22/08/13(土)14:27:19 ネタバ... のスレッド詳細
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22/08/13(土)14:27:19 No.959964235
ネタバレ注意 アイオニオン最強を目指すランツとセナのため、 フォーニス地方、レーベ高原のサフロージュの木の近くにノア達は来ていた。 目的は、「千古角のグランデプス」という名を冠する者の討伐。 激闘の末、討伐に成功したがもう疲れ果てたノア達は、 早めに今日の旅は切り上げることにした。 今日のテント設営と荷物番の担当はタイオンとユーニだ。
1 22/08/13(土)14:27:42 No.959964379
面倒ごとは早めに済ませてしまおう、 とテント設営を始めたタイオンと協力しながら、ユーニもテーブルや火の準備を始める。 ゲルニカと出会い、旅を始めた頃から短くない時間が経った。 お互いそんなことを感じながら宿泊準備を手慣れた様子でテキパキと進めていく。 「そういや、ノア達はどこ行ったんだ?」と既に準備を終えたユーニがタイオンに問いかける。 「ノアはミオとリクと共に向こうの、高原の朽ちた鉄巨神のプラントに向かった。 食材やコレペディア用の物資を確保してくるそうだ。 ランツとセナは肉が食べたいとマナナを連れてアルマを狩りに向かったよ。 まったく、先程まで激しく戦っていたというのに、どこにそんな元気があるのやら。」
2 22/08/13(土)14:27:56 No.959964457
ふーんと、タイオンから説明を受けながらユーニはこの後何をして暇をつぶすか考えていた。 戦闘で疲れたし、いっそタイオンに見張りを任せて 昼寝をかますのも悪くないと考えていたユーニは洗濯物が溜まっていたことを思い出した。 「千古角のグランデプス」はなぜか悪天候の時しか姿を見せず、 雨の中捜索を続けていたのでしばらく洗濯ができなかったのだ。 空を見上げてみると戦闘中に激しく降っていた雨は上がり、青空が広がっている。 また雨が降り出して後悔する前に済ませてしまおうか。 そうと決まれば、善は急げと準備を始めると、ユーニはリエス湖に向かう。 戦闘での汚れを丁寧に水で落としながら、洗濯を済ませていく。 野営地に戻り洗濯物を干し終え、タイオンの様子を伺うと、 タイオンは、シティーで購入した小説を熱心に読みふけっている。 邪魔するのも悪いし、散歩でもしてくるかと、一言タイオンに声をかけ、またリエス湖へと向かう。
3 22/08/13(土)14:28:10 No.959964554
湖の近くの木陰に座りながらぼんやりと湖を眺めていると、 メビウスとの戦いが遠い出来事のように感じてくる。 ノア達とコロニー9で兵士として戦った日々、ゲルニカやミオ達と出会った頃、 少しずつ信頼し合った旅の思い出。どれも大切な思い出だ。 穏やかにこれまでを振り返っていると不意に蘇ってきたあの忌まわしい記憶。 多分一生克服することはできない死の記憶。ちっ、舌打ちをしながら深くため息をつく。 ……タイオンの淹れたセリオスティーが無性に飲みたい……。 とっとと帰って入れてもらおう。そう思いながら立ち上がると、 ふらっと立ち眩みがする。どうやら思っていた以上に疲れていたらしい。 踏ん張りも効かずバランスを崩した体は湖へとしりもちをつく。 幸い湖は深くなく、溺れることは無かったが、しっかり服はびしょ濡れだ。
4 22/08/13(土)14:28:25 No.959964636
「ったく、ついてねぇなぁ…」 そうぼやくユーニは、とぼとぼと野営地に向かう。 すると、悪いことは積み重なるのか、と先ほど自分で干した洗濯物が目につく。 服は全て洗濯してしまっており着替えがない。 もう何度目かわからないため息をつくと、帰還に気づいたタイオンが声をかけてくる。 「どうしたんだユーニ。ずぶ濡れじゃないか。とりあえず火にあたって体を温めよう。 僕は何か温かい物を淹れるよ。いつものでいいかい?」 今はその優しさがとにかくありがたい。 火に当たり体を温めながらタイオンが淹れてくれたセリオスティーを飲む。 じんわりと優しい熱が冷えた体に広がり、ほっと一息をついたユーニにタイオンは、 「とりあえず服を着替えたらどうだ?……なるほどすべて洗濯してしまったのか …仕方ない今はこれで我慢してくれ」と、着ていた上着とマフラーを渡してくる。 「悪いなタイオン。」とそれを受け取ると早速上着を身にまとい、マフラーを首に巻く。
