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22/10/11(火)22:26:31 趣のあ... のスレッド詳細

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22/10/11(火)22:26:31 No.981198542

趣のある和室に似つかわしくない学園トレーナーと制服姿の担当ウマ娘。ふたりはテーブルの上に所狭しと並んだコース料理をつついていた。 「市街見回り中、こちらの旅館の女将さんが倒れているところを私が救助し病院に送り届けたご縁に始まり!」 「その模範的行動に対する謝礼として、お夕食のコースを是非堪能くださいと!女将さんからお誘い頂いたわけですッ!」 「バクシン的に早い話が高級料理が食べられるということです!」 ここに訪れる前、彼女は瞳をきらきらと輝かせながら私に経緯を説明した。つまりは食事に招待されたということらしい。 和室の窓を通して見ることのできる絢爛な日本庭園は、夕暮れになった今も石灯籠の仄かな灯りでその美しい全体像を見渡せている。 部屋の造りも、提供される料理も庭園同様に並ではない雰囲気を漂わせている。これは一般的にもかなり敷居の高い旅館だろう。 しかし彼女はこの場の雰囲気にも一切臆する事なく、歓喜の声を上げながら次々と提供される料理各種に舌鼓を打っている。

1 22/10/11(火)22:27:02 No.981198780

一方で私は料理に集中できていない。彼女の次走の事で頭が一杯だった。 URAファイナルズの栄光をも手中にした彼女からは『レースプログラムの記載上2000m以上の重賞』に出たいという希望を伝えられていた。 それにどう対処するか、思考を巡らせ続けている。 ラップ走計測タイムだけで見てもそれは無謀な挑戦だと分かっていた。最低の2000mを選択したとしても……掲示板争いも厳しいだろう。 ……やはりダメだ。どう考えを凝らしても今は中距離挑戦をする段階に無い。準備期間が足りていない。 ……まだその段階に無い。期間が足りていない。確かに事実そうかもしれない。しかし。あれからもう3年の時が過ぎている。とうの昔に本格化を迎えた彼女に残された時間は 「トレーナーさん」 静かな室内に響いた声にハッとなる。

2 22/10/11(火)22:27:44 No.981199091

私のすぐ隣に、大ぶりの蟹のむき身を手に持ち笑みを浮かべる担当ウマ娘が居た。正面に座っていたはずの彼女はいつの間にか私の隣すぐ傍へと着席位置を変えている。 「さきほどトレーナーさんに教えていただいた方法でカニさんをたくさんムキムキ致しました!さあさあ!どうぞどうぞ!!お食べくださいッ!!!」 テーブルの大皿には多少粗っぽく取り出された茹で蟹の身がいつの間にか並んでいた。彼女の一連の行動に全く気づかないほど考えこんでしまっていたようだ。 「私が手に持っているコレは、蟹しゃぶです!こちらも美味しいですよ!おひとついかがでしょうか!このままあーんして頂いて構いませんから!」 彼女は鍋の出汁にくぐらせ食べ頃になった蟹の身を取り皿で支えながら私の口許へと寄せてきた。その勢いに思わず口を開けてしまい、差し出された蟹の味をかみしめる。 「…旨い。蟹しゃぶの出汁も上品な味付けで……美味しいね」 「ハイッ!そうですよね!良かったです!」 彼女は咲くような笑顔を見せた。

3 22/10/11(火)22:28:19 No.981199347

「では、これも食べていただけますかトレーナーさん!」 すると彼女は別の蟹の身を手に持ち、またも私の口元に寄せてきた。 本調子の時のような食欲は無かったし、ゆっくり食事をしているような精神的余裕も無いのが正直なところだ。 だが自分は彼女の連れ添いとして来たわけだし、私に料理を取ってくれた彼女の気持ちを思えば食べるべきだろう。 私は笑顔をつくり、差し出された蟹をぱくりと口にする。 「ありがとう。美味しいよ」 それを聞いて彼女はいきなり私に告げた。 「本当にそう思われていますか。トレーナーさん」

