    >仕草や話し方がかわいらしく堕ちても >「おれ」だけミスマッチに残ってるのがすき 「おれ」だけがかつての自分の残っていた証だからここだけはマーちゃんやカレンチャンに可愛くないよって指摘されても直せないんだよね…

    24 22/10/30(日)13:17:48 No.987839820

    マーチャン(真)が出てくるまで着ぐるみマーチャン(マーチャンのことを忘れてしまったトレーナー)が次のマーチャンになって新しいトレーナーさんと出会うのかと思った

    25 22/10/30(日)13:18:56 No.987840202

    >ふわふわの手触り ふわふわ!?

    26 22/10/30(日)13:21:33 No.987841038

    >>ふわふわの手触り >ふわふわ!? はい。『××』ちゃんの手触りはとってもふわふわなのです。えっへん