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22/10/16(日)23:59:12 幼い頃... のスレッド詳細

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22/10/16(日)23:59:12 No.983046345

幼い頃に離れ離れになった両親。 この人たちとの再会をどれほど待ち侘びたか。 自分を誘拐し、やりたくもないことを教え込んだ相手。 その人との決着をどれほど望んだか。 同郷の男の子たちと同じ栄光。 それを手に入れることをどれほど願ったか。 そうして、それら全てを叶えることができた。 もちろん、自分だけの力ではない。 たくさんの人の力を借りた。 多くの時間を使った。 それでも、全部。 ほしいものは全てこの手に掴んだ。

1 22/10/16(日)23:59:33 No.983046478

でも、それから。 全てを叶えた後。 自分はなにをしていればいい。 どうやって生きていけばいいのだろう。

2 22/10/17(月)00:03:16 No.983047763

「…んー」 窓から光がさす朝。 ブルーの自室。 ベッドから身を起こして伸びをする。 寝ぼけ眼が少しはマシになったと感じる。 どうにも変だ。 おかしな夢を見た気がする。 どんな内容だったのかは思い出せない。 少し悩むがそのうち思い出すだろうと気持ちを切り替える。 寝巻きを脱ぎ、私服へと着替えるとすっかりそのことを忘れていた。

3 22/10/17(月)00:03:44 No.983047896

「おはよう、パパ、ママ」 マサラタウンの朝。 ブルーは自宅のリビングで両親に挨拶をした。 「おはよう、ブルー」 「ああ。おはよう、ブルー」 パパとママが返事をしてくれる。 嬉しい。 朝起きて家族がいる。 それがブルーの迎える朝では新鮮だった。 当たり前のように家族がいる。 反応を返してくれる。 それがどれほどありがたいか。 両親も同じなのかこちらに笑いかけてくれる。

4 22/10/17(月)00:04:08 No.983048041

温かい家庭。 手に入れたくて仕方なかったもの。 それがこうして自分のものになっている。 「さ、朝食にしましょう。冷めちゃうわ」 「はーい。いただきます」 席について朝食をとる。 焼きたてのトーストにマーガリンを塗り、かぶりつく。 美味しい。 それだけではない。 この味は、覚えがある。 いつだろう。 この記憶は。 多分、子供の頃。 物心つくかどうかの時期。 両親と別れる前の時に、これを食べていた。

5 22/10/17(月)00:04:34 No.983048174

「ママ、これ、アタシが迎える食べてたことある?」 「ええ。昔からブルーはトーストが大好きだったのよ。 それが朝食にないと泣いちゃうくらい」 母の言葉に父も頷く。 言われて、視界が歪む。 目が潤んで、水滴が溢れた。 なぜ泣いてるのだろう。 過去の思い出に触れた懐かしさからか。 母と父が記憶してくれた嬉しさか。 それらの両方ともか。

6 22/10/17(月)00:05:50 No.983048628

「ブルーは昔から泣き虫ね…」 母がハンカチで優しく涙を拭ってくれる。 父が頭を優しく撫でてくれる。 この2人の子供でよかった。 この家庭を取り戻してよかった。 「ありがとう、パパ、ママ…」 またパンを口にする。 少し、しょっぱい味がした。

7 22/10/17(月)00:06:55 No.983048989

昼前に、外にでる。 深呼吸してマサラタウンの空気を肺に取り入れる。 澄んだ空気。 余計なガスも混じっていないのか美味しい気がする。 「…よし」 自分の故郷。 これから過ごす街。 どんなところだろう。 これからどんな生活が始まるだろう。 楽しみに思いながらブルーは歩き出した。

8 22/10/17(月)00:08:12 No.983049470

ある程度歩くと、空腹を感じた。 朝食をとってからしばらく経っている。 お腹が空いてしまっても仕方ない。 どこの店に行こうか。 昼食は外でとると親に言って外出したので今から帰宅しても食事はとれない。 できるにしても両親に迷惑がかかる。 と、知ってる顔を見かけた。 「あ、レッド」 「よう、ブルー」 お互いに手を上げて挨拶とする。 「そういえばブルーもこっちに引っ越してたんだっけ」 「そうね。これから同じマサラに住むからよろしくね?」 ウインクすると苦笑で返された。

