22/07/21(木)01:51:25 マンハ... のスレッド詳細
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22/07/21(木)01:51:25 No.951331198
マンハッタンカフェはその外見と佇まいから、孤独を愛する近寄りがたい存在にも見えるが、関わりを持ってみればすぐに親しみやすい性格をしていると分かる。 意外に話しやすいし、気軽に相談にも乗ってくれるし、美味しいコーヒーも飲ませてくれるしで、エアグルーヴのように後輩からの人気が強い。そこに的確なアドバイスが加わると、噂が噂を呼んで、尋ね人が尋ね人を呼んで、マンハッタンカフェ派と形容されるほどに彼女を慕うウマ娘たちは多くなった。 トゥインクルシリーズ時代ではトレーナー達から不気味とまで言われ静謐を好んだ彼女が、今では後輩たちの楽しそうな声に囲まれている。誰が予想しただろうか、本人でさえ想像もしなかっただろう。 そんなマンハッタンカフェは、今日も様々な美しい照明やアンティーク調の家具が並ぶいつもの部屋で後輩たちの話を聞きながらコーヒーを振舞っていた。少し目を丸くしながら。
1 22/07/21(木)01:51:44 No.951331261
「恋……ですか……?」 「は、はい! その……駅でいつも見かける男の子なんですけど、この前お財布落とした時に、ずーっと追いかけてくれて、渡したらお礼を言う暇もなく走って行っちゃって。それから、声をかけてみたいんですけど……こう、胸がどきどきしちゃって……!」 周りのウマ娘もその相談を聞いてきゃいきゃいと黄色い声を上げる。相手は困り顔で相談してくるが、さらに困ったのは相談された方である。 「そうですね……思い切って、話しかけてみるのが一番だとは思うのですが……」 「や、やっぱりそうですよね! で、でも上手く喋れるか……ひっ! あ、あ、あの! 失礼しますー!」 突然、後輩ウマ娘たちの顔が青くなると俊敏な動きをもって礼をすると、慌てたように部屋から飛び出ていった。理由はたったいま反対側の扉から部屋に入ってきた男、マンハッタンカフェのトレーナーにあった。 彼女のトレーナーもこの数年で、評価にかなりの変化があった。カフェを育てた実績はそうだが、それ以上に彼に対する風評が大いに被害に遭っている。
2 22/07/21(木)01:52:09 No.951331354
内容は主に、歩くと隣に足のないウマ娘がいた、体中に手形型の腫れが出来ていた、ひとりでに天井に打ち付けられたなどなど。総評すれば彼は「憑りつかれている男」であり、それはもはや新入生相手にもそれは恐怖の対象として先輩たちから実在する怪談話として語られるほどである。 今では角ですれ違ったウマ娘たちから悲鳴をあげられて逃げられるようになってしまったが、本人としては抗議もせずに受け入れている。実を言えばそれは殆どが風評ではなく、事実から生まれた報告であるから。今だって首には誰かに絞められたような手の痕がクッキリ残っている。 「あー……お邪魔だったかな」 申し訳なさそうな顔を向けるトレーナーに、カフェは静かな笑顔を向けた。 「ふふ……大丈夫ですよ。それにしても、ふふふ……」 先ほどの逃げていく後輩たちの姿に、カフェはこらえきれない笑いの波動に晒された。数年前まではそう言う反応をされるのは自分のはずだったのに、今ではすっかり立場が逆になってしまっている。 今だって私はあの子達が見えて、アナタはまったく見えないのに。本当は逆だってことに気づいたらあの子達はいったいどんな顔をするのでしょうか。
3 22/07/21(木)01:52:30 No.951331420
「あ、酷いなぁ。これだって傷ついてるんだぞ」 「ふふ……はい、すいません。でも、なんだか笑えてしまって」 形だけの怒りと、形だけの謝罪を済ませると、カフェは奥の方にしまってあるトレーナー専用にブレンドしたコーヒー豆を取り出した。 それで出来上がった物を二つ持って行き、大きなソファに二人横になって座る。そうして静かな時を過ごすのがカフェたちの長い長い日常だった。 やがて、時計の音しか聞こえなくなった頃に、カフェは頭をそっとトレーナーの肩に乗せ、彼しか聞こえないような呟きで呟いた。 「今日は恋愛相談でしたから、トレーナーさんが来てくれて助かりました……私は、経験がないので……どう答えたら正解かわからず……」 「へぇ、カフェにも分からないことがあるんだな。ちょっと見てみたかったかも」 揶揄うようなトレーナーに、カフェの白く陶磁器のように美しい指先がトレーナーの指の間を通った。
4 22/07/21(木)01:53:19 No.951331588
「はい……一番初めで止まってしまっていますから……。トレーナーさんなら、上手く答えられましたか……?」 「へ? あー……そ、想像にお任せします……」 したたかな逆襲をこうむったトレーナーは顔を逸らそうとしたが、何故だか空間に固定されたように体が動かなかった。 「別に、深く聞くつもりはありません……アナタはもう、後戻りはできませんから……」 私は意外にも嫉妬を超えて執着する人間なのかもしれない。と、カフェは心の中でつぶやいた。思えば風評被害が広がり、トレーナーに人間が寄り付かなくなったのも、彼の名も挙がり色んなウマ娘が関わってきたころではないか? 「それとも、逃げたい……ですか?」 トレーナーの首筋に浮かんでいる手の痕を空いた手でなぞりながら、カフェは耳元でささやいた。カフェが触れると、みるみるうちに彼の怪異の後は消え失せて元の肌の色に戻っていく。 執着の元と言えば、その問いに関しては平然と笑顔で即答した。 「まさか。此処まで来たんだ、死ぬまで付き合うよ」
5 22/07/21(木)01:53:35 No.951331638
ふと、カフェの心に目の前のヒトを、どこか自分しか触れらないようにしたいという欲望が湧いて出た。それは点滅する電球の光ように、一瞬の衝動だったが、ともすれば、そのような感情が少しずつ蓄積した結果が今なのかもしれない。だが、本当にそうなっても受け入れてくれるだろうという、身勝手だがどこか予言のような感覚がカフェにはあった。そう、死ぬまではなく、死んでさえも……。 「末永く、お願いしますね……あら……?」 微笑みながらそう返したカフェが、疑問と共に手を止めた。確かに追い払ったはずなのに、首元にまだ消えない跡があるのだ。青黒いというよりは赤だが、いくら触っても念じても呟いても消えない。まさかお友だちよりも強大なものが……? 「そんな……消えないなんて……」 「あのー……カフェ? そこは、なんというか……幽霊じゃなくて……くくっ……」 「え……? あっ……」 トレーナーの言葉に、マンハッタンカフェは少しだけ首をかしげて、そして次は赤面した。その痕は誰が付けたものか思い出したのである。 やはり、私は執着心が深い。と、印を見ながらマンハッタンカフェは、笑うトレーナーの首筋に次は歯を立てた。
6 <a href="mailto:s">22/07/21(木)01:54:50</a> [s] No.951331893
カフェに執着されたい人生だった
7 22/07/21(木)01:57:57 No.951332481
かわいい 素晴らしい
8 22/07/21(木)01:58:21 No.951332552
かわいい とてもかわいい
9 22/07/21(木)01:59:00 No.951332680
旧設定ではトレーナーに執着心があるんだっけカフェ…
10 22/07/21(木)02:16:12 No.951335781
エッチなことしたんですね!?
11 22/07/21(木)06:11:07 No.951351657
怪異も協力してくれてるな