4 22/10/11(火)22:28:53 No.981199617

彼女の瞳はぱちりと見開き私の表情を覗いている。いや、私の思考を覗いているようにも見える。 彼女からの短い問いに、返す言葉が出てこない。 幸いにも蟹が口内に残っていた。静かに咀嚼し飲み込んだ後、苦し紛れに静かに頷いた。 それを見届けた彼女の手から蟹の身がみたび口元に寄せられた。 「では次のカニさんです。食べていただけますかトレーナーさん」 正直なところ胃の状態は限界に近い。だが彼女が発する正体不明の圧力に、思わず私は口を開けて蟹を咥えようとする。 「トレーナーさん」 私の行動を遮るように彼女は言った。

5 22/10/11(火)22:29:25 No.981199878

「これ以上食べたくないと、思われてはいないですか」 「もうこれ以上は限界だと、思われてはいないですか」 私の顔を覗きこんでいた彼女の顔は言葉を重ねるほど下へ下へと俯きがちになっていく。 「私のお願いになんとか応えてみせようと、無理をされてはいないですか」 これは。食事の話だろうか。 その言葉ひとつひとつに何か意味が込められている気がする。 ……考えすぎだ。食事の話でなければ何だというのだ。 「いや、そんなことは」

6 22/10/11(火)22:30:01 No.981200108

「トレーナーさん」 伏せていたはずの彼女の顔は再び正面を、私の顔を見つめていた。牡丹色に染まる双つの瞳が、私の顔から約数10cmの位置まで近づき私の顔をのぞき込んでいる。 「お顔。汗がすごいですよ」 何の事だ。彼女から視線を外す事なく、自らの指数本を遣って自身の頬を軽く撫でてみる。指には、滴り落ちるほどの汗が付着していた。 私の肉体は見えない何かに脅えている。汗という方法を用いて既に悲鳴を上げていた。 「ご安心くださいトレーナーさん。私が拭いて差し上げます」 彼女はそう言うと、どこからかサッと取り出したハンカチを私の顔に当て拭き始める。 私の顔の汗を拭うその手つきは普段の彼女からは想像できないほどに慎重で、この上無いほど丁寧だった。

7 22/10/11(火)22:30:41 No.981200364

「トレーナーさんが私のために日々激務に追われていることを知っています。最近は特にお忙しいという事も」 ばく。ばく。ばく。ばく。心臓が慌ただしく鼓動する。やめてくれ。いま妙な音を出さないでくれ。 「きっと疲れているのです。私が膝枕をして差し上げます。どうぞこちらへ」 彼女はいつの間にか姿勢よく正座をしている。太腿に頭を置くように手招きで私を誘導した。 実際、私はもう倒れる寸前だった。彼女に言われなければ畳の上に倒れ込んでいたかもしれない。私は導かれるように彼女の太腿へ頭を運ばせていた。 横になり、姿勢を仰向けにした時、私の心の奥底を見透かすような彼女の瞳と私の視線が絡み合った。 「ずっと。レースの事を考えている時のお顔でしたよ」 ばくばくばくばくばくばくばくばく。

8 22/10/11(火)22:31:19 No.981200634

心臓の鼓動音がライブ演奏のような大音量で聞こえている。室内は変わらず静寂に包まれているはずだ。そうであってほしい。 やめてくれ、なんとか今は抑えてくれと心の中で自らの肉体に懇願する。 私は貧血時のように視界が、頭が揺さぶられていた。呼吸もきっと荒くなっている。 彼女の太腿に頭を預けた私は仰向けで宙を見つめている。視線の頂には彼女がいる。彼女は横になる私を見下ろし私の汗を優しく拭い続けている。 その表情はどこか寂しそうな。私を憐れむような。………分からない。 複雑な表情で、彼女は横たわる男を見下ろしていた。 違う。いつか、手が届くはずなんだ。嘘じゃない。 ……もう、声を上げることもできなかった。瞼が重い。視界に映る彼女の姿が次第に霞んでいく。私の意識は徐々に遠のいていった。

9 22/10/11(火)22:31:46 No.981200832

… ……おやすみなさい。 私は、トレーナーさんに語りかけました。 今日はトレーナーさんにゆっくり休んでいただくためにここへお呼びしたのです。ですから少しの間だけ、私のおヒザで眠っていてください。 ……目覚めるまで、あなたのそばにずっといますから。 私の膝の上に頭を預けるトレーナーさんは微かな寝息を立てています。 そのお顔は少し痩せていて、目の下にはうっすらとクマも出来ています。最近はほとんど身体を休められていなかったのかもしれません。 トレーナーさんのお顔に涙がぽつぽつと落ちました。

