22/09/10(土)00:02:01 ピピッ... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1662735721899.jpg 22/09/10(土)00:02:01 No.969979109
ピピッーカチッ けたたましく鳴り響く目覚まし時計の音。まだ眠たい目を擦りながら手探りで音源を探す。 「ふぁー…ん?」 指先に感じる硬い感触を頼りにボタンを操作してアラームを止めると、カーテンの隙間から朝日が差し込んでおり、部屋中が明るく照らされていた。 ベッドの上で寝ぼけ眼のまま身体を動かすと感じる違和感。 (なんか……いつもより身体が軽い?) 普段と違う感覚に疑問を覚えつつ掛け布団を捲ると──そこには栗毛の尻尾が自身の体から生えていた。 「え?なんだこれ……」 混乱しながら視線を落とすと、見慣れない胸元が見える。 恐る恐る両手でそれを掴んでみると、柔らかな感触と共に掌に確かな重量を感じた。
1 22/09/10(土)00:02:30 No.969979265
「…………嘘ぉ!?」 悲鳴のような声を上げて跳ね起きる。慌てて全身を確認すると、やはりというべきか下半身には本来あるべきはずのモノが無くなっていた。 そして代わりと言わんばかりに、両脚の間からは立派な尻尾が生えている。 「どうなってるんだ……」 昨晩眠りについた時には何の変化もなかったはずだ。なのに朝起きたら何故かウマ娘の肉体に変化していたなんて──そんな非現実的な出来事が起きるはずがない。 夢なら覚めてくれと頬を引っ張るが、現実は変わらない。 とりあえず落ち着こうと深呼吸をして、部屋の隅に置かれた姿見の前に立つ。 鏡に映るのは、栗毛色の髪をした小柄な少女。 幼さが残る顔立ちだが、どこか大人びた雰囲気もある。大きな瞳は強い意志を感じさせる光を帯びており、その瞳に見つめられるだけで吸い込まれてしまいそうな錯覚を覚えた。
2 22/09/10(土)00:02:53 No.969979398
身長は男性だったときより、10cm程縮んでいるだろうか。手足は細くしなやかであり、そのせいか余計に小さく見える。 頭にはぴょこんと生えた耳。それは紛れもなくウマ娘である証だった。 そして、極めつけは臀部から伸びる尻尾。 長く艶やかな栗色の毛並みをしたその尾は、まるで意思を持っているかのようにゆらりと揺れている。 試しに動かしてみると、思った通りに動く。どうやら神経も通っているらしい。 ──ウマ娘になったのだ
3 22/09/10(土)00:03:25 No.969979571
「クッ、クク…アッハッハッハ!まさか、昨晩の試験薬がこんな結果を生むとはね!」 「……」 高笑いを上げるタキオンにジト目を向ける。しかし彼女はそれすらも面白いと言わんばかりの表情を浮かべて笑っていた。 「いやぁ、本当に素晴らしい結果だよこれは。今までの実験の中でも最高傑作と言っていいだろう」 「そりゃあ……良かったね……」 はぁ、とため息を吐く。 ウマ娘になってしまったことはショックではあるが、それよりも気になるのが── 「それで、この身体を戻す方法は?」 「んー、残念ながら今のところは何も思いつかないねぇ。まぁ、そのうち戻るんじゃないかい?」 「いやいやいや、困るってば……」 「そう言われても、私にもどうしようもないんだよ。それにほら、よく言うだろう?『郷に入っては郷に従う』と」 「……つまり?」 「しばらくそのままで過ごしてみたまえ。何か変化があるかもしれない」
4 22/09/10(土)00:03:45 No.969979688
「うわぁ……」 最悪だ。このまま戻れなかった場合、一体どうすれば良いのか。 「大丈夫だって。仮に君が元の身体に戻れなかったとしても、その時はちゃんとサポートしてあげるから」 「…………」 タキオンの言葉がどこまで信用できるか分からない以上、迂闊に安心することはできない。 とは言え──今更嘆いたところでどうにかなる訳でもない。 「分かったよ。じゃあ、ひとまず様子を見ることにする」 「うん、それが一番だ。まぁ、もし何かあれば遠慮なく相談してくれたまえ」 「はいよ」 こうして俺の新たな生活が始まったのであった。
5 22/09/10(土)00:04:11 No.969979802