9 22/10/17(月)00:09:53 No.983050024

「んじゃ、引っ越し祝いにメシにすっか! オレが奢るよ」 「ほんと?レッドったら気前よくて好きになっちゃいそう♡」 「たはは、まぁ喜んでくれたならいいさ」 冗談を軽く流される。 少し彼もしたたかになったなと思う。 それと同時に自分を祝ってくれることへの感謝の気持ちもある。 「それじゃ、エスコートお願いね? アタシじゃどこにお店あるかわからないし」 「そうだな。んじゃ行くか」 歩き出したレッドの後を追う。 どこに連れて行かれるだろう。 少しワクワクしながら脚を動かしていった。

10 22/10/17(月)00:10:55 No.983050353

連れて行かれた店は定食屋だった。 「レッドはこのお店よく来るの?」 「そうだな。子供の頃から通い詰めててさ」 そう話していると、店員の男性が近づいてきた。 「いらっしゃい。お、ずいぶんとかわいい子連れてるけどレッドの彼女?」 「そうでーす♡」 「いや違うよ。友達のブルー。 最近こっちに引っ越して来たんだ」 「なんだそっか。それはそれとしてご注文は決まった?」 「ちょっと待ってくださいね…」 慌ててブルーはメニューを広げる。

11 22/10/17(月)00:11:17 No.983050494

目に入ったものを気に入って、レッドに視線を向ける。 彼は意図が理解できたのかそれに頷くと店員に向き直り、 「オレ生姜焼き定食で」 「アタシはオムライス定食にします」 「あいよ」 店員が奥に引っ込んでいく。 しばらく待つと注文したものが届いた。

12 22/10/17(月)00:12:34 No.983050917

「ご馳走様。美味しかったわ」 「喜んでくれたなら嬉しいよ」 食事を終えて店から出る。 またここに来てもいいかもしれない。 両親が知らないなら教えてあげよう。 「ふふ…」 「どうした?」 思わず溢れた笑みにレッドが反応した。 「楽しみが増えたなぁって」 「よく分からないけど、ブルーが楽しいならそれでいいよ」 そう言ってくれるレッドを見て、ふと思いついた。

13 22/10/17(月)00:12:56 No.983051058

「ねぇ、この後ヒマ?」 「予定は何もないけど、どうした?」 聞き返す彼にこう答えた。 「アタシ、レッドの家に行ってみたい」 「…え、ええぇっ!?」 レッドが面白いくらいに狼狽した。

14 22/10/17(月)00:17:13 No.983052553

「お邪魔しまーす」 レッドの家に着き、玄関を開けてもらうとすぐに中に入る。 「お、おう」 遅れてレッドが入る。 「あ、こっちがリビングね」 「あ、うん」 リビングに入ってソファに座る。 自分の家のと比べると少し固い。 少し待つとレッドが来た。 手にはグラスが二つ。 「とりあえずジュース入れたけどどっちにする?」 「グレープの方かな」 「それじゃオレはリンゴにするよ」

15 22/10/17(月)00:21:55 No.983054142

レッドが隣に座った。 が、その身体はガチガチに固いように見えた。 まるで関節の少ないおもちゃのロボットのように。 「どうしたの?」 「いや、女の子を家にあげるってあんまり経験なくってさ」 「え?誰もあげたことないの?」 レッドが首を左右に振る。 「全くってわけじゃないけどさ。 それほど機会はなかったし。 それに女の子と自分の家で2人きりっていうのは多分これが初めてだよ」 「…ふーん」 レッドに顔を近づける。

16 22/10/17(月)00:27:22 No.983055946

「な、なんだよ」 レッドが避けるように仰け反る。 顔が引き攣り、頬が赤い。 「なーんかさっきは受け流されたけど、 やっぱりレッドもまだまだねー。 女の子相手にそんなに照れちゃうなんて」 オホホと笑うと、レッドは頭をかき、 「女の子ってだけじゃなくて、ブルーってかわいいからさ。 ブルーは友達だけど、そんなかわいい子だって意識するとついさ…」 「…そう」 素直に容姿を褒められてこちらの方こそ少し照れる。 体勢をもとに戻すと、レッドに笑いかける。