5 22/08/13(土)14:28:57 No.959964864
マフラーから香るタイオンの匂いが鼻をくすぐる。セリオスティーに似た安心する匂いだ。 何故か、にやけそうになる顔を必死に押さえつけ眉間にしわを寄せた表情のユーニに、 「すまない…。少し臭うか?別に無理に使わなくても構わないぞ」と申し訳なさそうにしてくるタイオン。 「あたしはそんなに失礼な奴じゃねぇよ、マフラー、暖かいな」と返すユーニ。 「そうか、それなら良かった。……しかしこれで君も考えが変わったんじゃないか?」 いきなりそんなことを言うタイオンの意図が解らずに黙っていると、 「やはりこのマフラーはいいものだ。こうして君も暖かいと感じてくれたしな」と続けてきた。 「はぁ…ダサいって言ったこと引きずりすぎだろ…」 マフラーに対し謎のこだわりを持つタイオンに若干あきれながら、 「悪くないかもな…」とつぶやくユーニ。 お互いに無言ながらも心地のよさを感じながら、ゆったりと紅茶を飲んでいると、 日が暮れ始めて気温が下がり始めたからか、上着とマフラーを貸していたタイオンがくしゃみをした。
6 22/08/13(土)14:29:18 No.959964987
「悪いタイオン、やっぱり返そうか?」 「気にしないでくれ、そこまで寒くないさ」 そう言うタイオンを見ながらふと、シティーで見かけた光景を思い出す。 それは一組の男女が1つのマフラーを2人で一緒に使っている光景だった。 当時はなぜわざわざ共有するのか?身動きとりずらくないか?と疑問でしかなかった。 今もその考えが変わった訳ではなかったが、何故か試したくなった。 と同時に何かとてつもなく恥ずかしさを覚えた。
7 22/08/13(土)14:29:29 No.959965051
ウロボロスとなり、命の火時計から解放され、自由となった頃から、 今まで感じたことのなかった気持ちを抱くことが多くなった。 特に最近は、タイオンとナミが会話しているところを見ると腹が立ったり、 タイオンが褒められると何故か自分のことのように嬉しくなったり、よくわからない。 今感じているこの恥ずかしさも、なぜ恥ずかしいのかわからなくてむずむずする。 もやもやした気持ちを抱えながら、ちらっとタイオンを見ると鼻を軽くすすっていた。 自分のせいでタイオンが体調を崩したら寝覚めが悪い、 これは仕方ないことなんだ、と自分を無理やり納得させながら、 「タイオン……その…一緒に」と提案しかけたところで 「そうだった、あれがあったな」と何やら荷物の中から紙袋を取り出すタイオン。
8 22/08/13(土)14:30:02 No.959965268
紙袋から取り出したものは黒の上着と水色のマフラーだった。 いつもタイオンが身に着けている上着とマフラーによく似た、 というか色が違うだけのいつもの上着とマフラーだった。 「どうしたんだ、それ?」とタイオンに問いかけると、 「実は、この前シティーに立ち寄った時に購入したんだ。 いつも着ている服が気に入っていたし、特に困っていなかったんだが、 その服一枚というのもどうかと思っていたんだ。 と言っても気に入る服が無かったからどうしたものかと思っていたんだが、 偶然店で見つけてな、服なんてどれでもいいと思っていたんだが一目ぼれしてしまった。 さらに運の良いことにわごんせーる?とかいう状態でほぼ無料で売られていたから 迷わず購入してしまったよ。 我ながらいい買い物をしたと思う!」 と嬉しそうに袖を通すタイオンを見ながら、 「よかったなー」と適当に返すユーニ。
9 22/08/13(土)14:30:17 No.959965351
すっかり日が沈み、たき火に照らされながら、色違いのおそろいの服を着る2人。 ……あれ?これもこれで結構恥ずかしくね? タイオンの服のセンスのおかげで冷静になりかけていたユーニの思考が再び荒れ始める。 まずい。何故かわからないがこの光景をノア達に見られるのはめちゃくちゃ恥ずかしい!