10 22/10/11(火)22:32:19 No.981201060

ずっと前から知っていました。 いつか私が辿る事になる結末を。 でも、トレーナーさんは私をずっと信じてくれていました。 だから…、私も自分自身の能力を信じてみたかったのです。 トレーナーさんの努力を、嘘にはしたくなかったのです。 次のレースで、それを証明してみせると……。 でも。 私の夢は、あなたをこんなにもぼろぼろにしてしまいました。

11 22/10/11(火)22:33:56 No.981201708

トレーナーさん。 私、あなたの走らせてくれたスプリントが、マイルが、好きなんですよ。 優しくて、いつも私をたくさん褒めてくださる私の大好きなトレーナーさんが長年かけてそれを教えてくれたのです。 もう、寝てしまわれたみたいですので。起きたら、聞いていただけますか。 ……出てくる言葉は、どれも途切れ途切れでした。 それでも、ひとつひとつ語りかけました。 にっこりと笑顔を作っているはずなのに、時折トレーナーさんのお顔の上に落ちていってしまう涙を見つけてはハンカチで拭い続けながら。 静かに眠るトレーナーさんに語りかけました。

12 <a href="mailto:s">22/10/11(火)22:34:54</a> [s] No.981202131

オワリ カニさんをムキムキする委員長を書きました

13 22/10/11(火)22:36:42 No.981202902

あと3年ピークのまま維持できたなら身をもっといっぱいほじれるのにね

14 22/10/11(火)22:37:40 No.981203309

少し泣く

15 22/10/11(火)22:37:49 No.981203367

>「市街見回り中、こちらの旅館の女将さんが倒れているところを私が救助し病院に送り届けたご縁に始まり!」 >「その模範的行動に対する謝礼として、お夕食のコースを是非堪能くださいと!女将さんからお誘い頂いたわけですッ!」 ここであっと思ったバクトレは多い

16 <a href="mailto:旅館女将">22/10/11(火)22:38:56</a> [旅館女将] No.981203807

なんか…えらいことになってるな…

17 22/10/11(火)22:39:13 No.981203922

絶対走れると信じてる狂人だから委員長は止まらないわな 止められないとも言う

18 22/10/11(火)22:41:58 No.981204950

バクちゃんがヤバいと思ったら ヤバいのはトレーナーだった

19 22/10/11(火)22:45:01 No.981206226

次世代に託そうとして搾り取るバクシンをくださ…くださ… いややっぱりもう少し待ってください

20 22/10/11(火)22:45:18 No.981206330

大切な人をご招待するあのイベントいいよね…

21 22/10/11(火)22:48:12 No.981207517

もう短距離以外無理ですよね?

22 22/10/11(火)22:48:13 No.981207522

儚く たゆたう 世界を君の手で守ったから 今はただ 翼をたたんで ゆっくり眠りなさい

23 22/10/11(火)22:49:43 No.981208125

女将…布団の用意頼む…

24 22/10/11(火)22:50:30 No.981208438

不相応に長距離志望して聞かなかったウマ娘を適正にあった短距離専門に転校させて見事大成させた有能トレーナーきたな…

25 22/10/11(火)22:50:46 No.981208553

>もう短距離以外無理ですよね? は?マイルも制したバクシンオーなら必ず中距離にも手が届くんだが? ただちょっと時間が足りないんだが??????

26 22/10/11(火)22:50:56 No.981208625

>もう短距離以外無理ですよね? マイル走らせてくれましたよ?

27 22/10/11(火)22:52:25 No.981209252

後一年だけ…後一年だけ…ズルズルと準備期間を増やしてしまうんだ

28 22/10/11(火)22:52:59 No.981209508

うそつき

29 22/10/11(火)22:53:14 No.981209609

胸が苦しい

30 22/10/11(火)22:54:06 No.981209979

>うそつき すまない…すまない…俺は君の夢を壊して…!

