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22/07/30(土)18:44:50 「なん... のスレッド詳細

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22/07/30(土)18:44:50 No.954796425

「なんか意外なメンツ」  集まった面々を見回して、ヤンが言った。  ヤンとルビー、ジョーンとピュラ。  それが今日街に遊びに行くメンバーだった。 「そんなに珍しくないよ」と、ルビーが答える。 「ジョーンとはよく遊びに行くし、ピュラやワイスを追加で誘うこともあるし」 「あら、本気で諦めたんだ」  ぱちくりとバイオレットの瞳を瞬きさせながら、ヤンがジョーンを見る。金髪の少年は虚空を指さし、溜息を吐いた。 「パートナーがいる子にモーションかけるほど落ちぶれちゃいない」 「へー、そりゃ偉い」  自分から聞いたくせに全く興味の無さそうな声色であった。  ルビーとしては別にそこまですっぱり諦める必要もないとは思うが、ジョーンの意思を尊重して何も言うことは無かった。 ◆◆◆◆

1 22/07/30(土)18:45:47 No.954796798

 ヴェイルの街をぶらぶらと歩いていると、ヤンが三人に訪ねた。 「でもアンタ達って普段何してんの? イメージわかないけど」 「別に、本屋行ったり、飯食ったり、武器屋行ったり」と、ジョーンが答える。 「楽しいのそれ?」 「楽しいよ、少なくとも武器屋に行けば退屈はしない」  ジョーンがルビーを見る。 「優秀なナビゲーターがいるからな」  少年の視線に、ルビーはニヤリと笑って親指を立てた。武器のことなら任せておけ。  ヤンはハミングして頷いた。そしてジョーンが腰から下げている剣に視線を向ける。 「アンタにとっては良い機会かも」  ジョーンは困ったように頬を掻いた。 「買い替えるのはだいぶ先だろうけど」 「素敵な剣よジョーン」  ジョーンの隣を歩いているピュラがフォローを入れる。 「頑丈で、切れ味がよくて、壊れにくくて弾切れもしない」

2 22/07/30(土)18:46:01 No.954796885

「そうだね」  ルビーが同意した。対するジョーンは溜息を吐く。 「そりゃ撃ち出すモンが無いからな」  鞘を持ち、盾に変形させる。彼の武器のギミックはそれだけだった。  『ガン』トレットのエンバーセリカ、剣・槍・銃に変形するミロ&アクオ。  そしてビーコン1作成者の正気を疑うとの評判を持つクレセントローズ。  それらと比べると、いささかと言うかかなり貧相に見える。  ほんの少しばかり肩が落ちているように見えるジョーンに対し、元気出せよとルビーが肩を叩いた。 「予算が貯まれば私がチョーカッコいー武器作ってあげるよ」 「え? 何? 俺の指を飛ばしたいって?」  ルビーがジョーンを睨んだ。その視線に気圧され、少年は小さく手を払う動作をする。 「使い手がぶきっちょなのは仕様外です」 「武器だけに?」  ヤンが笑った。他の三人は何とも言えない顔をした。 ◆◆◆◆

3 22/07/30(土)18:46:32 No.954797064

「それと、前にピュラと遊びに行ったときはスポーツ店にもいったな」 「ああ、バーベル持ち上げられるあそこ?」 「ピュラはあそこの重量挙げタイトルホルダーだ」  ジョーンは得意げに笑う。自分の事でも無いのに。  ヤンは挑発的な笑みを浮かべ、指を立てた。 「じゃあまずそこへ行こう。新しいチャンピオンが産まれる所見せてあげるから」  一時間後、目を赤くしたヤンがカフェでむくれていた。 「惜しかったねお姉ちゃん」  慰めるルビーの横で、ピュラが申し訳なさそうな顔をしていた。 「私はセンブランスを使ってたから」 「私も」  ヤンの目は赤かった。

4 22/07/30(土)18:46:44 No.954797144

 バーベルを上げた際の負荷をダメージとみなしてセンブランスを使ってみたが大した効果は得られなかった。磁力操作を十全に使えるピュラに勝てるわけもない。 「それでも負けは負け」  頼んだコーヒーのストローへと口をつける。敗北の味は苦い。  呆れた顔をしたルビーがジョーンへ視線を向ける。 「ピュラも結構気軽にセンブランス使うんだね」 「前やったときはノーラとペニーが相手だったからな」 「ああ…」 「なあ、ハンターって負けず嫌いしかなれないのか?」 「ねえなんで私を見るの、ジョーン?」  ルビーの追及を、ジョーンは愛想笑いでごまかした。  唇を尖らせ、ルビーが反論する。 「君は闘争心が無さすぎるの。ねえ?」  ヤンが頷いた。 「それにバーベルも上げられないのに女の子と遊んでる」

