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22/08/03(水)00:13:53 泥のタワー のスレッド詳細

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画像ファイル名:1659453233335.jpg 22/08/03(水)00:13:53 No.956018562

泥のタワー

1 22/08/03(水)00:16:24 No.956019698

エッフェル塔で刺すな

2 22/08/03(水)00:26:16 No.956023917

教会の外はもう茜色に染まっていた。西日が街路を照らして街に物寂しさを与えていた。思ったより長居してしまっていたようだ。 「では、参りましょう」 セイバーが私へ向けて穏やかに微笑む。黙って小さく頷いた。 寸法だけ測って量販店で雑に買い揃えた粗製のシャツやズボンでも、セイバーくらいの器量の持ち主が着ると途端にブランド物に見えてくるのが不思議だ。 「どちらに向かいますか?」 「家まで。一旦戻るよ」 質問に答えるとセイバーは先立って歩きだした。セイバーといいあの神父といい、顔が私の頭上についているせいで慣れないと見上げる首が痛い。 彼の背中を追って私も歩を進める。厚みのあるあの礼服を着ていたのでは分からなかった、束ねられた筋肉の気配がシャツの表面から漂っていた。 夕方の街路はそれなりの人出があって横に並んでお喋りをしながら歩くというのはなかなか困難だ。 その難しさにほっとする。 …ん。変だな。一緒に歩いているのに隣り合って喋ることができないことに安堵するなんて。 胸中の中にその奇妙さの正体を探して、程なく行き当たった。 なるほど。どうやら私はこのサーヴァントに対して苦手意識を持っているみたい。

3 22/08/03(水)00:26:28 No.956023998

セイバーの歩調は彼の体格からすればゆっくりとしたものだ。足のコンパスの違う私に合わせたものなんだろう。 歩くスピードに限らず、出会った時からセイバーが私に対して気遣いをしてくれているのは分かっている。 それでも私はまだその背中に親しみを感じられずにいた。 始まってしまった聖杯戦争にマスターのひとりとして参加しているということにも、自分が召喚したサーヴァントが目の前にいるということにも、まだ現実感を持てていない。 あの一夜の出来事さえ、実は夢だったんだと言われればそうかもしれないと頷いてしまうかもしれないくらいだ。 神父は丁寧な説明をしてくれたが、それが実感として私の心の速度に追いついているかというと否だった。 漠然としながらもあるのは、このサーヴァントに命を救われた───その事実のみ、心臓に差し込まれた刃の冷たさと一緒に覚えている。 その借りという名の負い目だけが、望むならばマスター権を放棄して教会の保護に入るという神父の提示した道を拒んだ秘密の理由だ。 私はまだこの命の恩人へ何の義理も果たせていない。自分の命が惜しいというだけでセイバーを見捨てられるほど彼を単なる使い魔とは思えない。

4 22/08/03(水)00:26:38 No.956024063

ただ、それだけ。それだけのこと。 「歩くのが速すぎたりはしませんか?」 首だけ振り返って問うセイバーに首を横に振って答える。 これほどの美丈夫だと夕焼けの黄金色を浴びているだけで周囲が煌めくように華やかだ。 もし何も知らなかったら、もし彼と私が赤の他人だったら、男の容姿に比較的興味のない私でさえどきりと胸を弾ませていたかもしれない。 ───でも、彼のことを受け入れられないのはそんな現実感の無さだけではない。 セイバーは護ると言う。私のことを護ると。口を開けばそうしたことを語る。 事実なんだろう。それは彼の中で正しい行いなんだろう。剣士として、騎士として、従者として、相応しい決意なんだろう。 それが何故か、私の中で癪に障る。 まだお互いのことも知らないうちに相手側の領域へずかずかと入り込んでくるタイプはもともと苦手だ。 そういう相手は真意にしろ方便にしろ、親切や善意といった聞こえの良さそうな態度を掲げて相手の懐へ侵入し、そして実際には踏み荒らした庭の持ち主のことはよく分かっていない。 彼の『護る』という言葉にはそれと同じ香りがした。私ではなく自分にそうあれかしと言い聞かせているみたいだ。

5 <a href="mailto:〆">22/08/03(水)00:26:50</a> [〆] No.956024166

今、私にとって最も頼りになるのはセイバーだというのにそんなことで私は彼に対して嫌気を感じている。 私は余裕があるのだろうか。それとも悠長なのだろうか。分からない。それでも感情は理屈で制したところで否めない。 …こうして歩いている間にもビルの谷間に夕日が沈んでいく。夜と一緒に神秘が踊る時間がやってくる。 もしあの夜のように他のサーヴァントが襲ってくれば、セイバーへ全てを託す以外に私は生き残るすべがない。 「───」 私の少し前を歩くセイバーの歩みに淀みはない。優雅でさえあった。 彼を信じていいのだろうか。都合よく死にかけの私の元へ召喚され、都合よく敵を追い払い、都合よく私の味方をしてくれている彼を。 『護る』と。私の最も求める言葉を平然と何度も口にする彼は、信用に値するのだろうか。 セイバーの背中を見て歩く最中、ふと思い至った。 護るとは価値あるモノの守護の決意を示す。主観であれ客観であれ、それは大事なものだから護られる。 だがろくに私のことも知らない彼の護りとは、護るというその行為そのものが重要であって、それはつまりだ。 私が私である必要はなく、人間でさえ無くてもいいんじゃないか───

