22/09/28(水)21:14:53 秋は忙... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1664367293688.png 22/09/28(水)21:14:53 No.976575852
秋は忙しい季節だ。 多くのG1が開催されるこの時期、出走を狙うウマ娘たちは最後の追い込みに入り、トレーナーたちも彼女たちに合わせて様々なトレーニングを考案せねばならない。 かく言う私も秋の天皇賞に向けてトレーニングを重ねていた、そんなある日のこと。 「……よしアヤベ！今日はここまでにしておこう！」 「ふぅ…もういいの？」 「うん、時計も順調だし、無理に負荷を増やす必要はないよ。それに…今日は新月だろ？」 「ああ…」 習慣として染みついたことはそうそう変えられない。妹がいなくなっても、私は毎月、新月の夜は星を見に出かけていた。私は星を見ることが好きなのだと、この人に気付かされたから。 「…そうね、寮長に外出申請も出さなくちゃいけないし…」 「だからお疲れ様。俺はトレーナー室にまだいるから、何かあったら…」 「…ねえ」 「ん？」 ほんの気まぐれで、なんとなく私がそうしたいと思ったことを口に出す。 「よかったら…あなたも一緒に来る？」
1 <a href="mailto:s">22/09/28(水)21:15:19</a> [s] No.976576021
～～～～～⏰～～～～～ 「おお…都内でもこんなに星が見えるんだな…」 「この辺りは明かりも少ないから」 いつもの場所。普段より大きい180㎝四方のレジャーシート。ヘッドライト。方位磁針つき腕時計。防寒用のひざ掛けを2人分。温かい飲み物の入ったタンブラーと、中身を分けあうための紙コップ。それから、手触りがふわふわした、淡いブルーのクッションも2つ。 「悪いな、こんなに色々準備してもらって…」 「誘ったのは私だもの、これぐらいはして当然だわ」 2人並んでシートに腰を下ろす。思えば誰かとここに来るのは去年、トップロードさんをここに連れてきた時以来だった。 「…ところであなた、星座とか分かる？」 「えっと、一応合間を見て勉強してはいるんだけど…」 それは知っている。トレーナー室のデスクに、真新しい星の本が置いてあるのを何度も見ているから。 それでも、やはりすぐには出てこないのだろう。あたふたしているトレーナーがなんだかおかしくて、思わず笑みがこぼれてしまう。 「そうね、幾つか教えれば、思い出せる？」 「お、お願いします…」
2 <a href="mailto:s">22/09/28(水)21:15:43</a> [s] No.976576180
話しやすいように彼に身を寄せ、方位磁針を確認する。ちょうど南東を向いているので、1番分かりやすいところから入ろう。 「あの4つの星、分かる？」 シェアト、マルカブ、アルゲニブ、アルフェラッツ。秋の四辺形を構成する4つの星を順番に指さしていく。 「う、うん」 「あれが秋の四辺形ね。構成してるのはペガスス座と──」 「アンドロメダ座…だっけ。だから、ええと…あれがうお座で、あっちがおひつじ座？カシオペヤ座とケフェウス座は…こっちか！」 どうやら、ちゃんと思い出せたようだ。子供のようにはしゃぐ姿がほほえましい。 「はい、よくできました。あと分からないことがあったら教えるから…次からは、教えなくても自分で見つけられるようにね？」 「努力します…」 それからしばらく、2人で静かに星空を眺めていると、トレーナーが不意に口を開いた。 「そういえば…どうして誘ってくれたんだ？」 「どうして、って…」 この人をここに連れてきた、その理由。それは単に──。
3 <a href="mailto:s">22/09/28(水)21:15:53</a> [s] No.976576244
「…そうね。あなたと星が見たかったから、かしら」 「そっ、か…」 そしてまた、心地よい静寂が私たちの間に流れる。 月のない夜、たくさんの星明りの下で2人、空が白むまでそうしていた。
4 <a href="mailto:s">22/09/28(水)21:16:34</a> [s] No.976576512
おわり アヤベさんと夜のウマさんぽしてえな… fu1485167.txt 前書いたの
5 22/09/28(水)21:19:36 No.976577609
いい…
6 22/09/28(水)21:25:56 No.976579831
静かに心の距離が近づいていくのいい…
7 22/09/28(水)21:26:58 No.976580234
綺麗な文だ…