5 22/07/30(土)18:46:54 No.954797208

「ア・ガールってこと?」 「そういうこと」  ニヤリと笑うヤン。ジョーンは答えたことに後悔しているような表情を見せた。 「勝ちに拘らない姿勢は美徳よ」  ニコニコと水を飲んでいたピュラがジョーンをフォローする。  ジョーンは微かに笑顔を見せた。 「ありがとう。俺の自尊心は君と母さんによって保たれてるよ」 「ピュラとお母さん? ピュラがお母さんじゃなくて?」 「止めてくれ」  ヤンの言葉に、ジョーンが眉根に皺を寄せて額に手を当てた。 「薄々思ってたけど、ヤンと話してると姉貴と話してる気分になる」 「お姉さんいるんだっけ?」  ルビーの問いに答えたのはピュラだった。 「ええ、七人」 「へえ、私は一人しかいないけどどんな感じなの?」

6 22/07/30(土)18:47:10 No.954797322

「そのままヤンが七人に増えた感じ」と、ジョーンが答えた。 「へえ、今まで良く生きて来れたね。ジョーンは猫なんだ」 「俺が九個の命を持ってるって?」 「残りは? 一個?」 「一人一殺以上されてるの俺?」 「ルビー、アンタが私のことをどう思ってるかよーくわかったよ」  睨みつける視線にあいまいな笑いを返し、ルビーは肩を竦めた。  ヤンが七人いれば少なくともタイヤンは三回死ぬだろう。妹が言うのだから間違いない。 「闘争心がないって君たちは言うけど」ジョーンが言った。「七人の姉に囲まれてそんなものを持つ余裕は無いんだって」  金髪の青年は僅かに顔を青くさせる。余程のトラウマを思い出したらしい。  それを見てヤンがニヤリと笑う。 「ヤーンな感じ?」 「君は俺の姉じゃないだろう」 ◆◆◆◆

7 22/07/30(土)18:47:32 No.954797436

「俺たちの休日はこんな感じなわけだけど」  そろそろおやつが食べたくなったころにジョーンが言った。 「学園一ホットなガールは休みは何してるわけ?」  両手の人差し指を振ってヤンに答えを促す。  ほんの少しの間だけ顎に手を当てた後、金髪の少女が答えた。 「バイクに乗ったり」 「良いね」 「バーに行ったり」 「ホットだね!!」

8 22/07/30(土)18:47:44 No.954797512

「バーを壊滅させたり」 「ああ、物理の方のホットだったか」 「ホットって言うか、バーン?」 「BangなのかBurnなのかBarなのか分からなくなってきたよ」  とうとうルビーが吹き出し、ジョーンは口をへの字に曲げる。  しかし気を取り直して話を続ける。 「バーの壊滅はともかく、バイクは良いね。俺も乗ってみたいよ」 「ジョーン……もう少し大人になってから乗った方がいいと思うわ」 「俺ヤンと同い年だけど?」 「私とヤンって双子だったっけ」 「俺が十五歳に見えるって事? いや乗れるって」  憤慨した少年が、ハンドルを握るジェスチャーをする。  正直ごっこ遊びをしているようにしか見えない。  ヤンが笑いながら手を振った。

9 22/07/30(土)18:48:32 No.954797847

「指を飛ばす前に諦めな」 「バイクのほうがまだ理解できる作りだろ」 「ねえ今クレセントローズを馬鹿にした?」 「理解できないものを馬鹿にはできない」 「……ゲロ男の癖に」  むくれたルビーが頬を膨らませる。 「君が乗るバイクが可哀想だよ。すぐ汚れそうで」 「自分で運転してると吐かないって聞くぞ」  ジョーンは人差し指を立てる。 「俺には隠されたライダーの才能があるかもしれないだろ?」 「儚い夢だね」 「ゲロだけにか」  ヤンを睨みつけた後、皮肉気な笑みを張り付けたジョーンがルビーに向き直る。 「それに、俺がゲロ男なら君は爆発娘だ」  ルビーが抗議の呻き声を上げた。