「はぁ……なんで俺がこんな目に……」 学園への道を歩きつつ、深い溜息を漏らす。 病院での精密検査、両親への連絡、自身の今後についての説明等々……色々なことがあり過ぎて頭が痛くなる。 これからどうなってしまうのだろう。不安が胸に渦巻いていた。 ふと視線を感じて顔を上げると、道行く生徒達の好奇の目がこちらに向けられていた。 (そりゃ珍しいもんな) 人間から突然ウマ娘に変わるなんて、滅多にあることじゃない。 恐らくは珍獣を見るような扱いを受けているのだろうと察する。 なるべく目立たないように端の方を歩くようにして、正門を辿りタキオンの実験室へと辿り着いた。 扉を開けると、白衣を着たウマ娘が出迎えてくれる。
6 22/09/10(土)00:05:36 No.969980213
「おはよう、モルモットくん」 アグネスタキオン。トレセン学園に通う同級生であり、数少ない友人の一人でもある。 「……その呼び方やめてくれないかな」 「おぉ、これは失礼した。今の君は女性だからねぇ……今後は別の呼び名を考えよう」 「できれば普通に名前で呼んで欲しいんだけど」 タキオンがニヤリと笑う。嫌な予感がして思わず身構えた。 彼女がこういった顔をするときは大概ロクなことにならない。 「では、『お姉様』と呼ぶことにしよう」 「勘弁してくれ……」 げんなりとして肩を落とす。 そんな反応を見て、タキオンは満足げに微笑んだ。 「クク……冗談だよ。それとも、『妹』と呼ぼうか?」
7 22/09/10(土)00:06:26 No.969980446
「はぁー……」 「それはそうと、早く弁当を持ってきてくれたまえ。私は腹が減っている」 「はいはい、分かりましたよ……」 ぶつくさと文句を言いつつも、鞄の中から二人分の昼食を取り出した。 今日のお昼はオムライス弁当だ。小さめの人参ハンバーグ、彩りのブロッコリーに黄色卵に包まれたケチャップライス。 トレーに乗せて差し出すと、タキオンは目を輝かせながら受け取った。 早速蓋を開け、スプーンを手に取る。 そして一口分すくって口に運ぶ。すると、彼女の表情がパッと明るくなった。 どうやら気に入ってくれたらしい。その様子にホッとすると同時に嬉しくなった。 この娘に付き合わされてからというもの、毎日のように食事を作らされているのだ。 料理自体は嫌いではないし苦ではないが、それでも手間であることに変わりはない。 美味しいと言ってくれるならそれに越したことは無い。
8 22/09/10(土)00:06:49 No.969980572
「うん、今日も美味しいねー」 「そりゃどうも」 隣に座り、自分の分に手を付ける。 食事中はお互い無言だった。ただ黙々と食べ進めていく。 ただそれだけのことなのに不思議と心地よい時間だと感じる。 それはきっと相手が彼女だからだろう。 「しかし、君もよく食べるねぇ……」 ウマ娘の身体に変わってしまったことで食欲が増してしまったのか、以前に比べてたくさん食べるようになっていた。 元々そこまで食が太い方ではなかったのだが、今では普通の人間の倍以上は軽く平らげるようになっていた。
9 22/09/10(土)00:07:14 No.969980725
これでもかなりセーブしているつもりなのだが。 とは言え、それも仕方の無いことだと思う。何せ、この身体になってから燃費が悪くなってしまったのだから。 「まぁ、ウマ娘になったからね……ところで、元に戻る目処をついたのか?」 「ん?あぁ、そうだねぇ……」 少し考える素振りを見せる。 それから、彼女はおもむろに机の上にあった瓶を手に取った。 「君の身体を元に戻すことだが……残念ながら現状では難しいだろうね」
10 22/09/10(土)00:07:37 No.969980856
言いながら、タキオンは手に持っていた試験管を揺らす。中には紫色をした液体が入っていた。 ──タキオン曰く、試験薬が変化した姿であるとのことだ。 見た目こそ不気味な色合いをしているが、中身は至って普通の薬と変わらない。 それ故に、タキオンはこの身体を戻すためのヒントになるのではないかと期待していた。 実際、服用することでウマ娘としての身体能力を手に入れることができた。 しかしその代償として、俺の性別は男から女へと変化してしまっている。 今のところ、タキオンにも解決策が思いつかないようだ。
