虹裏img歴史資料館

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22/08/22(月)23:22:58 私は小... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1661178178520.png 22/08/22(月)23:22:58 No.963709550

私は小さい頃から雨が苦手だった。友達と遊ぶとき、雨が降っていたら一緒に走ることができなかったから。幼い自分にとっては雨が降っているというだけで人生の楽しみが半分奪われたような感覚だった。それに、雨が降ったあとの体にまとわりつくようなジメジメとした空気も嫌いだった。それはトレセン学園に入学してからも変わらなかった。レースは子供の遊びとは違って雨で中止になったり延期になったりはしない。それならもう雨を嫌う理由なんて無いはずなのに、やっぱり私は雨を好きにはなれなかった。ナリタトップロードには重馬場を走り抜くパワーが足りないのだ、とテレビで言っていた。今日が晴れだったらなぁ、そんなファンのみんなの嘆きを何度も聞いた。確かにその通りで、水分をたっぷりと含んだレース場の土は私を底なし沼に引きずり込むかのように足に絡みついてくる。オペラオーちゃん達はそれをものともせず走っていくけれど、私は彼女らについていくので精いっぱいだ。やっぱり雨は嫌いだ、最近まではそう思っていた。

1 22/08/22(月)23:23:18 No.963709715

「うわぁ………ひどい雨だな、こりゃ。プールの予約は埋まってるし………今日はレース研究にしようか」 「はいっ!制服で待ってればいいですか?」 「そうだね。ビデオを借りてくるから、ちょっと待っててね」 激しい雨の日は、こうしてトレーナーさんと二人でレース研究をする。と言ってもほとんど二人でビデオを見るだけだ。私はこの時間が好きだ。子供の頃、雨に奪われた楽しい時間を取り戻しているような、でも友人と遊ぶ時間とはまた違う、私の大好きな瞬間。あっという間に過ぎていって、次が待ち遠しくなるようなそんな時間だ。 「おまたせ。とりあえず今日は中山のレースを中心に見ていこうか」 「はい!苦手を克服しないと、ですね!」 「その通り………ってトップロード、ちょっと近くない?」 今日はいつもより勇気を出して、あなたと肩が触れ合うくらい近くに座る。普段は感じることがない他人の温もりを感じて、走っていないのに体が温まっていく。 「そうでしょうか………?嫌でしたら、離れますけど………」

2 22/08/22(月)23:24:00 No.963709982

こう言えばトレーナーさんが断れないのは知っている。私がちょっぴりズルくなるのも、きっとこの雨のせい。なんとなく寂しい記憶や嫌な気持ちを思い起こさせるこの雨が、少しだけ私を大胆にする。沈んだ気持ちを言い訳にして、あなたとの距離を詰めていく。 「いや、嫌じゃないよ………まぁ、この方が見やすいならそれでいいか」 「そうですよ。雨だからといってぼーっとするのももったいないですし、しっかり研究やりましょう!」 トレーナーさんがレースの映像を再生する。テレビに映るウマ娘たちは、みんなゴールを目指して一生懸命だ。高低差のあるレース場を必死に回る。あなたが居なければ、彼女たちの眩しさを直視できなくて、走るのを辞めていただろうと伝えたらあなたはなんて言うのだろう。結果が出なくても、ずっと側にいてくれたあなたの存在が私にとってどんなに大きいか知っているのだろうか。

3 22/08/22(月)23:24:35 No.963710207

私と同じくらい真面目だと評判なトレーナーさん。クラスメイトからはお似合いだとからかわれたこともあった。不思議と嫌な気がしなかったのは、やっぱりあなたのことが好きだからだと思う。きっとこの気持ちを伝えても、真面目なあなたは断るだろう。きっとそれは正しいことだし、私の恋心が子供の錯覚だと言われたらどう反論すればいいかは分からない。だけど私は、簡単にこの気持ちを捨て去りたくない。自分の気持ちを大切に走ろうと教えてくれたあなたに、いつかは伝えたい。もしかしたらそれは悲しいだけの思い出になるかもしれない。それでも………… 「僕の顔、どこか変なところある?さっきからなにか言いたそうだけど………」 「いえ、そんなことはないです!むしろちゃんと綺麗でいい感じ………あっ!そんな変な意味は全然なくて!」 「いやいや、そんなに慌てなくても大丈夫だよ。悩みがあるなら聞くけど、そうじゃないなら気にしないから」 「すみません………」

