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22/09/14(水)23:03:10 No.971749010
「さあ、どんどん作っていくッスよ」 「相変わらず動きが手慣れてるプイ」 練習オフの日の昼下がり、プレハブ小屋は即席の和菓子屋と化していた 「花より団子ならぬ月より団子な連中多いッスからね。ある程度以上作っておかないと速攻で消えるッスから」 「言い出しっぺでなんだけどまさか手作りするとは思わなかったプイ」 「まあ意外と作業工程はシンプルッスから。数が多いのがアレなだけで」 米粉にぬるま湯と砂糖。ダマにならないように丁寧に捏ねて、固さを調整していく ……レシピ本とかだとよく「耳たぶくらいの柔らかさ」って表現があるけど、ウマ娘は何を基準にすればいいんだろうか
1 22/09/14(水)23:03:20 No.971749087
捏ねて捏ねて、できたそれを横に渡せばプイ先輩がコロコロ丸めて 最初は形も変で大きさもばらつきがあったが、だんだん慣れてきたらしい。ぷっきゅんぷきゅきゅんと変なの歌いながら作っていてる 「先輩、固さはこのくらいで大丈夫ですか」 「ん、大丈夫そうッスね。それ基準にして作ってってくださいッス」 「どんどん丸めます!!!!!!!!!!!」 同じようにして米粉を捏ねていくソングラインちゃんだが、こっちは黒糖を使用したもの 捏ね終わったそれはエールちゃんが楽しそうにどんどん丸めていく。若干大きめな気がするが、不揃いにもなっていないし大丈夫か 「できたやつ貰っていくね。どんどん茹でていくから」 そして、こちらで整形した団子はどんどん姐御のもとへ。借りてきた大鍋を使ってどんどん茹でていく 姐御としては今既に満足そうだ。こういうの大好きだもんね
2 22/09/14(水)23:03:30 No.971749143
「天気も悪くなさそうだし、楽しいお月見のためにも頑張って団子作るッスよ」 そう。今こうして、揃いも揃って団子をこねくり回している理由 九月、まだ残暑は残るものの夜風は涼しさを感じるようになってきた今日この頃 いつものような思いつきによって、我々プレハブメンバー+プイ先輩のいつものメンツでお月見が執り行われることとなったのだ
3 22/09/14(水)23:03:43 No.971749235
● 「月見団子って言っても、作り方は普通の団子と変わらないんスよね」 ある程度数は確保できただろうか。ラスト一袋をボウルに開けてぬるま湯を注ぐ 「あとで姉貴が三方を借りてきてくれるッスから、そしたら15個それに乗せて飾るッスよ」 「三方って、あのお団子乗せる台プイ?そんな名前だったプイ?」 「そうッス。方向の方で「さんぽう」「さんぼう」だったり、三つの宝と書いて三宝だったりするッスけど」 実際、自分も調べて初めて知ったけど。あれってそんな名前だったのね すでにススキは用意済み。というか、お月見はそんなに形式張った準備も必要ないし、正直気分の問題だけって面もある 15個の団子を乗せた三方をお供えすればあとは脇にススキでも飾って……それ以外に何かやることあるんだろうか ある程度調べてみたけど、あとは月を見ながら適当に過ごせば問題なさそうだった。七夕やお盆なんかのように明確にやるべきことが決まってるわけでもない、というのは準備する側としても割と楽ではある
4 22/09/14(水)23:03:55 No.971749303
「っし。あとはプイ先輩お願います。ウチは味付けの用意に入るんで」 「オッケープーイ。こっち終わったら他お手伝いするプイ」 「あ、先輩。こっちも終わりましたので手伝います」 「お手伝いします!!!!!!!!!!!!」 黒糖入りの団子捏ね終わったソングラインちゃんエールちゃんも合流して、みたらし他団子につけるものを作っていく 今回、どうせお月見と言いつつ月を見ながらお団子を食べる会になるのはわかってたので、せっかくだし味をいろいろ揃えてみようと考えた 餡子は市販品だが、黒糖団子はそのまま食べられるように甘めに作ってもらったし、これから作るみたらし……そう、みたらしだ 「じゃあ、エールちゃん。みたらしのタレ、お願いしていいッスか?」 「お任せください!!!!!!!!!!!!名古屋印のみたらし、頑張って作ります!!!!!!!!」
5 22/09/14(水)23:04:12 No.971749427
