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22/07/24(日)19:55:46 No.952678074
〇月×日(金) 今朝の占いで「親しい人と食事をすれば吉」と出たのでトレーナーさんと夕食を共にすると決める。 ルームメイトのおマチさんに今日は帰りが遅くなると断りを入れた後、ウマホでトレーナーさんに一緒に食事をしたい旨を伝える。 すぐに返事が返ってきた。詳しい内容はまた連絡してほしいそうだ。勿論そのつもりだ。 まずは学生の本分として学業に程々に励む。今日は朝練は休みなので、授業中に疲労で寝る心配は無い。 時折先生に指名されるも、ことごとく正解を答えていく。占いを使うまでもない。 昼休みになったので、授業中にこっそり考えていた献立をウマホでトレーナーさんに伝える。 必要な材料をスーパーで買ってほしいのと、ご飯だけ炊いておいてほしいのでそれも一緒にお願いした。 私から言い出したことなので少々申し訳ない気持ちもあるが、今朝になって急に決まった予定なので素直に甘えることにする。 勿論すぐに返事が返ってきた。一緒にアイスも買っておくか?と聞かれたので、いつものお願いしますと返しておいた。 午後の授業はあまり集中できなかった。 私の意識はすでに食事会へと飛んでいたからだ。
1 22/07/24(日)19:55:59 No.952678198
放課後になり、トレーニングのために着替えていつもの集合場所まで向かった。 すでにトレーナーさんは到着していた。まずい、待たせてしまったか。 すぐに謝ったが、自分も来たところだとスマートに返されてしまった。 私の胸に申し訳なさとときめきが同時にやってくる。本当に困る。いや、もっとしてほしい。 準備運動をしっかりしたらトレーニングの開始だ。 つい最近GⅡに出走し勝ったばかりなので調整用の軽めのメニューをこなしていく。 2か月後にはGⅠだ。これから少しずつトレーニングの負荷を上げていくため疲労はどんどん積み重なっていくだろう。 それを考えると、レース直後ではなくレース直前でもない今に一緒に食事をするのは中々合理的ではないだろうか。 この作戦は使えるぞ。今後もこれぐらいのタイミングで一緒に食事をしたいと誘うようにしよう。 夕方、真っ赤な太陽が半分程しか目視できなくなった頃、今日のトレーニングは終了した。 お疲れさまでしたと挨拶をした後は、乙女としてすぐにシャワーを浴びて汗を流し、トレーナー室で待っててくれたトレーナーさんと帰路に着いた。
2 22/07/24(日)19:56:40 No.952678544
帰り道、いつものように横に2人並んで歩きながら取り留めのないを話す。 授業の内容の事、今日の夕飯の事、最近の占いの結果の事、トレーニングの内容の事。 話の中身があるのか無いのか分からない。だが、少なくとも話しているこの時間は何ものにも代えがたい。 だが正直に言って不満もある。私は片手に教科書などの入った鞄を持っており、もう片方の腕………というより肩に着替え等が入ったスポーツバッグを下げている。 人によってはロッカーに何日分か着替えを置いておき、持ち帰る時も纏めて持ち帰るらしいのだが、私は毎日持ち帰り毎日選択する派だ。 というか、脱いだ服の汗の匂いが置いてある他の服に移るん気がするのだが、気にしないのだろうか。 私には無理だ。トレーナーさんはきっと私の汗の匂いも愛してくれるだろうけど、それはそれとして汗くさい女だと思われたら私の乙女心が死んでしまう。
3 22/07/24(日)19:57:03 No.952678715
ともかく、私の両腕は荷物で塞がってしまっているため、トレーナーさんと手を繋ぐことができないのだ。 これは由々しき問題である。私としては、走っている時以外はずっと手を繋いでいたいとすら思っているのだが、さりとて荷物を放り投げる訳にもいかない。 二進も三進もいかない………といった所で、トレーナーさんからの提案が。私の荷物を片方持ってくれると言うのだ。 買い物もしてきてもらっておきながらこれ以上甘えるのはとも思ったが、やはり手を繋ぐ誘惑には耐えられず、教科書の入った鞄の方を持ってもらった。 空いた手は勿論繋いだ。私よりずっと大きな手。暖かい手。優しく握ってくれる手。世界で一番大好きな手だ。 そして辿り着いたトレーナー寮で、私は入るための手続きを手早く済ませてトレーナーさんのお部屋へと向かった。 途中のエレベーターでは二人きりの密室となり思わず沈黙してしまったが、他には何事もなく部屋に上がることができた。 勝手知ったるトレーナーさんのお部屋。いつも荷物を置いている椅子の上に今日も鞄とバッグを置かせてもらい、さっそく料理の支度を始める。
4 22/07/24(日)19:57:14 No.952678810
クローゼットからいつものエプロンを取り出し素早く身に着ける。 何せ今私が着ているのは制服なのだ。汚れが付いたら月曜までに何とかしないといけなくなる。 なのでエプロンは必需品だ。他にも頻繁に必要になるものはトレーナーさんのお部屋に置かせてもらっている。 さあ、トレーナーさんが仕事用デスクでレースのデータを纏めに入ったので、私も料理を始めることにしよう。 まず作るのは味噌汁だ。キッチンの棚の中から出汁の素と赤味噌を取り出し、大根と油揚げを細かく切り刻む。 あとはいつものように大根が軟らかくなるまで煮こめば完成だ。大根の葉まで入れるのが私流である。 次にメインディッシュとしてモヤシと茄子と豚肉の味噌炒めを作る。 茄子と豚肉をこれまた細かく切り刻み、モヤシと一緒にいつもの味噌だれで炒めれば完成だ。 簡単だがご飯が進み、スタミナも付く良いメニューである。
5 22/07/24(日)19:57:25 No.952678877