4 22/08/22(月)23:25:11 No.963710445

雨の日の私は不真面目だ。もうレース映像のことは頭の隅っこに追いやって、あなたのことを考えている。今でも重馬場のレース上は苦手だし、外でトレーニングが出来ない状況をもどかしく思ったりもするけれど、あなたとふたりきりでいられるこの時間が対価なら、悪くはないと思える。 ふと、トレーナーさんの太ももに手を伸ばしている自分に気づく。いやいや、これは不真面目がすぎる。こうやって恋心をすぐに肉体的な繋がりに求めようとしては、子供の勘違いと笑われたってしょうがない。だけど、頭に浮かんでくるのは刺激的なシチュエーション。クラスの子たちから没収したあの本も、雨の日を描いていたっけ。

5 22/08/22(月)23:25:42 No.963710653

「ちょっと、委員長~いーじゃんそれくらいさぁ~。委員長と違ってこっちは出会いが無いんだからそれくらいは勘弁してよ~」 「ごめんなさい、規則は規則なので………って私に出会いですか?」 「委員長はめちゃスタイル良いし、トレーナーさんと仲良いしそういうのに困らないっしょ?私みたいなのはそんな相手なんていないしさ~。だからそ~いう本もひつよーあくっていうか………」 「ト、トレーナーさんと私はこういう………エッチなことはしてませんよ!?」 「えー!もったいな~い……ふたりともお似合いだし、とっととヤることヤってくっついちゃえばいいのに………」 「と、とにかく!この本は生徒会に提出しますからね!」 「ハァ~……結構苦労して手に入れたトレウマ本だったのに…………」 本来ならそのまま生徒会に出すべきだったのだろう。だけどその日、私はクラスメイトの言葉が頭から離れなくて、一瞬見えた妄想が霧のように頭の中を覆ってしまった私は自室で没収したその本を恐る恐る読んでしまった。内容はおそらくトレセン学園をモチーフにしたトレーナーとウマ娘の物語。激しい雨が降る中、トレーナー室で話し合う2人。

6 22/08/22(月)23:26:00 No.963710758

突然の雨で濡れたトレーナーを見たウマ娘は今まで募らせてきた思いが爆発してしまい………という話だった。そうか、私もウマ娘だから、やろうと思えばトレーナーさんを押し倒して抑え込めるのか。そんなことを思ったら、途端にフィクションのハズの物語に私が迷い込んだような気持ちになって、少しだけ想像をしてしまって……結局、悶々とした感情を処理しきれないまま、翌日に本を生徒会室に持っていった。 私の手がトレーナーさんに触れそうになるその瞬間、窓の外で気まぐれな空が眩しいフラッシュを焚く。私がトレーナーさんの脚に手を置くのと遅れた音がやってくるのは同時だった。 「もしかしてトップロード………雷苦手?」 「あっ………えっと……はい…………。なので、もう少し近づいちゃってもいいですか?」 「まぁ、そういうことなら構わないよ」 「その………ワガママ、だとは思うんですけど…手も、握っちゃっていいですか?」 「………うん、いいよ」