そう。みたらしについて、最初ちょっとひと騒ぎがあった 時々姐御や聖剣先輩がみたらし団子を買ってくることがある。みんなも喜んで食べていたのだが、そこにエールちゃんがショックを受けてしまったのだ なんでも、名古屋のみたらしは違うのだと それを聞いた姐御始め数名が興味津々、結果今回のお団子祭り……もといお月見では、エールちゃんの主導で名古屋式みたらしでいくことになった 軽く調べたら岐阜含む一部地域で違うのか……となったが、下手に深入りすると戦争の火種になりそうだしそっと閉じた 「じゃあソングラインちゃんは、そこの大豆をプロセッサーにかけてきな粉作ってってほしいッス」 「わかりました。……ていうか、きな粉は自作するんですね」 「餡子もやろうと思ったんスけど、流石に時間が足りなかったッス」 「なんでも始めると凝りだすのある意味凄いと思うプイ」
6 22/09/14(水)23:04:23 No.971749484
いやぁ、だってせっかくの機会だし。やれるならやってみたいじゃないかと そんでもって自分は枝豆を湯で始める。茹で上がったら叩いて潰して、砂糖とひとつまみの塩入れればいい そう、ずんだ餅ってやつ。あれお団子でも美味しそうだし作るのも手軽そうなので今回採用と相成った 餡子、みたらし、黒糖、ずんだ、きな粉。これだけバリエーションあれば十分すぎるだろう 「おーい、さんぽう?っての持ってきたぞ愚妹」 「あ、来たッスね」 「待たせたな、やっと打ち合わせが終わったところだ」 「あ、もう結構できてる!!後何やればいいのよ」 ガタガタと三方を抱えて入ってきた姉貴に続いて、用事を終わらせてきた聖剣先輩と魔女っ娘も合流 これなら予定より早めに終わりそうだ。そんなに遅くなってもあれだし、外出申請の問題もあるから早め早めでいこう
7 22/09/14(水)23:04:38 No.971749595
「んじゃお二人はエールちゃんソングラインちゃんのサポートお願いッス。プイ先輩、そっち終わったらずんだ作り一緒にお願いするッス」 「お任せプーイ。ずんだ餅って実際に食べるの初めてプイ」 「餅っつーか団子ッスけどね。姉貴、姐御と一緒に団子どんどん茹でてってくださいッス」 「あいよー。運んできた駄賃だ、1個寄こせっが!!!」 適当な理由つけてつまみ食いしてる姉貴に姐御のチョップ。なにやってんだか こうして、いつも騒がしいこの小屋の秋のイベントが幕を開けることとなった
8 22/09/14(水)23:04:52 No.971749684
● 「………おお、天気よくて、よく見えるッス」 「綺麗な満月プーイ。満月って夜道も明るくなるし好きプイ」 少しして、プレハブ小屋外 いつものアウトドアテーブル一式を外に出して、全員揃って空を仰ぐ 本当に綺麗な満月だ。雲もほとんどない晴れた空を照らし出すその灯りの下、テーブルの上には各種お団子の山 あえて灯りは最低限のLEDランタンのみ。テーブルのみが照らされる中で姐御とソングラインちゃんと一緒に飲み物を配って回って 「そんじゃ、お月見会始めますか。お団子どうぞー」 「おっしゃ、食おうぜ食おうぜ。これが楽しみだったんだからよ」 「もー、風情がないなぁ」
9 22/09/14(水)23:05:05 No.971749771
姐御は文句を言うがこうなるのはわかってたし 姉貴をはじめとして、みんなが一斉にお団子を取りだす。かくいう自分も結構楽しみだったし まぁ、お団子15個乗せた三方は捧げてあるし問題ないだろう 「ん、この黒糖団子、すっごい美味しい!!風味は濃いのに甘すぎなくってくどくない!!」 「む……このずんだ、気にいった。砂糖は控えめか?豆の甘さだけでも十分すぎるほどなのだな」 「きな粉美味しいですね。やっぱり安定の味って感じがして………」 さて、ここで気になるのはエールちゃんおススメのみたらしだが…… 食べてみて正直、最初は面食らってしまった。なんだこれは 「………しょっぱ!?」 「え、なにこれ!!」 「結構しょっぱい寄りの甘じょっぱい………あ、でも美味しい!!」
10 22/09/14(水)23:05:22 No.971749893