31 22/10/11(火)22:55:43 No.981210603

こうして長距離を走れないままピークを過ぎていきました トレーナーさんのせいです あーあ

32 22/10/11(火)22:56:24 No.981210883

>こうして長距離を走れないままピークを過ぎていきました >トレーナーさんのせいです♥ >あーあ♥

33 22/10/11(火)22:56:38 No.981210984

人の身でありながらバクシンすると死の危険すらあるのだ

34 22/10/11(火)22:58:15 No.981211604

彼は狂人かもしれないがバクちゃんがバクトレを失うわけにはいかないからな…これで良かったんだ…

35 22/10/11(火)22:59:32 No.981212110

引退とか移籍とか未来の話はやらないで終わるから円満で終われてるシナリオだよなぁ委員長シナリオ

36 22/10/11(火)23:02:25 No.981213259

>『レースプログラムの記載上2000m以上の重賞』に出たいという希望を伝えられていた。 賢さが…賢さが高い……!

37 22/10/11(火)23:02:31 No.981213295

愛ですよ委員長

38 22/10/11(火)23:04:54 No.981214316

ドリームトロフィーというウマ空間に行って永遠に苦しもう

39 22/10/11(火)23:05:30 No.981214553

お互いの呪縛になった夢を解けるヒトは誰? そうサクラバクシンオーしかいません!

40 22/10/11(火)23:07:33 No.981215456

何となく女トレーナー感があった

41 22/10/11(火)23:07:53 No.981215598

2000に出走させたとしてボロボロになるバクちゃんをトレーナーが見ていられるのか

42 22/10/11(火)23:09:42 No.981216381

二人の前にノースフライトが現れればある意味それが救済にもなり得るんだけどな…

43 22/10/11(火)23:16:37 No.981219309

>引退とか移籍とか未来の話はやらないで終わるから円満で終われてるシナリオだよなぁ委員長シナリオ あんなどでかい爆弾残して終わるシナリオ他に無い気がする…

44 22/10/11(火)23:18:46 No.981220172

フラワーやキタサンシナリオで触れられた感じでは上手に騙されるというステップはクリアできている 後はどうやって美しいカーテンコールを迎えるかだがこれが難しい

45 22/10/11(火)23:19:16 No.981220387

やっぱ無理だって!バクシンオーに中距離以上は走れないって!

46 22/10/11(火)23:19:56 No.981220642

いいや絶対に走れる

47 22/10/11(火)23:19:59 No.981220660

>やっぱ無理だって!バクシンオーに中距離以上は走れないって! いいや走れる 俺には分かってる

48 22/10/11(火)23:21:37 No.981221231

てかバクシンもそこまでバカじゃないんだから 走ったところでどうなるか本当は大体わかってるよね

49 22/10/11(火)23:22:57 No.981221773

>いいや絶対に走れる いいから寝てろ!お願いですから寝てください!

50 22/10/11(火)23:23:38 No.981222053

身近にキタちゃんもいるからなぁ…

51 22/10/11(火)23:24:09 No.981222239

>てかバクシンもそこまでバカじゃないんだから >走ったところでどうなるか本当は大体わかってるよね 上 騙 ね

52 22/10/11(火)23:24:28 No.981222365

>てかバクシンもそこまでバカじゃないんだから >走ったところでどうなるか本当は大体わかってるよね 分かっててあのEDはおつらいんよ…

53 22/10/11(火)23:24:33 No.981222400

シナリオのその先が見てみたいウマ娘

54 22/10/11(火)23:25:32 No.981222748

>引退とか移籍とか未来の話はやらないで終わるから円満で終われてるシナリオだよなぁ委員長シナリオ 原作通りとも言う

55 22/10/11(火)23:28:34 No.981223833

委員長のシナリオはちょっと踏み込んだらしっとりなんてもんじゃなさすぎるから…

56 22/10/11(火)23:33:18 No.981225405

人の身でバクシンの力に魅入られるのは危険なことだったんだ

57 22/10/11(火)23:36:19 No.981226420

人から見ればなんの疵瑕もない偉大な戦績

58 22/10/11(火)23:37:00 No.981226650

スレッドを立てた人によって削除されました ウマガイジdel

59 22/10/11(火)23:39:20 No.981227447

結局、中・長距離は走らせてもらえませんでしたね?嘘つきさん♥

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