7 22/08/22(月)23:26:33 No.963710998

トレーナーさんに体をピッタリと寄せて、私よりちょっとだけ大きい手を両手で包むように握る。トレーナーさんの顔が赤いように見えるのは、少しは私のことを意識してくれているって期待してもいいってことなのかな。本当は雷なんて全然怖くないし、この心臓が高鳴ってしまうのはあなたに触れているからだけど。もう少し、あと少しだけ……欲張っても、いいかな。この天気のせいで、窓から見えるグラウンドには誰もいない。だからかもしれない、今、ふたりきりのこの部屋で何かあっても雨が全部隠してくれるような気がして。いつも見ているウマ娘の、アスリートの脚とは全く違うトレーナーさんの脚に、そっと尻尾を巻きつける。これくらいなら、臆病な私のスキンシップということで許されるだろう。トレーナーさんはチラリと気まずそうにこちらを見ると、私を意識しないようにかレース映像を見つめる。今はまだ、これくらいがいい。この先に進みたい気持ちはあるけれど、それはきっと今じゃない。私がこの雨を言い訳にしなくても良くなったら、雲ひとつ無い青空の下でトレーナーさんにこの思いをぶつけるんだ。

8 22/08/22(月)23:27:07 No.963711204

窓に打ち付けられる雨の音を聴きながら、少しだけ明日のことを考える。きっとターフは湿っていて、私が苦手な馬場になっているだろう。努力しているとはいえ、苦手なものは苦手だ。湿った空気も、ぬかるんだターフも。だけどきっと乗り越えられる。晴れだろうが、雨だろうが、雪だろうが、あなたは私を支えてくれるのだから。それに、今日はあなたは少しくらい甘えても許してくれると知った。この先、どれだけ走れるかはわからない。けど、最後まであなたと共に走ることだけは間違いない。何度負けたって、何度雨に降られたって、あなたとなら何度でも立ち上がれる。 「………大丈夫?寒くない?」 「おかげで、とってもとっても温かいので平気です………ありがとうございます、トレーナーさん」 「うん………あったかいね」 雨はまだまだ強いまま、雷も鳴り止むことはない。二人で身を寄せ合って部屋に篭っているのは、この雨のおかげだ。いつか、必ずあなたを言い訳にしなくても済むようになるから。だから今日はもうしばらく、降り続けて欲しいな。

9 22/08/22(月)23:27:32 No.963711367

良馬場の鬼のトプロさんに雨を好きになってほしかったので書きました

10 22/08/22(月)23:34:16 No.963713969

ちょっとだけなら…を繰り返し続けた結果あー委員長やっぱり付き合ってるんじゃーん!ってクラスの子に言われてほしい

11 22/08/22(月)23:35:32 No.963714467

これは...とても良くてすごいです!

12 22/08/22(月)23:37:22 No.963715167

すごく…すごく甘いです!! コーヒー飲みたくなります!!

13 22/08/22(月)23:43:48 No.963717589

雨...いい仕事する...

14 22/08/22(月)23:46:01 No.963718443

寝るときに環境音の雨の音を流すとトレーナーさんと一緒の時間を思い出して幸せな気持ちで眠れるトプロさん

15 22/08/23(火)00:02:40 No.963724940

また覇王世代よ…

16 22/08/23(火)00:04:29 No.963725668

ヒソヒソ...他の方と違って健全に違いないわ...

17 22/08/23(火)00:07:33 No.963726960

ヒソヒソ…でも覇王世代でナリタよ…

18 22/08/23(火)00:11:49 No.963728679

>こう言えばトレーナーさんが断れないのは知っている。私がちょっぴりズルくなるのも、きっとこの雨のせい。なんとなく寂しい記憶や嫌な気持ちを思い起こさせるこの雨が、少しだけ私を大胆にする。沈んだ気持ちを言い訳にして、あなたとの距離を詰めていく。 ここめっちゃ好き… 断れないから強気に出れるって心の動きはちゃめちゃに繊細でいじらしくてかわいくて好きだ…ありがてえ…

19 22/08/23(火)00:18:08 No.963731148

ふうううううぅぅぅ…とても…とても良かったです…

20 22/08/23(火)00:22:01 No.963732651

ナリタのナリタをトップロードする気よ…

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