えっっっっっっっっっっへんと胸を張ったエールちゃんは得意気で、同時に反応見て大満足っぽい 「名古屋のみたらしは甘くないです!!!!!!!!!!!醤油濃いめのしょっぱい味付けでえええええええええええええええええええええす!!!!!!!!!!」 「………あ、これこっちの方が好みだわ。愚妹、今度からこれ作れや」 「自分で作れッス」 「私が作ります!!!!!!!!!!」 「お、おぅ」 なんかもう好評なの見て鼻高々だ。いやしかし、これは確かに美味い 事前に甘さ控えめでと指示されていた団子に、焦がし醤油特有の香ばしさの混じった甘じょっぱい味がよく馴染む しかも全くくどくない。醤油の香りが鼻を抜けて、もっちりした団子が塩味をちゃんと受け止めて… 「これマジで美味いッスね。エールちゃん、作り方教えてくださいッス。これならいつものお茶請けにぴったりッスよ」 「プッキュモッキュプッキュモッキュ………甘ったるくないからいくらでも食べられるプイ」
11 22/09/14(水)23:05:35 No.971749987
なんかハムスターと化してる人いるし。普段小食なのにこういう時食い意地凄いんだから 「黒糖もっとちょうだい。これお土産分はあるの?」 「ちゃんとあるよー。みんな同室の子とかに持ってってあげてね」 「あ、みたらしお土産にしたいです。あとずんだも」 「こうなるの見越してかなり多めに作ったッスからね。ぬかりはないッスよ」 絶対予想よりも多く食べるだろうしお土産欲しくなるのは目に見えてたし 姐御も「アヤベさん気にいるかなー」なんて言いながら作ってたし、持ち帰り用のパックも準備してたし初めからそのつもりだったのだろう エールちゃんなんか早速「ソダシちゃんにお届けです!!!!!!!!!!」って詰めてるし。おおぅ、みたらし多めなあたりよほど自信作か 「そういえば、月にはウサギが住んでるってどこから来た話プイ?」 団子を頬張りながら空を見上げるプイ先輩の、ちょっとした疑問 実はそれについては少し調べてみたのだが……
12 22/09/14(水)23:05:50 No.971750067
「基本となるのは帝釈天に身を捧げたウサギの話……らしいんすけど、民話とか各地の土着の信仰とか、色々話がこんがらがってて途中で調べるのやめたッス」 「こういうのは下手に深入りすると沼が待ってるからね………」 「ていうかその帝釈天の話だと、住んでるじゃなくてウサギの自己犠牲を示してるだけってなったりしますし」 この手の話は専門家でもない限り深入りしないのが一番だ 実際さっきのみたらしの話だって、下手すると地域性が原因で喧嘩戦争の元になるし……こういうのは『まぁそういうのもあるよ』が一番穏当に済む 「さっきも言ったけど、満月の時って道が明るいし好きプイ」 「天体観測の時には満月より欠けてた方がいいらしいけどね」 「え、そうなんスか?」 「月の光の反射が満月だと強すぎて、周りの星も月の表面も見えにくいんだって。同室のアヤベさんが教えてくれたの」 なるほど、確かに表面のクレーターとかは見えにくくなるのか
13 22/09/14(水)23:06:05 No.971750206
「満月の夜には狂気が満ちる………魔法の使い時でもあるわ!!!」 「そういえば狼男などもそうだが、月にまつわる伝承では剣呑なものも多いな」 「それだけ深く昔から人の生活に根付いてたってことですかね」 地震のナマズしかり。人々は古くから、説明できないことの理由を大自然や超越的なものに求めた その結果生まれた数多の伝承は、羨望や憧憬、畏怖や敬意、単純な恐怖も含め数多存在する 人が、ウマ娘が生まれたその瞬間にも確かに存在していた夜空の光。それはきっとこれからも、ずっと絶えずそこにあるのだろう 食欲多めで始まったこんな突発イベントでも、なかなか感慨深いものを感じてしまうのはそのせいだろうか 「あ、そこの餡子のお団子欲しいプイ」 「はいはい」 ……いや、そうでもないか
14 22/09/14(水)23:06:18 No.971750297
「月と言えばかぐや姫とかもあるよね?」 「あー、昔散々思ってたわ。あれ普通にむごい話だわなって」 「ロマンもへったくれもねーッスねこの姉貴」 いやまぁ、確かにその通りなんだけど 今見てみると結構あるよね。もうちょっと手心とか無いのかって昔話 「まぁ、マジで何度でも言うッスけど天気よくてよかったッス。月が見えなかったらただの団子会になってたッスからね」 「それはそうプイ」 「実際今そうなってねーか?」 「お月さま見ながらなので大丈夫です!!!!!!!!!!!!!!!!!」 カロリー怖いなぁ……なんて考えつつ それに、懸念はもう一つあったし
15 22/09/14(水)23:06:32 No.971750398
