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    22/10/13(木)22:18:29 No.981865990

    家の引き出しから、図鑑が出てきた。磯辺の生きもの図鑑、小学校に入るまでは毎日のように眺めていた。そんなことはすっかり忘れて、今ではトレーナーをやっているのだから、未来はわからないものだ。何度も何度も読んでいたのに、あんなに楽しいと思っていたのに、忘れていた。 気づくと思い出の品が、俺を糾弾していた。彼女を忘れないでいようなんて言っておきながら、この図鑑を始めとして、今まで忘れてきたものばかりではないか。無責任なことを言うな。彼女だったら忘れないだろう。会った人、動物、思い出まで。その大切さを、忘れられる悲しさと寂しさを知っているからこそ、彼女は忘れない。俺はどうだ?彼女のことを片時も忘れずに居られるだろうか?……あの春の日のことを思い出す。一瞬でも彼女を忘れたら彼女は消えてしまうのではないか。忘れてから思い出すのでは、意味がないのだ。彼女がいなければ……… たまらなくなって、マーちゃん人形を探す。彼女はただ、いつもと同じようにソファに佇んでいた。その夜は、人形を抱きながら寝た。 その晩に見た夢の内容は、老人になった自分が、アストンマーチャンを語る夢だった。そこに彼女は居なかった。

    1 22/10/13(木)22:19:06 No.981866249

    いつもと同じようにマーちゃん人形を連れてトレーナー室で業務を始める。が、昨晩のこと、そして夢のことが頭から離れずほとんど作業は進まなかった。気晴らしに何処かへ歩く気すら起きず、ただぼーっと彼女の人形を見るだけだった。 マーチャンがトレーナー室にやって来た。もう、練習の時間だ。 「トレーナーさんのお顔、疲れてます。今日はお休みの日、そうしませんか?」 「えっ………?いやいや、大丈夫だよ。早く練習を始めよう」 「不安ですか?……マーちゃんはここに居ますよ?トレーナーさんの瞳にも、しっかり写ってます」 どうやら彼女にはお見通しのようだった。彼女の瞳がこちらを覗き込む。透き通るような目に、青い顔をした憂鬱そうな男が映る。彼女に無駄な心配をかけるわけにはいかない、そう思っていたのだが。 「怖くなったんだ、君を忘れることが。忘れないように決意したのに、自分がそんなことできるのかって、不安になって」 「トレーナーさんは、もし忘れても、思い出してくれるって約束してくれました。マーちゃんは、それで満足なのです。心はぽわぽわなのです」

    2 22/10/13(木)22:19:56 No.981866614

    嬉しそうにはにかむ彼女を見て、思いはやはり強くなる。俺は彼女を、忘れたくない。 「俺は……嫌だよ」 「マーちゃんは満足なのに、悲しくも寂しくもないのに、トレーナーさんはそれでも嫌なんですか?」 「君が良くても、俺はやっぱり……君を忘れたくないんだ」 アストンマーチャンは一瞬、困ったように眉を曲げると、すぐにまた笑顔に戻る。 「トレーナーさんは……わがままです」 「そうだね」 「それでいて、欲しがりさんです」 「……そうだね」 「ずっとずっと、忘れずにいたいなんて、欲張りで、わがままです」 「……それも、そうだね」 「実はマーちゃんも、わがままなのです。トレーナーさんが呼び止めてくれたあの日から、わがままが移っちゃいました」 そう言うと、彼女はソファに座るこちらへ距離を詰める。

    3 22/10/13(木)22:20:17 No.981866764

    「マーちゃんは、みんなのマスコットなのです。だけど、トレーナーさんは特別です。わがままで欲張りさんなので仕方ありません。なのでもう一つ約束してほしいのです」 「約束?」 「マーちゃんは世界を股にかけるウルトラスーパーマスコット………になる予定ですので、それには当然マネージャーが必要なのです。ウルトラスーパーマスコットということは、マーちゃんがおばあちゃんになっても、まだまだその先でもずっと、ずーーっとマネージャーは必要なのです。終身雇用です。」 マーちゃん人形を膝の上に置いて彼女は続ける。 「それはすごいな」 「約束です。もし引き受けるなら、ずっと。本当はこんな約束、出来るわけないのに。変なことなのに。でもマーちゃんたちは掟破りになってしまったので。変なトレーナーさんのせいです。約束……してくれますか?」 「もちろん、約束するよ。ずっと君の側にいる」 本当は、ずっとそう言いたかったのかもしれない。出来るか、出来ないかじゃない。俺は彼女を自分に焼き付けたいのだ。世界に彼女だけの痕を、一緒に残したいのだ。これからも、いつまでも。