17 22/10/17(月)00:31:47 No.983057308

「ねぇ、レッド」 「どうした?」 「アタシ、色々と考えてたの」 一度目を逸らし、天井を見上げる。 蛍光灯が少し眩しくて、目を細める。 「過去の決着がついて、両親とも再会できて。 アタシを助けてくれる人たちもできて。 アタシ、今がすごく幸せなの」 「ああ、それだけブルーが頑張ったんだからな」 頷き、続きを言う。 「だけど、これから先どうしようかなって。 アタシの望みは全部叶えた。 でも、それ以外のアタシの望みがないんじゃないかって。 そう思っちゃったの」

18 22/10/17(月)00:36:54 No.983058939

思い出す。 自分が見た夢はこれだ。 将来への不安。 望みを全て達成したが故の燃え尽き症候群。 それらへの焦りがブルーにそんな夢を見させていたのだろう。 「でもね。さっき思ったの。 まだまだアタシの知らないことがあるって。 普段通りすごすだけでも新鮮で。 だから、今はまだ日常を過ごすだけでいい。 やりたいことはそうしてるうちに見つかるって」 ブルーにとってマサラタウンは故郷だ。 それと同時に過ごした記憶の薄い場所だ。 目に映るものがみな新鮮となり、体験することも真新しい。 そんなところでいるとしばらくは退屈しないだろう。

19 22/10/17(月)00:42:13 No.983060725

「だから、ありがとうレッド。 それと今後もよろしくね」 「ああ、よろしく」 手を差し出すと握り返される。 しばらく握手していると、なんだかおかしくなった。 年頃の異性同士がするには大袈裟な気もする。 レッドもそう思ったのか彼も笑い出した。 「レッドもマサラにいるし、 暇だったらまた助けてもらおっかなー」 「そりゃタイミングが合えばそうするけど。 でも毎日は無理かな」 「そう言ってるけど、アタシのためならレッドはすぐに駆けつけてくれるわ。 アタシ、信じてるから」 「期待の眼差しを向けられてもなぁ…」

20 22/10/17(月)00:46:49 No.983062194

と、なにかを思いついたようにレッドが聞いてくる。 「そういえば、ブルーはオレを呼び出したら何をさせるつもりなんだ?」 「そうね…」 少し考え、指を鳴らす。 「買い物手伝ってもらったり、マサラの案内してもらったり。 あ、一緒にゲームとかしない? 最近ハマってるゲームがあってね」 「緊急の要件ならともかく、それで呼び出されても…」 そうして、雑談をして時間が過ぎていく。

21 22/10/17(月)00:48:10 No.983062619

明日か明後日には忘れているかもしれない。 そんなくだらないこと。 でも、自分に欠けていたこと。 そんな無駄でも大事なこと。 それをこれから埋めていこう。 時には彼にも手伝ってもらおう。 きっと楽しくなるはずだ。 そう思いながらブルーは笑った。

22 22/10/17(月)00:48:25 No.983062702

以上です 閲覧ありがとうございました

23 22/10/17(月)00:52:46 No.983064148

たまには友情とかの範囲内で 恋愛関係になる二次創作を続けていくと自分の中でのレブルがそういうイメージで固定されてしまいそうで 原作に多少なりとも近づけてその辺りのリセットを図ろうとしてました

24 22/10/17(月)01:00:09 No.983066486

>そうして、雑談をして時間が過ぎていく。 >明日か明後日には忘れているかもしれない。 >そんなくだらないこと。 >でも、自分に欠けていたこと。 >そんな無駄でも大事なこと。 >それをこれから埋めていこう。 >時には彼にも手伝ってもらおう。 >きっと楽しくなるはずだ。 >そう思いながらブルーは笑った。 ここいいですね 本当に原作のみの範疇でも思ってそうで執筆コンセプトらしいと思います

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