虹裏img歴史資料館

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22/09/07(水)00:51:41 泥の残骸 のスレッド詳細

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画像ファイル名:1662479501402.jpg 22/09/07(水)00:51:41 No.969030778

泥の残骸

1 22/09/07(水)00:57:27 No.969032602

ぎしり、ぎしり。 水に浮かぶ朽ちかけの組み木の山。揺れる足場を、早足で跳び進む影。 その背中には虹色に輝く、影そのものを覆って尚余る程長大な翼。廃山を登った影は、その頂上に立ってその翼を空へと放つ。 散らばった翼……否、何か欠片にも似たそれは、黄昏色の空に広がってヴェールを作り出す。影がひらりと廻ると、連なって廻り尾を引いて見せる。 そのまま辺りをぐるりと見回して小島を降りると、珊瑚の海唯一の昏い海を覗き込む。 「貴方から貰ったものだけれど……ボクには多すぎるので、少し返します。貴方の顔も知らないけれど、どうか、どうか」 そういって、翼の端に手を伸ばす。切り取られた虹が、光を遮られ輝きを濁らせた。 両手を揺蕩う水面に差し入れる。零れ落ちた鱗が、光を失い底へと沈んでゆく。 暫くそれを見ていたが、やがて再び立ち上がって。 「さて、お墓参り終わり!じゃ、また今度ね!」 そう言って、船の山に後ろ手を振る。その背には、少し短くなった光の帯。 隙間を抜ける風が、船船をぎいと軋ませた。 そして来た時よりも軽やかに、少女は兆域を後にする。一部始終を見る者があった事は、彼女は知らないままだった。

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