虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。

  • iOSアプリ 虹ぶら AppStoreで無料配布中
  • リズム... のスレッド詳細

    削除依頼やバグ報告はメールフォームにお願いします。 個人情報,名誉毀損,侵害等について積極的に削除しますので、メールフォームより該当URLをご連絡いただけると助かります

    22/10/16(日)23:54:05 No.983044486

    リズムよく、ワン、ツー 腕はしっかり引いて、胸の前に 脚を、背を、胸を使って空にストレートを打ち込む 隣では自分の背丈の半分ほどの少女が、小さな手を打ち鳴らしながら拍を取っていた 「───ワン、ツー、ラスト!はい、ワン、ツー!……はいっ!今日のシャドーはおしまいです」 苔むした石から降りた少女が差し出したタオルを取り、男は体の汗をぬぐう ふと、自分の腕が視界に入る 森に迷い込む前の、生白い細腕とは見違えるような、筋や力瘤の入った腕に、どこか満足感を覚えた 「今日もお疲れ様でした、お兄さん!次回は別の動きも取り入れてみましょうね!」 そう、目を輝かせながら語るコーチ気取りの彼女の頭には、蜘蛛の目のような装飾が付いている

    1 22/10/16(日)23:54:16 No.983044560

    森に迷い込み、巨大な昆虫や植物から逃げ回った末に彼女たちに保護されてどれだけ経っただろう 皆麗しく、可愛らしい見た目をしていたが、それは野生が犇めく森にあっては歪極まりないあり方である 幸いにも彼女らには気に入られたようで、穴掘りの仕事や、落としもの集めの代わりに衣食を提供してもらっている そしてこの子が最近になって、自分にトレーニングを持ち掛けてきたのだ 「これからは腕っぷしも強くないとダメですから!」 そう語る彼女の腕は自分のよりも白く、細く、しかしどうしてか今の自分でも敵わない力を秘めていた 「……じ、じゃあ、そろそろ私は行きますね!後はいつものように!」 そそくさと帰っていった彼女を見送り、木彫りのコップに溜まった水を飲み干す そしていつものように、別のトレーニング場へと向かうのだった

    2 22/10/16(日)23:54:31 No.983044666

    「……あら、もうそんな時間?いつもご苦労様だね」 木の上に居る彼女は、先ほどの少女とは打って変わって妖艶な美女である マーブルカラーの髪を二つに纏め、薄い布切れではとても隠し切れないグラマラスな肉体は目に毒だ 最も、彼女らは皆服装に関しては似たような物で、自分が不埒な目で見ていることも気づいて目をつむっている節がある 「そろそろ準備できてるんじゃないかい?まあ、好きなだけ打ち込んできなよ。……それとも」 打ち込むのはこっちにかな?と、胸元の布を捲くって見せつける 朝露のように瑞々しい肌の裏に触れれば吸い付きそうな柔らかさを感じる大きな膨らみに、思わず唾を飲む が、実際に手を出せばどうなるか分かったものではない 未練を振り切って、彼女が目線で示す先へと小走りで駆けていった 「ふふっ、分かりやすくて楽しいね……それにしても」

    3 22/10/16(日)23:54:47 No.983044771

    遠ざかる背中を見ながら、妖艶な彼女は小さく嘲笑う 「あの子も本当、好き物だよねえ……くくっ」 先ほどとは別の開けた森の広場 真ん中に立った巨木の枝に、中身の詰まったズタ袋が吊るされていた いつもの日課というのが、これを用いたスパーリングである 初めて打ち込んだ時はその感触の生々しさに腰が引けてしまったが、それももう慣れたものである 何故こんなことをさせられているのか、この中身はなんなのか、そもそも彼女らは何者なのか ───そんな考えを振り払うように、右ストレートを振りぬいた

    4 22/10/16(日)23:55:55 No.983045161

    「───っ!んむ”っ……」 もぞもぞと中身がのたうつ、がそれで以前手加減をしたためにトレーニング量が倍化したことがある 中身に何が入っていようと知ったことか。恨むなら捕まえた彼女たちを恨むのだ 一発、また一発 柔らかいところ、芯が入っているのか固いところ、殴っているうちにぼんやり分かってくる ヒット、バッド、ヒット、バッド、バッド、ヒット、ヒット、ヒット…… 薄い袋なのか、殴っているうちに内容物が染みて色が濃くなる箇所がある 構わずに、打つ、打つ、打つ 打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ……

    5 22/10/16(日)23:56:11 No.983045258

    手も痛くなってきたころには、袋は触って分かるくらいには湿りきっていた 彼女たちが何を考え、何を詰めて殴らせているのかは分からないが、生きるためには仕方がない せめてもの償いとして、手を合わせ祈る 気が済んだところで、男は汗を流しに泉の方へと向かった 「……もう、行ったかな」 先ほどの美女が物陰から現れると、手際よくズタ袋を外し地面に落とす 絞った口を開け、中身を引きずり出す 「また派手にやったね……」 「…………う、うぐ……」 中身は、先ほど男にトレーニングを付けていた、蜘蛛の目の少女であった