6 22/08/03(水)00:32:51 No.956026428

>エッフェル塔で刺すな 便乗して東京タワーの設計者である建築家の内藤多仲をランサーとして練るか…

7 22/08/03(水)00:40:42 No.956029341

>質問に答えるとセイバーは先立って歩きだした。セイバーといいあの神父といい、顔が私の頭上についているせいで慣れないと見上げる首が痛い。 ダメだった

8 22/08/03(水)00:40:58 No.956029438

ねこは警戒心強いな ねこだからな

9 22/08/03(水)00:44:46 No.956030799

>便乗して東京タワーの設計者である建築家の内藤多仲をランサーとして練るか… 「やはりトラス構造の鉄塔は美しいですね!文明発展の象徴としてこれ以上無いデザインです。  あえて紅白で彩ることで無骨な印象の鉄塔に親密さを与える、そこにジャポニズムの妙を感じますね!  しかしその設計プランは……どうなんでしょうか。熱したリベットを空に投げてキャッチするなんて、人間離れし過ぎでは?  それとも、噂に聞く“忍者”が建築に携わっていた……?」

10 22/08/03(水)00:46:01 No.956031222

アイエエエ!?

11 22/08/03(水)00:47:04 No.956031566

これセイバー陣営にとって大事な描写に見える 相手が誰だろうが守れればそれでいいって態度による不和ってどっかで見たことあるな

12 22/08/03(水)00:47:18 No.956031650

輝く顔の

13 22/08/03(水)00:48:53 No.956032147

タローマン

14 22/08/03(水)00:49:47 No.956032423

なんだこれは!

15 22/08/03(水)00:50:26 No.956032655

>これセイバー陣営にとって大事な描写に見える >相手が誰だろうが守れればそれでいいって態度による不和ってどっかで見たことあるな そこの不和が顕在化した隙を突かれて虚無っちゃうのか

16 22/08/03(水)00:50:55 No.956032815

(でもこいつお姉ちゃんにべろちゅーされていいなりになってたんだよな…)

17 22/08/03(水)00:51:25 No.956032954

>そこの不和が顕在化した隙を突かれて虚無っちゃうのか 虚無って寝取られるのは1部終盤らしいから解消後じゃない? 解消してるから取り戻せるのかもしれない

18 22/08/03(水)00:51:45 No.956033054

身に覚えのないヒーローが宝具と化した岡本太郎…

19 22/08/03(水)00:52:52 No.956033428

>(でもこいつお姉ちゃんにべろちゅーされていいなりになってたんだよな…) 10分待って

20 22/08/03(水)00:53:24 No.956033589

なにっ!

21 22/08/03(水)01:06:54 No.956037673

「セイバー」 恋果の話が終わる前に片割れの彼へ呼び掛けた。 どうせ長ったらしい上に内容は薄いんだ。構うもんか。こちらを見たセイバーの首に手をかけ、ぐいと引っ張った。 「何を───」 彼が故を質そうとする、その半開きになった口へと顔を近づけた。唇を重ねた。 …ああ、嫌だ。本当に恥ずかしい。馬鹿みたい。最悪。恥ずかしげもなくする姉の売女ぶりに頭が痛い。 そして同じことをしようとする自分の格好の悪さ加減にも吐き気がする。 でも、する。意を決し、驚いて硬直する彼の唇の先へ自分の舌を捩じ込んだ。 時間にして僅か一瞬。ざらりと、その舌先でびっくりして縮こまる彼の舌の表面を撫でただけ。 それだけでぞくりと震える神経が浅ましい。本音を言えば恋する相手とのキスはもっと色気があって欲しい。 ぷあ、と唇を離して息継ぎをする。一瞬交錯したセイバーの目はもう何のための行いか分かった色をしていた。 分かっていないのは、目の前でそんなものを見せつけられて二の句を告げられずに口をぱくぱくさせている姉だけだ。 私はセイバーの首に抱きついたまま、横目で恋果を見遣って宣言した。 「姉さん。悪いけど、この人はもう私のだから」

22 22/08/03(水)01:08:04 No.956038012

>分かっていないのは、目の前でそんなものを見せつけられて二の句を告げられずに口をぱくぱくさせている姉だけだ。 かわいい

23 22/08/03(水)01:10:55 No.956038697

急にぽんぽんSSが投げ込まれるのSNっぽいのの時を思い出す

24 22/08/03(水)01:12:13 No.956039014

>>分かっていないのは、目の前でそんなものを見せつけられて二の句を告げられずに口をぱくぱくさせている姉だけだ。 >かわいい 頼れるバーサーカーは下手くそなキスなんて効いてない お姉ちゃんかわいそうないきものなのでは?

25 22/08/03(水)01:14:11 No.956039494

対してセイバーの方は恥ずかしさMAXを勇気で踏み倒してしてくれたキスでバフかかりまくり これがラスボスと主人公の差

26 22/08/03(水)01:15:19 No.956039782

ランスロットはどう思う?

27 22/08/03(水)01:16:02 No.956039942

セイバーは普通に強いねこは負けないのでは?

28 22/08/03(水)01:19:53 No.956040961

ぶっちゃけお姉ちゃんは前座というか……後ろに控えてる二段目のラスボスが……

29 22/08/03(水)01:22:50 No.956041720

>ぶっちゃけお姉ちゃんは前座というか……後ろに控えてる二段目のラスボスが…… 厄介なのは同時撃破しないとダメだということだ

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