虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

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    22/07/21(木)00:19:18 No.951304704

    一流とはどういうものだろう。担当であるキングヘイローに出会うまで、俺はそんなことを考えたことはなかった。だけど、彼女と一緒に3年間を走り抜けたことで、少しは自分も一流とは何かが分かりかけてきた。一流の本質とは、家柄でも、見た目でもない。一流であろうとする生き方そのものであるのだ。 などとカッコつけたことを考えたはいいが、会議に必要な筆記用具を忘れたことを思い出し、急いでトレーナー室へ忘れ物を取りに戻る。これでは一流からは程遠いと彼女に叱られてしまうな。 「すまん!キング、忘れ物を取りに………」 「……………………え?」 ……………なんともマズいタイミングで入ってしまったらしい。俺の上着を抱きしめながらソファーに寝転がっているキングを見てそう悟る。 「あの…………いやっこれは違うのよ…………」 「あー、いや……こっちも忘れ物取りに来ただけだし…………とりあえず会議行ってくるよ」 結局、それ以上キングに何かを言うことはできず、俺は急いで筆記用具を掴んでトレーナー室を出た。会議中も部屋を出る直前に見たキングの真っ青な顔が頭から離れず、全く話に集中できなかった。一流失格だな………

    1 22/07/21(木)00:20:08 No.951304993

    会議も終わり、トレーナー室へ戻る。本来なら自主練の時間ではあるが、キングはトレーナー室で待っていた。 「その………一応自主練の時間だけど、どうしてここに?」 「あなたに謝らなければいけないからよ。その…………あなたの上着を、勝手に使っていたことを………」 「いや、別にそこまで謝ることでは無いんじゃないか?大体使ったって言ったって布団代わりにしてただけなんだろう?」 「その…………それは………そう!一分一秒でも無駄にしないために、少しでも仮眠の質を上げようと布団代わりに借りていたのよ!」 「じゃあ別にそれくらい構わないよ。というか言ってくれたなら布団くらい用意するのに」 「そ、それは………布団じゃ駄目なのよ!」

    2 22/07/21(木)00:20:48 No.951305247

    「でも俺の上着なんかより布団で寝るほうが効率的だろ?」 「だからその………うぅ…………」 結局、その日からトレーナー室に布団を置いておく。ということでこの問題は解決した………かのように思われたのだが………… 「トレーナー!この布団で仮眠を取る権利をあげるわ!」 「いや、それは君のために用意したものだし、第一別に眠くないよ」 「事前に寝ておいて仕事に備えるのも一流のトレーナーよ!いいから寝なさいな」 このように布団が設置されてからというもの、ことあるごとにキングが俺に仮眠を取らせようとするようになったのだ。逆に、キングが使っているところはほとんど見ていない。 そんなある日、学園新聞の取材の申込みがあった。なんでもトレーナー特集で、ウマ娘ではなく黄金世代のトレーナー同士で対談をする。という内容らしい。需要があるのか?そんなの。

    3 22/07/21(木)00:21:29 No.951305511

    「………というわけで夜まで取材だから、キングは自主練で頼むよ」 「……………えぇ、わかってるわ」 一流のトレーナーとして迂闊なことは言えないな、と気を引き締めて取材に臨む。 ………………………………………………………………………………………… 「………ハイ!ありがとうございました!とっても有意義なお話でした!」 ………結局、対談は予定よりもかなり早く終わった。というか、会話の内容のほとんどは担当ウマ娘との関係ばかりだったが、これで良かったのだろうか。もっとレースの話を振られると思っていたが。 しかし早く終わったのは幸いだ。この時間ならキングのトレーニングに間に合うだろう。急いでトレーナー室の扉を開ける。

    4 22/07/21(木)00:21:56 No.951305682

    「………………っ!」 「…………キング?自主練のはずじゃ………」 既視感、というよりもこの前と全く同じように彼女は俺の上着を抱いてソファーで横になっていた。変わったことといえば、彼女の制服が少し乱れていることだろうか。 「……………その、これは………………これはぁ………!」 キングの目からポロポロと涙が溢れる。まさか泣いてしまうとは。追い詰められたような彼女の様子に動揺するが、きっとこれには彼女なりの深い理由があるのだろう。 「大丈夫だよ、キング。きっと何か事情があるんだろうけど、どんなことがあろうと君は一流だし、俺は君を支えるから」 「でも…こんなの………こんなこと、一流のウマ娘がするわけ無いじゃない…………!」