11 22/09/10(土)00:08:16 No.969981099
「うーん……そうか……」 タキオンの言葉を聞いて、落胆と共に深い溜息が出た。 とはいえ、別にウマ娘になってしまったことを嘆いている訳ではない。 確かに不便ではあるが、悪いことばっかりという訳でもない。 例えば、ウマ娘の耳は感情によって動くということがよく解った。 どういった仕組みになっているのかは分からないが、タキオンは実験と称してよく触ってくる。 その度にピクッと動いてしまうので、正直恥ずかしい思いをした。 「まぁ、そんなに落ち込まないでくれたまえ。君がウマ娘になったおかげで今までできなかったことが色々できるようになっただろう?」
12 22/09/10(土)00:08:38 No.969981208
「まぁ……それはそうだけど」 「たとえば……ほら、こんな風に」 不意に、タキオンの顔が目の前に迫ってきた。 反射的に仰け反ろうとするが、「おっと、動かない方がいい」と肩を掴まれ引き止められてしまう。 そのままジッと見つめられる。タキオンの髪が顔にかかりくすぐったい。 心臓がドキドキと高鳴る。今にも破裂してしまいそうなくらいだ。 頬が熱を帯びて赤くなっていくのを感じる。 タキオンが笑みを浮かべた。 まるで悪戯っ子のような、意地悪な表情。 逃げられない。 彼女の瞳に吸い込まれそうになる。 頭がボーっとしてきた。 このままではいけないと思う。けれど、どうしても動けない。
13 22/09/10(土)00:09:05 No.969981347
タキオンの手が伸びてくる。そして、その指先が尻尾に触れた。 ビクリと震え、全身に緊張が走る。呼吸すら忘れてしまいそうになった。 「ウマ娘の尻尾には数十キロもの荷重に堪えうる力があるし、聴覚や嗅覚といった感覚器官も鋭敏なものに変わっている。それに、人間と比べて遥かに優れた走力を持っている。この辺りは元の身体とは随分違う点だね」 タキオンの言う通り、ウマ娘の身体になってみて初めて知ったことも多かった。 普段の生活の中ではあまり意識することは無いが、いざ走ってみると分かる。 人間の時とは違って、明らかに速く走れることに。 風を切る音、踏み込むたびに感じる地面の感触。何もかもが新鮮だった。 それはつまり、それだけこの身体は高性能だということだ。
14 22/09/10(土)00:10:01 No.969981685
「だから、今の君は元の体よりもずっと運動能力が高い。もちろん、ウマ娘としてはまだまだ未熟だし、その能力は身体に慣れていけばもっと伸びていくはずだ」 タキオンが顔を離し、またいつもの距離に戻った。 先程まで感じていた温もりが離れていく。 それがなんだか名残惜しかった。
15 22/09/10(土)00:10:39 No.969981953
「まぁ、そういうことだ。元の体に戻れるまで、この生活を楽しむと良いよ」 タキオンが微笑む。そして俺の頭を優しく撫でてくれた。……あー、もう。本当にずるいなぁ。 「分かったよ。なるべく早く元に戻る方法を見つけてくれると助かるけど……」 「あぁ、任せたまえ。必ずや君を元に戻し、私の研究に役立てることを約束しようじゃないか!」 タキオンが胸を張って答える。 「ははっ、期待して待ってるよ」 思わず苦笑いが漏れる。……まぁ、今はこれでいいか。焦っても仕方ないしね。 彼女の言葉に安心した俺は、弁当を食べ進めることにした。 タキオンは相変わらずマイペースだった。
16 22/09/10(土)00:13:19 No.969982796
メモ帳を整理していたら見つけたから載せた ハローさんを見るにウマ娘は成人しても食欲は衰えないし、運動しないと太りそうだよね
17 22/09/10(土)00:46:15 No.969993119
いいね
18 22/09/10(土)00:51:14 No.969994525
タキオンシナリオ見てたらモルモット君て学園のウマ娘ちゃん達から珍獣扱いされてるよね…
19 22/09/10(土)01:10:07 No.969999307
だって担当初日から光ってるし…
20 22/09/10(土)01:12:01 No.969999790
珍獣通り越して危険物扱いされてそう