10 22/07/30(土)18:48:46 No.954797938

「それまだ持ち出す!?」 「先に持ち出したのはそっちだろ!?」 「まさかスクロールに爆発娘で登録してないよね!?」 「えっしてないけど……ってまさか君はしてるんじゃないだろうな」 「……」 「……マジかよ」  絶望した顔のジョーンが肩を落とす。すかさずピュラその肩に手を置いて慰めた。 「私は勿論名前で登録しているわ」 「ありがとう。君までゲロ男で登録してたら荷物を纏める所だった」  お母さんしてるなあ。ルビーはそう思った。  僅かに心の傷を癒したらしいジョーンが、ルビーに対して指を向けた。  その挑発に眉を顰める。 「はっきり言うけど」  ジョーンが言う。 「君だってだいぶ事故りそうだろ」

11 22/07/30(土)18:49:06 No.954798061

「なんでさ」 「バイクに変な改造してブレーキが利かなそうな顔してる」 「Modれないってこと?」 「ヤン?」 「オーケー続けて」  深い溜息を一度だけ付き、ジョーンはルビーに何度も人差し指を向ける。 「それに運転が上手いかどうかも分からないじゃないか」 「ジョーンよりは上手いよ」 「でも君はそもそもペダルに足が届かなそうだな」  二人は睨みあった。 ◆◆◆◆

12 22/07/30(土)18:49:33 No.954798220

「で、わざわざこんなところまで来ちゃった……」  ピュラの呆れを滲ませた声が夕暮れに響く。  ヒートアップした二人はゴーカートで決着をつけることにしたのだった。  『腕を見せろ!!』と書かれた看板がデカデカと掲げられている。  すでに二人はカートに乗っていた。それを場外でヤンとピュラが観戦する形となる。 「言い訳の準備はできたかルビー」 「君こそピュラに泣きつく準備はできた?」 「だからピュラはママじゃないって」  二人は睨みあう。 「頑張れルビー」  ヤンの声援が響く。もう色々と飲み込んでピュラも応援をすることにした。 「怪我しないでジョーン!!」 「ゴーカートで怪我って何!?」 「ゲロでしょ」 「まだ言うか」

13 22/07/30(土)18:49:44 No.954798288

 ジョーンのセリフに怒りが滲む。  しかし、舌戦がヒートアップする前にスタート地点の信号機が光り始めた。  二人は一斉に前を向き、戦いのコングがなるのを待ち構えた。  緊張が走り、ジョーンの頬から汗が流れ落ちる。  ライトが青く染まった。  轟音を立てて二人のカートが走り出す。  少し進んだところで、両者の間に明確な差が生じ始める。 「嘘、マジで!?」 「良いわ、ジョーン!!」  切っ先を制したのは意外にもジョーンだった。 「なんで!?」

14 22/07/30(土)18:49:57 No.954798370

 呻くルビーにジョーンが全く首を動かさずに答えた。 「毎年遊園地でゴーカートに乗ってたからな!!」 「経験者ってこと!? ズルじゃん!!」 「一度も運転したことはない!!」 「はあ!? どういうこと!?」 「五歳の時には一番上の姉と一緒に乗せられて姉貴が運転した!!」  ジョーンは視線を前方から微動だにもさせずに叫ぶ。 「六歳の時は二番目の姉と!! 七歳の時は三番目!! 俺に番が回って来るであろう時にはもう家族で遊園地に行くような歳じゃなかった!!」 「アイツ姉しかネタ無いの?」  悲哀を滲ませるジョーンの叫びに、あくまでもヤンは冷ややかだった。  ピュラは苦笑いをし、レースを見守る。  ハンター候補生は須らく負けず嫌いなのだ。  それは飛び級であっても関係ない。

15 22/07/30(土)18:50:16 No.954798495

 ゲームは最終ラウンドへ突入する。  ジョーンは勝利を確信していた。  事故が怖くて一度も振り返られていないが、後方のエンジン音はどんどん遠ざかっていく。お遊びとはいえ尊敬する少女から勝利を得られそうなことを嬉しく感じていた。  後ろから発砲音が聞こえるまでは。 「はあ!?」  口から心臓が飛び出そうになるのを抑え、ジョーンは勇気を振り絞ってミラーへ視線を向ける。  鏡越しにルビーの背中が見えた。  つまり 「クレセントローズ使ってるな!?」

16 22/07/30(土)18:50:31 No.954798584

 返事は発砲音だった。  つまり狂気的処刑用武器であるクレセントローズの銃形態、その発砲の反動でルビーは無理やり加速しているのである。 「ルール違反だ!!」  絶叫するジョーンの視線に、カートの看板が見える。  『Show your Arms.』  腕じゃなくて武器を見せろってことさ。 「此処の経営者はヤンだったのか!!」 「おい」  ジョーンの嘆きに、ヤンが場外から白い眼を向けた。  そうこうしている間に加速したルビーがどんどん前方車両との距離を詰めていく。 「くそ、俺だって」  そう言いながら、ジョーンは鞘を変形させる。 「あ、ダメだエアブレーキになるっ」  ジョーンは盾を鞘に戻した。