    4 22/10/13(木)22:20:37 No.981866896

    「そうと決まれば、お祝いです。ウルトラスーパーマネージャー就任記念、開催です。何かしたいことはありますか?」 「うーん………何か食べるにしても、まだお腹は空いてないしなぁ」 「それなら、マーちゃんを抱っこするのはどうでしょう?人形もいいですが、マーちゃん自身もマスコットなので」 「あれ、なんでそれを………」 「マーちゃん人形からいい匂いがしたので。決してジェラシーがあるわけではありません。…………じーっ」 しまった、彼女が時折見せる、要求が通るまでは一切折れない雰囲気だ。笑顔は崩さないままだが、少しばかり怒っているようにも見えた。 「思い出にもなります。マネージャーとして本物の抱き心地のチェックも必要です。損なことはなんにもないです。さぁ、どうぞ」 こうなってしまった以上、彼女の提案通りにするしかないだろう。観念してにじり寄る彼女に手を伸ばして…………触れた。

    5 22/10/13(木)22:21:19 No.981867202

    「やっぱり心配ですか?大丈夫ですよ、マーちゃんはここにいますから」 「少しだけ、怖かったよ。触れようとしたら、消えてしまうんじゃないかって」 「それなら、これからもっと触ってもらわないといけないですね。マーちゃんも、トレーナーさんと一緒に居たいので。ルールなんて関係なしに」 彼女の腰に手を回す。全身に彼女の暖かさが伝わる。たしかにそこにある、だけど手を離せばこぼれ落ちてしまうようなぬくもりだった。 「マーちゃんは絶対に忘れません、この暖かさを。だから、トレーナーさんも」 「絶対に離さないし、忘れないよ。この先も、ずっとね」 そのうち、彼女を抱きまくらにして寝るようになるのだがそれはまだ先のお話。そう、彼女との思い出はまだまだ続くのだ。 「なにせマーちゃんたちはわがままなので。仕方がないのです」

    6 22/10/13(木)22:22:49 No.981867865

    雑でも蛇足でもいいからずっと一緒に居てほしかったので書きました。 彼にはずっと忘れない義務があると思います

    7 22/10/13(木)22:23:43 No.981868214

    抱けーっ! >そのうち、彼女を抱きまくらにして寝るようになるのだがそれはまだ先のお話。そう、彼女との思い出はまだまだ続くのだ。 あっそれならその時で結構です失礼しました

    8 22/10/13(木)22:24:13 No.981868421

    そうそうこういうのでいいんだよこういうので…

    9 22/10/13(木)22:25:06 No.981868768

    わがままになったマーチャンは強いぞ 温泉旅行でも分かる

    10 22/10/13(木)22:26:31 No.981869379

    いけーっウルトラスーパーマスコット!

    11 22/10/13(木)22:27:00 No.981869600

    もう忘れないようにしっかり刻み込まないとね…

    12 22/10/13(木)22:27:40 No.981869860

    さっきおつらいの見たから助かる

    13 22/10/13(木)22:29:32 No.981870650

    そうそうこんな感じでずっと居ればいいんだよ

    14 22/10/13(木)22:33:31 No.981872406

    贅沢言わないから二人が海に流れるまでこうやって一生甘ったるい感じで過ごしていてほしい

    15 22/10/13(木)22:33:45 No.981872513

    ここまでしっとりしてると思わなくて急激に欲しくなったけど、俺ストーリーやったら泣いちゃうと思う

    16 22/10/13(木)22:34:31 No.981872847

    いろいろあって全部解決したアフターストーリー助かる

    17 22/10/13(木)23:04:19 No.981885541

    マジで二人で幸せになってくれ…頼む…