「……野生動物も出てこないみたいッスし」 「…………あー」 「オメー等、あれ悪いけど爆笑させてもらったわ」 「怪我なくてよかったですほんとに………」 少し前にあった、不審者の目撃情報 その原因は敷地内に侵入していたイノシシの親子だったわけだが……危うく襲われるところで、プイ先輩と自分、そして妖怪芦毛はどこだの3人揃って大逃亡を繰り広げることになったのだ あれによって周囲からは「またなにやってんだか」と言う目で見られたが、それは自分たちが悪いわけじゃないだろうと強く抗議したい あと姉貴はじめ、爆笑しやがった連中。追っかけられてみろ、マジで怖いから 「結局、イノシシは確保されたとはいえ……また出てこないとも限らないッスからね」 「あの後、すごい目つきで害獣避け薬剤撒いてましたからね先輩………」 「正直その時の先輩の方が怖かったです!!!!!!!!!!!!!!!!!」
16 22/09/14(水)23:06:42 No.971750464
仕方ないじゃん。また出てきたらいやだし。若干トラウマなんですよこっちは あの後半泣きでぐずるプイ先輩を連れて帰寮したら「なにしやがった!!」みたいな目で見られたのもアレな思い出だ 「お団子食べて忘れるプイ。あんなおっかないことはもういやプイ」 完全に同意する。エールちゃん謹製のみたらし団子を食べて一息 今日作った団子はどれも上手いことできたものだ。大きさはいくらか不揃いなものもあるが、食べにくいものはほぼないし 餡子はしっとり甘く、きな粉は淡い香りと甘味、ずんだは豆の甘味に粒の食感 黒糖はコクのある上品な甘さでみたらしは主張の強い甘じょっぱさ どれもお土産にして問題ないだろう。苦労して作った甲斐があった 「ていうか、お土産分も勢いで食っちゃわないでくださいッスよ?」 「まー、こんだけの量あんだから大丈夫だろ」 「またそんな事言って………あ、ねえねえ同室以外にも配って大丈夫かな?」 「そりゃもちろんッス」
17 22/09/14(水)23:06:53 No.971750526
そろそろ、月明かりの下の宴も仕舞いとなるか それぞれ思い思いの相手へのお団子を詰めて撤収準備。うちは極端な大食いがいないからこういう時はいいよねなんて すると、目の前に……ついっと。串に刺さって突き出されたお団子が 「このお団子、形めっちゃ変プイ」 「マジッスね。なんだこりゃ」 見ればその餡子団子、形は変だし大きさも他と違う。出来は問題なさそうだが、見栄えは悪い しかしプイ先輩は、何かそれを誇らしげで 「最初に作ったやつの一つプイ。あーん、プイ♪」 ……ああ、はい。そういうことね ヘンテコでも、不揃いでも。頑張って作ったと、自信をもって出せるお団子、ということか
18 22/09/14(水)23:07:06 No.971750606
「………んあ」 だったら、いただくとしよう プイ先輩が突き出したお団子を、ちょっと行儀は悪いかもしれないが齧りついて一口に ん。確かに大きさも何も違うが…… 「ん。美味いッス」 それを聞いて、ぱっと花咲く月下の笑顔 お団子に始まりお団子に終わる。そんな食欲全開のお祭りにはなってしまったかもしれないが 「じゃ、これお返しッス。はいずんだ」 「んあー♪」 何とも美味しく終われたことだし、よしとしようではないか
19 22/09/14(水)23:07:22 No.971750710
以上。そういえば月見してねえと思いつつ酒飲んで舎弟した
20 22/09/14(水)23:13:16 No.971752978
ふふ…お土産もらったし…
21 22/09/14(水)23:15:46 No.971753872
名古屋の味にこだわりがあるエールちゃんは特殊な栄養素を持ってます
22 22/09/14(水)23:16:43 No.971754238
あとカウントしてみたらプレハブシリーズが60超えてたので今度まとめておきます
23 22/09/14(水)23:18:07 No.971754753
>あとカウントしてみたらプレハブシリーズが60超えてたので今度まとめておきます なそ
24 22/09/14(水)23:18:09 No.971754774
味が濃ければ濃いほどいいでええええええす!!!!!!!!
25 22/09/14(水)23:19:17 No.971755192
実際七夕とかと違って月見と言われても何すればいいんだ感はある
26 22/09/14(水)23:20:26 No.971755586
>実際七夕とかと違って月見と言われても何すればいいんだ感はある 月を 見ろ