10 22/08/13(土)14:30:45 No.959965491
「ありがとな。タイオンそろそろ上着とマフラー返す!」 「?今日も冷えそうだしまだ着ておいた方がよくないか?」 「いや、もう十分温まった、というかなんかもう熱いわ!」 恥ずかしさから体が火照ってきたように感じ始めたユーニが上着を脱ごうとした瞬間
11 22/08/13(土)14:30:55 No.959965550
「ミオ…押すなって!うおっと!」 と茂みからランツ達が倒れ込んできた。 「なんだ?帰ってきてたのか?なぜ隠れていたんだ?」 と全く気にせず問いかけるタイオンと言葉にならず口をパクパクさせているユーニ。 「お…おい、な、なん、ど、ど、どこから見てた?」顔を真っ赤にしながらユーニが問うと、 「だいぶ前から居たぜ。なんかタイオンが新しい服着始めたころからか? いやさ、肉の調達の帰り道にミオ達と合流して、一緒に帰ってきたんだ。 別に普通に、帰ったぞって2人に声かけようとしたんだけど、ミオが隠れろって、なあセナ?」 「うん、ミオちゃんなんかすごいワクワクしてたよね」 「ちょ、ちょっと2人ともそれは内緒だって!えっと、……あっ!ノアも楽しんでたよね!?」 「えっ!?ああ…どうだろう…?……あの、とりあえず夕飯にしないか?」 ミオとノアが焦る理由が解らず首をひねるタイオンと顔を手で覆い天を仰ぐユーニ。
12 22/08/13(土)14:31:07 No.959965626
「もう早く飯にしようぜ、腹減って仕方ねぇよ」 「わたしも~もうおなかペコペコだよ~」 「それじゃあすぐにお料理はじめますも!」 何事もなかったかのように食事の準備を始めるランツ達。 そのせいで怒るタイミングを逃してしまったユーニも渋々手伝いを始める。 正直なにか変に追及されてさらに恥ずかしい思いをするよりかは大分マシだ。 自分を無理やりそう納得させる。だけど、とりあえずミオは後でシメる。
13 22/08/13(土)14:31:17 No.959965683
「どんどんおかわりしますも!」 「マナナ、おかわり頼むも」 楽しく食事するリクとマナナ、 不機嫌を隠そうともしないユーニとそれをなだめ謝るミオ、 ランツに自分たちもやる?と提案するセナと別にどっちでもいいぞとよくわかっていないランツ。 それらを眺めるノアとタイオン。にぎやかな夕食は続いていく。 今日は散々な一日だったと疲れ切ったユーニは、早く寝ようと決意するのであった。 しかし、アルマの熟成サーロインステーキをやけ食いし、 眠りにつくその時までユーニがタイオンの上着とマフラーを脱ぐことは無かった。
14 22/08/13(土)14:31:32 No.959965762
以上です ありがとうございました
15 22/08/13(土)14:36:34 No.959967538
良い…
16 22/08/13(土)14:39:58 No.959968888
ありがとう…ありがとう…
17 22/08/13(土)14:40:00 No.959968899
タイユニは心を癒やしてくれますね
18 22/08/13(土)14:40:10 No.959968959
ありがとう