そして最後に卵豆腐を用意する。 パックに入った卵豆腐を小皿に移し、小さいスプーンを添えれば完成だ。 圧倒的お手軽。だが私は夕飯は一汁二菜はキープしたい女なのだ。 このお手軽感がたまらない………助かる助かる。サンキューシラオキ。 後は冷蔵庫に常備している水出し緑茶を用意すれば完成だ。おっと、緑茶が少なくなってる。帰るまでに用意しておかなくては。 さあさあ、トレーナーさん。夕飯が完成しましたので、冷めないうちに食べましょう。 こっちのテーブルへどうぞどうぞ。あ、ご飯よそいますね。今日はどれぐらい食べますか? そして2人で手を合わせて、声を合わせていただきます。さあ、どうぞおあがりなさい。 まずは味噌汁を口に含む。うん、いつもの私の味だ。 そっとトレーナーさんのほうを覗き込むと、声には出してないが美味しいと表情が言っているのが良く見えた。 私はこうやってご飯を作る時は凝った料理は作ったりしない。私が作るのは「いつもの」料理だ。 トレーナーさんには私の「いつもの」を好きになってもらいたい。 私の「いつもの」がトレーナーさんの「いつもの」になってほしい。そんな願いを込めているからだ。
6 22/07/24(日)19:57:35 No.952678953
食事が終わり、トレーナーさんは温かいお茶を飲みながらリラックスしている。 一方私は使った食器を洗っている。お茶碗、お皿、箸にコップ。 1つ1つ洗い残しが無いよう丁寧に洗った後に乾燥機に入れて、タイマーを1時間にセットしておく。 次に新しい水出し緑茶の用意、その次に台所用品でやティッシュ等の生活用品で足りない物が無いかのチェック。 それが終わればようやくトレーナーさんの向いにもう1度座ることができる。 自分の分の温かいお茶を入れた後は、いつものようにトレーナーさんにおかわりは如何と聞く。 トレーナーさんもいつものように、じゃあお願いしようかなと答えてくれる。 2人のいつものやり取り。2人のいつもの時間。 お茶を飲みながら何でもない話を続ける。 ただそれだけのいつもの2人。 やがて乾燥機のタイマーが声を上げるまで、私達は話し続けるのだった。
7 22/07/24(日)19:57:45 No.952679046
食器を片付け終わるころには、ずいぶんと遅い時間になってしまった。 本当はもっと一緒にいたい。なんなら泊っていきたいとも思っているのだが、学生の身でそれはまだ早い。 きっとトレーナーさんの迷惑になってしまう………そう思うと私の理性は急ブレーキをかけてくれるのだ。 忘れずに荷物を持ち、一緒に部屋の玄関まで移動する。 当然両手が塞がっているので、トレーナーさんが扉を開けてくれるのだ。 さて玄関まで到着して、さあ別れの挨拶を言って帰ろうか、といった所で私達は立ち止まる。 最後の「いつもの」がまだ終わってないからだ。 両の荷物をそっと床に下ろし、トレーナーさんの顔をじっと見つめる。 何を待っているのかは口には出さない。出してしまえばトレーナーさんは立場上拒まなくてはいけない。 私も傷つくだろうが、トレーナーさんだってそんな言葉を口にしたら傷つくだろう。 だから、何も言わない。お互いに何も言わないまま、「いつもの」行動を行う。
8 22/07/24(日)19:57:57 No.952679118
そっと、トレーナーさんの両手が私の肩に置かれた。 帰り道に私の手と繋がれた、大きくて暖かい手。今は、熱いぐらいに感じてしまう。 何も言う必要もなく、私はそっと目を閉じた。 近づく気配を感じ、電灯の明かりが何かに遮られた。 3秒だけ、私達は1つだった。
9 22/07/24(日)19:58:09 No.952679207
帰り道、私は1人寮への道を歩いていく。 寂しくはない。私の中にはまだトレーナーさんの熱が残っているのだ。 ああ、今日も幸せに満ちた良い1日だった。 サンキューシラオキ。ハッピーシラオキ。 明日もきっとフクキタル。明日が来るのをマチカネる。 ………なんちゃって。
10 22/07/24(日)19:58:27 No.952679346
終わりです。 読んでいただきありがとうございました。
11 22/07/24(日)20:03:43 No.952681959
ものすごく可愛らしい……
12 22/07/24(日)20:03:57 No.952682071
フクはこういう事する
13 22/07/24(日)20:04:55 No.952682589
腹減ってきたな…
14 22/07/24(日)20:14:05 No.952687230
イチャイチャしやがって…
15 22/07/24(日)20:27:51 No.952695584
フクちゃん可愛すぎんか?
16 22/07/24(日)20:28:28 No.952695956
その日マチタンは外泊届けを出していた
17 22/07/24(日)20:29:52 No.952696757
>フクはこういう事する おマチさんよりはちょっとアグレッシヴだけど 多分おマチさんもこういう事してる
18 22/07/24(日)20:34:38 No.952699451
フクは気づいたら堂々とイチャイチャしてるようになる マチタンは皆の見えない所でイチャイチャしてる
19 22/07/24(日)20:35:55 No.952700281
なんか無性に血の涙を流したくなってきたグギギ
20 22/07/24(日)20:45:24 No.952705785
普段の態度のままフクがこんなこと考えてると思うと愛おしい
21 22/07/24(日)20:46:44 No.952706450
胃袋から掴んでる…というかもう恋人じゃないかなこれ!
22 22/07/24(日)20:49:44 No.952707955
日記だから敬語じゃないフクは新鮮だ