    5 22/07/21(木)00:22:35 No.951305929

    「まぁ、俺は何がなんだか分からないけど、君のことだから深い理由があるんだろう。どんな悩みだろうと聞くからさ、話してくれないか?」 「そんなの…………言えるわけないじゃないのよーーーー!!!」 そう言うと、キングはトレーナー室から駆け出していく………今は無理に追いかけても、彼女を追い詰めてしまうだけだろう。さっきの様子からして、おそらく自分では彼女が抱えている悩みを聞き出すことはできない。彼女の友人たちに助けを求めてもいいが、こういう時こそ、"あの人"の力を借りるべきだろう。 ………………………………………………………………………………………… 結局、昨日キングがトレーナー室へ戻ってくることはなかった。だが、"あの人"の口ぶりからして昨日の夜、その思いを吐き出せたはずだ。

    6 22/07/21(木)00:23:14 No.951306129

    「こぉんのおバカトレーナー!へっぽこ!よりによってお母様に話すだなんて!あなたにはデリカシーってものが無いの!?」 「いや……キングが俺には言えない悩みを抱えてたみたいだったし………キングと君のお母さんが話せるきっかけにもなるだろうと思って………」 「余計なお世話よ!ほんっとうにへっぽこなんだから!!」 どうも彼女の母親に相談してしまったのは間違いだったらしい。今までに見たことがないくらい顔を真っ赤にして怒る彼女をなだめながら、自分の力不足を悔いる。 「それで、悩みの方は解決したのか?」 「それは………したけど…………それとこれとは、話が別よ!」 結局その後、みっちり彼女にお説教されてしまうのだった。

    7 22/07/21(木)00:23:45 No.951306323

    「それで、その………手段は間違ったとはいえ、私のメンタルケアをしてくれようとしたことは一流に相応しい対応だったわけだし…………ご褒美に週末、私とデ…………デートする権利を上げるわ!」 「そりゃあまた唐突な話だな。まぁ、ありがたく付き合わせてもらうよ。それで、場所はどこなんだ?」 「い、いいのね!?本当に後悔は無いのかしら!?」 「いや、キングからのお誘いを断る理由なんてないよ」 「…………そう!それなら、一流のデートを味あわせてあげる!週末は2日とも空けておくのよ!」 どうやら、彼女は悩みを乗り越えて立ち直ったらしい。どんな事情があったかは分からないが、今まで頑張ってきた彼女に2日間の休みがあってもいいだろう。そんな彼女の貴重な休日に付き添えることは、トレーナーとして光栄なことだ。今週は、気合を入れて仕事を終わらせないとな………

    8 22/07/21(木)00:24:07 No.951306446

    あの晩、あの人は珍しく電話口で笑いながら語りかけてきた。やっぱり私の娘なのね、と言っていたその声は、今までに聞いたことがないほどに穏やかで。私が知らなかったお父様との話をたくさん教えてくれた。 …………正直、あの人と同じ手段を取るのは気に食わない。だけど、お母様が警告したように彼がいつ他の人に奪われるか分からないのも事実だった。 そんなことで悩んでるくらいなら、自分のものにしてしまいなさいな………この学園に来てから、初めて母から貰う応援の言葉がこんなものになってしまったのは、私がまだまだへっぽこである証拠であろう。しかし、私が一流であり続けるためには、一流のパートナーが必要だ。彼と二人で真の一流になるためにも………諦めるわけにはいかない。 「本当に、これで大丈夫なのよね………お母様も、こうやってお父様と…………」 「あれー?キングちゃん、面白そうな本たっくさん読んでるね!私にも見せてー!」 「ちょ、ウララさん!?駄目よ!これは………そう、一流の本だもの!むやみに人に見せてはいけないの!絶対読んじゃ駄目なんだからー!」

    9 22/07/21(木)00:24:49 No.951306703

    赤面するキングが書きたかっただけです。 長くなってしまいました。