17 22/07/30(土)18:50:53 No.954798707

「どうやら勝負はわからなくなってきたようだね」  ニヤリとヤンが笑って、ピュラの方へ視線を向けた。  赤毛のチャンピオンは真剣な表情で両手を前に突き出していた。  ヤンは無言でレースへ視線を戻す。  謎の加速をしたジョーンがルビーを再び突き放していた。  ヤンは視線をジョーンの母親へ戻した。 「あの……間違ってたら申し訳ないんだけど」  躊躇いがちに口を開いた。 「センブランス使ってる?」 「使ってないわ」 「どうして両手をジョーンへ向けてるの?」 「……ああ、多分周りにそういうセンブランス使いがいるんじゃないかしら」 「私しか、いないけど?」 「……」 「……」

18 22/07/30(土)18:51:22 No.954798878

「今すぐセンブランスを止めなって!!」  ヤンがピュラの腕に抱きつく。 「私はジョーンの武器だからルール違反じゃないわ!!」 「何を言ってるの!?」  無理やりセンブランスを続けようとするピュラとそれを止めようとするヤン。  良い結果が産まれる筈もなく。 「……なんか、回ってない?」 「え?」  暴走したセンブランスがジョーンの車をコマのように回して減速させる。  そこにトップスピードに乗ったルビーの車が迫る。  一瞬の後、轟音がなった。  バーン!!  衝突した車が爆発し、火柱が上がる。  青ざめた二人の少女の視線の先、火柱の中から競争者二人が歩き出てきた。  服のあちこちがくすぶり、オーラが霧散しているのが見える。

19 22/07/30(土)18:51:34 No.954798969

「へー、これがオーラ切れか。勉強になったよ」  余り友好的でない声色でジョーンが言った。  ヤンを睨みながらルビーが呻いた。 「ほらね? 言ったとおりでしょ?」 「パワフル三人娘に囲まれて一度も死ななかった俺が偉大って話だっけ?」  ルビーは肩を落とした。  プスン、と一筋の煙が舞う。  ひきつった笑いをしたヤンとピュラの元まで、二人がたどり着く。 「ごめんなさい……」ピュラのか細い声が夕焼けが映える空間へ響く。 「ドーンな感じ?」ヤンが二人を指さした。  答えたのはジョーンだった。 「I Burn.(キレそう)」 「い・ヤーン☆」 おあとがよろしいようで。

20 22/07/30(土)18:52:20 No.954799237

◆氷雪こそこそ話◆ Salutations(ごきげんよう)! ですわ ホワイト「」ァングの皆様。 前回お伝えした情報に間違いがありましたので慌てて一筆書かせていただきましたの。 ジョーンは最初期ブーツをはいていない。ということをお伝えいたしましたが。 実はVol1ではブーツを履いていましたの。 スニーカーなのはVol2-3でしたわ 間違った情報を流布してしまったことを慎んでお詫び申し上げますわ ちなみにジョーンには七人の姉がいらっしゃりますが、その全員が虹にちなんだ色の名前らしいのですわ ジョーンが黄色、サフロンがオレンジ、残り六人の内双子が同じ色共有 姉弟全員で七色になるわけですわね RWBYWikiのジョーンの記事に書かれていた筈ですわ。もしくはサフロンの記事か 今度は間違っていないはず、多分……ですわ それでは皆様、明日公開の氷雪帝国第五話もお楽しみあそばせ

21 22/07/30(土)18:57:07 No.954800974

>ホワイト「」ァングの皆様。 ヘイトスピーチ…

22 22/07/30(土)18:59:20 No.954801747

ピュラはさあ…

23 22/07/30(土)19:01:26 No.954802550

ノリがRWBYchibiすぎる… 好き

24 22/07/30(土)19:07:01 No.954804692

ヤンのジョーク尽くしは近くで聞いてるとだいぶうんざりしそうだな…

25 22/07/30(土)19:10:41 No.954806107

ジョーンとルビーの友達的な仲の良さいいよね

26 22/07/30(土)19:22:37 No.954810552

原語を日本人向けに意訳した感じの台詞回しがいいね

27 22/07/30(土)19:25:26 No.954811650

> ヤンが七人いれば少なくともタイヤンは三回死ぬだろう。妹が言うのだから間違いない。 母親がね…

28 22/07/30(土)19:35:20 No.954815538

なんだこの脳内再生率

29 22/07/30(土)19:54:58 No.954823251

よかった

30 22/07/30(土)19:57:56 No.954824395

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